カテゴリー: ジーン・ケリー

  • ジーン・ケリーのミュージカル映画におけるバレエ

    ジーン・ケリーのミュージカル映画におけるバレエ

     ジーン・ケリー( Gene Kelly )は様々な業績を残した人であるが、アメリカのミュージカル映画にバレエを取り入れて成功させたことは、その中でも歴史的に重要なことである。

    アメリカのミュージカルの歴史とバレエ

    ブロードウェイのリチャード・ロジャース劇場

     タップダンスが主流であったアメリカのミュージカルにバレエが重要な要素として取り入れられるようになったのは、

    「オン・ユア・トーズ」(1936年)―ロレンツ・ハート作詞、リチャード・ロジャース作曲。

    「オクラホマ!」(1943年)―オスカー・ハマースタイン二世作詞、リチャード・ロジャース作曲。

     のような画期的なブロードウェイ・ミュージカルによる。

     ただしミュージカル映画にバレエが取り入れられたのは、それより後になった。

     「オン・ユア・トーズ」はもともとフレッド・アステア主演の映画のために作られたが、フレッド・アステアが断ったので、ブロードウェイで他の人でやったのであった。

     「オクラホマ!」は1943年にブロードウェイで開幕して大ヒットしたが、映画化されたのは1955年であった。

     ミュージカル映画にバレエを取り入れる機会はまずフレッド・アステアにやってきた。

     しかしフレッド・アステアより後に出て来たジーン・ケリーによって行われることになった。

    ジーン・ケリーの映画におけるバレエ

     ジーン・ケリーは1940年開幕のブロードウェイ・ミュージカル「パル・ジョイ」( “Pal Joey” 、ロレンツ・ハート作詞、リチャード・ロジャース作曲)で有名になった。

     映画デビューは1942年の「フォー・ミー・アンド・マイ・ギャル」( “For Me and My Gal” )。ジュディ・ガーランドの相手役であった。


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     ジーン・ケリーが映画で有名になったのは1944年の「カバー・ガール」( “Cover Girl” )。


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     地位が上がるとともに、自分の意見を映画に入れていった。そしてバレエを取り入れていった。

     ジーン・ケリーは早くからタップダンスにもバレエにも力を入れていた。

    「踊る海賊」

     1948年に公開された「踊る海賊」( “The Pirate” )でジーン・ケリーは「海賊」バレエをやった。


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     ジーン・ケリーの演ずる人物が終盤に追い詰められたところで事態をひっくり返すためにやるのである。

    ワーズ&ミュージック

     「踊る海賊」と同じ年、1948年12月に公開された映画「ワーズ&ミュージック」( “Words and Music” )でもジーン・ケリーはバレエをやっている。


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     「ワーズ&ミュージック」は、「オン・ユア・トーズ」( “On Your Toes” )の作者リチャード・ロジャースとロレンツ・ハートの伝記映画。

     リチャード・ロジャースとロレンツ・ハートの伝記の中に二人が作った楽曲、ミュージカルが差し込まれるというかたちになっていて、その中に「オン・ユア・トーズ」のナンバーも再現されている。

     ジーン・ケリーは映画の終盤で「オン・ユア・トーズ」の劇中のバレエ「十番街の殺人」(”Slaughter on 10th Avenue”)をヴェラ・エレンその他とともに再現している。

     「オン・ユア・トーズ」はもともとフレッド・アステアの映画のために作られたが、フレッド・アステアがことわったものであった。それを映画「ワーズ&ミュージック」でジーン・ケリーがやったわけである。

     フレッド・アステアはジーン・ケリーより前にミュージカル映画にバレエを取り入れる機会があったが、その方向に進まないのに対して、後から来たジーン・ケリーがその方向を進めていく。

    「踊る大紐育」

     1949年12月に公開された映画「踊る大紐育」( “On the Town” )にもバレエが取り入れられている。


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     映画の終盤に、孤独になったジーン・ケリーの演ずる人物が、「ニューヨークでの一日」(”A Day in New York”)という芝居の看板をみて、一日を振り返るところで、その頭の中にあることがバレエによって表現されている。

     このように主人公の頭の中にあることがバレエによって表現されていることは、「オクラホマ!」の影響と思われる。

     ジーン・ケリーの相手役は「ワーズ&ミュージック」の「十番街の殺人」と同じくヴェラ・エレン。

     ヴェラ・エレンは映画のはじめにもバレエをやっている。―ジーン・ケリーの演ずる人物等がヴェラ・エレンの演ずる人物はどういう人物か想像するところ。

    「巴里のアメリカ人」

     1951年に公開された映画「巴里のアメリカ人」(”An American in Paris” )は、ジーン・ケリーがバレエを取り入れた映画の中でも特筆すべき作品。


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     「巴里のアメリカ人」でジーン・ケリーの相手役をやったレスリー・キャロンは、ジーン・ケリーがフランスで見出したバレエダンサーであった。

     まずレスリー・キャロンの演ずる人物はどういう人物であるか想像するというところで、「踊る大紐育」でやっていたのと似たバレエがある。

     そして終盤には、ジーン・ケリーの演ずる人物がレスリー・キャロンの演ずる人物との関係について考えることが大がかりなバレエによって表現されている。

     主人公の頭の中にあることをバレエで表現することは「オクラホマ!」の影響と考えられる。

     ジョージ・ガーシュウィンの楽曲「巴里のアメリカ人」、ジーン・ケリーとレスリー・キャロン、そしてその他多くの人による大がかりなバレエ、フランスの印象派の画家の絵をもとにした背景美術が相まって、大変なものになっている。

