カテゴリー: ジュディ・ガーランド

  • 「イースター・パレード」における性別の転換について

    「イースター・パレード」における性別の転換について

     1948年に公開された映画「イースター・パレード」では、性別の転換が重要な意味を持っている。


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     映画終盤にジュディ・ガーランドの演ずる人物がアーヴィング・バーリンの名曲「イースター・パレード」を歌うところは、映画の中で重要なところであるが、そこで性別の転換が行われているのである。

     男性が女性に対して歌うところを、女性が男性に対して歌うようにしているのである。

    Warner Bros. Entertainment
    Easter Parade | Digital Trailer | Warner Bros. Entertainment

     「イースター・パレード」の歌詞は、女性とイースター・パレードに行く約束をしていた男性が、朝、ドアを開けてその女性の美しい姿をみて、気持ちが高まるというものである。

     映画「イースター・パレード」では、その歌をジュディ・ガーランドの演ずる女性が歌っている。

     そのために歌詞を変えているところがある。

     たとえば、相手をレディ( “lady” )とよぶところを、奴( “fellow” )と変えている。

     しかし変えずにそのままにしているところもある。

    帽子

     たとえば、相手の女性の、帽子の上をフリルで飾った姿の美しさを歌うところを、そのままにしている。

     ジュディ・ガーランドがそう歌う時に、前にいるのはフレッド・アステアである。

     フレッド・アステアはトレードマークのトップ・ハットをかぶっている。

     ただしそのトップ・ハットにはピンクのリボンが巻かれている。

     ジュディ・ガーランドはそのピンクのリボンを巻いたトップ・ハットを指しながら、帽子の上をフリルで飾った姿の美しさを歌うかたちになっている。

     そう見立てているということができる。

     そもそもそのリボンを巻いたトップ・ハットは、その直前にジュディ・ガーランドの演ずる人物が、フレッド・アステアの演ずる人物に贈ったものであった。

    膝の上に

     ジュディ・ガーランドが歌に合わせて膝の上にフレッド・アステアを座らせるところがあるが、男性と女性が入れ替わっていると考えることができる。

    ドアを開けて

     そもそも男性ではなく女性であるジュディ・ガーランドが、朝ドアを開けて、出かける前の相手の姿を見に来るところから、性別の転換が行われている。

     男性が女性の美しさを見て歌うのではなく、女性が男性の美しさを見て歌うというかたちになっている。

     相手の部屋に入ってきて、腕を組んで相手をみて、「まだ支度ができていないの? 男はこれだから」( “Aren’t you ready yet? Just like a man.” )と言うところも。

    性別の転換の理由

     何故に性別の転換は行われたのか?

    裏の事情

     裏の事情を考えると、ジュディ・ガーランドに歌わせたかったからであろう。

     「イースター・パレード」の映画では、当然楽曲「イースター・パレード」を歌うことになる。

     フレッド・アステアは踊りの人、ジュディ・ガーランドは歌の人であるから、「イースター・パレード」を歌うのはジュディ・ガーランドになる。

     しかし「イースター・パレード」は男性が女性に対して歌う歌であるゆえに、ジュディ・ガーランドが歌うと、性別の転換が生ずるのである。

    劇中の意味

     「イースター・パレード」の歌での性別の転換は、劇の中で意味があることになっている。

     ジュディ・ガーランドの演ずる人物が性別の転換を行って「イースター・パレード」を歌うことは、その人物がそれまで抱えていた問題を解決することになっているのである。

     その前の夜、ジュディ・ガーランドの演ずる人物は、フレッド・アステアの演ずる人物が好きであるにもかかわらず、つきはなしてしまう。

     しかしやはり好きなので、その夜は眠れずにすごした。

     次の朝、部屋に訪ねてきた友人(ピーター・ローフォード)を迎え入れて、自分の気持ちを述べると、好きな相手には自分の気持ちを伝えればいいと言われる。

     それに対して、そういうことは男性には容易なことであるが、自分は男性ではないので容易なことではないと答える。

     すると、なぜ? と聞かれる。

     それを聞いて、ジュディ・ガーランドの演ずる人物はひらめいたように目を輝かせる。

     その時ひらめいたのが、性別を転換して「イースター・パレード」を歌うことである。

     そしてニューヨーク五番街のイースター・パレードでのデートに誘うことである。

     ふたりは前にイースター・パレードでデートをしようと約束していた。

     そもそもふたりで仕事を始めたのは前の年のイースターの日であった。ふたりでニューヨーク五番街のイースター・パレードをみて、次の年のイースター・パレードの時にはジュディ・ガーランドの演ずる人物がスターになっているとフレッド・アステアの演ずる人物は語っていた。

     ふたりでディリンガムのショーをやることになった時にも、ふたりでイースター・パレードに行こうと言い合っていた。

     ふたりはそのディリンガムのショーで成功した。

     ところがジュディ・ガーランドの演ずる人物は、フレッド・アステアの演ずる人物をつきはなしてしまった。

     そしてどう関係を修復すればいいか、わからなくなっていた。

     そういう状況で、ジュディ・ガーランドの演ずる人物が男性のように振る舞って、「イースター・パレード」を歌うと、関係は修復した。

    第三段階

     映画「イースター・パレード」は、性別の転換だけで終わっていない。

     ジュディ・ガーランドはピンクのリボンを巻いたトップ・ハットを指して歌うが、その歌の途中でフレッド・アステアはトップ・ハットに巻かれたリボンを取り除いている。

     ジュディ・ガーランドはフレッド・アステアを膝に乗せるが、フレッド・アステアはすぐに立ち上がっている。

     フレッド・アステアは女性のようにも振る舞うが、男性に戻る。

     元の歌詞では、男性が相手の女性の美しい姿をみて自分はイースターパレードで最も誇らしい男になると歌うが、ジュディ・ガーランドは、自分たちは最も誇らしいカップルになると歌う。

     いわば男性の目線の歌であったのを、ふたりの目線の歌にしているということができる。

     フレッド・アステアはリボンをとり除いたトップ・ハットを、ジュディ・ガーランドは自分で持ってきた飾りのついた帽子をかぶって、ふたりで部屋を出てイースター・パレードに行く。

     そもそもこの映画は、フレッド・アステアの演ずる人物が女性(アン・ミラー)のためにイースターの帽子を買うところから始まっていた。

     その女性は去って、一年後にフレッド・アステアの演ずる人物にトップ・ハットを贈る女性とともにイースター・パレードに行くことになっているのである。

     そしてニューヨーク五番街のイースター・パレードでは、フレッド・アステアが「イースター・パレード」の後半を歌っている。


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  • 映画「ジーグフェルド・フォリーズ」 レヴュー形式のMGMミュージカル映画

