月: 2022年5月

  • 手を洗う救急医Taka氏が「地獄絵図」と語ったことについて 第6波での死亡者数の問題

    手を洗う救急医Taka氏が「地獄絵図」と語ったことについて 第6波での死亡者数の問題

     2021年6月28日、手を洗う救急医Taka氏は「地獄絵図になる可能性も十分ある」と語った。

     東京オリンピック2020は2021年7月21日から始まった。

     その1カ月前に、新型コロナウイルスの感染拡大によって、「地獄絵図になる可能性も十分にある」ゆえに「専門家」からは「五輪中止という意見」が出ていた、と手を洗う救急医Taka氏は語ったのである。

    気になるところ

     手を洗う救急医Taka氏の言葉には気になるところがある。

    「地獄」と言う言葉

     「地獄」というのは宗教的な言葉である。

     「専門家」とは科学者だと思われるが、科学者は、宗教的な言葉ではなく、科学的な言葉を使うべきではないか?

     「専門家」はあくまでも客観的な可能性を示して、それを受けて国民が判断すべきではないか?

     手を洗う救急医Taka氏のように、「地獄絵図」という言葉を使って「専門家」からは「五輪中止という意見」が出ているということは、「専門家」の判断を科学的真理であるかのように見せて、国民に押し付けることではないか?

     国民の自由な判断を抑圧することではないか?

     手を洗う救急医Taka氏の『「専門家からは五輪中止という意見は出ていない」とかよく言えたもんだなと思いますね』という言い方も、あくまでも「専門家」の意見は正しいと意地になっているようである。

    「地獄絵図」という言葉と現実

     手を洗う救急医Taka氏は第5波に関して「地獄絵図」になる可能性があると語った。

     実際はどうであったか?

    第5波

     第5波では、重症者数が多かった。

     第4波では、5月26日に日本国内の重症者が1413人になったのが最高であった。

     第5波では、8月14日から9月18日まで1日1500人を超えていた。8月27日から9月13日までは1日2000人を超えていた。

     第6波では、1日1500人を超えたのは2月22日、25日、26日くらいであった。

     手を洗う救急医Taka氏はその「地獄絵図」というところで、西浦博氏の「おもてなしどころか、国際的に恥をかく事態も」というBuzzFeedの記事を引用している。

    https://www.buzzfeed.com/amphtml/naokoiwanaga/covid-19-nishiura-20210625-2?__twitter_impression=true

     西浦博氏はその記事で「医療崩壊」ということを問題としている。

    死者数

     ところで第5波での新型コロナウイルスによる死者は、その前の第4波、その後の第6波と比べて多くない。

    2020年
    1月

    2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
    0人 5人 61人 391人 441人 76人 39人 287人 275人 195人 382人 1340人
    2021年
    1月
    2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
    2261人 2144人 1279人 1067人 2817人 1724人 410人 874人 1584人 616人 93人 32人
    2022年
    1月
    2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
    422人 4856人 4453人 1447 1052              

    https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/data-all/

     第5波は2021年7月から10月くらいまで。

     第5波以前の2021年1月から6月までは、毎月1000人以上亡くなっていて、第5波より死者数は多い。

     第5波で最も死者数が多いのは2021年9月の1584人であるが、同年1月、2月、5月、6月にそれより多くの人が亡くなっている。

     第5波の後、2022年1月から始まった第6波ではさらに多くの人が亡くなっている。

     第5波の間に五輪が開催されたにもかかわらず、第3波、第4波、第6波より死亡者数は少なかった。

     新型コロナウイルス感染者の死亡以外の死亡が増えたという報道もある。

    1~3月に国内の死亡数が急増したことが厚生労働省の人口動態調査(速報値)で分かった。前年同期に比べ3万8630人(10.1%)多い、42万2037人に上った。同期間に新型コロナウイルス感染者の死亡は9704人で、増加分を大きく下回る。コロナ以外の要因があるとみられるが詳しい原因は不明だ。

    日本経済新聞 国内死亡数が急増、1~3月3.8万人増 コロナ感染死の4倍

     厚生労働省の資料↓

    https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html

     人口動態統計速報(令和4年3月分)