    「雨に唄えば」

     1952年に公開された映画「雨に唄えば」( “Singin’ in the Rain” )にもバレエがある。―「ブロードウェイ・バレエ」である。


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     ブロードウェイでの成功を目指す若者(ジーン・ケリー)が、魔性の女性(シド・チャリース)と出会うというもの。

     ジーン・ケリーの演ずる人物が提案する映画の企画として出て来るのであるが、「雨に唄えば」の本筋とはあまり関係ない。

    「ブリガドーン」

     1954年に公開された映画「ブリガドーン」( “Brigadoon” )は1947年にヒットしたブロードウェイ・ミュージカル「ブリガドーン」の映画版。


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    「ダンスへの招待」

     1956年に公開された映画「ダンスへの招待」( “Invitation To the Dance” )は、ジーン・ケリーが監督した映画。

     会話はなく、登場人物はダンスと身振りだけで表現するというもの。

     ジーン・ケリーはこの映画によって観客をダンスに関して啓蒙したいと考えていたようである。

     興行的には失敗した。

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    4 Film Favorites: Gene Kelly (For Me and My Gal, Invitation to the Dance (1956), On the Town (Sinatra Tribute), Summer Stock)
  • 映画「ジーグフェルド・フォリーズ」 レヴュー形式のMGMミュージカル映画

    映画「ジーグフェルド・フォリーズ」 レヴュー形式のMGMミュージカル映画

     「ジーグフェルド・フォリーズ」(原題は “Ziegfeld Follies” )は、1946年に公開された映画。

     MGMで多くのミュージカル映画の傑作を作ったプロデューサー、アーサー・フリードがブロードウェイのレヴューの形式で作った映画。

     MGMが力をかけた映画で、興行的に成功した。

     フレッド・アステア、ジーン・ケリー、ジュディ・ガーランドをはじめとするスターによる歌、踊り、寸劇等を観ることができる。

     豪華な背景、衣装も見どころ。


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    「ジーグフェルド・フォリーズ」とは

     「ジーグフェルド・フォリーズ」とは、フロレンツ・ジーグフェルド(1867~1932年)が製作したブロードウェイのレヴュー。

     1907年に第1弾が上演されてから、1年に1本製作された。

     映画「ジーグフェルド・フォリーズ」は、亡くなって天国にいるジーグフェルドが、新たにジーグフェルド・フォリーズを構想してできたものというかたちになっている。

     天国にいるジーグフェルドを演じているロバート・パウエルは、1936年に公開された伝記映画「巨星ジーグフェルド」でもジーグフェルドを演じていた。


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    映画「ジーグフェルド・フォリーズ」の構成

     映画「ジーグフェルド・フォリーズ」の構成は、映画としては特異な構成になっている。

     多くの映画は、一つの話を展開する。

     映画「ジーグフェルド・フォリーズ」は、それぞれ独立した歌、踊り、寸劇が次々と出て来る。

     天国にいるフロレンツ・ジーグフェルドが構想したということはあるが、フロレンツ・ジーグフェルドが出て来るのははじめだけ。

     多くの映画のように統一された作品を期待しても、満足することはできない。

     相互に独立した歌とか、踊りとか、寸劇とかが並んでいるものとみなくてはならない。

    “Here’s to the Girls”

     まずフレッド・アステアが出て来て、ジーグフェルドは女性を美しくしたと言って、歌い、少し踊ると、ジーグフェルド風の女性が次々と出て来る。

     そこで出て来たシド・チャリースとフレッド・アステアが少しからむ。

     ルシル・ボールの踊りなどもある。

    「水のバレエ」 “Water Ballet”

     エスター・ウィリアムズが水の中で踊る。


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    「ナンバー・プリーズ」 “Number Please”

     キーナン・ウィン(Keenan Wynn)によるコメディー。

     電話をかけても、なぜかつながらない。

    「椿姫」 “Traviata”

     ヴェルディのオペラ「椿姫」の「乾杯の歌」を、ジェームズ・メルトンとマリオン・ベルが歌い、大勢で踊る。

     豪華な背景、豪華な衣装。

     振り付けはユージーン・ローリング。

    「2ドル払ってくれ」 “Pay the two dollars”

     ヴィクター・ムーアとエドワード・アーノルドによるコメディー。

     ヴィクター・ムーア演ずる人物は、電車の中につばを吐いたということで、警察から罰金2ドルを言い渡される。

     ところが、エドワード・アーノルド演ずる弁護士は自信満々で、2ドル払わなくてもいい、法廷で勝ってみせるという。

     しかし事態はどんどん悪くなっていく…

    “This Heart of Mine”

     フレッド・アステアとルシル・ブレマーのダンス。

     豪華なパーティに招かれた客のような顔をして入ってきたフレッド・アステアは泥棒。

     パーティ客の一人の女性ルシル・ブレマーに狙いを定めて、二人で外で踊る。

     フレッド・アステアとルシル・ブレマーの陶酔させるようなダンス。豪華な背景。

     作曲はハリー・ウォレン、作詞はプロデューサーのアーサー・フリード。

    宝くじの話 “A Sweepstakes Ticket”

