1964年に公開された映画「マイ・フェア・レディ」では、オードリー・ヘプバーンが輝いている。
しかし「マイ・フェア・レディ」という作品には、オードリー・ヘプバーンと合っていないところもある。
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ブロードウェイの「マイ・フェア・レディ」
オードリー・ヘプバーンは「ローマの休日」で「映画スター」になった。
それからはオードリー・ヘプバーンを生かすような映画が作られた。
その中で「マイ・フェア・レディ」は、オードリー・ヘプバーンを生かすように作られた映画ではなかった。
映画「マイ・フェア・レディ」は、ブロードウェイで歴史的な成功を収めたミュージカル「マイ・フェア・レディ」をもとにして作られた。(もとはバーナード・ショーの戯曲「ピグマリオン」)
ブロードウェイの「マイ・フェア・レディ」ではジュリー・アンドリュースがイライザを演じて評判が良かった。
My Fair Lady: The Original Broadway Cast Recording
「マイ・フェア・レディ」のイライザ役は、ジュリー・アンドリュースに合っていたのである。
ところがジャック・ワーナーは、映画「マイ・フェア・レディ」が成功するためには、無名のジュリー・アンドリュースではなく、有名なオードリー・ヘプバーンが主役を演じなくてはならないと考えた。
ジュリー・アンドリュースは映画「マイ・フェア・レディ」と同じ年に映画「メリー・ポピンズ」に出演して、映画女優として有名になるが、それまでは映画女優として有名でなかったのである。
そうしてオードリー・ヘプバーンは映画「マイ・フェア・レディ」のイライザ役をやることになった。
変身の物語としての「マイ・フェア・レディ」
合っているところ
「マイ・フェア・レディ」にはオードリー・ヘプバーンに合っているところがある。オードリーの素質が十二分に発揮されているところがある。
変身するところである。
「マイ・フェア・レディ」は、下層階級のイライザが、上流階級であるかのような輝かしい姿に変身する物語である。
オードリー・ヘプバーンはそれまで変身する物語を多くやっている。―「ローマの休日」、「麗しのサブリナ」、「パリの恋人」など。
オードリー・ヘプバーンは変身して輝くことである。それゆえに変身する物語が合うのである。
映画「マイ・フェア・レディ」でも、イライザが上流階級に変身するところは輝いている。
合っていないところ
ところでイライザが変身する前は、それまでのオードリー・ヘプバーンの変身する映画と違うところがある。
それまでの映画では、変身する前にも実は輝いていた。―「麗しのサブリナ」のパリに行く前、「パリの恋人」のファッションモデルでない時、いずれもそれはそれで輝いていた。
「ローマの休日」では、もともと王女であったのが、庶民に変身して輝いている。
それに対して「マイ・フェア・レディ」では、変身する前のイライザは、衣装も言葉づかいも汚いものとされている。
変身する前のイライザは、オードリー・ヘプバーンがそれまでにやってきた役とは違う。オードリー・ヘプバーンの素質から離れていると思われる。
オードリー・ヘプバーンの歌声
映画「マイ・フェア・レディ」のイライザの歌は、大体においてマーニ・ニクソンが歌っている。
オードリー・ヘプバーンの歌声は生かされず、そのかわりにマーニ・ニクソンの歌声が用いられているのである。
このことも、映画「マイ・フェア・レディ」においてオードリー・ヘプバーンに合っていなかったところということができる。
オードリー・ヘプバーンは特に高い音に関して技術的な問題をかかえていた。
ただし映画「マイ・フェア・レディ」でマーニ・ニクソンが高い音をのびのびと歌っているところは、歌としてはすぐれているが、オードリー・ヘプバーンの声質とかけ離れたものになっている。
たとえば「スペインの雨」( “The Rain in Spain” )は、物語の感動的なところで歌われるが、その歌声はオードリー・ヘプバーンの口から出ているように聞こえない。
その後の「踊り明かそう」( “I Could Have Danced All Night” )も快く歌われているが、オードリー・ヘプバーンの声質からかけ離れている。
まとめ
評判のよかったジュリー・アンドリュースの代わりに映画「マイ・フェア・レディ」でイライザの役を演じたことによって、オードリー・ヘプバーンは批判された。
映画「マイ・フェア・レディ」はアカデミー賞8部門を受賞したが、オードリー・ヘプバーンは主演女優賞にノミネートされず、ジュリー・アンドリュースがその年の主演女優賞を受賞した。
ここで映画「マイ・フェア・レディ」におけるオードリー・ヘプバーンについてまとめる。
オードリー・ヘプバーンの、「変身した後のイライザ」はよくできている。
しかし「変身する前のイライザ」は、それほどではない。
また、マーニ・ニクソンの歌はうまいが、オードリー・ヘプバーンと合わないところがある。
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