     当月分及び当月を含む過去1年間(12ヶ月)の動向

     死亡者数の推移

    2020年
    1月

    2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
    13万2622 11万7010 11万9161 11万3362 10万8380 10万423 10万4849 11万1591 10万7468 11万8038 11万8455 13万3185
    2021年
    1月
    2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
    14万844 11万8984 12万3579 11万8169 11万8634 10万8734 11万2222 11万7804 11万5706 12万781 12万2806 13万4026
    2022年
    1月
    2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
    14万3992 13万8474 13万9571                  

    疑問

     手を洗う救急医Taka氏は第5波について、「地獄絵図になる可能性も十分ある」とまで語っていた。

     たしかに第5波では重症者数がその前後より多かった。

     第5波の時には「医療崩壊」ということが問題とされていた。

     しかし第3波、第4波、第6波では第5波より死者数が多かった。

     手を洗う救急医Taka氏は、2022年2月9日付けの記事で、第6波に関して「逃げきれる」と予測していた。

    木下「感染対策をしたり、集団の中で免疫を持つ人が増えたりすると、実効再生産数が落ちてきて、実効再生産数が1を切った瞬間から収束に向かいます。オミクロンの場合、世代時間が短いので、実効再生産数が0.5になると10日間で32分の1まで感染者が減ります。倍々で増えていくし、倍々で減っていくということです」

    まいどなニュース 専門医、オミクロンからは「逃げきれる」 基本的な感染対策の継続が条件

     「倍々で減っていく」ゆえに「逃げきれる」というのである。

     そして「デルタに比べて恐ろしく強いということもないようです。」と語っている。

     しかし2月以降、オミクロン株による死者はそれまでにないほど多くなっている。

     その上に新型コロナウイルス以外の死者が多くなっているという。

     手を洗う救急医Taka氏が「地獄絵図になる可能性も十分ある」と語った第5波より多くの人が亡くなった第6波に関して、手を洗う救急医Taka氏は「デルタに比べて恐ろしく強いということもないようです。」とか、「逃げきれる」とか語っていたのである。

     予測は外れることもある。しかしそういう予測を国民に科学的真理であるかのようにおしつけることには疑問がある。

  • 「きまぐれオレンジ☆ロード」―原作の絵と高田明美氏の絵

    「きまぐれオレンジ☆ロード」―原作の絵と高田明美氏の絵

     数年前、久しぶりに「きまぐれオレンジ☆ロード」を読んで、また関心をもつようになった。

     その時に、私の知っている「きまぐれオレンジ☆ロード」とは違う絵が「きまぐれオレンジ☆ロード」の絵として出回っていることが気になった。

     それはアニメ版の絵であった。

     私はそれまでアニメ版のことを全く知らず、アニメ版の絵も見たことがなかったのである。

     アニメ版のキャラクターデザインは高田明美氏による。

     漫画「きまぐれオレンジ☆ロード」の絵と高田明美氏の絵との関係について考えてみた。


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    違い

     アニメ版の絵は、原作の絵とは違うものになっている。

    高田明美氏の言葉

     もともと高田明美氏の画風は、漫画「きまぐれオレンジ☆ロード」の画風とは距離のあるものであった。

     高田明美氏自身そのことを認めている。

    最初に絵を見た時は「私よりも、いのまた(むつみ)さんに頼んだほうがいいんじゃないか」ってちょっと思ったりもしたんですが。

    高田明美が明かす〝暇つぶし〟から始まった『パトレイバー』秘話

     そういう高田明美氏がアニメ版のキャラクターデザインを担当した。

     そしてもともと距離のある高田明美氏の画風をさらに推し進めていったようである。

    『うる星やつら』はあまりバリエーションのあるイラストを描く余裕がなかったんですけれど、けっこうお任せだった『オレンジロード』はどっちかというと芸能プロの社長みたいな感覚で、「預けてもらった大事なタレントをどう売っていこうかな」みたいな視点で描いていました。

