【考察】「いちご100%」の結末は読者の人気によって決まったのか?

広告
いちご100%
広告

(※当サイトはアフィリエイト広告を利用しています)

 漫画「いちご100%」の結末は読者の人気によってきまった、としばしば言われている。

 そして、だからいいとか、だからよくないとか言われている。

 しかし「いちご100%」の結末は読者の人気によって決まったのであろうか?

 そうではないと私は考える。


[まとめ買い] いちご100% カラー版(ジャンプコミックスDIGITAL)
広告

作者の言葉

 第一に手掛かりになるのは作者の言葉である。

 作者はジャンプコミックス19巻の巻末において次のように語っている。

第1巻第1話目を読めば、ラスト真中と
一緒になるのは東城に思えるんだろうなあ。
あれを描いた頃は中学生編までしか
ストーリー展開考えていなくて、
確かに自分も真中と東城で
ハッピーエンドを迎えるつもりでした。
だけど時間は流れて3人が高校生になって
どんどん事態が変わっていって。
週刊連載マンガはよく生ものだと譬えられるけど
ホントにそうで、それぞれがそれぞれに成長していき、
その結果ああいう結末になったんだと思います。

「いちご100%」19巻、176頁

いちご100% モノクロ版 19 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 これによると、作者は「真中と東城で/ハッピーエンドを迎えるつもり」であった。

 ところが実際には「真中と東城で/ハッピーエンドを迎える」ことはなかった。

 どうしてそうなったのか?

・「時間は流れて3人が高校生になって」―初めに考えられていた「中学生編」を超えたからだと作者はいう。

・「どんどん事態が変わっていって」「それぞれがそれぞれに成長していき」「その結果ああいう結末になったんだと思います」―これによると、登場人物の成長によって、初めに考えられていたのと違う結末になったようである。

 JC19巻のそでに作者は次のように書いている。

それぞれのキャラクター達が
希望を抱いて未来へと歩いていける結末を
選んで描いたつもりです。

「いちご100%」19巻、表紙

いちご100% モノクロ版 19 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 結末は作者が考えて選んだというのである。

 作者の言葉によると、結末が変わったのは、登場人物の成長によることであり、作者の選んだことであって、読者の人気によることではない。

作品

 作品そのものについて考えてみよう。


いちご100% コミック 全19巻 完結セット

 これから作品の内容に踏み込んでいく。

 各話については↓

はじめの話

 「いちご100%」の第1巻を読むと、作者が語るように「真中と東城で/ハッピーエンドを迎える」話として作られたように見える。


いちご100% モノクロ版 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 第1話で主人公の探し求める目標となった「いちごパンツの女の子」は、東城であった。

 真中はそのことがわからずに西野と付き合うことになったが、次第に東城と近づいて行った。

 その話は、二人が結ばれることによってかたがつくと思われる。

路線変更

 「いちご100%」は「真中と東城で/ハッピーエンドを迎える」話として始まったが、「真中と東城で/ハッピーエンドを迎える」話ではなくなった。

 どうして変わったのか? ということが問題である。

 読者の人気によってか?

 作者によってか?

 そのことを考えるためには、いつどこで変わったか? ということから考えなくてはならない。

「いちご100%」の時期区分

 いつどこで話が変わったのか?

 結末が確定したのは、真中が西野に2度目の告白をしたとき(JC17巻第145話)と思われる。


いちご100% モノクロ版 17 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 西野に2度目の告白をすることは、その後にその告白を覆して他の相手と結ばれるとすると、余計なこと、ない方がいいことである。

 作品の中でも、真中が西野に2度目の告白をして、結末が確定したことになっている。

 その告白は、文化祭のイベント「ラブ・サンクチュアリ」のことと関係がある。

「ラブ・サンクチュアリ」が話題として出てくるのは、JC16巻第139話からである。


いちご100% モノクロ版 16 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 第139話においてすでに結末は確定していたのではないか、と思われる。

 第139話で結末が確定していたとすると、その前のいつどこで話は変わったのか?