     平凡な夫婦が買った宝くじが当たったが、大家に家賃の代わりに渡してしまっていたという話。

     主婦を演ずるファニー・ブライスは、ブロードウェイのジーグフェルド・フォリーズにも出ていた人。(バーブラ・ストライサンド主演のミュージカル「ファニー・ガール」のもとになった人でもある)

     監督はロイ・デル・ルース。

    「愛」 “Love”

     レナ・ホーンの歌。

     監督はレミュエル・レアーズ(Lemuel Ayers)

    「テレビの初期」 “When Television Comes”

     コメディアンのレッド・スケルトンによるコメディー。

     テレビでジンの宣伝をするが、どんどん酔っぱらって…

    「ライムハウス・ブルース」 “Limehouse Blues”

     フレッド・アステアとルシル・ブレマー。

     霧の立ち込める薄暗いチャイナタウンを歩いていた黒い服の中国人(フレッド・アステア)は、チャイナドレスを着た若い女性に目を奪われるが…

     D.W.グリフィス監督の映画「散りゆく花」( “Broken Blossom” )の世界観。


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     フレッド・アステアが演ずる中国人は、「散り行く花」でリチャード・バーセルメスが演じた中国人青年のよう。

     その青年の夢がバレエで表現される。

     その背景美術は凝っている。―赤と青、「陰影」

     フィリップ・ブレイアム作曲、ダグラス・ファーバー作詞。

    「偉大な女性のインタビュー」のA Great Lady Has “An Interview”

     大物女優が話を聞きに来た多くの記者に答える。

     その大物女優をジュディ・ガーランドが演じている。

     次の出演作は、安全ピンを発明した「偉人」クレマトン夫人の映画であるということから、クレマトン夫人の歌、踊りになる。

     作曲ロジャー・イーデンス、作詞ケイ・トンプソン。(いずれもアーサー・フリードユニットの重要人物であり、ジュディ・ガーランドを育て支えた人)

     おかしなことをまじめにやっているというような歌。

     振り付けはチャールズ・ウォルターズ。

    “The Babbitt and the Bromide”

     フレッド・アステアとジーン・ケリー、二人のダンス。

     二人のスターの数少ない共演。

     ベンチでフレッド・アステアとジーン・ケリーが出くわして、言葉を交わした後、二人でタップダンス。

    「美」 “Beauty”

     キャスリン・グレイソンの歌。

     ハリー・ウォレン作曲、アーサー・フリード作詞。

     泡に囲まれた異様な世界とか、背景が凝っている。

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     日本語版としては、DVDが出ている。


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     英語版ではBlu-rayが出ている。


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  • 「ブロードウェイ・メロディー」の映画4本と「雨に唄えば」

    「ブロードウェイ・メロディー」の映画4本と「雨に唄えば」

     「ブロードウェイ・メロディー」とは、トーキー映画の初期のミュージカル映画の名作である。

     その後に1936年版、1938年版、1940年版と3本の「ブロードウェイ・メロディー」が作られた。

     名作「雨に唄えば」には劇中劇「ブロードウェイ・メロディー」が出て来る。

     「ブロードウェイ・メロディー」はアメリカのミュージカル映画の歴史の中で重要な意味を持っている。

    映画「ブロードウェイ・メロディー」

     映画「ブロードウェイ・メロディー」は複数ある。並べてみよう。

    「ブロードウェイ・メロディー」

     1929年2月に映画「ブロードウェイ・メロディー」は公開された。

     大ヒットし、アカデミー賞作品賞を受賞した。


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    「踊るブロードウェイ」

     1935年8月、映画「ブロードウェイ・メロディー」1936年版(原題は “Broadway Melody of 1936” 邦題は「踊るブロードウェイ」)が公開された。

     この映画から「ブロードウェイ・メロディー」は次々と作られるようになった。

     1935年8月に公開された映画の題が “Broadway Melody of 1936” とされたのはどういうことであろうか?


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    「踊る不夜城」

     1937年8月に映画「ブロードウェイ・メロディー」1938年版(原題は、 “Broadway Melody of 1938” 邦題は「踊る不夜城」)が公開された。


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    「踊るニューヨーク」

     1940年2月に映画「ブロードウェイ・メロディー」1940年版(原題は、 “Broadway Melody of 1938” 邦題は「踊るニューヨーク」)が公開された。


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    「雨に唄えば」

     1952年3月に映画「雨に唄えば」が公開された。

     「雨に唄えば」には劇中劇「ブロードウェイ・メロディー」がある。


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    「ブロードウェイ・リズム」

     ちなみに、1944年8月に「ブロードウェイ・リズム」という映画が公開されている。


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    楽曲「ブロードウェイ・メロディー」

     「ブロードウェイ・メロディー」というのは、映画の題名でもあるが、楽曲の題名でもある。

     楽曲「ブロードウェイ・メロディー」は、1929年の映画「ブロードウェイ・メロディー」のためにアーサー・フリードが作詞し、ナシオ・ハーブ・ブラウンが作曲した楽曲で、1929年の映画「ブロードウェイ・メロディー」の話の軸となっている。

     それに続く映画「ブロードウェイ・メロディー」(1936、1938、1940)でも、「雨に唄えば」の劇中劇「ブロードウェイ・メロディー」でも、楽曲「ブロードウェイ・メロディー」が使われている。