    高田明美が明かす〝暇つぶし〟から始まった『パトレイバー』秘話

     「お任せだった」から、「預けてもらった」から、高田明美氏は自分の思うようにしたということのようである。

     原作の絵をアニメで再現しようとは考えていなかったようである。

     アニメ版に関しては、自分のものとして、自分の思うようにやっていこうと考えていたようである。

     以上の発言は下のインタビューから↓

    https://animageplus.jp/articles/detail/33157

    違和感

     アニメ版のキャラクターデザインは、もともと原作とは距離のある画風の高田明美氏が、自分の思うように描いたものであるから、それだけ原作の絵と離れたものになったのである。

     アニメ版の鮎川まどかは、原作の鮎川まどかとは性格が違うように見える。着るものも違う。

     「きまぐれオレンジ☆ロード」のようにキャラクターの絵が特に重要な作品で、アニメ版のキャラクターデザインを担当する人が「芸能プロの社長みたいな感覚で」自分の思うように売っていくということは、どうなのか、と思わないでもない。

    原作者の言葉

     114分あたり。

     寄せられた質問に答えるコーナーで、

     アニメ化された時にキャラクターデザインの高田明美さんの絵に刺激を受けたのでは?

    という質問があった。それに対して、

    「それはないです。高田明美さんじゃなくて、いのまたむつみさんの影響が結構強いんじゃないかなと思います」と答えている。

     漫画「きまぐれオレンジ☆ロード」の絵はいのまたむつみさんの絵の影響を受けている。原作者が自ら認めている。

     高田明美氏も認めている通りである。

     漫画「きまぐれオレンジ☆ロード」はアニメの絵の影響を受けていると言われるが、いのまたむつみさんの絵の影響を受けているのである。

     高田明美氏の絵の影響を受けたのではない。

     アニメ版が始まった後の漫画の絵はアニメ版の絵に近くなっていない。

     原作の絵は高田明美氏の絵の影響を受けたということは、他でも聞いたことがあるが、どこから出て来たのであろうか?

     漫画「きまぐれオレンジ☆ロード」の絵はいのまたむつみさんの影響を受けていることを考えると、いのまたむつみさんがアニメ版のキャラクターデザインをやることが正解だったのではないかと思われる。


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    「アニメージュ」1987年5月号

     「アニメージュ」1987年5月号には、TVシリーズのキャラクターデザインについての高田明美氏の言葉がある。(98頁)

    『ジャンプ』のイベント用アニメでもキャラデザを担当した高田明美さんのことばです。
    「今回は、より原作に近ずけたつもりです。~」

    「アニメージュ」1987年5月号、98頁

     1985年の『ジャンプ』のイベント用アニメでも高田明美氏はキャラクターデザインを担当していた。

     TVシリーズでは、その前回のキャラクターデザインより原作に近づけたというのである。

     どういうことか?

     見出しは「これなら原作ファンもナットク! 可憐さと色気を見事に調和させた高田”まどか”」となっている。

     前回のキャラクターデザインでは、原作ファンは納得しなかったということであろう。

     今回は、前回より原作に近づけたゆえに原作ファンも納得する、ということであろう。

     この記事には色々と興味深いところがある。

    原作ファンに気を遣っている

     TVシリーズの放映開始後に「アニメージュ」は「きまぐれオレンジ☆ロード」の原作ファンの声をかえりみなくなっていくが、この時には原作ファンに気を遣っていた。

    比較的

     「今回は、より原作に近ずけた」というのは前回と比べてのことである。前回より比較的に原作に近いということである。

     実際には、原作から離れている

     高田明美氏は具体的に次のようにしたと語っている。

    「~単行本の8~9巻あたりを参考に、等身を少し伸ばし、ちょっぴりおとなっぽい感じにしました」

    「アニメージュ」1987年5月号、98頁

     「単行本の8~9巻あたりを参考に」したというが、そこに描かれている高田明美氏の絵と、その参考にしたという「単行本の8~9巻あたり」の絵とは距離がある。


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    頭と体

     「等身を少し伸ばし」というのは、頭の大きさに対して、首から下の体の大きさを伸ばしたということではないかと思われる。

     「少し伸ばし」というのは、1985年の『ジャンプ』のイベント用アニメと比較して「少し伸ばし」たということであって、原作と同じようにしたということではない。

     アニメ版では、顔は大きく、体は小さくデフォルメされているが、原作漫画では、顔はそれほど大きくなく、体はそれほど小さくない。

     JC5巻あたりから、いのまたむつみさんの影響を受けて絵柄が変わって、頭は大きく、顔は小さくなっているが、体は小さくなっておらず、むしろさらにリアル寄りになっている。