 「いちご100%」を時期によって区分して考えよう。

中学生編

 中学生時代は、作品のはじめから、中学卒業まで。(JC1~3巻)


いちご100% モノクロ版 3 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 ただし「中学生編」は途中から変わっている。

 もともと「中学生編」で「真中と東城で/ハッピーエンドを迎えるつもり」であったのに、そうではなくなっている。

 中学生の間に話は変わっているのである。

中間の第1期

 中学生の途中で話が変わってから、「ラブサンクチュアリ」で話が確定するまでを、3つの時期にわける。

 第1は、真中が桜海学園に潜入して西野との関係が再開するあたりまで。(~JC7巻)


いちご100% モノクロ版 7 (ジャンプコミックスDIGITAL)

中間の第2期

 真中と西野との関係が再開した時期。(~JC12巻)


いちご100% モノクロ版 12 (ジャンプコミックスDIGITAL)

中間の第3期

 進路が問題となってから、高3の合宿まで。(~JC16巻)


いちご100% モノクロ版 16 (ジャンプコミックスDIGITAL)

終盤

 高3の合宿から家に帰った後。(第138話、または第139話以降)

 すでに言ったように、「ラブ・サンクチュアリ」が話題になった時には、結末は確定していたと思われる。


[まとめ買い] いちご100% モノクロ版(ジャンプコミックスDIGITAL)

それぞれの時期と路線変更

 はじめの話から結末まで、どのように話が変わって行ったか、それぞれの時期について考えてみよう。

中学生編

 「いちご100%」は、はじめは主人公真中が東城という真の相手を見つける話であった。

 したがって東城と結ばれることによってかたがつく話であった。

中間の第1期<ハーレムの開始>

 中学生の途中で、はじめの話とは違う話になった。

 どういう話になったか?

 そのことを象徴するのが、JC4巻第34話の最後のページで、主人公真中が、北大路、西野、東城、三人の顔を思い浮かべて、「さつき、西野、東城・・・俺は一体誰とどうすればいいんだろう・・・」と独白しているところ。


いちご100% モノクロ版 4 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 主人公は複数の魅力的な女性に囲まれて、選ぶことができないという話になったのである。

 はじめの話では、真中と結ばれる相手であった東城は、変わった話では、西野、北大路と同等とされ、真中はその中の誰も選ぶことができないということになっている。

 この時期に北大路が持ち上げられていることは重要。

・大草に「決めちゃえよ北大路に」と言われる(JC3巻第23話)とか、


いちご100% モノクロ版 3 (ジャンプコミックスDIGITAL)

・高1の合宿で、北大路がヒロインをやるとか、主人公と北大路が近づいて、東城との間に沈黙があるとか(JC4巻第33話)、

・大草に北大路が似合うと言われて、シャーペンも北大路に倒れる(JC4巻第35話)とか。


いちご100% モノクロ版 4 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 一時的に、東城より西野より上に置かれているように見える。

 主人公が複数の魅力的な女性に囲まれて、選ぶことができないという話にするために、高校から出て来た北大路を、東城、西野と同等のものにしようとしたのではないかと思われる。

 その後に出て来る南戸も、北大路と同じように主人公の恋愛対象の選択肢の一つとして作られたと思われる。


いちご100% モノクロ版 5 (ジャンプコミックスDIGITAL)

中間の第2期<西野と関係再開>

 真中はJC5巻第39話で西野に別れを告げられた。

 その後、JC7巻第59話で再会してから、真中と西野はまた近づいていく。

 そこで西野は、主人公にとって、他の女性キャラクターより高い存在として描かれている。

・真中の「今の方が/つきあってた頃より/西野のこと/考えてる―」(JC7巻148頁)という独白。

・真中は北大路に迫られて「ちがうよ!/東城じゃな…」(JC7巻152頁)と答えている。


いちご100% モノクロ版 7 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 この時期には、他の女性キャラクターを踏み台にして西野が持ち上げられるという話が繰り返されている。

 具体的には次の通り。

映研より西野

 真中は、東城、北大路のいる映研を早く切り上げて、西野に会いに行っている。(JC8巻第65話)