     映画「ブロードウェイ・メロディー」は楽曲「ブロードウェイ・メロディー」を使った映画ということができるようである。

    「ブロードウェイ・メロディー」の変遷

    ブロードウェイでの成功を目指す物語

     1929年の映画「ブロードウェイ・メロディー」は、ブロードウェイでの成功を目指す姉妹の物語であった。

     その後の映画「ブロードウェイ・メロディー」も、ブロードウェイでの成功を目指す人物の物語である。

     1936年版、1938年版では、エレノア・パウエルの演ずる主人公がブロードウェイでの成功を目指す物語になっている。

     1940年版では、フレッド・アステアの演ずる人物がブロードウェイでの成功を目指す物語になっている。

    1936年版からの変化

     映画「ブロードウェイ・メロディー」はブロードウェイでの成功を目指す人物の物語であることは変わらないが、1936年版から1929年版と変わったところがある。

     1929年の映画「ブロードウェイ・メロディー」では、成功の表側の明るいところより、裏側の暗いところに重きを置いていた。

     それに対して、1936年版では、成功の裏側の暗いところより、むしろ成功の表側の明るいところに重きを置いている。

     1936年版からエレノア・パウエルが主役となったことは、その変化と関係がある。

     エレノア・パウエルは一人でこの映画のトリを飾ることができる華と技を備えている。

     成功を目指している役でも、スターとして成功している華と技を見せることができる。

     1929年版の主人公の姉妹は、エレノア・パウエルのような抜群の華も技も持っていない。

     姉が落とされて妹が選ばれたのは立っている姿が美しいということによってであった。

     1929年版では主人公姉妹が舞台でパフォーマンスを披露するところはそれほど多くない。舞台裏に重きが置かれている。最後もそうである。

     1936年版では主人公のエレノア・パウエルは舞台でもパフォーマンスを披露するが、舞台に上がる前にもパフォーマンスを披露する。その他の人のパフォーマンスも多い。

     1929年版では成功までの道の遠さ厳しさが描かれる。

     1936年版では成功までの道の厳しさはそれほど描かれない。

    1938年版

     1938年版もエレノア・パウエルが主役であって、成功の裏側の暗い物語ではない。

     そもそも1938年版では、エレノア・パウエルの演ずる人物がブロードウェイでスターになることを目指す気持ちはそれほど強く描かれていない。

     もともと馬のことを思う人物として出て来たのでもある。

     主役の成り上がり物語の他に馬の話もある。

     主役とあまり関係のないジュディ・ガーランドなどの話もある。

     主役がブロードウェイでスターになるという物語が全体の中で占める割合は小さくなっている。

    1940年版

     1940年版では、フレッド・アステアがブロードウェイでスターになろうとする役になっている。

     エレノア・パウエルはすでにスターになっている役である。

     フレッド・アステアもこれからスターになろうとする役でありながら、すでにスターとして備えている華と技を見せている。

     1940年版では主人公の問題は、成功できないことより、エレノア・パウエルと共演できないことにあるようである。

    「雨に唄えば」

     「雨に唄えば」の劇中劇ではジーン・ケリーの演ずる人物がブロードウェイで成り上がろうという物語になっている。

     挫折も描かれているが、その後も明るくなる。

    恋愛

     映画「ブロードウェイ・メロディー」の中で描かれる恋愛の変遷について考える。

     映画「ブロードウェイ・メロディー」では主人公のブロードウェイでの成功と恋愛での成功とは重なるところがある。

    1929年版

     1929年版では、主人公の姉妹の間で恋愛は苦しい問題となっている。妹がブロードウェイでの成功し恋愛でも成功したのに対して、姉はどちらもうまくいかないという苦しい結末になっている。

    1936年版、1938年版

     1936年版、1938年版ではエレノア・パウエルとロバート・テイラーとの恋愛が描かれている。その恋愛は舞台と関係がある。いずれも障害があるがそれほど深刻ではない。

    1940年版

     1940年版ではフレッド・アステアとエレノア・パウエルの恋愛が描かれる。その恋愛は舞台でパートナーとなることと関係がある。

     ジョージ・マーフィーが間に入って苦しくなるところは1929年版と似ているようでもある。恋愛感情を隠し持つというところは同じ。

     しかしジョージ・マーフィーが悪いので1929年版ほど苦しくはない。(1929年版では姉は悪くない)

     最後も1929年版より後味悪くない。

    「雨に唄えば」

     「雨に唄えば」の劇中劇では、ジーン・ケリーがシド・チャリースに惹かれるが、結局痛い目に遭う。厳しいといえば厳しいが様式化されていて、すぐに立ち直るのでそれほど厳しい感じはない。

    楽曲

    1929年版

     1929年版の映画「ブロードウェイ・メロディー」では、楽曲「ブロードウェイ・メロディー」が話の中心になっていた。

     楽曲「ブロードウェイ・メロディー」はその後の映画「ブロードウェイ・メロディー」でも使われている。

    1936年版

     ただし1936年版では新たに作られた「ブロードウェイ・リズム」という楽曲の方が重要になっている。

     楽曲「ブロードウェイ・メロディー」には、離れたブロードウェイを歌っているような抒情的なところがあるのに対して、楽曲「ブロードウェイ・リズム」は今を楽しむような感じがある。

