【映画】「お嫁においで」(1966年) 「若大将」シリーズに近い映画

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映画
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 1966年11月20日に公開された映画「お嫁においで」は、加山雄三が「若大将」シリーズの間に出演した映画である。

 私は「若大将」シリーズに関心があってこの映画を観たのであるが、色々と「若大将」シリーズと似ているところがある。違うところもある。(敬称略)

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楽曲

 映画「お嫁においで」は、弾厚作(加山雄三)作曲の「お嫁においで」という楽曲(1966年6月15日発売)をもとにして作られたものである。

 パンフレットには「加山雄三のヒット曲のなかからはじめて映画化された」とある。

 「お嫁においで」という楽曲は、加山雄三の楽曲の中でも特に有名なものである。

「若大将」シリーズとの関係

 映画「お嫁においで」が公開されたのは、「若大将」シリーズでは、「アルプスの若大将」(1966年5月28日公開)、「歌う若大将」(1966年9月10日公開)と「レッツゴー!若大将」(1967年1月1日公開)の間である。

 「若大将」シリーズが盛り上がっている時に、その勢いによって作られた映画と思われる。

 「若大将」シリーズと同じように、加山雄三演ずる人物の恋愛が作品の中心となっている。

 「お嫁においで」では、加山雄三は社会人を演じている。「若大将」シリーズで、加山雄三演ずる田沼雄一が社会人になるのは「フレッシュマン若大将」(1969年1月1日公開)からである。

 「若大将」シリーズで主人公の父役の有島一郎が「お嫁においで」ではホテルの支配人、主人公の祖母役の飯田蝶子がそのホテルに来る担ぎ屋のおばさんを演じていて、二人が言い合う場面があるが、「若大将」シリーズに似た感じがある。

 全体的にコミカルな感じは「若大将」シリーズに似ている。

 ただし「若大将」シリーズと違う感じのところもある。私はそのことが気になった。

あらすじ

Paul BrennanによるPixabayからの画像

 主人公はホテルのレストランのウェイトレス露木昌子(沢井桂子)。

 露木昌子(沢井桂子)は、造船所の設計技師須山保(加山雄三)と出会う。須山保は、造船所の会長の孫、社長の子である。須山保は露木昌子に惚れ込む。それに対して、保の父(笠間雪雄)、母(村田知榮子)は、保が釣り合った相手と結婚すべきだと考えていて、露木昌子は保と釣り合わないと言って反対する。妹(内藤洋子)は保を助けようとする。祖父(笠智衆)もはじめは釣り合わないと言って反対していたが、保を助けようとする。

 露木昌子(沢井桂子)は同時に、病気の友達(田村亮)の兄(黒沢年男)と親しくなる。

 主人公は、金持ち(加山雄三)に思いを寄せられると同時に、粗野なタクシー運転手(黒沢年男)に思いを寄せられて、どちらを選ぶか、という話になる。

 主人公自身は貧しい庶民であって、金持ちに対して批判的な考えを持っていた。

 ところが主人公は、須山保(加山雄三)と付き合っているうちに、金持ちの幸福をも知る。(48分あたり、ヨットで加山雄三が歌を歌い、主人公はそれを聞く、二人が水着姿で浜辺で抱き合うイメージ)

 しかし結局露木昌子(沢井桂子)は、須山保(加山雄三)に対して、シンデレラになりたくないからと断って、野呂高生(黒沢年男)を選ぶ。

主人公

 映画「お嫁においで」は、加山雄三の楽曲をタイトルにした映画であって、劇中で加山雄三がその楽曲を歌っている。クレジット順では第一が加山雄三である。加山雄三の演ずる須山保が主人公であるように見える。

 ところが実際には、この映画の主人公は露木昌子(沢井桂子)である。この映画は、露木昌子(沢井桂子)から始まる。露木昌子(沢井桂子)の気持ちが、映画の中心になっている。

 これは奇妙なことではないか?

 「若大将」シリーズの勢いによって作られたと思われる映画で、何故に加山雄三を主人公にしないのか?