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     アニメ版の絵では、首から下が小さくデフォルメされていることと関連して、原作ほど力を入れて描かれていないように見える。

     漫画「きまぐれオレンジ☆ロード」では、首から下の線が力を入れて描かれていて、美しいところが多い。そういうところがアニメ版ではなくなっている。

     アニメ版で顔が大きく体が小さくデフォルメされていることと関連してか、原作と構図が違うところが多い。

     TVシリーズの多くは原作の話をもとにしているのに、原作と同じような絵は少ないようである。

    太さ

     アニメ版では、顔が大きく、体が小さくデフォルメされている上に、その顔がまるっこい。

     原作はシュッとしているのに、アニメ版はまるっこくなっている。

     漫画「きまぐれオレンジ☆ロード」の「スタア誕生!の巻」でTVに映った自分たちをみて、くるみが「ぎゃーっ/あたし/こんなに/ふとって/ないよーっ」といい、まなみが「テレビって/ふとって/うつるんだって」というところがある。(JC17巻、41頁)


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     初めて読んだ時には、一般論を言っているのかと思っていた。

     ある時、TVシリーズの絵のことを言っているのではないかと思った。

     たとえばその頁のひかるがステージ上で歌っている絵のような細く美しい四肢の絵はTVシリーズにはないのではないか?

     この一連の話には、TVシリーズのことを扱っているところがある。(「春はアイドル!」では、春日恭介が独白で「わけで」を連発するとか、くるみが「ナイト・オブ・サマーサイド」を歌うとか)


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    対立

     高田明美氏によって「きまぐれオレンジ☆ロード」のアニメ版の絵は、原作の絵から離れたものとなった。

     アニメ版の絵のファンも少なくないようであるが、原作ファンで違和感を感じた人は多かったと思われる。

    「アニメージュ」

     雑誌「アニメージュ」は、アニメ版を持ち上げて原作を下げていたが、絵に関しては原作を評価していた。

     「アニメージュ」1988年4月号の「TVファイナル特集」で、「原作があくまでもキャラクターの絵が魅力の、軽~~~いノリのラブコメだった」と書いている。

     後半は原作を下げているが、前半は、原作の「キャラクターの絵が魅力」であることを認めている。

     1988年6月号の「スタッフ版アニメグランプリ」の「アニメーター部門」で、小黒祐一郎氏が「きまぐれオレンジ☆ロード」TVシリーズの総作画監督の後藤眞砂子氏の仕事を称賛しているが、高田明美氏のことは触れられていない。

    「BASTARD‼」

     漫画「きまぐれオレンジ☆ロード」の絵は連載後も人気があったと思われる。

     たとえば「きまぐれオレンジ☆ロード」の連載が終わった後に、「きまぐれオレンジ☆ロード」のアシスタントをやっていた萩原一至先生の「BASTARD‼」の連載が始まっているが、その「BASTARD‼」の人気はそのことと関係があると思われる。


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     大塚英志氏は「新文化」1988年11月17日号の「究極のおたくコミック」という文で、「BASTARD‼」の第一巻が「発売当日に都内の書店で瞬時に売り切れ、この種の出版物は必ず手に入れるぼくの周囲のマニア上がりのまんが家や編集者たちでさえ誰一人買えなかったというありさまであった」ことについて、二つの理由によって説明されていたという。

    「BASTARD‼」の人気の背景については既にいくつかの<解説>がされている。すなわち、ファミコンブームによって読者にポピュラーとなった「ドラクエ」的な<剣と魔法モノ>を少年誌で初めて手がけたこと、加えて作者は「きまぐれオレンジ☆ロード」の作者であるまつもと泉の元アシスタントであり、とにかく美少女キャラが可愛い。とりあえずこの二点がヒットの理由だとされている。

    「定本 物語消費論」、角川書店、平成13年、98頁

     「BASTARD‼」の異例の売り上げの二つの理由の一つは「きまぐれオレンジ☆ロード」に近い美少女キャラの絵だったというのである。

     それだけ「きまぐれオレンジ☆ロード」の絵は力があったということではないか?