    映画「ジーグフェルド・フォリーズ」 レヴュー形式のMGMミュージカル映画

     「ジーグフェルド・フォリーズ」(原題は “Ziegfeld Follies” )は、1946年に公開された映画。

     MGMで多くのミュージカル映画の傑作を作ったプロデューサー、アーサー・フリードがブロードウェイのレヴューの形式で作った映画。

     MGMが力をかけた映画で、興行的に成功した。

     フレッド・アステア、ジーン・ケリー、ジュディ・ガーランドをはじめとするスターによる歌、踊り、寸劇等を観ることができる。

     豪華な背景、衣装も見どころ。


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    「ジーグフェルド・フォリーズ」とは

     「ジーグフェルド・フォリーズ」とは、フロレンツ・ジーグフェルド(1867~1932年)が製作したブロードウェイのレヴュー。

     1907年に第1弾が上演されてから、1年に1本製作された。

     映画「ジーグフェルド・フォリーズ」は、亡くなって天国にいるジーグフェルドが、新たにジーグフェルド・フォリーズを構想してできたものというかたちになっている。

     天国にいるジーグフェルドを演じているロバート・パウエルは、1936年に公開された伝記映画「巨星ジーグフェルド」でもジーグフェルドを演じていた。


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    映画「ジーグフェルド・フォリーズ」の構成

     映画「ジーグフェルド・フォリーズ」の構成は、映画としては特異な構成になっている。

     多くの映画は、一つの話を展開する。

     映画「ジーグフェルド・フォリーズ」は、それぞれ独立した歌、踊り、寸劇が次々と出て来る。

     天国にいるフロレンツ・ジーグフェルドが構想したということはあるが、フロレンツ・ジーグフェルドが出て来るのははじめだけ。

     多くの映画のように統一された作品を期待しても、満足することはできない。

     相互に独立した歌とか、踊りとか、寸劇とかが並んでいるものとみなくてはならない。

    “Here’s to the Girls”

     まずフレッド・アステアが出て来て、ジーグフェルドは女性を美しくしたと言って、歌い、少し踊ると、ジーグフェルド風の女性が次々と出て来る。

     そこで出て来たシド・チャリースとフレッド・アステアが少しからむ。

     ルシル・ボールの踊りなどもある。

    「水のバレエ」 “Water Ballet”

     エスター・ウィリアムズが水の中で踊る。


    ブロマイド写真★エスター・ウィリアムズ/プールサイドで水着

    「ナンバー・プリーズ」 “Number Please”

     キーナン・ウィン(Keenan Wynn)によるコメディー。

     電話をかけても、なぜかつながらない。

    「椿姫」 “Traviata”

     ヴェルディのオペラ「椿姫」の「乾杯の歌」を、ジェームズ・メルトンとマリオン・ベルが歌い、大勢で踊る。

     豪華な背景、豪華な衣装。

     振り付けはユージーン・ローリング。

    「2ドル払ってくれ」 “Pay the two dollars”

     ヴィクター・ムーアとエドワード・アーノルドによるコメディー。

     ヴィクター・ムーア演ずる人物は、電車の中につばを吐いたということで、警察から罰金2ドルを言い渡される。

     ところが、エドワード・アーノルド演ずる弁護士は自信満々で、2ドル払わなくてもいい、法廷で勝ってみせるという。

     しかし事態はどんどん悪くなっていく…

    “This Heart of Mine”

     フレッド・アステアとルシル・ブレマーのダンス。

     豪華なパーティに招かれた客のような顔をして入ってきたフレッド・アステアは泥棒。

     パーティ客の一人の女性ルシル・ブレマーに狙いを定めて、二人で外で踊る。

     フレッド・アステアとルシル・ブレマーの陶酔させるようなダンス。豪華な背景。

     作曲はハリー・ウォレン、作詞はプロデューサーのアーサー・フリード。

    宝くじの話 “A Sweepstakes Ticket”

     平凡な夫婦が買った宝くじが当たったが、大家に家賃の代わりに渡してしまっていたという話。

     主婦を演ずるファニー・ブライスは、ブロードウェイのジーグフェルド・フォリーズにも出ていた人。(バーブラ・ストライサンド主演のミュージカル「ファニー・ガール」のもとになった人でもある)

     監督はロイ・デル・ルース。

    「愛」 “Love”

     レナ・ホーンの歌。

     監督はレミュエル・レアーズ(Lemuel Ayers)

    「テレビの初期」 “When Television Comes”

     コメディアンのレッド・スケルトンによるコメディー。

     テレビでジンの宣伝をするが、どんどん酔っぱらって…

    「ライムハウス・ブルース」 “Limehouse Blues”

     フレッド・アステアとルシル・ブレマー。

     霧の立ち込める薄暗いチャイナタウンを歩いていた黒い服の中国人(フレッド・アステア)は、チャイナドレスを着た若い女性に目を奪われるが…

     D.W.グリフィス監督の映画「散りゆく花」( “Broken Blossom” )の世界観。


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     フレッド・アステアが演ずる中国人は、「散り行く花」でリチャード・バーセルメスが演じた中国人青年のよう。

     その青年の夢がバレエで表現される。

     その背景美術は凝っている。―赤と青、「陰影」

     フィリップ・ブレイアム作曲、ダグラス・ファーバー作詞。

    「偉大な女性のインタビュー」のA Great Lady Has “An Interview”

     大物女優が話を聞きに来た多くの記者に答える。

     その大物女優をジュディ・ガーランドが演じている。

     次の出演作は、安全ピンを発明した「偉人」クレマトン夫人の映画であるということから、クレマトン夫人の歌、踊りになる。

     作曲ロジャー・イーデンス、作詞ケイ・トンプソン。(いずれもアーサー・フリードユニットの重要人物であり、ジュディ・ガーランドを育て支えた人)

     おかしなことをまじめにやっているというような歌。

     振り付けはチャールズ・ウォルターズ。

    “The Babbitt and the Bromide”

     フレッド・アステアとジーン・ケリー、二人のダンス。

     二人のスターの数少ない共演。

     ベンチでフレッド・アステアとジーン・ケリーが出くわして、言葉を交わした後、二人でタップダンス。

    「美」 “Beauty”