いちご100% モノクロ版 8 (ジャンプコミックスDIGITAL)

高2の合宿

 合宿の肝試しで真中は、東城とでなく、西野と一緒になる。(JC8巻第70話)

 肝試しの前の夜に、東城は肝試しで真中に告白することをきめていた。

 それにもかかわらず、東城でなく、西野が真中と一緒になる「運命」が描かれている。


いちご100% モノクロ版 8 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 合宿の前に、真中と東城の二人が山小屋で一夜を明かすという話がある。(JC8巻第67~68話)

 こういう話は、二人が近づくきっかけとなりそうであるが、実際には、二人が近づきにくくなるきっかけとなっている。

高2の西野の誕生日

 真中は、9月16日に西野の誕生日を祝う約束をしていたが、西野に言われて15日に祝うことにした。15日には、東城との約束、北大路との約束があったが、それより西野を優先したのである。(JC9巻第78話)

 西野の誕生日を祝っていたカラオケ店で出火したときに、真中は、西野と二人きりになる。東城も北大路もいたのに、西野と二人きりになる。(JC9巻第79話)


いちご100% モノクロ版 9 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 その夜解散して、東城、北大路と別れた後に、真中は西野と二人きりになる。二人で夜の中学校に入る。(9巻第80話)そして…(JC10巻第81話)


いちご100% モノクロ版 10 (ジャンプコミックスDIGITAL)

高2の修学旅行

 まず修学旅行前の屋上で、東城と真中が二人きりで、関係が進みそうなところで、映研メンバーが入ってきてしまう。(JC10巻第85話)

 修学旅行で、東城が一人で迷っていたところを真中が見つける。そして清水の舞台で二人がキスをしようとしたところを、たまたま来ていた西野がみて、ショックを受ける。(JC10巻第87話)

 真中は、東城とキスをせずに、西野と話すために力を尽くして、結局ホテルの外で会った。(JC10巻第88話)そして次の日、二人はデートをした。(JC10巻第89話)


いちご100% モノクロ版 10 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 真中と東城の関係は進展せず、そのことによって真中と西野の関係が進展している。

高3のバレンタイン

 真中は、ちなみ、さつき、東城、唯からそれぞれもらう。(JC11巻第94話)

 家に帰ると、近くの公園のブランコに西野がいて、チョコレートをもらう。(JC11巻95話)

 そして二人きりで夜の公園でイチャイチャする。(JC11巻第96話)


いちご100% モノクロ版 11 (ジャンプコミックスDIGITAL)

まとめ

 「中間の第1期」に、主人公は複数の女性に囲まれて、選ぶことができないという話になった。

 「中間の第2期」には、西野が他の女性キャラクターを踏み台として持ち上げられる話が繰り返されている。

 両者の関係はどのように考えることができるか?

・「中間の第1期」に北大路が一時的に持ち上げられたことと同じように、「中間の第2期」には西野が一時的に持ち上げられたようにも見える。―選ぶことのできない魅力的な女性の一人として。

・複数の女性から選ぶことができないという話から、西野が最も良いという話に変わっているようにも見える。

 前者の場合は、この時期にはまだ結末は決まっていなかったことになる。

 後者の場合は、この時期にすでに結末が決まっていたことになる。

 どちらが正しいか、わからない。

中間の第3期<大学受験・合宿>

 私が問題とするのはこの時期である。

 この時期には、

・進路の問題がある。

・高3の合宿がある。

進路の問題

 この時期は、主人公真中が進路の問題に直面するところから始まっている。(JC11巻第92話)

・そこで、東城は真中に「同じ大学に/行きたい」と言う。(JC11巻第95話、118頁)

・西野は「高校卒業したら/パリに留学する/つもりなの」と言う。(同、127頁)


いちご100% モノクロ版 11 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 東城は真中と同じ目標を持ち、西野は違う目標を持つのである。