    キャラクターグッズ

    「きまぐれオレンジ☆ロード」に関しては、アニメ版の絵によるキャラクターグッズが多く、原作の絵によるものは少ないように見える。

     同時代のあだち充作品、高橋留美子作品と比べても原作の絵によるものが少ないようである。

     上に述べたように原作の絵に力があったとすると、奇妙なことのようでもある。

     

  • 「きまぐれオレンジ☆ロード」―漫画とTVシリーズの違いについて

    「きまぐれオレンジ☆ロード」―漫画とTVシリーズの違いについて

     漫画「きまぐれオレンジ☆ロード」と、漫画「きまぐれオレンジ☆ロード」を原作として作られたアニメ版TVシリーズとの間には色々と違うところがある。


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    漫画とアニメ版TVシリーズ

     「きまぐれオレンジ☆ロード」は「週刊少年ジャンプ」で1984年15号(3月26日号)から連載を開始した漫画。

     その漫画「きまぐれオレンジ☆ロード」を原作としたアニメ「きまぐれオレンジ☆ロード」のTVシリーズは1987年4月6日から放映された。

     そのTVシリーズが放映されている間に、「週刊少年ジャンプ」1987年42号(9月28日号)で漫画「きまぐれオレンジ☆ロード」は終わった。

     TVシリーズは1988年3月7日に終わった。

    私の経験

     私は前に漫画「きまぐれオレンジ☆ロード」を読んでいた。

     数年前、たまたま漫画「きまぐれオレンジ☆ロード」を読んで、関心をもって調べている時にはじめてTVシリーズの存在を知った。

     それまでTVシリーズの存在を知らなかったのである。

     そこでTVシリーズを取り寄せてみた。

     しかしどうにも楽しむことができない。


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    何故にTVシリーズを楽しむことができなかったか?

     私は漫画、アニメのことに詳しくなくて、何故にTVシリーズを楽しむことができないか、よくわからなかった。

     そのうちにわかってきた。

    一般論

     漫画、アニメに詳しくないと、漫画を原作としたアニメは漫画をアニメのかたちにしただけのものと思ってしまう。

     実際には、漫画の作者と違う人がアニメを作る。

     その人によって絵も話も原作と違うものになる。

    1980年代の漫画原作アニメ

     1980年代の漫画原作アニメでは、アニメの作り手が原作の通りに作らずに、原作と違うように作ることが広く行われていた。

     「うる星やつら」のアニメ版(1981~1986年)はそのことで有名であった。

     「うる星やつら」のアニメ版では、アニメの作り手が「暴走」して原作と違うものにしてしまうことが多かったが、そのことで評判になって、大ヒットした。

     「きまぐれオレンジ☆ロード」のTVシリーズを制作したスタジオぴえろは、その「うる星やつら」を制作したところである。

     「きまぐれオレンジ☆ロード」でも、「うる星やつら」と同じように、アニメの作り手に「暴走」させることを考えていたと思われる。

    「きまぐれオレンジ☆ロード」のTVシリーズの作り手の言葉

     「きまぐれオレンジ☆ロード」のTVシリーズの作り手の言葉をとりあげてみる。

    監督 小林治氏

     TVシリーズの監督小林治氏は次のように語っていたと言われている。

    小林治が監督を務めた『きまぐれオレンジ☆ロード』について取材した際に、それに関する話をうかがった。小林監督は「どう思われているか分からないけれど、自分はこういった作品でも、たとえば世界名作劇場と同じような作りにしたいと思っている」と話してくれた。

    WEBアニメスタイル アニメ様365日 第169回 カメラで撮られた世界としての『クリィミーマミ』

     必ずしも明らかでないが、原作の漫画「きまぐれオレンジ☆ロード」の感じをそのままアニメにするのではなく、それとは異なるような、「たとえば世界名作劇場と同じような作り」にしたいということのようである。

