旧統一教会「献金の返還を求めない」念書についての最高裁判決に対する疑問

広告
最高裁判所 宗教問題
広告

(※当サイトはアフィリエイト広告を利用しています)

 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の元信者の献金について遺族が教団に損害賠償を求めた裁判で、2024年7月11日、最高裁判所は元信者の「献金の返還を求めない」という念書は無効だとする判断を示して、高等裁判所に差し戻した。

 新聞各紙はその記事を一面に掲載、テレビ各局もそのことを大きく報じた。しかしそのように多くの報道機関が報道しているにもかかわらず、裁判でどういうことが争われていたか、よくわからない。一審、二審では旧統一教会側が勝った。旧統一教会側が正しいと一審、二審は判断したのである。どうしてそう考えたのか? 最高裁はどう考えてそれを覆したのか?

 マスメディアの報道では、旧統一教会の違法な勧誘による献金がなされたにもかかわらず、献金の返還請求、損害賠償請求を行わないという念書を旧統一教会に書かされていたことによって、返還請求、損害賠償請求ができなくなっていたようである。一審、二審はその念書を有効とした。それに対して最高裁はその念書を無効とした、ということのようである。

 そういうことであったのか? 旧統一教会が悪いにもかかわらず、一審、二審は旧統一教会側を勝たせたのか? しかし一審、二審によって認定された事実は、報道されていることと異なるようである。むしろその認定をもとにして最高裁が出した判決の方が理解に苦しむものになっている。

 一審、二審では旧統一教会側が勝っていた。しかし二審の判決の翌日に起こった安倍元首相殺害事件以降、負けた側の山口広弁護士等が統一教会の専門家のようなかたちでマスメディアに取り上げられて一方的に統一教会の印象を悪くしてきた。その中で最高裁は高等裁判所の判決を覆して、山口広弁護士等の側を勝たせたのであった。こういう流れに問題はないか?

広告

最高裁判決

 ここで7月11日の最高裁判所の判決をよく読んでみよう。―「令和4年(受)第2281号 損害賠償請求事件 令和6年7月11日 第一小法廷判決

 判決を伝えるだけのマスメディアの報道と違って、判決はそれまでの裁判がどのような事実を認定したか、その事実認定をもとにしてどのような判断をしたか、を明らかにしている。―2において「原審の確定した事実関係の概要」を示し、3において原審の判断を示し、4において「原審の上記判断はいずれも是認することができない」として最高裁がその理由を示している。以下、重要と思われるところを引用する。

三女の存在

亡Aは、被上告人家庭連合の信者であった三女の紹介により、平成16年以降、松本信徒会(長野県松本市所在の被上告人家庭連合の松本教会に通う信者らによって構成される組織)が運営する施設に通い始め、遅くとも平成17年以降、松本教会等において、被上告人家庭連合の教理を学ぶようになった。

令和4年(受)第2281号 損害賠償請求事件 令和6年7月11日 第一小法廷判決

 家庭連合の信者であった三女の紹介によって亡Aは家庭連合の教えを受けるようになったというのである。マスメディアはこの三女のことを報道していない。

 マスメディアは亡Aの献金について旧統一教会に対して損害賠償を求める長女のことばかり報道している。旧統一教会によって損害を被った亡Aのために長女が旧統一教会に対して損害請求を求めているという長女の主張ばかり報道している。

 しかし三女も長女と同じく亡Aの娘である。その三女が長女とともに訴えていないということは、違う考えを持っているということではないか? そのことを無視していいのか? 亡Aが家庭連合の教えを受けるようになった時には、亡Aの考えは家庭連合の信者であった三女と近かったにちがいない。亡Aの考えを知るには三女のことを知ることが重要ではないか?

念書を作る経緯

(3)イ 被上告人家庭連合の信者であったCは、平成27年11月頃、それまでにCが被上告人家庭連合にした献金につき、将来、Cの娘婿が被上告人家庭連合に返金を求めることを懸念し、松本信徒会の婦人部の部長であった被上告人Y1に相談したところ、公証人役場において上記返金の請求を阻止するための書類を作成する方法があることを伝えられた。亡Aは、Cから上記書類を作成する話を聞き、自身も同様の書類を作成することとした。
 ウ 亡Aは、平成27年11月、Cと共に、被上告人家庭連合の信者の運転する自動車で公証人役場へ行き、公証人の面前において、被上告人家庭連合の信者がその文案を作成した「念書」と題する書面に署名押印し、当該書面(以下「本件念書」という。)に公証人の認証を受けた。本件念書には、亡Aがそれまでにした献金につき、被上告人家庭連合に対し、欺罔、強迫又は公序良俗違反を理由とする不当利得返還請求や不法行為に基づく損害賠償請求等を、裁判上及び裁判外において、一切行わないことを約束する旨の記載があった。
 その後、亡Aは、松本教会に行き、被上告人家庭連合に対して本件念書を提出し、これにより、亡Aと被上告人家庭連合との間に本件念書による合意(以下「本件不起訴合意」という。)が成立した。その際、被上告人家庭連合の信者により、亡Aが被上告人Y1からの質問に答えて上記献金につき返金手続をする意思はないことを肯定する様子がビデオ撮影された。