 真中もそのことを意識している。

・西野について「俺のもとから/去ろうとしてる/西野」といい、

・東城、北大路について「逆に/いつまでも/俺の近くに/いようと/してくれている/東城やさつき…」と独白している。(JC12巻第99話、21頁)

 真中が言うように、東城も北大路も真中の「近くに/いようと/してくれている」が、その中でも東城は真中と目標を共有している。

 しかしまた、真中は「結局三人に/差はつけられないん/だよな~」と、三人を同等とみなしてもいる。(同頁)


いちご100% モノクロ版 12 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 ここでも「結局三人に/差はつけられない」という話は続いている。

 しかし進路が問題となるこの時期において、西野は真中から離れ、東城は真中に近づく。

 「中間の第1期」には北大路が持ち上げられ、「中間の第2期」には西野が持ち上げられた。

 「中間の第3期」は、東城にとって有利な条件があった。

 ところが実際には、この時期に真中と東城の関係はそれほど進まない。

勉強会

 真中と東城は中学生の時には勉強会をやっていた。

 同じ大学に行くという目標を持ったこの時期に、また二人で勉強会をやることは、自然なことと思われる。

 逆に、二人で勉強会をやらないことは、不自然なことと思われる。

 ところがこの時期に、二人で勉強会をやることはなかった。

 東城は控えめな性格であるが、中学生の時には、東城から真中に勉強会を提案している。(JC1巻第2話、77頁)


いちご100% モノクロ版 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 すでに真中に「同じ大学に/行きたい」とまで言ってもいる。

 同じ大学に行くために、中学生の時のように勉強会をやろうと提案することは、中学生の時より容易にできるはずである。

 真中は、東城に「同じ大学に/行きたい」と言われて、「また東城に/勉強教えて/もらわなきゃな…」と東城に言っている。(JC11巻第95話、119頁)


いちご100% モノクロ版 11 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 「また」というのは、中学生の時と同じようにということにちがいない。

 そう言った真中も、そのことを聞いた東城も、同じ大学に行くために東城が真中に勉強を教える勉強会を考えていたにちがいない。

 真中はその前に、大学受験のことを考え始めたときに、中学生の時の東城との勉強会を思い出している。(JC11巻第92話、50頁)


いちご100% モノクロ版 11 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 ところがその後、勉強会をすることはなく、東城も真中も勉強会を考えることもなくなる。

 それから長い時間がたった後に、二人は勉強会をやっている。

 高校2年の2月14日(バレンタインデー)に、大学受験のために中学生の時の勉強会のようなことをすることを話していたのに、高校3年の大学受験の直前に、初めて勉強会をやっているのである。

 JC11巻第95話で、二人の間で勉強会のことが話されていたのに、JC18巻第161話で初めて勉強会をやっているのである。

 その時に真中は「それにしても/やっぱり東城と/一緒の勉強会は/いいなあ…」「丁寧だし/優しいし/なんていうか/温かい…」「中学の時/東城のこと/どんどん好きになってったのも/勉強会で/だったかな…」と独白している。(JC19巻第162話、15頁)


いちご100% モノクロ版 19 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 真中の独白にあるように、「中学の時/東城のこと/どんどん好きになってったのも/勉強会で/だった」。

 勉強会はそういう意味を持っていた。

 そして「それにしても/やっぱり東城と/一緒の勉強会は/いいなあ…」というものであった。

 勉強会は、真中と東城が近づく機会であった。

 二人には同じ大学に行くという目標があって、そのために中学生の時と同じように勉強会をすることは自然なことであった。

 ところが二人は長い間勉強会のことを考えなくなった。

 二人が勉強会をやったのは、真中がすでに西野に告白をした後のことであった。

 その間に勉強会がなかったのは、登場人物の自然な行動ではなく、作者による介入ではないか?

 真中と東城が近づく勉強会は、人為的に排除されたのではないか?