    1938年版

     1938年版では、そのように中心になる楽曲はない。ビゼーの「カルメン」から始まったりしている。

     1938年版までアーサー・フリード作詞、ナシオ・ハーブ・ブラウン作曲の楽曲が中心となっていた。

    1940年版

     1940年版では、コール・ポーターの作詞作曲した楽曲が使われている。

    「雨に唄えば」

     「雨に唄えば」の劇中劇は「ブロードウェイ・メロディー」と言われているが、楽曲としては「ブロードウェイ・メロディー」より「ブロードウェイ・リズム」の方が多く使われている。

  • 「雨に唄えば」の明るさと「巴里のアメリカ人」の暗さ

    「雨に唄えば」の明るさと「巴里のアメリカ人」の暗さ

     1951年に公開された映画「巴里のアメリカ人」。


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     1952年に公開された映画「雨に唄えば」。


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     いずれもアメリカのミュージカル映画の歴史の中で傑出した作品である。

     いずれもジーン・ケリーが主役であるが、「雨に唄えば」は明るく、「巴里のアメリカ人」は暗いところがある。

    「雨に唄えば」と「巴里のアメリカ人」の共通点

     「雨に唄えば」と「巴里のアメリカ人」は同じような構造を持っている。

    ・ジーン・ケリーの演ずる主人公は、第一の女性と仕事で深い関係になっている。(「雨に唄えば」では、映画の相手役リーナ。「巴里のアメリカ人」では、絵を売るために手伝うマイロ)

    ・その女性はジーン・ケリーの演ずる主人公に対して恋愛感情を持っている。

    ・ところがジーン・ケリーの演ずる主人公は、その第一の女性とは別の、その女性より若い女性に対して恋愛感情を抱く。(「雨に唄えば」では、女優志望のキャシー。「巴里のアメリカ人」では、化粧品店員リーズ)

    「雨に唄えば」と「巴里のアメリカ人」の相違点

     次に「雨に唄えば」と「巴里のアメリカ人」とで違うところ。

    第一の女性

     まず「第一の女性」が違う。

     「雨に唄えば」のリーナはドンに対して恋愛感情を見せるが、共感しがたい。

     リーナは、ドンが映画でリーナの相手役という地位を獲得してから、ドンに対して好意を示すようになった。それゆえに純粋な恋愛感情とは思えない。

     その上にリーナは権力によってキャシーを排除しようとした。

     「巴里のアメリカ人」のマイロのジェリーに対する恋愛感情は、それより共感される。

     マイロは自分の恋愛感情のために自分の地位を利用しない。

     それゆえに「雨に唄えば」で主人公がリーナを遠ざけても可哀想ではないが、「巴里のアメリカ人」で主人公がマイロを遠ざけることは可哀想である。

    主人公の性格

     「雨に唄えば」では、観客は安心して主人公に共感することができる。

     「巴里のアメリカ人」では、観客はそれほど安心して主人公に共感することはできない。共感するにも痛みが伴う。

    第一の女性との関係

     ドンはリーナから理不尽な損害を被っている。ドンがそれに対して反発することに、観客は共感する。

     ジェリーはマイロから理不尽な損害を被っておらず、逆に利益を受けている。それにもかかわらず、可哀想な目にあわせている。

    第二の女性との関係

     「巴里のアメリカ人」のジェリーがリーズと仲良くなろうとするところは、やり方が強引であって、単純に共感できない。

     「雨に唄えば」のドンがキャシーと仲良くなるところにはそういうことはない。

     「巴里のアメリカ人」の脚本を担当したアラン・ジェイ・ラーナーは、ガーシュウィンの「パリのアメリカ人」の音楽をもとにして、ジェリーの性格を “impudent” (図々しい)ものにしたと語っている。

     たしかに「巴里のアメリカ人」の主人公ジェリーは図々しいところのある人物であって、無条件にいい人とは言えない。

     ただし「巴里のアメリカ人」で主人公が子供と仲良くしているところは、「雨に唄えば」にはない明るいところではある。

    ヒロイン

     「雨に唄えば」で主人公の恋愛対象となるキャシーは、若々しく明るい。

     「巴里のアメリカ人」で主人公の恋愛対象となるリーズには、暗いところがある。

     「巴里のアメリカ人」のリーズには、ジェリーと出会う前に、特別な関係にある男性がいた。

     ジェリーとリーズがくっつくことは、その男性を傷つけることになる。(この設定は「カサブランカ」に似ている)

     「雨に唄えば」のキャシーにはそのようなことはない。

     「巴里のアメリカ人」のレスリー・キャロンはフランス人であって、アメリカ人からみるとミステリアスなところがあると思われる。

     「雨に唄えば」のデビー・レイノルズはアメリカ人であって、そういうところはない。

    主人公の友人

     「雨に唄えば」で主人公の友人を演じたのはドナルド・オコナ―である。

     そのことも「雨に唄えば」という映画が明るくなっていることと関係があると思われる。

     「巴里のアメリカ人」で主人公の友人を演じたのはオスカー・レヴァントである。

     オスカー・レヴァントにはコミカルなところもあるが、暗いところもある。

     ドナルド・オコナ―はスラップスティックの明るさをもっていて、オスカー・レヴァントのような暗さはない。

     「雨に唄えば」の主人公の友人の役にはもともとオスカー・レヴァントが考えられていたようであるが、ドナルド・オコナ―になったことによって明るさが増したと思われる。

    恋愛感情の違い

     「雨に唄えば」で最も有名なのは、ジーン・ケリーが雨の中「雨に唄えば」を歌い踊るところであろう。

     キャシーとの恋愛で高まった感情を、雨の中で歌い踊ることによって表現しているところは、映画スターであるにもかかわらず初めての恋愛を心から喜んでいるような若々しさがある。