令和4年(受)第2281号 損害賠償請求事件 令和6年7月11日 第一小法廷判決

 これによると、旧統一教会が念書を作らせたのではなく、亡Aが自ら念書を作成したという事実関係が確定されている。―亡Aは、

・「Cから上記書類を作成する話を聞き、自身も同様の書類を作成することとした」のであり

・「Cと共に、被上告人家庭連合の信者の運転する自動車で公証人役場へ行き、公証人の面前において、被上告人家庭連合の信者がその文案を作成した「念書」と題する書面に署名押印し、当該書面(以下「本件念書」という。)に公証人の認証を受けた」のであり

・「その後、亡Aは、松本教会に行き、被上告人家庭連合に対して本件念書を提出し、これにより、亡Aと被上告人家庭連合との間に本件念書による合意(以下「本件不起訴合意」という。)が成立した」のである。

 旧統一教会が念書を作らせたのではなく、自ら同じく信者であるCの話を聞いて、Cとともに作ったのである。

最高裁の主張

 ところが最高裁は「本件不起訴合意は、亡Aがこれを締結するかどうかを合理的に判断することが困難な状態にあることを利用して、亡Aに対して一方的に大きな不利益を与えるものであったと認められる。」として、「したがって、本件不起訴合意は、公序良俗に反し、無効である。」と結論している。そのことを次のように説明しようとしている。

高齢と認知症

これを本件についてみると、亡Aは、本件不起訴合意を締結した当時、86歳という高齢の単身者であり、その約半年後にはアルツハイマー型認知症により成年後見相当と診断されたものである。

令和4年(受)第2281号 損害賠償請求事件 令和6年7月11日 第一小法廷判決

教団との関係

そして、亡Aは、被上告人家庭連合の教理を学び始めてから上記の締結までの約10年間、その教理に従い、1億円を超える多額の献金を行い、多数回にわたり渡韓して先祖を解怨する儀式等に参加するなど、被上告人家庭連合の心理的な影響の下にあった。そうすると、亡Aは、被上告人家庭連合からの提案の利害得失を踏まえてその当否を冷静に判断することが困難な状態にあったというべきである。

令和4年(受)第2281号 損害賠償請求事件 令和6年7月11日 第一小法廷判決

信者の関与

また、被上告人家庭連合の信者らは、亡Aが上告人に献金の事実を明かしたことを知った後に、本件念書の文案を作成し、公証人役場におけるその認証の手続にも同行し、その後、亡Aの意思を確認する様子をビデオ撮影するなどしており、本件不起訴合意は、終始、被上告人家庭連合の信者らの主導の下に締結されたものである。

令和4年(受)第2281号 損害賠償請求事件 令和6年7月11日 第一小法廷判決

合意の内容

さらに、本件不起訴合意の内容は、亡Aがした1億円を超える多額の献金について、何らの見返りもなく無条件に不法行為に基づく損害賠償請求等に係る訴えを一切提起しないというものであり、本件勧誘行為による損害の回復の手段を封ずる結果を招くものであって、上記献金の額に照らせば、亡Aが被る不利益の程度は大きい。

令和4年(受)第2281号 損害賠償請求事件 令和6年7月11日 第一小法廷判決

疑問

 最高裁判所の判決がこのようなものでいいのか? と思ってしまう。

高齢と認知症

 高齢であるからといって「合理的に判断することが困難な状態」であったとは言えない。その約半年後にはアルツハイマー型認知症により成年後見相当と診断されたからといって、その半年前に「合理的に判断することが困難な状態」であったとは言えない。

 その後に言われているように、亡Aはアルツハイマー型認知症と診断される前の約10年間献金をしていた。その献金はアルツハイマー型認知症によることと言うことはできない。献金の返還を求めないという念書は約10年間献金した考えにつながることと思われる。その約半年後にアルツハイマー型認知症により成年後見相当と診断されたことをもってその半年前の念書の効力を否定することはできないのではないか?