 二人は勉強会をせず、塾に行っている。

塾のはじめ

 二人が勉強会を行わないことは不自然と思われるが、塾に行くところにも不自然と思われるところがある。

 塾がはじめて出てくるのは、真中がバレンタインのチョコの返しのために東城の後を追っていくと、東城が通っている塾に着いた、というところ。(JC12巻第99話)

 東城は真中に、「親に無理矢理/行けって/言われ」たので、毎晩遅く(10時ころ)まで塾に通っていたと語っている。(JC12巻第100話43頁)


いちご100% モノクロ版 12 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 高校2年の3月(14日、ホワイトデー)に、成績優秀とされている東城が、大学受験のために毎晩遅くまで塾に通う、ということにも疑問がある。

 東城が塾に通っていたことを真中に言わずにいたことも、理解できない。

 東城は真中に「同じ大学に/行きたい」と言っていた。

 それに対して真中は東城に「また東城に/勉強教えて/もらわなきゃな…」と言っていた。

 東城は真中に同じ大学に行きたいと言って、そのためにどうするかという話までしていたのに、東城は一人で塾に通い始めて、そのことを真中に言わずにいたというのは、つながらないのではないか?

 そこで東城が真中に「で/真中くんって/どこの大学/行きたいの?」と妙によそよそしくなっているところも、前に「同じ大学に/行きたい」と言っていたことと、つながらないようである。

学力の差

 この場面で、東城の中で、親の「行ってほしい大学」に行くか、真中と同じ大学に行くか、という問題が出て来ている。

 東城が真中と違う大学に行くということは、真中から遠ざかることである。

 「中間の第3期」は、東城が真中と同じ大学に行くということ、東城が真中に近づくことから始まっているのであるが、そこに、東城は真中と違う大学に行くべきではないか、東城は真中から離れるべきではないか、という問題が出て来るのである。

 ラブコメのヒロインとしてはマイナスのことである。

 ところでその問題は、なくてもいいことではないかと思われる。

 そもそも二人の目標は映画を作ることであった。

 その第一の目標に対して、同じ大学に行くということはそれほど重要なことではない。

 ところが東城がなぜか「同じ大学に/行きたい」と言い出して、その後に東城は東城に合った大学に行くべきではないかという問題が出て来ている。

 東城と真中を引き離すために、わざと問題が付け加えられているように見える。

塾のクラス

 塾では、二人の学力の差によって、二人は違うクラスになる。

 学力によってクラスが分かれるという設定は、なくてもいい設定と思われる。

 二人を引き離すために付け加えられたと思われるのである。

向井

 真中はそのクラスで向井と出会う。

 そして真中と向井は関係を深めていく。(JC12巻第102~106話、JC13巻第111話)


いちご100% モノクロ版 12 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 向井は、「中間の第1期」の北大路、「中間の第2期」の西野のように、他の女性と並ぶようにするために持ち上げられているのかもしれない。

 しかし東城もいる場所で真中が向井と関係を深めると、それだけ真中と東城は遠ざかることになる。

 東城は真中と向井のデートをとりもったりもしている。(JC13巻第118~119話)


いちご100% モノクロ版 13 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 これまた真中と東城が遠ざかるところ。

天地

 東城の塾のクラスには、天地が入ってきて、東城に迫る。

 東城は、その天地に心を動かしたりしている。(JC13巻第108~110話、113話)


いちご100% モノクロ版 13 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 東城が真中に心を動かすと、それだけ真中から遠ざかることになる。

塾での東城と真中

 この時期に、東城と真中が近づく話もあるが、少なく、単発的なものにすぎない。(JC13巻第110話、115話、JC14巻第120話)


いちご100% モノクロ版 13 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 塾で二人のクラスが分かれることも、真中は向井に、東城は天地に心を動かすことも、いずれもなくてもいいことではないか?