パンフレット

 「お嫁においで」のパンフレットを見ると、次のように書いてあった。

いままでの加山の役はほとんどが結ばれなくともハッピーエンドで終っているが、この作品では恋人の沢井を黒沢に奪われ、ヨットで失恋の旅に出るというもの。
 これも「加山を結婚させたらファンにしかられるから」という配慮からなったもので、「君といつまでも」「夜空の星」などで爆発的人気を呼んでいるだけにファンを大切にというわけ。

東宝「お嫁においで」パンフレット

 加山雄三の演ずる人物が失恋することについて、「加山を結婚させたらファンにしかられるから」という配慮から、と説明しているのである。

 我らの問題は、何故に加山雄三の演ずる人物が失恋するのか、ということではなくて、何故に加山雄三の演ずる人物が主人公でないのか、ということであった。その説明では答えにならない。

 それはそれとして、「加山を結婚させたらファンにしかられるから」という配慮から失恋させることにした、ということもよくわからない。

 「お嫁においで」というタイトルであるから、最後に失恋しないかぎり、結婚せざるをえない、ということであろうか? そういうことで「ファンにしかられる」のであろうか?

思想

 映画「お嫁においで」は、露木昌子(沢井桂子)の気持ちを中心としている。露木昌子(沢井桂子)の思想を中心としている。

 露木昌子(沢井桂子)は、自身貧しい庶民として、金持ちに対して批判的である。貧富の差について「世の中間違えている」と語っている。(38分)主人公の同僚は「革命が必要」と言っている。(31分)ただし主人公も同僚も革命を実際に企てているのではない。

 露木昌子(沢井桂子)は須山保(加山雄三)と付き合って金持ちの幸福を知る。須山保(加山雄三)も、「職業に貴賎なし」と言って主人公にほれ込む人である。

 しかし結局、露木昌子(沢井桂子)はシンデレラになりたくないからと、結婚を断った。

 映画「お嫁においで」においては、金持ちと庶民とが分けられている。主人公の勤めるホテルは、庶民が従業員として金持ちと出会う場所である。

 加山雄三の演ずる人物は、金持ちの側の人である。若大将より金持ちであることが強調されているが、豊かな家に生まれたこと、船を造っていることなど、若大将と同じように加山雄三自身に近いと思われるキャラクターである。

 「お嫁においで」は、その加山雄三の演ずる人物に対して、それと異なる主人公たちの貧しい庶民の生活を中心として、加山雄三の演ずる人物と結ばれることを選ばない、という作品である。

 いわば「若大将」シリーズと対立する思想を持っているということができるのではないか?

 パンフレットに「従来の”若大将”ものとは違った、題名は曲名そのままでも内容的には脚本を特に松山善三氏に依頼、その意欲がうかがわれる」とある。

 特に松山善三によって、映画「お嫁においで」に「若大将」シリーズと違う思想が持ち込まれたようである。

その他のこと

本多猪四郎監督

 映画「お嫁においで」の監督は本多猪四郎である。怪獣映画の間にこの映画を監督している。(「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」と「キングコングの逆襲」の間)

 パンフレットには「加山以上にうれしがっているのが、本多猪四郎監督」とある。

なにしろ本多監督といえば怪獣ものの専門監督、恋愛ものを手がけるのは、「真紅の男」いらい五年振りというからよろこびようもわかる。「若い連中に囲まれて、仕事をするのは久しぶりだが、僕も若い気分になって楽しい作品を作りたい。加山君の魅力をじゅうぶん出しますよ」と張り切っている。

東宝「お嫁においで」パンフレット

 「真紅の男」とは、1961年9月12日に公開された映画である。

オーディオコメンタリー

 「若大将」シリーズの「海の若大将」のDVDのオーディオコメンタリーで沢井桂子が「お嫁においで」について語っているところがある。

 最後に露木昌子(沢井桂子)が須山保(加山雄三)をふるところについて、みんなにもったいないと言われたと言っている。

「兄貴の恋人」

 映画「お嫁においで」の二年後に作られた映画「兄貴の恋人」は、2010年に加山雄三デビュー50周年記念でDVDが発売された作品であって、同じく加山雄三主演で、設定に似たところがあって、それぞれの違うところを考えると、それぞれの作品がよりよくわかる。

 「兄貴の恋人」について↓

小津安二郎

 映画「お嫁においで」の24分あたりで、ヒロインたちが家から土手にいる笠智衆を見るところがある。そこで私は小津安二郎作品を思い出した。

 「東京物語」で、東山千栄子演ずる祖母が孫と土手で遊ぶのを家から見るところ。(29分)

 「お早よう」で、住宅地から土手を見るところ。(2分)

 手前に住宅地、奥に土手があるという構図が似ているのである。

 笠智衆は小津安二郎作品に多く出ている俳優である。それゆえに「お嫁においで」に出演している笠智衆を見て、小津安二郎作品が思い出される。「東京物語」では、笠智衆が土手を家から見る役になっていた。

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