教団との関係

 最高裁は、亡Aが念書以前の「約10年間、その教理に従い、1億円を超える多額の献金を行い、多数回にわたり渡韓して先祖を解怨する儀式等に参加するなど、被上告人家庭連合の心理的な影響の下にあった」として「そうすると、亡Aは、被上告人家庭連合からの提案の利害得失を踏まえてその当否を冷静に判断することが困難な状態にあったというべきである」と主張しているが、何を言っているのか?

 「約10年間、その教理に従い、1億円を超える多額の献金を行い、多数回にわたり渡韓して先祖を解怨する儀式等に参加するなど」の行為は「家庭連合の心理的な影響の下にあった」からなされたのであろうが、自発的に宗教活動をしていたことを示すことではないか? そのことがどうして「利害得失を踏まえてその当否を冷静に判断することが困難な状態にあった」ということになるのか? 

 最高裁は「心理的な影響の下にあった」という言葉によって「マインド・コントロール」の存在を事実上認めていると紀藤正樹弁護士は語っている。

 たしかに紀藤弁護士等のマインドコントロール論は、約10年間宗教活動をしてきた人物の自発性を否定するという理解しがたい結論を導き出す理論である。最高裁がそういう理解しがたい主張をしていることは、紀藤弁護士等の「心理的な影響の下」にあって「その当否を冷静に判断することが困難な状態にあった」からと考えなくては理解しがたいことではある。しかし最高裁がそういうことでいいのか?

 マスメディアの報道では、その部分が省略されていることが多いようである。さすがに理解ができなかったのではないかと思われる。マスメディアが省略するような理論を主張する判決も気になるが、その理解できないところを省略してすますマスメディアの報道も気になる。

信者の関与

 原審の確定したところによると、亡Aは「Cから上記書類を作成する話を聞き、自身も同様の書類を作成することとした」「松本教会に行き、被上告人家庭連合に対して本件念書を提出し、これにより、亡Aと被上告人家庭連合との間に本件念書による合意(以下「本件不起訴合意」という。)が成立した」。これをどうして「本件不起訴合意は、終始、被上告人家庭連合の信者らの主導の下に締結されたものである」ということができるのか?

合意の内容

 合意の内容に関して最高裁は「亡Aが被る不利益の程度は大きい」というが、不利益と考えるかどうかはその人によることではないか?

 そもそも本件の念書は「Cの娘婿が被上告人家庭連合に返金を求めることを懸念し」たことがきっかけになったとされている。Cは娘婿が家庭連合に返金を求めることを不利益と考え、そのことを阻止することを利益と考えたのではないか? そのことを聞いて「同様の書類を作成することとした」亡Aも同様に、他の者が家庭連合に返金を求めることを不利益と考え、そのことを阻止することを利益と考えたのではないか? 原審の確定した事実関係によると、教団ではなく信者の間で、家族が教団に献金の返金を求めることを恐れる考えがあったようである。亡Aはそのことを避けるために念書を作ったようである。

 亡Aの念書を作った考えがそういうものであったとすると、亡Aの長女が認知症と診断された亡Aの成年後見人として、亡Aの念書は無効であるとして、亡Aの献金に対する損害賠償を求めていることは、亡Aの意思に反するのではないか?

最高裁判決の問題

 最高裁の今度の判決は、マスメディアの報道と合うものである。マスメディアはこれまで述べてきた問題を取り上げず、これまでの判決で念書が有効とされたことによって高額な献金による被害が救済されなかったと報じてきた。最高裁が念書は無効としたことは、その問題を解決することのようである。

 しかし最高裁はその判決に原審の確定した事実関係、それをもとにした判断を取り上げて批判するかたちで、自分の考えを出さなくてはならない。その判決を読むと、原審の確定した事実関係と、最高裁の主張とがかみ合っていないように見える。

 世界平和統一家庭連合は最高裁が事実審の事実認定に反することを言っていることを問題としている。

最高裁(法律審)、は事実審(1審・2審)の事実認定に拘束されるにもかかわらず、今回の最高裁判決は、事実審の事実認定(念書を書いたのは信者Aであり、内容も信者Aの意思の通り)に反して、念書の作成や念書の内容は「家庭連合からの提案」であり、「不起訴合意は、終始、被上告人家庭連合の信者らの主導の下に締結された」などと判示しています。これは明らかに民事訴訟法に違反した認定であると言わざるを得ません。

7月11日付け最高裁判決について

 もう一つ。最高裁は、安倍元首相殺害事件以後に作られた「法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律3条1号、2号」を参照して、原審はその「判断枠組みを採っていない」ゆえに「上記の判断枠組みに基づく審理を尽くさなかった違法があるというべきである」と言っている。安倍元首相殺害事件以前のことについての安倍元首相殺害事件以前の判決を安倍元首相殺害事件以後の法律を基準として違法としていいのか?