    キャラクターデザイン 高田明美氏

     キャラクターデザインを担当した高田明美氏は次のように語っている。

    『うる星やつら』はあまりバリエーションのあるイラストを描く余裕がなかったんですけれど、けっこうお任せだった『オレンジロード』はどっちかというと芸能プロの社長みたいな感覚で、「預けてもらった大事なタレントをどう売っていこうかな」みたいな視点で描いていました。

    高田明美が明かす〝暇つぶし〟から始まった『パトレイバー』秘話

     「預けてもらった大事なタレントをどう売っていこうかな」というのは、原作漫画の感じをどうやってアニメにするかということではなく、高田明美氏のやり方でやっていくということであろう。

    シリーズ構成、脚本 寺田憲史氏

     寺田憲史氏が原作の感じをアニメ化しようと考えいなかったことは、様々なところからうかがうことができるが、ここでは小説版のあとがきの中の言葉を挙げておこう。

    自由な雰囲気で物作りができたのも、まつもとさんが、われわれ映像スタッフを信じて任せてくれたからだと思う。

    「新きまぐれオレンジ☆ロード そしてあの夏のはじまり」

     「自由な雰囲気で物作りができた」というのは、原作にとらわれることなくやりたいことをやったということであろう。

    文芸 静谷伊佐夫氏

     文芸担当の静谷伊佐夫氏の言葉もとりあげておこう。

     TVシリーズの放映開始前に「アニメージュ」1987年4月号の新番組紹介で語っているもの。

     ある日、制作部長から「こんどウチでやる『きまぐれオレンジロード』の文芸をやるように」といわれた。喜んだと同時に、ちょっとアセった。
     というのも、マンガ週刊誌は毎週欠かさず読んでいるが、このページだけは毎週欠かさず飛ばしていたからだ。それはべつにこの作品がきらいというわけではなくて、ボクは”青春もの”全般がきらいなのだ。なぜかというと”ウソ”が多いからだ。
     だって、中・高校生のころって、みんなすごくドロドロ、ウジウジしてなかったか⁉ いっぺんだてスカッとしたことなんてなかったんじゃないのか⁉ ボクはそうだった…。
    (中略)
     ボクも何本かおきにシナリオを書かせてもらえる。(中略)ボクが書く1本1本のシナリオに、ボク自身が体験した脂ぎった体臭をはらんだ「青春」を描いていきたい。―それが喜んだ理由。
     そんな気持ちで「きまぐれオレンジロード」に立ち向かっているんだ。

    「アニメージュ」1987年4月号、94頁

     静谷氏も原作の感じをアニメにしようとは考えておらず、原作と異なる自分の「青春」を描くと語っている。

     それにしてもこの発言は、原作ファンにとって衝撃的である。

     「マンガ週刊誌は毎週欠かさず読んでいるが、このページだけは毎週欠かさず飛ばしていた」という人がTVシリーズの文芸を担当するということも、原作ファンにとって残念なことである。

     その人が「ボク自身が体験した脂ぎった体臭をはらんだ「青春」を描いていきたい」と述べていることも、原作ファンにとって残念なことである。

     当時の原作ファンはこれを読んでがっかりしたのではないか?

     静谷氏の言葉と同じ頁には、「陽あたり良好!」のTVシリーズの制作担当の金正廣氏の「スタッフは前作「タッチ」とほぼ同じメンバー。全員あだち作品のよき理解者ばかり」と言う言葉もある。

     「陽あたり良好!」のTVシリーズの作り手は「全員あだち作品のよき理解者ばかり」であるというのに対して、「きまぐれオレンジ☆ロード」のTVシリーズの作り手は原作を無視して「ボクの青春」を描いていきたいと言っているのをみると、さらにがっかりする。

    まとめ

     このように「きまぐれオレンジ☆ロード」のTVシリーズの作り手の主要な人物は、原作をどうアニメにするかということを考えておらず、どうやって原作と異なる自分の作品を作るかを考えていた。

     作る人が異なるゆえに出来たものも違うものになっただけではない。

     それぞれが原作と異なる自分の方向に向かっていたのである。

    原作ファンの反応

     「きまぐれオレンジ☆ロード」のTVシリーズは、絵も話も演出も原作と違うものになった。

     しかもTVシリーズは原作と違うだけでなく、原作と違う方向に向かっている。

     原作を読んでから、そのアニメ版としてTVシリーズをみると、違和感がある。

     原作に思い入れある人ほどその違和感は強く不満を感ずるであろう。

     原作のあの絵、あの話、あの場面をアニメの形でみようと思っても、絵も話も演出も変わっているので満足することはできない。

     原作ファンでTVシリーズをみて楽しむことができなかった人は少なくなかったのではないか?