     キャスリン・グレイソンの歌。

     ハリー・ウォレン作曲、アーサー・フリード作詞。

     泡に囲まれた異様な世界とか、背景が凝っている。

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     日本語版としては、DVDが出ている。


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     英語版ではBlu-rayが出ている。


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  • 「ブロードウェイ・メロディー」の映画4本と「雨に唄えば」

    「ブロードウェイ・メロディー」の映画4本と「雨に唄えば」

     「ブロードウェイ・メロディー」とは、トーキー映画の初期のミュージカル映画の名作である。

     その後に1936年版、1938年版、1940年版と3本の「ブロードウェイ・メロディー」が作られた。

     名作「雨に唄えば」には劇中劇「ブロードウェイ・メロディー」が出て来る。

     「ブロードウェイ・メロディー」はアメリカのミュージカル映画の歴史の中で重要な意味を持っている。

    映画「ブロードウェイ・メロディー」

     映画「ブロードウェイ・メロディー」は複数ある。並べてみよう。

    「ブロードウェイ・メロディー」

     1929年2月に映画「ブロードウェイ・メロディー」は公開された。

     大ヒットし、アカデミー賞作品賞を受賞した。


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    「踊るブロードウェイ」

     1935年8月、映画「ブロードウェイ・メロディー」1936年版(原題は “Broadway Melody of 1936” 邦題は「踊るブロードウェイ」)が公開された。

     この映画から「ブロードウェイ・メロディー」は次々と作られるようになった。

     1935年8月に公開された映画の題が “Broadway Melody of 1936” とされたのはどういうことであろうか?


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    「踊る不夜城」

     1937年8月に映画「ブロードウェイ・メロディー」1938年版(原題は、 “Broadway Melody of 1938” 邦題は「踊る不夜城」)が公開された。


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    「踊るニューヨーク」

     1940年2月に映画「ブロードウェイ・メロディー」1940年版(原題は、 “Broadway Melody of 1938” 邦題は「踊るニューヨーク」)が公開された。


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    「雨に唄えば」

     1952年3月に映画「雨に唄えば」が公開された。

     「雨に唄えば」には劇中劇「ブロードウェイ・メロディー」がある。


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    「ブロードウェイ・リズム」

     ちなみに、1944年8月に「ブロードウェイ・リズム」という映画が公開されている。


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    楽曲「ブロードウェイ・メロディー」

     「ブロードウェイ・メロディー」というのは、映画の題名でもあるが、楽曲の題名でもある。

     楽曲「ブロードウェイ・メロディー」は、1929年の映画「ブロードウェイ・メロディー」のためにアーサー・フリードが作詞し、ナシオ・ハーブ・ブラウンが作曲した楽曲で、1929年の映画「ブロードウェイ・メロディー」の話の軸となっている。

     それに続く映画「ブロードウェイ・メロディー」(1936、1938、1940)でも、「雨に唄えば」の劇中劇「ブロードウェイ・メロディー」でも、楽曲「ブロードウェイ・メロディー」が使われている。

     映画「ブロードウェイ・メロディー」は楽曲「ブロードウェイ・メロディー」を使った映画ということができるようである。

    「ブロードウェイ・メロディー」の変遷

    ブロードウェイでの成功を目指す物語

     1929年の映画「ブロードウェイ・メロディー」は、ブロードウェイでの成功を目指す姉妹の物語であった。

     その後の映画「ブロードウェイ・メロディー」も、ブロードウェイでの成功を目指す人物の物語である。

     1936年版、1938年版では、エレノア・パウエルの演ずる主人公がブロードウェイでの成功を目指す物語になっている。

     1940年版では、フレッド・アステアの演ずる人物がブロードウェイでの成功を目指す物語になっている。

    1936年版からの変化

     映画「ブロードウェイ・メロディー」はブロードウェイでの成功を目指す人物の物語であることは変わらないが、1936年版から1929年版と変わったところがある。

     1929年の映画「ブロードウェイ・メロディー」では、成功の表側の明るいところより、裏側の暗いところに重きを置いていた。

     それに対して、1936年版では、成功の裏側の暗いところより、むしろ成功の表側の明るいところに重きを置いている。

     1936年版からエレノア・パウエルが主役となったことは、その変化と関係がある。

     エレノア・パウエルは一人でこの映画のトリを飾ることができる華と技を備えている。

     成功を目指している役でも、スターとして成功している華と技を見せることができる。

     1929年版の主人公の姉妹は、エレノア・パウエルのような抜群の華も技も持っていない。

     姉が落とされて妹が選ばれたのは立っている姿が美しいということによってであった。

     1929年版では主人公姉妹が舞台でパフォーマンスを披露するところはそれほど多くない。舞台裏に重きが置かれている。最後もそうである。

     1936年版では主人公のエレノア・パウエルは舞台でもパフォーマンスを披露するが、舞台に上がる前にもパフォーマンスを披露する。その他の人のパフォーマンスも多い。

     1929年版では成功までの道の遠さ厳しさが描かれる。

     1936年版では成功までの道の厳しさはそれほど描かれない。

    1938年版

     1938年版もエレノア・パウエルが主役であって、成功の裏側の暗い物語ではない。

     そもそも1938年版では、エレノア・パウエルの演ずる人物がブロードウェイでスターになることを目指す気持ちはそれほど強く描かれていない。

     もともと馬のことを思う人物として出て来たのでもある。

     主役の成り上がり物語の他に馬の話もある。

     主役とあまり関係のないジュディ・ガーランドなどの話もある。

     主役がブロードウェイでスターになるという物語が全体の中で占める割合は小さくなっている。

    1940年版

     1940年版では、フレッド・アステアがブロードウェイでスターになろうとする役になっている。

     エレノア・パウエルはすでにスターになっている役である。

     フレッド・アステアもこれからスターになろうとする役でありながら、すでにスターとして備えている華と技を見せている。

     1940年版では主人公の問題は、成功できないことより、エレノア・パウエルと共演できないことにあるようである。

    「雨に唄えば」

     「雨に唄えば」の劇中劇ではジーン・ケリーの演ずる人物がブロードウェイで成り上がろうという物語になっている。

     挫折も描かれているが、その後も明るくなる。

    恋愛

     映画「ブロードウェイ・メロディー」の中で描かれる恋愛の変遷について考える。

     映画「ブロードウェイ・メロディー」では主人公のブロードウェイでの成功と恋愛での成功とは重なるところがある。

    1929年版

     1929年版では、主人公の姉妹の間で恋愛は苦しい問題となっている。妹がブロードウェイでの成功し恋愛でも成功したのに対して、姉はどちらもうまくいかないという苦しい結末になっている。