判決の報道

 7月12日、新聞各紙は最高裁の判決を一面に載せた。

 朝日新聞は一面に「「賠償求めぬ」念書無効 献金勧誘、違法性に基準 最高裁初判断 旧統一教会」という記事を載せた。そして29面にも「遺族「長い年月だった」 旧統一教会の念書「無効」判決 「女性に一方的に不利益」と判断」という記事を載せている。

 毎日新聞は一面に「「賠償求めぬ」念書、無効 旧統一教会の勝訴、破棄 最高裁初判断」という記事を載せている。

 読売新聞は一面に「旧統一教会 「返金提訴せず」念書無効 最高裁 教団献金初判断」という記事、そして社説「[社説]旧統一教会判決 献金勧誘の悪質性を断じた」でその判決を称賛している。

 産経新聞は一面記事「旧統一教会に「返金求めない」の元信者の念書は「無効」 最高裁が初判断」のほか、社説「<主張>旧統一教会上告審 念書無効の判断は当然だ」で最高裁の判断は当然だと言っている。しかし次のようにその根拠は曖昧である。

女性は念書作成の半年後に認知症と診断された。そのような状態でこんな念書など作成可能だったか。作成時の様子は撮影され、審理で教団側から証拠提出されたが、それ自体が周到すぎないか。そもそも洗脳が疑われた女性の署名押印が有効なのか―それが一般感覚だろう。

産経新聞 <主張>旧統一教会上告審 念書無効の判断は当然だ

 日経新聞は「旧統一教会「献金の返還求めず」念書は無効 最高裁初判断」という記事。7月14日には社説「[社説]旧統一教会の献金被害を救済する契機に」。社説では下のように「市民感覚に沿った」と言っていて、産経の「一般感覚」と似ている。

献金が巨額であることや、後に認知症と診断されたことなどを踏まえれば、市民感覚に沿った妥当な結論といえよう。同じような念書を交わしたケースはほかにも多いとみられる。一人でも多くの被害回復につなげたい。

日経新聞 [社説]旧統一教会の献金被害を救済する契機に

 東京新聞は「旧統一教会信者の「賠償請求しない」念書は無効 最高裁、教団勝訴の二審判決を破棄 「公序良俗に反する」」という記事。そして「<社説>旧統一教会判決 献金被害の回復を早く」という社説。次のように「全面的に評価できる判決だ」と言っている。

 多額献金や物品購入の被害の声が絶えないことを踏まえれば、全面的に評価できる判決だ。「念書」を書かせる事例も相当数に上るとみられるが、それが返金を求める上で壁にもなっていた。今回の判決を機に献金被害の早期解決が進むことを望む。

東京新聞 <社説>旧統一教会判決 献金被害の回復を早く

 このように各紙がそろって最高裁の判決を称賛している。

 統一教会は政治的に右寄りと言われているが、右寄りと言われる読売新聞も産経新聞もむしろ積極的に社説で判決を称賛している。どの新聞も同じようなことを書いている。一審、二審でどのような事実が認められたのか? 何ゆえに旧統一教会側が勝ったのか? そういうことは伝えていない。旧統一教会の違法な勧誘による献金がなされたにもかかわらず、献金の返還請求、損害賠償請求を行わないという念書を旧統一教会に書かされていたことによって、返還請求、損害賠償請求ができなくなっていたが、今度の最高裁の判決で念書は無効とされて被害者の救済の道が開かれた、ということばかり言われている。

 念書は亡Aの意思によるものとすることを覆すことは、亡Aの意思を否定することになるのではないか? そのことは問題とされない。新聞社は事実を追及するものだと思うが、何故にこのことに関しては事実を追及しないのか?

 NHKの「旧統一教会 “教団に返金求めない”念書は無効 最高裁が初判断」という記事も旧統一教会の主張、一審、二審で確定された事実を問題とせずに最高裁の判決を伝えている。

 ANN報道ステーションも長女側の主張ばかり。

ANNnewsCH 「やっと真っ当な判決」高額献金の勧誘「異例のもの」最高裁 旧統一教会“念書”無効【報道ステーション】(2024年7月11日)

 最後に菅野志桜里氏の「家族の生活など個別事情を含めて去年成立した被害者救済法を引用して丁寧に総合評価を下し判例としたことが大きい」というコメントが紹介されている。「去年成立した被害者救済法を引用し」たことの意義を強調している。

 しかし最高裁は「個別事情」を丁寧に考えたのであろうか? 一審、二審で行われた「個別事情」の事実認定から最高裁は遠ざかっているが、それで「個別事情」を丁寧に考えたことになるのか?