     「巴里のアメリカ人」で最も有名なのは終盤のバレエであろう。

     ジェリーはリーズと結ばれることができなくなった。その気持ちがバレエで表現されている。

     「巴里のアメリカ人」の場合、結ばれないことによって傷つくが、結ばれても他の人を傷つけることになる。どちらに進んでも傷つくことになる。

     夜の雨の中でも明るい「雨に唄えば」と、色彩あふれる中で暗い「巴里のアメリカ人」。

    ミュージカルの歴史に関して

     「巴里のアメリカ人」は、ジーン・ケリーが有名になった1940年のブロードウェイの舞台「パル・ジョイ」に通ずるところがあると思われる。

     ジーン・ケリーはもともと自己中心的なところのある人物を演じて有名になった人であった。

     「巴里のアメリカ人」もその流れにある。

     映画ではジーン・ケリーの明るいところが生かされた。「雨に唄えば」はその明るいところが生かされた作品である。

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  • 映画「巴里のアメリカ人」

    映画「巴里のアメリカ人」

     映画「巴里のアメリカ人」(原題は “An American in Paris” )は1951年に公開されたアメリカのミュージカル映画。

     ジョージ・ガーシュウィンの「パリのアメリカ人」をはじめとする楽曲をもとにしている。

     ジーン・ケリーの相手役を演じたレスリー・キャロンは新人であったがこの映画によって鮮烈な印象を残した。

     終盤のバレエは圧巻。

     アカデミー賞で作品賞を含む6部門を受賞。


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    映画「巴里のアメリカ人」のストーリー

     アメリカ人のジェリー(ジーン・ケリー)は第二次世界大戦中、軍人としてパリに来て、戦後も画家としてとどまっていた。

     ある日、それまで売れなかったジェリーの絵に、金持ちのアメリカ人女性マイロ(ニーナ・フォッシュ)が関心を示した。マイロはジェリーの絵が売れるようにはたらくという。マイロはジェリーに対して異性として好意をもっているようでもある。

     ところがジョーはたまたま出会ったフランス人の少女リーズ(レスリー・キャロン)に一目惚れする。・・・

    ガーシュウィンの楽曲

     この映画で使われているのはすべてガーシュウィンの楽曲である。

     1945年公開の映画「アメリカ交響楽」ではジョージ・ガーシュウィンの伝記の中にガーシュウィンの楽曲を入れるというかたちをとっていた。


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     「巴里のアメリカ人」ではジーン・ケリーを主役とした新たな話の中に楽曲を入れるというかたちをとっている。

     ただしオスカー・レヴァントは両作品で「ヘ調のピアノ協奏曲」を演奏している。「巴里のアメリカ人」ではコミカルな演出がなされている。

     映画「巴里のアメリカ人」の中では「パリのアメリカ人」が最も重要であるが、そのことは後に書く。

     ジーン・ケリーその他がパリの街中で歌い踊る楽しい楽曲も多い。

     ジーン・ケリーとレスリー・キャロンがセーヌ川のほとりで “Love Is Here To Stay” を歌い踊るところは「ロマンティック」。

    レスリー・キャロン

     この映画でジーン・ケリーの相手役を演じたレスリー・キャロンは、パリでバレエをやっているところをジーン・ケリーによって見出された人である。

     当時19歳。

    「パリのアメリカ人」バレエ

     この映画の最大のみどころは、終盤のバレエ。

     パリの様々なところをそれぞれ有名な画家―デュフィ、ルノワール、ユトリロ、ルソー、ゴッホ、ロートレック ― の絵のように描いた美術。

     そういう背景と、ガーシュウィンの楽曲と、ジーン・ケリーとレスリー・キャロンを中心としたバレエとが合わさって、芸術的でもありコミカルでもある大変なものが出来上がった。

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     「巴里のアメリカ人」の特に終盤のバレエは、美術も踊りも画質が高いほどいいのではないか。

     出演者、スタッフによる作品解説も充実。(プロデューサーのアーサー・フリードの言葉も収録されている)


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  • 映画「雨に唄えば」

    映画「雨に唄えば」

     映画「雨に唄えば」(原題は Singin’ in the Rain )は1952年に公開された。

     そしてアメリカのミュージカル映画を代表する作品として、時代を超えて愛されている。

     ジーン・ケリーが雨の中を歌って踊るところは特に有名。


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    「雨に唄えば」のストーリー

     映画がサイレント(無声)であった時から話は始まる。(1927年とされている。)

     ドン(ジーン・ケリー)はサイレント映画でリーナ(ジーン・ヘイゲン)と恋人役を演じて人気者になっていた。

     ところがトーキー(有声)映画が流行して、2人もトーキー映画をやらざるを得なくなった。

     トーキー映画を作るのに色々と問題が生じた。特にリーナの声がよくないことは大きな問題であった。

     そこでドンと仲良くなっていたキャシー(デビー・レイノルズ)にリーナの声をあてさせるという考えが出て来た。

     映画はうまくいくか?

     ドン、リーナ、キャシーの関係はどうなる?