 なくてもいいことがわざと入れられて、真中と東城は遠ざかっているように見える。

西野

 真中と同じ目標を持っているということで真中の近くにいた東城は、真中から遠ざかってばかりいた。

 それに対して真中と違う目標を持っているということで真中から離れていた西野は、回数は少ないが、東城より多く真中と二人きりの時間を過ごしている。

・JC12巻第107話で成績が悪くて落ち込んでいる真中を連れ出して落ち着かせる。

・JC13巻第111話で真中が夜家に帰ってくると、布団に西野が寝ていて、同じ部屋で夜を明かす。

・JC14巻第122話から第125話まで、西野は真中と二人きりで3日間の旅行に行く。


いちご100% モノクロ版 14 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 西野の方が東城より真中に近づいているようである。

高3の合宿

 「中間の第3期」の最後に、高3の合宿がある。

 高3の合宿も、真中と東城が近づく機会であった。

 そもそも映研の合宿には、真中と東城、二人の夢を実現するという意味がある。

 高3の合宿では、東城が主演女優となるということもある。

 高1の合宿では北大路、高2の合宿では西野が主演女優となった。―それぞれ「中間の第1期」に北大路が持ち上げられたこと、「中間の第2期」に西野が持ち上げられたことと関係がある。

 高3の合宿には、高校生活の集大成という意味もある。

 ところが実際には、東城と真中が近づくことは少なく、遠ざかることが多く描かれている。

北大路

 北大路は真中に「友達宣言」をしていたが(JC13巻第114話)、合宿初日の夜、その「友達宣言」を放棄して、真中に「ずっとずっと/だいすき」と言っている。(JC15巻第129話、84頁)

 それに対して真中も「好き」だといって北大路を抱きしめている。(86頁)


いちご100% モノクロ版 15 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 真中の心が北大路に向かうと、それだけ東城から遠ざかることになる。

 北大路はそのために、その前にした「友達宣言」を撤回する、というかっこわるいことをしている。

 そういうことは、北大路というキャラクターから自然に出て来たことではなく、人為的に付け加えられたことのように見える。

向井

 向井は、合宿のはじめ(第127話)からおわり(第136話)まで参加している。


いちご100% モノクロ版 15 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 そして出てくるたびに真中との関係を深めている。

 そもそも向井は部外者であるから合宿に参加しなくていいはずである。それにもかかわらず、作者はわざわざ参加させて、真中との関係を深めているのである。

 やはり真中と東城を遠ざけるためではないか? 少なくとも結果はそうなっている。

女湯

 真中が女湯にまぎれこむという話で、真中は、東城とでなく、向井と関係を深めている。(第127~128話)

 向井が主役で、東城がわき役のようになっている。

停電

 停電で暗い中、真中が東城と抱き合って唇が触れるという事件が起こる。(第131~132話)

 これは二人が近づくはずの事件である。

 しかし実際には、その事件に対して疑念を抱いた向井に対して、真中が「誤解」を解いて、結局、向井は真中を「信じていられる」ということで決着がつけられている。

 ここでも、真中と東城は近づかず、真中と向井が近づくことになっている。

東城

 高3の合宿で真中と東城が関係を深める話は少ない。北大路、向井と比べても少ない。

進学問題

 逆に、真中の心が東城から遠ざかることは描かれている。

 たとえば、合宿のクライマックスの映画の告白シーンの前に、東城は真中を部屋に呼んで、突然「真中くんと/同じ大学目指すの/やめる…かも…」と言うところ。(JC16巻、10頁)

 それを聞いて真中は「胸に穴があく」衝撃を受けている。(20頁)

 そのために二人は「全然呼吸が/合ってない」といわれる状態になっている。(19頁)


いちご100% モノクロ版 16 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 このやりとりは奇妙である。

 同じ大学を目指すことをやめるということは、二人が遠ざかることである。

 しかしそのように遠ざかることがあっても、その上で近づくことはできる。

 東城が真中に近づきたいと思っているならば、大学は離れても、他のことで近づこうとするのではないか?