 「本件に限らず似たような事案でも同様に”念書無効”の判決が下される可能性が出てきた」というが、そもそも本件はどういう事案であるのか? 番組では念書を巡る裁判を行っている他の人を取り上げているが、それぞれの事案はそれぞれ別に考えなくてはならないのではないか?

 TBSnews23も最高裁の判決をなぞるだけで、最後に世界平和統一家庭連合の主張を少しだけ。

TBS NEWS DIG Powered by JNN 被害者救済法が判決の“支え”に…最高裁が旧統一教会・高額献金裁判のやり直し命じる 争点の「念書」は一転無効の初判断【news23】

安倍元首相殺害事件との関係

 この裁判は安倍元首相殺害事件と関係がある。そのことで気になることがある。

 まず最高裁の判決が出た7月11日に法記者クラブで開かれた記者会見で山口広弁護士が語ったことを取り上げよう。鈴木エイト氏は次のようにポストしている。

 気になるところ↓

山口広弁護士 「私自身は地裁・高裁の酷い判決、訴訟指揮を目の当たりにして、本当に絶望して『もう弁護士辞めようかな』と。『今の裁判所じゃ人権救済もあったものじゃないな』とつくづく思ってがっかりしてました。ご本人(中野容子さん)にも『もう上告、諦めようか』と正直言ってそういうことまで私は言いましたし、思ってました。そしてあの事件(安倍元首相銃撃事件)です。本当に翌日なんです。やっぱりこんなことまで起こる、この社会現象は、社会的な被害は『一緒に闘いましょうか、最後の最後まで』ということでお話をして、上告受理申立てに至ったわけですが、『やって良かったな』と。ちょっと言葉は悪いが『地獄に仏』みたいな感じですね。よくぞここまで(判決を)変えてくれました。本当に心から………そう思います。上告して良かった、ご本人にあるいは相談者にですね。」

鈴木エイト氏のポスト 統一教会による悪質な念書と高額献金勧誘を巡る訴訟、最高裁判決後の会見での上告人(原告)代理人弁護士の発言

 高裁の判決は2022年7月7日、安倍元首相殺害事件の1日前であった。その時に山口弁護士は上告をやめようかと言っていたが、安倍元首相殺害事件が起こって、闘うことにした、そして2024年7月11日の最高裁の判決に至ったというのである。

 安倍元首相殺害事件を受けて山口弁護士は統一教会による被害という「社会現象」「社会的な被害」と闘わなくてはならないと考えて上告したという。

 多田文明氏のYahooニュースの記事「「このような献金の様態は異例のものと評し得る」旧統一教会の被害実態をしっかりとみての最高裁判決に納得」では次のように記されている。

「中野さんご本人にも、もう上告を諦めようかとまでいいました。しかし、あの(安倍元首相の銃撃)事件が、高裁判決の翌日に起きました。(高額献金の被害により)こんなことまで引き起こしてしまう事態を目にして、やはり一緒に戦いましょうと思い直して、上告受理申し立てをしました」と、本当に上告してよかったとの思いを吐露します。

「このような献金の様態は異例のものと評し得る」旧統一教会の被害実態をしっかりとみての最高裁判決に納得

 この記事では山口弁護士の言葉は「こんなことまで引き起こしてしまう事態を目にして、やはり一緒に戦いましょうと思い直して、上告受理申し立てをしました」と記されている。

 問題は安倍元首相殺害事件以後に起こったことにある。安倍元首相殺害事件直後、山口弁護士等は記者会見を開いて、統一教会の印象を極めて悪いものとした。その後、テレビは山口弁護士やその仲間の紀藤弁護士、鈴木エイト氏などばかりを統一教会の専門家のようなかたちで出演させて統一教会の印象を悪くした。

 今度の最高裁の判決が出される前には、マスメディアは山口弁護士側の論調ばかりになっていた。そういう状況で、山口弁護士の主張に合う判決が出された。

 このような流れで高等裁判所の判決が覆されていいのであろうか? それこそ「利害得失を踏まえてその当否を冷静に判断することが困難な状態」ではないか? 裁判は両方の主張を聞いた上でなされるものである。ところが安倍元首相殺害事件以後一方の主張だけが聞かれていた。

コメント

タイトルとURLをコピーしました