    1936年版、1938年版

     1936年版、1938年版ではエレノア・パウエルとロバート・テイラーとの恋愛が描かれている。その恋愛は舞台と関係がある。いずれも障害があるがそれほど深刻ではない。

    1940年版

     1940年版ではフレッド・アステアとエレノア・パウエルの恋愛が描かれる。その恋愛は舞台でパートナーとなることと関係がある。

     ジョージ・マーフィーが間に入って苦しくなるところは1929年版と似ているようでもある。恋愛感情を隠し持つというところは同じ。

     しかしジョージ・マーフィーが悪いので1929年版ほど苦しくはない。(1929年版では姉は悪くない)

     最後も1929年版より後味悪くない。

    「雨に唄えば」

     「雨に唄えば」の劇中劇では、ジーン・ケリーがシド・チャリースに惹かれるが、結局痛い目に遭う。厳しいといえば厳しいが様式化されていて、すぐに立ち直るのでそれほど厳しい感じはない。

    楽曲

    1929年版

     1929年版の映画「ブロードウェイ・メロディー」では、楽曲「ブロードウェイ・メロディー」が話の中心になっていた。

     楽曲「ブロードウェイ・メロディー」はその後の映画「ブロードウェイ・メロディー」でも使われている。

    1936年版

     ただし1936年版では新たに作られた「ブロードウェイ・リズム」という楽曲の方が重要になっている。

     楽曲「ブロードウェイ・メロディー」には、離れたブロードウェイを歌っているような抒情的なところがあるのに対して、楽曲「ブロードウェイ・リズム」は今を楽しむような感じがある。

    1938年版

     1938年版では、そのように中心になる楽曲はない。ビゼーの「カルメン」から始まったりしている。

     1938年版までアーサー・フリード作詞、ナシオ・ハーブ・ブラウン作曲の楽曲が中心となっていた。

    1940年版

     1940年版では、コール・ポーターの作詞作曲した楽曲が使われている。

    「雨に唄えば」

     「雨に唄えば」の劇中劇は「ブロードウェイ・メロディー」と言われているが、楽曲としては「ブロードウェイ・メロディー」より「ブロードウェイ・リズム」の方が多く使われている。

  • 映画「グッド・オールド・サマータイム」 「桃色の店」のミュージカル版

    映画「グッド・オールド・サマータイム」 「桃色の店」のミュージカル版

     映画「グッド・オールド・サマータイム」(原題は “In the Good Old Summertime” )は1949年に公開された映画。

     エルンスト・ルビッチ監督の映画「街角 桃色の店」(原題は “The Shop Around the Corner” 、1940年公開)と同じ舞台劇をもとにしている。

     ジュディ・ガーランドのMGMで主演したミュージカル映画の一つである。


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    映画「グッド・オールド・サマータイム」のあらすじ

     1900年前後のゆったりしたシカゴの話。

     アンドリュー・ラーキン(ヴァン・ジョンソン)は、楽器と楽譜の店で働いていた。

     ある日、その店にヴェロニカ・フィッシャー(ジュディ・ガーランド)が仕事を求めてやってきた。

     二人はともに働くことになったが、言い争いばかりしていた。

     ところで二人はそれぞれ文通している相手がいた。

     その相手は、実は店で言い争いしている相手であった。

    「街角 桃色の店」との違い

     映画「グッド・オールド・サマータイム」の話は大体において「街角 桃色の店」と同じ。

     同じセリフを使っているところも少なくない。

     しかしまた違うところも多い。

     「街角 桃色の店」では、店員に対する店主の抑圧が強くて、そのことによって映画の多くの部分に緊迫感が生じていた。

     「グッド・オールド・サマータイム」では、店員に対する店主の抑圧はそれほど強くない。そのことによって「街角 桃色の店」ほど厳しい感じではなくなっている。

    ミュージカル映画

     映画「グッド・オールド・サマータイム」は「街角 桃色の店」と違ってミュージカル映画である。

    「グッド・オールド・サマータイム」

     タイトルの「グッド・オールド・サマータイム」は、映画の中ではじめに演奏される楽曲「イン・ザ・グッド・オールド・サマータイム」(原題は “In the Good Old Summertime” )から来ている。


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     映画は夏にはじまってクリスマスでクライマックスを迎える。

     夏だけの話ではなく、むしろクリスマスの方が重要である。

    楽器と楽譜の店

     二人が働く店は、「街角 桃色の店」と違って楽器と楽譜の店になっている。

     その設定によって、ジュディ・ガーランドが歌を歌う場面ができる。

     楽器を買いに来た客、楽譜を買いに来た客に対して、ジュディ・ガーランドが歌って見せて、楽器、楽譜を買わせるのである。

     ハープを弾きながら “Meet Me Tonight in Dreamland” を歌うところなど。

     その他にも催しものとしてジュディ・ガーランドが “I Don’t Care” などを歌い踊るところがある。

    ヴァイオリン

     ストーリーの中で大きな問題は、「街角 桃色の店」と違って、ヴァイオリンをめぐって起こる。

    バスター・キートン

     映画「グッド・オールド・サマータイム」の見どころのひとつは、バスター・キートンである。

     バスター・キートンは1920年代にサイレント映画のコメディーでチャップリンと並び称された人であるが、映画がトーキーになって人気がなくなったと言われている。

     映画「グッド・オールド・サマータイム」には、そのバスター・キートンが比較的に重要な役で出ている。

     この映画のバスター・キートンは1920年代の映画で演じていたキャラクターと同じようなキャラクターを演じているように見える。

     映画の中で大きな事件を起こすところなど、まさに1920年代のバスター・キートンのようである。

     1920年代のスター、バスター・キートンと、1940年代のスター、ジュディ・ガーランドが共演してからんでいるところは興味深い。

    ライザ・ミネリ

     映画「グッド・オールド・サマータイム」は、ジュディ・ガーランドの娘ライザ・ミネリが初めて出演した映画でもある。

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  • 映画「イースター・パレード」の出演者・監督・脚本家の変更について

