ジーン・ケリー( Gene Kelly )は様々な業績を残した人であるが、アメリカのミュージカル映画にバレエを取り入れて成功させたことは、その中でも歴史的に重要なことである。
アメリカのミュージカルの歴史とバレエ
タップダンスが主流であったアメリカのミュージカルにバレエが重要な要素として取り入れられるようになったのは、
・「オン・ユア・トーズ」(1936年)―ロレンツ・ハート作詞、リチャード・ロジャース作曲。
・「オクラホマ!」(1943年)―オスカー・ハマースタイン二世作詞、リチャード・ロジャース作曲。
のような画期的なブロードウェイ・ミュージカルによる。
ただしミュージカル映画にバレエが取り入れられたのは、それより後になった。
「オン・ユア・トーズ」はもともとフレッド・アステア主演の映画のために作られたが、フレッド・アステアが断ったので、ブロードウェイで他の人でやったのであった。
「オクラホマ!」は1943年にブロードウェイで開幕して大ヒットしたが、映画化されたのは1955年であった。
ミュージカル映画にバレエを取り入れる機会はまずフレッド・アステアにやってきた。
しかしフレッド・アステアより後に出て来たジーン・ケリーによって行われることになった。
ジーン・ケリーの映画におけるバレエ
ジーン・ケリーは1940年開幕のブロードウェイ・ミュージカル「パル・ジョイ」( “Pal Joey” 、ロレンツ・ハート作詞、リチャード・ロジャース作曲)で有名になった。
映画デビューは1942年の「フォー・ミー・アンド・マイ・ギャル」( “For Me and My Gal” )。ジュディ・ガーランドの相手役であった。
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ジーン・ケリーが映画で有名になったのは1944年の「カバー・ガール」( “Cover Girl” )。
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地位が上がるとともに、自分の意見を映画に入れていった。そしてバレエを取り入れていった。
ジーン・ケリーは早くからタップダンスにもバレエにも力を入れていた。
「踊る海賊」
1948年に公開された「踊る海賊」( “The Pirate” )でジーン・ケリーは「海賊」バレエをやった。
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ジーン・ケリーの演ずる人物が終盤に追い詰められたところで事態をひっくり返すためにやるのである。
ワーズ&ミュージック
「踊る海賊」と同じ年、1948年12月に公開された映画「ワーズ&ミュージック」( “Words and Music” )でもジーン・ケリーはバレエをやっている。
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「ワーズ&ミュージック」は、「オン・ユア・トーズ」( “On Your Toes” )の作者リチャード・ロジャースとロレンツ・ハートの伝記映画。
リチャード・ロジャースとロレンツ・ハートの伝記の中に二人が作った楽曲、ミュージカルが差し込まれるというかたちになっていて、その中に「オン・ユア・トーズ」のナンバーも再現されている。
ジーン・ケリーは映画の終盤で「オン・ユア・トーズ」の劇中のバレエ「十番街の殺人」(”Slaughter on 10th Avenue”)をヴェラ・エレンその他とともに再現している。
「オン・ユア・トーズ」はもともとフレッド・アステアの映画のために作られたが、フレッド・アステアがことわったものであった。それを映画「ワーズ&ミュージック」でジーン・ケリーがやったわけである。
フレッド・アステアはジーン・ケリーより前にミュージカル映画にバレエを取り入れる機会があったが、その方向に進まないのに対して、後から来たジーン・ケリーがその方向を進めていく。
「踊る大紐育」
1949年12月に公開された映画「踊る大紐育」( “On the Town” )にもバレエが取り入れられている。
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映画の終盤に、孤独になったジーン・ケリーの演ずる人物が、「ニューヨークでの一日」(”A Day in New York”)という芝居の看板をみて、一日を振り返るところで、その頭の中にあることがバレエによって表現されている。
このように主人公の頭の中にあることがバレエによって表現されていることは、「オクラホマ!」の影響と思われる。
ジーン・ケリーの相手役は「ワーズ&ミュージック」の「十番街の殺人」と同じくヴェラ・エレン。
ヴェラ・エレンは映画のはじめにもバレエをやっている。―ジーン・ケリーの演ずる人物等がヴェラ・エレンの演ずる人物はどういう人物か想像するところ。
「巴里のアメリカ人」
1951年に公開された映画「巴里のアメリカ人」(”An American in Paris” )は、ジーン・ケリーがバレエを取り入れた映画の中でも特筆すべき作品。
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「巴里のアメリカ人」でジーン・ケリーの相手役をやったレスリー・キャロンは、ジーン・ケリーがフランスで見出したバレエダンサーであった。
まずレスリー・キャロンの演ずる人物はどういう人物であるか想像するというところで、「踊る大紐育」でやっていたのと似たバレエがある。
そして終盤には、ジーン・ケリーの演ずる人物がレスリー・キャロンの演ずる人物との関係について考えることが大がかりなバレエによって表現されている。
主人公の頭の中にあることをバレエで表現することは「オクラホマ!」の影響と考えられる。
ジョージ・ガーシュウィンの楽曲「巴里のアメリカ人」、ジーン・ケリーとレスリー・キャロン、そしてその他多くの人による大がかりなバレエ、フランスの印象派の画家の絵をもとにした背景美術が相まって、大変なものになっている。
「雨に唄えば」
1952年に公開された映画「雨に唄えば」( “Singin’ in the Rain” )にもバレエがある。―「ブロードウェイ・バレエ」である。
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ブロードウェイでの成功を目指す若者(ジーン・ケリー)が、魔性の女性(シド・チャリース)と出会うというもの。
ジーン・ケリーの演ずる人物が提案する映画の企画として出て来るのであるが、「雨に唄えば」の本筋とはあまり関係ない。
「ブリガドーン」
1954年に公開された映画「ブリガドーン」( “Brigadoon” )は1947年にヒットしたブロードウェイ・ミュージカル「ブリガドーン」の映画版。
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「ダンスへの招待」
1956年に公開された映画「ダンスへの招待」( “Invitation To the Dance” )は、ジーン・ケリーが監督した映画。
会話はなく、登場人物はダンスと身振りだけで表現するというもの。
ジーン・ケリーはこの映画によって観客をダンスに関して啓蒙したいと考えていたようである。
興行的には失敗した。
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4 Film Favorites: Gene Kelly (For Me and My Gal, Invitation to the Dance (1956), On the Town (Sinatra Tribute), Summer Stock)
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