    「雨に唄えば」の見どころ

     「雨に唄えば」は明るい映画である。

     もともと暗い雨を、明るい気持ちを表現するための題材にしてしまう「雨に唄えば」という楽曲は、その明るさを代表している。

     ストーリーも、映画がサイレントからトーキーに移行する時のごたごた、その中での恋愛などを明るくコミカルに描いている。

     ジーン・ケリーをはじめとする出演者も映画を明るくしている。

     画面の色彩も明るい。

    「雨に唄えば」の構成

     「雨に唄えば」という映画は、先に楽曲があって、その楽曲をもとにして作られている。

    「雨に唄えば」Singin’ in the Rain

     「雨に唄えば」という映画のタイトルは「雨に唄えば」という楽曲をもとにしている。

     しかし「雨に唄えば」という楽曲はこの映画のために作られたものではない。

     1929年に公開された映画「ハリウッド・レビュー」(原題は “The Hollywood Revue of 1929” )という映画で歌われていた楽曲である。


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     「雨に唄えば」という楽曲は、映画「雨に唄えば」の20年以上前に作られていたのである。

     ジーン・ケリーの有名な踊りのために作られたのではない。

    アーサー・フリード

     「雨に唄えば」という楽曲は、アーサー・フリードが作詞し、ナシオ・ハーブ・ブラウンが作曲した楽曲である。

     映画「雨に唄えば」は、「雨に唄えば」をはじめとしてアーサー・フリードが作詞した楽曲をもとにして作られた。

     アーサー・フリードは、1920年代から1930年代にかけて多くのヒット曲の作詞を担当していた。

     アーサー・フリードは1939年からMGMのプロデューサーとなって、1940年代、1950年代にかけて多くのミュージカル映画をヒットさせた人でもある。映画「雨に唄えば」のプロデューサーでもあった。

     映画「雨に唄えば」は、プロデューサーのアーサー・フリードがそれまでに作詞した楽曲をもとにして作られた映画である。

    All I Do Is Dream of You

     キャシー(デビー・レイノルズ)がパーティーで歌い踊る「 “All I Do Is Dream Of You” 」は、1935年の映画「踊るブロードウェイ」で歌われていた楽曲である。


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    「グッドモーニング」Good Morning

     映画「雨に唄えば」でデビー・レイノルズ、ジーン・ケリー、ドナルド・オコナ―の3人が歌って踊っている「 “Good morning” 」という楽曲も、もともとは1939年の映画「青春一座」でミッキー・ルーニーとジュディ・ガーランドが歌っていたものである。


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    You Were Meant for Me

     ドン(ジーン・ケリー)が映画のセットを使ってキャシーに愛を告白するところで歌う ” You Were Meant for Me ” という楽曲も、もともとは1929年の映画「ブロードウェイ・メロディー」で歌われていた。


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    「ブロードウェイ・メロディー」Broadway Melody

     映画「雨に唄えば」の中で作られる映画の現代の部分は「ブロードウェイ・メロディー」と呼ばれていて、「ブロードウェイ・メロディー」という楽曲が使われている。

     「ブロードウェイ・メロディー」は、1929年の映画「ブロードウェイ・メロディー」の主題歌である。


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     映画「雨に唄えば」では、ドン(ジーン・ケリー)が「ブロードウェイ・メロディー」を思いついたことにしている。

     そしてドンが主役になって、ブロードウェイで成功しようとする若者のミュージカルが、劇中劇として入っている。

     「ブロードウェイ・メロディー」は、1929年に作られた後、1936年、1938年、1940年とシリーズとして作られていた。

     映画「雨に唄えば」は、その後にまた「ブロードウェイ・メロディー」をとりあげているのである。

    「ブロードウェイ・リズム」Broadway Rhythm

     映画「雨に唄えば」の「ブロードウェイ・メロディー」の部分では、はじめに「ブロードウェイ・メロディー」が歌われたが、その後は「ブロードウェイ・リズム」が歌われている。

    「ブロードウェイ・リズム」は、1935年の映画「踊るブロードウェイ」で歌われた楽曲。


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    Beautiful Girl

     映画の途中のファッションショーで歌われている “Beautiful Girl” という楽曲は、もともと1933年の映画「虹の都へ」で歌われていたようである。

     「虹の都へ」は、「市民ケーン」のモデルとされた新聞王ハーストが推していたマリオン・デービス主演の映画。


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    楽曲の文脈

     映画「雨に唄えば」の楽曲は、それぞれ過去の映画の中で意味をもっていた。

     映画「雨に唄えば」は、そういう映画からとりだした楽曲群をもとにして新たな物語を作ったものである。

     映画「雨に唄えば」の中で楽曲群は新たな意味をもつものとして位置づけられている。

    「雨に唄えば」の歴史的意義

     もともとアーサー・フリードが作詞した楽曲「雨に唄えば」は、映画がサイレントからトーキーに移行する時に作られたものであった。「ブロードウェイ・メロディー」もそうであった。

     そして「雨に唄えば」が歌われた映画「ハリウッド・レビュー」、「ブロードウェイ・メロディー」が歌われた映画「ブロードウェイ・メロディー」は、映画がサイレントからトーキーに移行する時に作られたミュージカル映画の代表的なものであった。―「ブロードウェイ・メロディー」はその年のアカデミー賞を受賞している。