    映画「イースター・パレード」の出演者・監督・脚本家の変更について

     1948年に公開された映画「イースター・パレード」は大ヒットした作品であるが、製作の途中で出演者、スタッフが大きく変わった作品でもある。


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    1947年2月の発表

     1947年2月に発表された出演者は次の通りであった。

     ジュディ・ガーランド、ジーン・ケリー、フランク・シナトラ、キャスリン・グレイスン、レッド・スケルトン。

    はじめの脚本家

     「イースター・パレード」の脚本は、はじめフランシス・グッドリッチとアルバート・ハケットが書いていた。

    監督交代

     1947年9月18日、それまで5日監督をしていたヴィンセント・ミネリが監督をやめた。

     理由はジュディ・ガーランドとの関係にあった。

     ヴィンセント・ミネリは当時ジュディ・ガーランドと結婚していた。

     ヴィンセント・ミネリはそれまで映画「踊る海賊」(原題は “The Pirate” )の監督をしていたが、主役のジュディ・ガーランドが当時心身脆弱で、映画撮影がうまくいかず、結婚生活にも支障をきたすに至っていた。

     それゆえに、「イースター・パレード」でまたジュディ・ガーランドの映画の監督はすることは避けた方がいいということになったのである。

     ヴィンセント・ミネリの代わりにチャールズ・ウォルターズが監督になった。

    フレッド・アステア

     1947年9月にはリハーサルを始めていたが、10月13日にジーン・ケリーがリハーサルの間に遊んでいる時に足首を骨折した。

     そこでフレッド・アステアにジーン・ケリーの代役をたのむことになった。

     フレッド・アステアは、1946年の映画「ブルー・スカイ」で引退していたが、話を聞いて快諾した。

    シドニィ・シェルダン

     新たに監督になったチャールズ・ウォルターズは、映画の脚本がよくないと考えた。

     それまでの脚本では、ジーン・ケリーの演ずる人物は自己中心的な男であったが、それではよくないと考えたという。

     ジーン・ケリーはブロードウェイの「パル・ジョイ」でそういう役でスターになった人であり、映画デビュー作「フォー・ミー・アンド・マイ・ギャル」でもそういう役であった。それゆえにこの映画でもそういう役とされたと言われている。

     そこでチャールズ・ウォルターズはシドニィ・シェルダンに書き直させることにした。

     シドニィ・シェルダンは後に小説家として有名になった人である。

     シドニィ・シェルダンによって、それまでシリアスであった脚本はコメディーになったと言われている。

    アン・ミラー

     映画「イースター・パレード」でアン・ミラーが演じている人物は、もともとシド・チャリースがやることになっていた。

     1947年9月にリハーサルを始めた時にもシド・チャリースがやることになっていたようである。

     ところがシド・チャリースは靱帯を損傷して、映画に出演できなくなってしまった。

     そこでオーディションが行われてアン・ミラーが代わりに選ばれた。

     アン・ミラーが選ばれたことも、映画がシリアスでなくコミカルになった原因と言われている。

    まとめ

     ジュディ・ガーランド、フランク・シナトラ、キャスリン・グレイスン、レッド・スケルトンが出演する映画と発表されていたのに、

     リハーサルが始まるころには、ジュディ・ガーランド、ジーン・ケリー、シド・チャリースが出演する映画になっていて、

     その主要人物のうちの2人が抜けて、ジュディ・ガーランド、フレッド・アステア、アン・ミラーを主要人物とする映画になったのである。

     ジュディ・ガーランド以外は全く違う人になっている。

     監督もヴィンセント・ミネリからチャールズ・ウォルターズにかわって、

     脚本もフランシス・グッドリッチとアルバート・ハケットからシドニィ・シェルダンにかわっている。

     はじめは自己中心的な男を主人公としたギスギスした三角関係などを描くシリアスな物語であったのが、出演者・スタッフがかわったことによって明るくコミカルな物語になったと言われている。

     そうして大ヒット作品となった。

    資料

     ジュディ・ガーランドについてのサイト。

    https://www.thejudyroom.com/ep/


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  • 映画「イースター・パレード」 フレッド・アステアとジュディ・ガーランドの唯一の共演

    映画「イースター・パレード」 フレッド・アステアとジュディ・ガーランドの唯一の共演

     映画「イースター・パレード」(原題は “Easter Parade” )は1948年に公開された映画。

     1940年代から1950年代にかけてMGMでアーサー・フリードのプロデュースによってミュージカル映画の傑作が生み出されていったが、「イースター・パレード」はその傑作のひとつ。

     ミュージカル映画の歌うスター、ジュディ・ガーランドと、ダンスのスター、フレッド・アステアが初めて共演して、傑作となった。(しかし最後の共演となった)

     「イースター・パレード」をはじめとするアーヴィング・バーリンの名曲の数々。

     ジュディ・ガーランドの歌、フレッド・アステアのダンス、それぞれひとりで魅せるところ、ふたりで歌、踊りを合わせて魅せるところ、見どころは多い。

     その上にアン・ミラーがフレッド・アステアと踊るところ、ひとりで踊るところも素晴らしい。


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    イースター

     イースター(英語ではEaster)は「復活祭」とも訳される。キリストの復活を祝う祝日。

     春分の日の後の最初の満月の日の次の日曜日、と決められている。

     年によって違うが、3月の終わりか4月の初め。

     冬の寒さがゆるんで、暖かい風が吹き始める。日差しが明るくなって人の心も浮き浮きしてくる。

     映画「イースター・パレード」もそういう感じで始まる。

     明るい街の中をフレッド・アステアが口笛を吹きながら浮き浮きした様子で歩いて行く。

    豪華

     フレッド・アステア(の演ずる人物)が女性の帽子を買いに店に入るところから映画は始まる。

     どうして帽子を買いに来たのかというと、イースター・パレードのためである。

     イースター・パレードとは、イースターの日に、ニューヨーク5番街の49番通りから57番通りの間、特にセント・パトリック大聖堂のあたりで、イースターバニーや、大きな花の飾りをつけた帽子をかぶる人達が歩くというもの。

     フレッド・アステアはパートナー(アン・ミラー)のイースター・パレードの帽子を買いに来たのである。

     そのためにフレッド・アステアは帽子屋に入る。そして様々な女性が帽子をかぶって見せる中から選ぶのであるが、これはいわばファッションショーである。豪華な店で華やかな若い女性たちが豪華な衣装を着てみせるファッションショー。

     ここだけでなく、「イースター・パレード」という映画は全体としてファッションショーのようである。後にファッション雑誌を映画でやってみせたりもしている。( “The Girl on the Magazine Cover” )

