1948年に公開された映画「ワーズ&ミュージック」は、多くの楽曲、ミュージカルをヒットさせた作曲家リチャード・ロジャーズと作詞家ロレンツ・ハートのコンビの物語である。
2人の起伏を描いている間に2人の楽曲、ミュージカル場面がさしこまれている。
ジーン・ケリー、ジュディ・ガーランドその他、当時のMGMミュージカルのスター多数による名場面集のようになっている。

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映画「ワーズ&ミュージック」の概要
「ワーズ&ミュージック」という題を聞いただけでは何のことかよくわからない。
作詞家ロレンツ・ハート(Lorenz Hart)と作曲家リチャード・ロジャーズ(Richard Rodgers)のコンビのことを描いた映画である。
2人は1930年代から1940年代にかけてミュージカルに革新をもたらしたと言われている。
日本で公開されず、日本人に親しみやすい題がついていないようである。
作詞家ロレンツ・ハート
2人が若い時に出会って、しばらく売れず、あるきっかけによって売れていく、というふうに話は進む。
2人のうち、 作詞家のロレンツ・ハートが変わった人であったことによって、話に起伏が生じている。
自身も小柄なミッキー・ルーニーが、ロレンツ・ハートをコミカルに、またドラマティックに演じている。
ロレンツ・ハートに振り回される作曲家リチャード・ロジャーズは、落ち着いた好青年風のトム・ドレイクが演じている。
オールスター
ロレンツ・ハートとリチャード・ロジャーズが売れていく間に発表したヒット曲が映画でも歌われ、ミュージカルが映画でも再現される。
ミュージカル映画としての見どころはそういうところにあるわけである。
この映画ではそれが、主演男優、主演女優級のスターによって歌われ、演じられている。
多くのミュージカル映画では、主役が主に歌ったり踊ったりする。この映画では、客演スターたちがそれぞれ歌、踊りを披露しているのである。
たとえばジューン・アリスンは、「Thou Swell」のミュージカル場面に出て来るだけである。主役2人との関係は描かれず、恋愛対象にもならない。
当時のMGMのミュージカルスターによる豪華なミュージカル名場面集ということができる。
シド・チャリースの超絶技巧の美しいバレエ、リナ・ホーンの歌など見どころは多い。
ジュディ・ガーランド
ジュディ・ガーランドはハリウッドのスター「ジュディ・ガーランド」として、2人の前に現れる。
ジュディ・ガーランドが主役をしているところを見慣れたせいか、何か奇妙な感じがする。
ジュディはミッキー・ルーニーとともに「I Wish I Were in Love Again」を歌い、それからひとりでで「Johnny One Note」を歌っている。
ジュディ・ガーランドとミッキー・ルーニーは1939年にロレンツ・ハートとリチャード・ロジャーズのミュージカル「青春一座」(”Baby in Arms”)の映画版で共演していた。
その映画では、ロジャーズ&ハートの楽曲で使っていないものがあった。それをこの映画で歌っているのである。
ジーン・ケリー
この映画に出て来るスターの中で特筆すべきはジーン・ケリーである。
ジーン・ケリーはこの映画でヴェラ・エレンとともに「十番街の殺人」というバレエをやっている。
「十番街の殺人」はこの映画の最高の見どころの一つである。
ジーン・ケリーの代表作ということができるのではないか。
「十番街の殺人」は、1936年の舞台「オン・ユア・トウズ」のフィナーレである。この作品によってロレンツ・ハートとリチャード・ロジャーズは、ミュージカルにドラマ性とバレエを取り入れるという変革を行ったと言われている。
1953年の映画「バンド・ワゴン」の「ガール・ハント」の先駆けと思われる。
ジーン・ケリーは、ロレンツ・ハートとリチャード・ロジャーズのコンビと深い関係があった。
ジーン・ケリーが有名になったのは、ロレンツ・ハートとリチャード・ロジャーズの1940年のブロードウェイ・ミュージカル「パル・ジョイ」(Pal Joey)によってであった。
ジーン・ケリーは、ロレンツ・ハートとリチャード・ロジャーズがミュージカルに取り入れたバレエをやるダンサーとして有名になったのである。
ジーン・ケリーがこの映画で「十番街の殺人」をやったことにはそういう意味があるわけである。
ジーン・ケリーがその後でスピーチをやっていることにもそういう意味があるわけである。
「パル・ジョイ」は1957年に映画化されているが、MGMがジーン・ケリーをコロンビアに貸し出すことを拒んだ結果、フランク・シナトラが代わりにやっている。

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後のこと
ロレンツ・ハートは1943年に亡くなった。
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