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  • 映画「ボブ&キャロル&テッド&アリス」 ヒッピー文化を扱った恋愛喜劇

    映画「ボブ&キャロル&テッド&アリス」 ヒッピー文化を扱った恋愛喜劇

     映画「ボブ&キャロル&テッド&アリス」(原題は “BOB & CAROL & TED & ALICE” )は1969年に公開された映画。

     それまで建前を重んじていた夫婦が、本音を重んずる思想を取り入れたことによって起こる珍事を描く。


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     音楽はクインシー・ジョーンズ。


    Bob & Carol & Ted & Alice (Main Title)

    映画「ボブ&キャロル&テッド&アリス」のあらすじ

     ドキュメンタリー・フィルム作家のボブ(ロバート・カルプ)は妻のキャロル(ナタリー・ウッド)とともにある週末、山奥の施設の取材に行った。

     そこでは、暴力は禁止され、互いに自分の気持ちを正直に相手に伝えることを尊重することが教えられていた。

     ボブとキャロルはその教えに感動して、家に帰った。

     夫婦の片方が浮気をしても、そのことを正直に言って、相手もそのことを理解するようになった。

     その夫婦と親しいテッド(エドマンド・グールド)とアリス(ダイアン・キャノン)の夫婦はそういう教えを受け入れた人ではなかった。

     ところがボブとキャロルが新たな思想をもって接してくる…。

    山奥の施設

     はじめに夫婦が訪れる山奥の施設は、1960年代に流行したエサレン研究所(Esalen Institute)をもとにしているようである。

     都会から離れた施設で、それまでの都会生活とは異なる生活様式を知るということは、同じ時代のピーター・フォンダ主演作品と共通している。

    「白昼の幻想」

     「白昼の幻想」(”The Trip”、1967年)でピーター・フォンダの演ずる主人公が「白昼の幻想」をみるところ。

     薬が出て来ることも「ボブ&キャロル&テッド&アリス」と似ている。


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    「イージー・ライダー」

     「イージー・ライダー」(”Easy Rider”、1969年)では、都会から離れたところにつくられていた共同体が描かれている。

     薬だけでなく、男女が裸でいること(いつもではない)も「ボブ&キャロル&テッド&アリス」と似ている。


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    新たな思想とそれまでの思想

     登場人物が、自分の気持ちを正直に相手に伝えることを重んずる思想を実行しているところは、映画としてみていて面白い。

     その新たな思想と、それまでの思想との対立が生ずる。

     ボブとキャロルがその新たな思想を受け入れても、まわりの人は受け入れておらず、笑ったり、反発したりする。

     その新たな思想を受け入れた人の中でも、反対の感情が生ずることがある。

     観客の中でも、その新たな思想とそれまでの思想との対立はある。

    映画「ボブ&キャロル&テッド&アリス」のDVD

     映画「ボブ&キャロル&テッド&アリス」はDVD化されている。


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  • 映画「土曜は貴方に」 フレッド・アステアとヴェラ・エレンの共演

    映画「土曜は貴方に」 フレッド・アステアとヴェラ・エレンの共演

     「土曜は貴方に」(原題は “Three Little Words” )は1950年に公開されたミュージカル映画。

     「フーズ・ソーリー・ナウ」(”Who’s Sorry Now” )などの名曲で有名な作詞家バート・カルマ―と作曲家ハリー・ルビーのコンビの伝記。


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    映画「土曜は貴方に」のあらすじ

     バート・カルマ―(フレッド・アステア)は、売れっ子の作詞家であり、ダンサーであって、ジェシー(ヴェラ・エレン)とともにダンスを踊って喝采を浴びていた。

     ところがある日、バートは脚を悪くして踊ることができなくなった。

     バートは踊りをやめてジェシーと離れて、作詞に専念することになった。そこに現れたのが作曲家ハリー・ルビーであった。

    映画「土曜は貴方に」のみどころ

     作詞家、作曲家の伝記のミュージカル映画のみどころは、その作詞家、作曲家の作った名曲を歌う、演奏する、踊るところにある。


    My Sunny Tennessee / So Long! Oo-Long (How Long You Gonna Be Gone?)