     ファッションショーということは「イースター・パレード」という映画の本質に関わることである。

     もともとニューヨーク5番街のイースター・パレードはファッションショーのようなものともいえる。

     ファッションショーといっても、気取って背伸びしているのではなく、落ち着いて堂々としている。色が鮮やかであるが、深みもある。

     フレッド・アステアと多くの作品で共演していたジンジャー・ロジャーズはこの映画をみて作り手に手紙を送って「真のアメリカの美」( A TRUE AMERICAN BEAUTY )と称賛したという。

    CONGRATULATIONS EASTER PARADE IS A TRUE AMERICAN BEAUTY

    MGM’s GREATEST MUSICALS The Arthur Freed Unit p.234

    M-G-M’s Greatest Musicals: The Arthur Freed Unit

     ジンジャー・ロジャーズがどういう意味でそういったのか、必ずしも明らかではない。

     しかし当時のアメリカの美の粋を集めたものにちがいない。

     アメリカはそれぞれの時代にさまざまな印象を与える。その中でこの映画「イースター・パレード」が与えるアメリカの豪華な印象には、その後の時代にはない力強さがある。

     双葉十三郎は「第二次大戦後に輸入された最初の本格的カラー・ミュージカルの傑作」と語っている。(「ミュージカル洋画 ぼくの500本」、文春新書、30頁)

     戦後の日本でこの映画をみて、当時のアメリカの大きさを感じた気持ちは理解できる。

    「イースター・パレード」のみどころ

     この映画の第一の見どころは、アーヴィング・バーリンの数々の楽曲によるジュディ・ガーランド、フレッド・アステア、アン・ミラーの歌、踊りであるが、ジュディ・ガーランド、アン・ミラーのコミカルなところも面白い。

     もともとフレッド・アステアの役はジーン・ケリーがやることになっていた。アン・ミラーの役はシド・チャリースがやることになっていた。もともと実際にできた作品ほどコミカルではなかったと言われている。

     高級レストランで人が出たり入ったりして、結局何も飲食せずに帰ってしまうところなど面白いと思う。

     はじめは仕事においても人間関係においてもうまくいかなかった二人が、仕事においてうまくいくとともに、人間関係においてもうまくいって、しかしその間に問題が生じて、という話の流れは自然に盛り上がる。

      “Drum Crazy” のフレッド・アステアのドラムをつかったダンスには驚かされるが、ジーン・ケリーの振り付けのようにも見える。フレッド・アステアがジーン・ケリーの振り付けをそのままやっているのではないだろうか?

     ジュディ・ガーランドが酒場で歌う “I Want to Go Back to Michigan” は郷愁がいい感じ。

     フレッド・アステアとジュディ・ガーランドが組んでからのヴォードヴィルのメドレー、 “I Love a Piano” 、”Snooky Ookums” 、”Ragtime Violin” 、”When a Midnight Choo-Choo Leaves for Alabam’ ” の流れは、楽曲が次々と続いて盛り上がっていくところがよくできている。

     話のつながりとしても、フレッド・アステアが自宅でジュディ・ガーランドに”I Love a Piano” を歌わせて、その才能に気づいて二人で踊りをはじめて、そのまま舞台で歌い踊っているところになって、舞台での”Snooky Ookums” 、”Ragtime Violin” が続いて、公演前に”When a Midnight Choo-Choo Leaves for Alabam’ “をやって見せるところになって、という流れはよくできている。

     アン・ミラーが舞台で一人でタップダンスを見せる “Shaking’ the Blues Away” は圧巻。黒と黄色の衣装もあざやか。

      “It Only Happens When I Dance With You” の歌がそれぞれの場面で3人の気持ちを現わすために使われているところも面白い。

     そして2人がホームレスの恰好をして歌い踊る名作 “A Couple of Swells” 。

     それからジュディ・ガーランドが夜の酒場で歌う情感豊かな “Better Luck Next Time” 。

     そして最後に “Easter Parade” で盛り上がる。

    Warner Bros. Entertainment
    Easter Parade | Digital Trailer | Warner Bros. Entertainment

     この歌での性別の転換について↓

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  • 映画「踊る不夜城」 1938年の「ブロードウェイ・メロディー」

    映画「踊る不夜城」 1938年の「ブロードウェイ・メロディー」

     映画「踊る不夜城」の原題は “Broadway Melody 1938” 。1938年の「ブロードウェイ・メロディー」。

     1929年の「ブロードウェイ・メロディー」、1936年の「ブロードウェイ・メロディー」(「踊るブロードウェイ」)に続く3作目。

     ただし1938年の「ブロードウェイ・メロディー」(「踊る不夜城」)が公開されたのは1937年。

     主役は前作と同じエレノア・パウエル。

     ジョージ・マーフィーとのダンスもある。

     幼いジュディ・ガーランドが強烈な印象を与える。


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    映画「踊る不夜城」のあらすじ

     競走馬のことから話は始まる。

     優秀な競走馬の調子が悪いので、持主の金持ちはニューヨークに連れて行くことにした。

     もともとその馬を育てていたサリー(エレノア・パウエル)はその馬が心配で、隠れてその電車に乗り込んでついていった。

     そこで副調教師になっていた元芸人のソニー(ジョージ・マーフィー)、ピーター(バディ・イブセン)と出会った。

     3人で踊っているところにスティーヴ(ロバート・テイラー)が入ってきた。スティーヴは、その競走馬のオーナーとブロードウェイでショーをやる契約をしていた。

     スティーヴはサリーをそのショーに出そうと考えた。

     ところがスポンサーの奥さんがサリーを外せと言ってきた。

    映画「踊る不夜城」の見どころ

    エレノア・パウエル

     豪華な舞台でトリを飾るのはエレノア・パウエルの踊り。

     ジョージ・マーフィーと親しい感じで踊るところも見どころ。雨の中で踊るところは「雨に唄えば」の先駆け。

    ジュディ・ガーランド

     この映画はジュディ・ガーランドが出演していることでも重要。

     1939年の「オズの魔法使い」で有名になる前。

     生意気だが歌のうまい子どもの役で出ている。

     クラーク・ゲーブルに対する愛を歌うところは有名。

     最後のショーにも出て来る。

    競馬とオペラ

     この映画で初めに出て来る楽曲はビゼーの「カルメン」。

     オペラ好きの人物(チャールズ・イーゴー・ゴーリン)が出て来てオペラを歌うのであるが、競馬とからめてコミカルに使われている。

    歴史

     この映画ではエレノア・パウエルとジュディ・ガーランドが共演している。

     エレノア・パウエルは、1930年代後半のMGMミュージカル映画を代表するスターであった。「踊る不夜城」でもトリを飾っている。

     ところが1940年代には、ジュディ・ガーランドがMGMミュージカル映画を代表するスターになって、エレノア・パウエルはしりぞいていった。

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  • 【映画】「青春一座」 ミッキー・ルーニーとジュディ・ガーランド

