新海誠監督の映画「君の名は。」は2016年に公開されて、記録的な興行成績を上げた。

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8月26日、いわば夏の終わりに公開されたのであるが、評判が良くて、記録的な数字を伸ばしていって、ついには「千と千尋の神隠し」に次ぐ邦画歴代2位になった。
「君の名は。」はそれだけ多くの人に評価されたわけである。
しかし反対に低く評価する人も多かった。
「君の名は。」は何故に多くの人に高く評価されると同時に、多くの人に低く評価されたのか?
新海誠監督はその時に低く評価されたことから、次の映画「天気の子」を生み出したと語っている。
家で食事をしているとテレビでいわゆる有名人が映画に意見していたり(なんだかディスられていた)、はたまた道を歩いている時でさえも映画の名前が聞こえてきたりした(やっぱりディスられていた)。SNSには膨大なコメントがあふれていて、もちろん楽しんでくれた方も多かったのだろうけれど、激烈に怒ってらっしゃる方もずいぶん目撃した。僕としては、その人たちを怒らせてしまったものの正体はなんだろうと考え続けた半年間だった。そしてその半年間が、『天気の子』の企画書を書いていた期間でもあったのだ。
「小説 天気の子」、角川文庫、令和元年、205頁

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「君の名は。」はどうして多くの人に低く評価されたのか、という問題は、その次の映画「天気の子」と関わっているということでも重要である。
概観
私は当時「君の名は。」に対して批判的であった。
「君の名は。」が売れていることは理解できたが、私としては批判的であった。
そして批判的な人が多くいたのは、私と同じようなところを問題としているのだと思っていた。
しかし離れてみると、他の人が何故に「君の名は。」に対してあれほど批判していたのか、不思議に思うようになった。
たとえばタイプ・あ~る氏が2017年1月にそのことについて書いた記事がある。
この記事では以下の人々が「君の名は。」に対して低く評価する言葉を取り上げている。
・是枝裕和(映画監督)
・江川達也(漫画家)
・矢田部吉彦(東京国際映画祭ディレクター)
・富野由悠季(アニメーション監督)
・石田衣良(小説家)
・高橋秀樹(放送作家/日本放送作家協会・常務理事)
・江口寿史(漫画家)
・入江奈々(映画ライター)
・井筒和幸(映画監督)
・堀田延(放送作家)
たしかにこれだけの人が「君の名は。」に対して否定的に語っていたというのは、異様でもある。
私の場合
まず私が「君の名は。」に対して批判的である理由について語っておく。
私の「君の名は。」に対する不満はストーリーにある。
揚げ足取りをしたいわけではないのに、ストーリーの粗が気になって楽しめない。
重要なところでストーリーの粗が目立つ。
思うに、新海誠監督の作品には内的な主題があって、それを外的な形にしているのであるが、その外的な形に、気になるところが多いのである。
新海誠監督の以前の作品との関係
新海誠監督の作家性は、「君の名は。」以前には「君の名は。」以後と違うように考えられていた。

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特に「秒速5センチメートル」によって印象づけられていた。
・主人公の男性の、ぼそぼそとした暗く湿っぽい詩的な独白によっておおわれている。
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・愛する人と結局結ばれない。
それに対して「君の名は。」は大きく変わっている。
・全体的に明るく楽しい。
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・愛する人と結ばれる。
「君の名は。」以前の新海誠監督は、限られた層に受けるが、その外には受けないと思われていた。
「君の名は。」はその外に届いた。
しかし「君の名は。」以前の「秒速5センチメートル」などを高く評価していた人で、「君の名は。」を低く評価した人がいたようである。
たとえば宮台真司氏等は、「君の名は。」以前の「秒速5センチメートル」などを高く評価していたが、「君の名は。」は大衆に合わせてそれまでの作品のいいところをなくしたものとして、低く評価していた。
ちなみに私は、「秒速5センチメートル」でも「君の名は。」でも主題はどちらでもよく、ストーリーに問題があると思っていた。
「シン・ゴジラ」との関係
2016年には、「君の名は。」が公開される前に、庵野秀明監督の映画「シン・ゴジラ」の興行成績がよかった。
ところがその後に「君の名は。」が記録的な成績を出してしまった。
そこで「シン・ゴジラ」に入り込んで人が「君の名は。」に対して厳しく評価したということがあったのではないか。
堀田延氏などはそうでなかったか。
宮崎駿監督との関係
「君の名は。」が公開される前、日本のアニメ映画で最も売れていたのは宮崎駿監督の作品であった。
「君の名は。」は、その宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」以外の作品の興行成績を抜いた。
宮崎駿監督には多くのファンがいる。その中で、「君の名は。」に対して厳しく評価した人もいたかもしれない。
「この世界の片隅に」
2016年は、「この世界の片隅に」の劇場版が公開された年でもあった。

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「この世界の片隅に」の劇場版はクラウドファンディングによるもので、関わった人の思い入れは一層強かったと思われる。
そこで東宝による「君の名は。」に対抗して、クラウドファンディングによる「この世界の片隅に」を応援するということもあったと思われる。

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