    ダンス

     映画「土曜は貴方に」の第一のみどころは、フレッド・アステアとヴェラ・エレンのダンス。

     この映画でフレッド・アステアの相手役を務めるヴェラ・エレン(Vera-Ellen)は非常にダンスのうまい人で、見ごたえがある。

    “Where Did You Get That Girl?”

     まず二人が同じ格好で踊る “Where Did You Get That Girl?” 。

     ヴェラ・エレンもフレッド・アステアと同じようにップハット、白の蝶ネクタイ、燕尾服の姿で出て来る。

     そして私に彼女がいたら…と歌う。

     息の合ったダンス。

    家庭でのタップダンサー夫婦 “Mr. and Mrs. Hoofer at Home”

     夫婦生活をタップダンスで表現したもので、面白い。

     黄緑を使った色も鮮やか。

    Warner Archive
    Mr. and Mrs. Hoofer At Home | Three Little Words | Warner Archive

    “Nevertheless”

     二人が再会して、ルビー(レッド・スケルトン)の伴奏で踊る。

    “Thinking of You”

     船旅で夜、ハリー・ルビー(レッド・スケルトン)がピアノで演奏する”Thinking of You”に乗って、フレッド・アステアがヴェラ・エレンと踊るのはフレッド・アステアのお得意のロマンティックなダンス。

     広い空間を使って美しいダンスが繰り広げ

    その他

     夜の舞台でフレッド・アステアが一人で踊るところも見どころ。

     ヴェラ・エレンが多くの男性とともに踊るところも見どころ。

    楽曲

     ダンス以外でも、バート・カルマ―とハリー・ルビーの楽曲は生かされている。

    「フーズ・ソリー・ナウ」( “Who’s Sorry Now” )

     「フーズ・ソリー・ナウ」( “Who’s Sorry Now” )は、バート・カルマ―とハリー・ルビーのコンビの名作。

     グロリア・デヘブン(Gloria DeHaven)が自身の母を演じて歌っている。

     この映画の後、1957年にコニー・フランシスが歌って大ヒットしたことでも有名。

     1958年のアルバムのリマスター版↓


    Who’s Sorry Now

    「あなたに愛されたいのに」( “I Wanna Be Loved by You” )

     ヘレン・ケインの「ブブッピドゥー」(”Boop-boop-a-doop”)で有名になった。

     「雨に唄えば」に出演する前のデビー・レイノルズが演じている。(歌はヘレン・ケイン本人)

    「さよならウーロン」(”So Long Oolong”)

     日本の歌(Japanese song)ということで「さよならウーロン」(”So Long Oolong”)という楽曲が出て来る。

     長崎のミントイという日本娘がウーロンという男と別れるという、日本人は混乱させられる歌。

    思うところ

     映画「土曜は貴方に」は、バート・カルマ―とハリー・ルビーの名曲が揃っていて、フレッド・アステアとヴェラ・エレンのダンスも見どころが多くて、よくできたミュージカル映画である。

     しかし構造に問題があるということもできる。

     フレッド・アステアが主役のミュージカル映画では、フレッド・アステアのダンスがクライマックスになる。

     ところが映画「土曜は貴方に」は作曲家と作詞家のコンビの話であって、そのコンビが作る楽曲がクライマックスになっている。

     フレッド・アステアの演ずる人物が、映画が始まって間もなく踊ることができない体になるということも、フレッド・アステアのミュージカル映画としては異様。(その後に踊ることができるようになるが)

     フレッド・アステアはそれまでフレッド・アステアのために作られた役を演ずることが多かったが、この映画ではバート・カルマ―というフレッド・アステアより少し年上の人物を演じている。

     映画「ワーズ・アンド・ミュージック」(1948年)でミッキー・ルーニーがロレンツ・ハートを演じたようなものであろうか。

     バート・カルマ―はこの映画の前、1947年に亡くなっている。

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