    【映画】「青春一座」 ミッキー・ルーニーとジュディ・ガーランド

     1939年に公開された映画「青春一座」(原題は “Babes in Arms” )は、ミッキー・ルーニーとジュディ・ガーランドが主役のミュージカル映画。

     若者たちが、逆境を跳ね返して自分たちでショーを行おうとするという話。

     その年に大ヒットした。

     映画「雨に唄えば」などのプロデューサー、アーサー・フリードが初めて単独でプロデュースした作品としても重要。


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    「青春一座」のストーリー

     主人公ミッキー(ミッキー・ルーニー)はまわりの子どもと自分たちでショービジネスを始めていた。パッツィー(ジュディ・ガーランド)に自分の作った歌を歌わせて金を稼いだりしていた。

     ところがミッキーの両親のヴォードヴィル芸は、映画の流行によって、稼げなくなっていた。

     ミッキーたちもショービジネスから引き離されて、ワークスクールに入れられようとしていた。

     そこでミッキーたちは自分たちでショーをやろうと考えた。

     子どもが自分たちで一人前の仕事をやってみせようという話である。

     その間に恋愛とか三角関係とかもある。―ミッキーとパッツィーは、はじめから親しい間柄であるが、そこにもう一人女性が入ってくる。

     そういう話が1939年風に描かれている。

    「青春一座」のみどころ

    「ブロードウェイ・メロディー」 、「ハリウッド・レビュー」

     この映画では、主人公の父親のヴォードヴィル芸は、映画の流行のためにかせげなくなったということになっている。

     その時に流行していた映画として、1929年の映画「ブロードウェイ・メロディー」で「ブロードウェイ・メロディー」を歌うところ、同じ年の映画「ハリウッド・レビュー」で「雨に唄えば」を歌うところが出て来る。

     「ブロードウェイ・メロディー」も「雨に唄えば」も、この映画のプロデューサー、アーサー・フリードが作詞、ナシオ・ハーブ・ブラウンが作曲したものである。

     アーサー・フリードの楽曲によって、この映画の主人公の父親はヴォードヴィル芸で稼げなくなったということになっているのである。

     アーサー・フリードはそれだけ歴史的な仕事をしてきたということもできる。

     この映画は、映画がサイレントからトーキーに変わる時をとりあげているが、後の映画「雨に唄えば」もそうであった。

    「グッドモーニング」

     この映画には「グッドモーニング」という歌が出て来る。

     映画「雨に唄えば」にも出て来る歌である。―「雨に唄えば」の主役3人が夜更かししていたことに気づいて歌いだす歌である。


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     「グッドモーニング」は、アーサー・フリードが作詞、ナシオ・ハーブ・ブラウンが作曲した楽曲で、この映画で出て来たのである。

     ミッキー・ルーニーとジュディ・ガーランドの歌もたのしい感じ。

    クラーク・ゲイブルとライオネル・バリモアのものまね

     ミッキー・ルーニーは歌でも踊り芝居でも芸達者な人であるが、演技指導をする場面で、クラーク・ゲイブルとライオネル・バリモアをかわるがわるものまねしているところは、見もの。

    群舞

     この映画では多くの人の踊りを見せるところに力が入っている。

     監督を務めたバズビー・バークリーによるようである。

    ロジャーズとロレンツ・ハート

     この映画は、リチャード・ロジャーズとロレンツ・ハートによるブロードウェイ・ミュージカル “Babes in Arms” (1937年)をもとにしている。

     ただし映画化するにあたって多くの改変が行われている。もとの歌は2曲しか使われていない。

     後にロジャーズとハートの伝記映画「ワーズ&ミュージック」(1948年)で、この映画で使われなかった楽曲が使われている。


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     「ワーズ&ミュージック」で、ジュディ・ガーランドとミッキー・ルーニーの2人で “I Wish I Were in Love Again” を歌っていることにはそういう意味があるのである。

     その他に、 “Johnny One Note” をジュディ・ガーランドが1人で歌っている。

    https://cocoro-mi.com/wordsandmusic/

    DVD

     英語版。


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  • 【映画】「雲流るるままに」 ジェローム・カーンの伝記

    【映画】「雲流るるままに」 ジェローム・カーンの伝記

     1946年に公開された映画「雲流るるままに」(”Till the Clouds Roll by”)は、「ショウボート」や「煙が目にしみる」で有名な作曲家ジェローム・カーンの伝記映画である。

     伝記の間にジェローム・カーンのミュージカルが入って、ジュディ・ガーランド、ジューン・アリスンその他当時のMGMのミュージカルのスターによって演じられている。


    DVD>雲流るるままに ()

    「雲流るるままに」とは 

     「雲流るるままに」というのは、ジェローム・カーンの楽曲 “Till the Clouds Roll by” のことである。

     映画「雲流るるままに」は、ジェローム・カーンの伝記であって、その中に “Till the Clouds Roll by” も出て来る。

    映画「雲流るるままに」の構成

     映画「雲流るるままに」は、ジェローム・カーンの伝記の中に、ジェローム・カーンのミュージカルが入っている。

    ジェローム・カーンの伝記

     「ショウボート」の公演を観たジェローム・カーンが、若くて売れていなかったころから、「ショウボート」を作るまでのことを回顧するというかたちになっている。

     ジェローム・カーンを演じているのはロバート・ウォーカー。

     編曲者ジム・へスラーがいつもそばにいて、その娘サリーとのやりとりがある。

     英国で出会った女性との結婚。

     英国の興行主チャールズ・フローマン、大女優マリリン・ミラー、作詞家オスカー・ハマースタイン二世などとのやりとりもある。

     ジェローム・カーンは1945年に亡くなっている。そのことは映画の中で描かれていない。

    ジェローム・カーンのミュージカル

     この映画のみどころは、ジェローム・カーンの有名なミュージカルを再現しているところである。

     それもジュディ・ガーランド、フランク・シナトラなど、当時のMGMのスターがやっている。

     MGMスターによるジェローム・カーンのミュージカルの名場面集になっているのである。

     まずはじめに15分近く舞台「ショウボート」の再現がある。

     ジューン・アリスンはこの映画のタイトルになっている “Till the Clouds Roll by” (カラフルなレインコートのダンス)などをやっている。ただしそのミュージカル場面だけ。主役とのからみなど全くない。他の人もそういう感じである。