 ところが東城は、真中に近づこうとせず、突き放すだけのことになっている。

映画の告白シーン

 高3の合宿のクライマックスは、映研の製作する映画で、主演女優の東城が告白する場面である。

 東城はその場面で、アドリブで、「あなたのことが/ずっとずっと/好き…!」という。(JC16巻、23~25頁)

 このセリフは真中に衝撃を与える。真中は「演技だと/思えない」という。(同、30頁)

 真中はまた「あれは東城が/ヒロインの言葉を借りて出た/本当の気持ち」ともいう。(同、42頁)

 そこで真中の心と東城の心は近づいている。

 しかしまた真中は、その演技の後に、東城が、同じ大学に行くのをやめるかもしれないと言ったことを思い出して、二人の関係の「最後/だったんだ」と考えてもいる。(同、34頁)

 逆に、距離を感じているのである。

 そもそも東城のセリフは、東城が真中に告白したものでもあるが、芝居のセリフにすぎないものでもある。

 真中からすると、更に進んで東城の真意をたしかめなくてはならないはずである。

 ところが真中はそれ以上進もうとしない。

 合宿の間でも、合宿からの帰りでも、東城の真意を確かめる機会はあったのではないか?

 合宿からの帰り道、真中と東城が二人で家の近くまで歩いているところが描かれている。(同、41頁)

 しかしその間、真中が東城の真意を探っていたようには見えない。

 東城も、もう一歩踏み出さなくてはならないはずであるが、それ以上進もうとしていない。

 そして真中は東城とそれほど近づくことなく、家に帰ってくると、西野が待っていた。(同、45頁)


いちご100% モノクロ版 16 (ジャンプコミックスDIGITAL)

 真中と東城の関係は中断される。

まとめ

 「中間の第3期」には、東城に有利な条件があった。

・東城は大学受験のために真中に近づくことができた。(西野、北大路はできない)

・高3の合宿は、東城が主役であった。

 しかしいずれも、真中と東城が遠ざかるところが描かれた。

 東城は真中の近くにいたにもかかわらず、遠ざかるところが描かれた。

 その後で二人が結ばれるところを盛り上げるために、その前に二人が遠ざかるところを描いたと考えることができるであろうか?

 そう考えることは難しい。

 というのは、二人が遠ざかるところが次々と描かれた結果、その後で二人が結ばれたとしても盛り上がらないほどになっているからである。

 この時期の後でも真中と東城が結ばれると思っていた人は多かったと思われるが、二人が結ばれるところが盛り上がると思っていた人は多くなかったと思われる。

 上で見て来たように、この時期には東城と真中が遠ざかることが次から次へと描かれてきた。

 そして東城は、それまでのことから考えると不自然に真中に近づかないでいる。

 「中間の第3期」は、真中と東城の関係が中心となっているにもかかわらず、二人は近づかず、遠ざかっている。

 「中間の第3期」はラブコメとしての魅力が少なくなっている。

 東城もラブコメのヒロインとしての魅力が少なくなっている。

 この時期に東城の人気は低下したと思われる。

 そのことはまさに作者によってなされたと思われる。

結論

 「いちご100%」の結末は、読者の人気によってきまったのか?

 「中間の第3期」が終わるところで、西野の人気は上がっていて、東城の人気は下がっていたにちがいない。

 しかし「中間の第3期」に東城の人気が下がったのは、作者によることであった。

 「中間の第3期」には、東城の人気が上がる条件があった。

 ところがそれと反対の方向のことばかり描かれた。

 東城の人気を上げようとしてうまくいかない可能性はあったかもしれないが、実際にはそれと反対のことばかり描かれていたのである。

 「中間の第3期」にあのように東城を下げておいて、その後に東城を上げるつもりであったとは考え難い。

 「中間の第3期」で真中と東城が遠ざかるところが描かれた時には、「真中と東城で/ハッピーエンドを迎える」ことは考えられていなかったと思われる。

 「いちご100%」の結末は読者の人気によってきまったというのは、作者の考えではなく、読者の人気によって結末がきまったということである。

 しかし「中間の第3期」においてすでに作者は「真中と東城で/ハッピーエンドを迎える」のと違う結末を考えていた。そしてその結果として、「中間の第3期」が終わった時には、読者の人気は東城より西野に傾いていたと思われる。

 西野の人気は、「中間の第2期」、「中間の第3期」に西野が持ち上げられたことによると思われる。

 ただし「中間の第2期」において、作者が結末を決めていたかどうかはわからない。

コメント

タイトルとURLをコピーしました