     その中でジュディ・ガーランドは大女優マリリン・ミラー役で二つのミュージカル場面をやっているだけでなく、舞台裏のやりとりもある。ジュディ・ガーランドのところだけヴィンセント・ミネリの演出で力が入っている。特に「Who?」は多くの人が使われていて、ジュディの歌も踊りもよくできている。

     サリーを演じたルシル・ブレマーは、主役とのやいとりもあって、「”I won’t dance”」などの歌、踊りもやっている。

     「煙が目にしみる」はダンスがある。

     最後に、多くの人を集めたセットで、スターが一人ずつジェローム・カーンの名曲を歌って、フランク・シナトラが “Ol’ Man River” を歌って終わる。

    DVD

     この映画は日本で公開されず、2005年にDVDが出た。

    「雲流るままに」(2005年)

     主役もオールスターも入っているが、その中でジュディ・ガーランドが大きい。


    DVD>雲流るるままに ()

    「雲流るるはてに」(2008年)

     「雲流るるはてに」になっている。

     主役のロバート・ウォーカーを大きく出している。


    雲流るるはてに – Till the Clouds Roll By –

    英語版(2021年)

     オールスターの感じを出している。


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    英語版(2003年)

     これではジュディ・ガーランドが主演のようだ。


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    英語版

     似顔絵。


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  • 映画「ワーズ&ミュージック」 ロジャーズ&ハートの物語

    映画「ワーズ&ミュージック」 ロジャーズ&ハートの物語

     1948年に公開された映画「ワーズ&ミュージック」は、多くの楽曲、ミュージカルをヒットさせた作曲家リチャード・ロジャーズと作詞家ロレンツ・ハートのコンビの物語である。

     2人の起伏を描いている間に2人の楽曲、ミュージカル場面がさしこまれている。

     ジーン・ケリー、ジュディ・ガーランドその他、当時のMGMミュージカルのスター多数による名場面集のようになっている。


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    映画「ワーズ&ミュージック」の概要

     「ワーズ&ミュージック」という題を聞いただけでは何のことかよくわからない。

     作詞家ロレンツ・ハート(Lorenz Hart)と作曲家リチャード・ロジャーズ(Richard Rodgers)のコンビのことを描いた映画である。

     2人は1930年代から1940年代にかけてミュージカルに革新をもたらしたと言われている。

     日本で公開されず、日本人に親しみやすい題がついていないようである。

    作詞家ロレンツ・ハート

     2人が若い時に出会って、しばらく売れず、あるきっかけによって売れていく、というふうに話は進む。

     2人のうち、 作詞家のロレンツ・ハートが変わった人であったことによって、話に起伏が生じている。

     自身も小柄なミッキー・ルーニーが、ロレンツ・ハートをコミカルに、またドラマティックに演じている。

      ロレンツ・ハートに振り回される作曲家リチャード・ロジャーズは、落ち着いた好青年風のトム・ドレイクが演じている。

    オールスター

     ロレンツ・ハートとリチャード・ロジャーズが売れていく間に発表したヒット曲が映画でも歌われ、ミュージカルが映画でも再現される。

     ミュージカル映画としての見どころはそういうところにあるわけである。

     この映画ではそれが、主演男優、主演女優級のスターによって歌われ、演じられている。

     多くのミュージカル映画では、主役が主に歌ったり踊ったりする。この映画では、客演スターたちがそれぞれ歌、踊りを披露しているのである。

     たとえばジューン・アリスンは、「Thou Swell」のミュージカル場面に出て来るだけである。主役2人との関係は描かれず、恋愛対象にもならない。

     当時のMGMのミュージカルスターによる豪華なミュージカル名場面集ということができる。

     シド・チャリースの超絶技巧の美しいバレエ、リナ・ホーンの歌など見どころは多い。

    ジュディ・ガーランド

     ジュディ・ガーランドはハリウッドのスター「ジュディ・ガーランド」として、2人の前に現れる。

     ジュディ・ガーランドが主役をしているところを見慣れたせいか、何か奇妙な感じがする。

     ジュディはミッキー・ルーニーとともに「I Wish I Were in Love Again」を歌い、それからひとりでで「Johnny One Note」を歌っている。

     ジュディ・ガーランドとミッキー・ルーニーは1939年にロレンツ・ハートとリチャード・ロジャーズのミュージカル「青春一座」(”Baby in Arms”)の映画版で共演していた。

     その映画では、ロジャーズ&ハートの楽曲で使っていないものがあった。それをこの映画で歌っているのである。

    https://cocoro-mi.com/babesinarms/

    ジーン・ケリー

     この映画に出て来るスターの中で特筆すべきはジーン・ケリーである。

     ジーン・ケリーはこの映画でヴェラ・エレンとともに「十番街の殺人」というバレエをやっている。

     「十番街の殺人」はこの映画の最高の見どころの一つである。

     ジーン・ケリーの代表作ということができるのではないか。

     「十番街の殺人」は、1936年の舞台「オン・ユア・トウズ」のフィナーレである。この作品によってロレンツ・ハートとリチャード・ロジャーズは、ミュージカルにドラマ性とバレエを取り入れるという変革を行ったと言われている。

     1953年の映画「バンド・ワゴン」の「ガール・ハント」の先駆けと思われる。

     ジーン・ケリーは、ロレンツ・ハートとリチャード・ロジャーズのコンビと深い関係があった。

     ジーン・ケリーが有名になったのは、ロレンツ・ハートとリチャード・ロジャーズの1940年のブロードウェイ・ミュージカル「パル・ジョイ」(Pal Joey)によってであった。

     ジーン・ケリーは、ロレンツ・ハートとリチャード・ロジャーズがミュージカルに取り入れたバレエをやるダンサーとして有名になったのである。

     ジーン・ケリーがこの映画で「十番街の殺人」をやったことにはそういう意味があるわけである。

     ジーン・ケリーがその後でスピーチをやっていることにもそういう意味があるわけである。

     「パル・ジョイ」は1957年に映画化されているが、MGMがジーン・ケリーをコロンビアに貸し出すことを拒んだ結果、フランク・シナトラが代わりにやっている。


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    後のこと

     ロレンツ・ハートは1943年に亡くなった。

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