     映画「雨に唄えば」で映画がサイレントからトーキーに移行する時にミュージカル映画を作るという話が描かれていることは、そういうことと関係があるわけである。

     MGMのミュージカル映画の名場面を集めた映画「ザッツ・エンタテインメント」も「ハリウッド・レビュー」で「雨に唄えば」が歌われた映像をとりあげて、映画がサイレントからトーキーに移行する時期にミュージカル映画が盛んになったことについて語っている。

     映画「雨に唄えば」は、映画「ザッツ・エンタテインメント」とあわせてみることによって理解が深まるものである。


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  • 映画「ワーズ&ミュージック」 ロジャーズ&ハートの物語

    映画「ワーズ&ミュージック」 ロジャーズ&ハートの物語

     1948年に公開された映画「ワーズ&ミュージック」は、多くの楽曲、ミュージカルをヒットさせた作曲家リチャード・ロジャーズと作詞家ロレンツ・ハートのコンビの物語である。

     2人の起伏を描いている間に2人の楽曲、ミュージカル場面がさしこまれている。

     ジーン・ケリー、ジュディ・ガーランドその他、当時のMGMミュージカルのスター多数による名場面集のようになっている。


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    映画「ワーズ&ミュージック」の概要

     「ワーズ&ミュージック」という題を聞いただけでは何のことかよくわからない。

     作詞家ロレンツ・ハート(Lorenz Hart)と作曲家リチャード・ロジャーズ(Richard Rodgers)のコンビのことを描いた映画である。

     2人は1930年代から1940年代にかけてミュージカルに革新をもたらしたと言われている。

     日本で公開されず、日本人に親しみやすい題がついていないようである。

    作詞家ロレンツ・ハート

     2人が若い時に出会って、しばらく売れず、あるきっかけによって売れていく、というふうに話は進む。

     2人のうち、 作詞家のロレンツ・ハートが変わった人であったことによって、話に起伏が生じている。

     自身も小柄なミッキー・ルーニーが、ロレンツ・ハートをコミカルに、またドラマティックに演じている。

      ロレンツ・ハートに振り回される作曲家リチャード・ロジャーズは、落ち着いた好青年風のトム・ドレイクが演じている。

    オールスター

     ロレンツ・ハートとリチャード・ロジャーズが売れていく間に発表したヒット曲が映画でも歌われ、ミュージカルが映画でも再現される。

     ミュージカル映画としての見どころはそういうところにあるわけである。

     この映画ではそれが、主演男優、主演女優級のスターによって歌われ、演じられている。

     多くのミュージカル映画では、主役が主に歌ったり踊ったりする。この映画では、客演スターたちがそれぞれ歌、踊りを披露しているのである。

     たとえばジューン・アリスンは、「Thou Swell」のミュージカル場面に出て来るだけである。主役2人との関係は描かれず、恋愛対象にもならない。

     当時のMGMのミュージカルスターによる豪華なミュージカル名場面集ということができる。

     シド・チャリースの超絶技巧の美しいバレエ、リナ・ホーンの歌など見どころは多い。

    ジュディ・ガーランド

     ジュディ・ガーランドはハリウッドのスター「ジュディ・ガーランド」として、2人の前に現れる。

     ジュディ・ガーランドが主役をしているところを見慣れたせいか、何か奇妙な感じがする。

     ジュディはミッキー・ルーニーとともに「I Wish I Were in Love Again」を歌い、それからひとりでで「Johnny One Note」を歌っている。

     ジュディ・ガーランドとミッキー・ルーニーは1939年にロレンツ・ハートとリチャード・ロジャーズのミュージカル「青春一座」(”Baby in Arms”)の映画版で共演していた。

     その映画では、ロジャーズ&ハートの楽曲で使っていないものがあった。それをこの映画で歌っているのである。

    https://cocoro-mi.com/babesinarms/

    ジーン・ケリー

     この映画に出て来るスターの中で特筆すべきはジーン・ケリーである。

     ジーン・ケリーはこの映画でヴェラ・エレンとともに「十番街の殺人」というバレエをやっている。

     「十番街の殺人」はこの映画の最高の見どころの一つである。

     ジーン・ケリーの代表作ということができるのではないか。

     「十番街の殺人」は、1936年の舞台「オン・ユア・トウズ」のフィナーレである。この作品によってロレンツ・ハートとリチャード・ロジャーズは、ミュージカルにドラマ性とバレエを取り入れるという変革を行ったと言われている。

     1953年の映画「バンド・ワゴン」の「ガール・ハント」の先駆けと思われる。

     ジーン・ケリーは、ロレンツ・ハートとリチャード・ロジャーズのコンビと深い関係があった。

     ジーン・ケリーが有名になったのは、ロレンツ・ハートとリチャード・ロジャーズの1940年のブロードウェイ・ミュージカル「パル・ジョイ」(Pal Joey)によってであった。

     ジーン・ケリーは、ロレンツ・ハートとリチャード・ロジャーズがミュージカルに取り入れたバレエをやるダンサーとして有名になったのである。

     ジーン・ケリーがこの映画で「十番街の殺人」をやったことにはそういう意味があるわけである。

     ジーン・ケリーがその後でスピーチをやっていることにもそういう意味があるわけである。

     「パル・ジョイ」は1957年に映画化されているが、MGMがジーン・ケリーをコロンビアに貸し出すことを拒んだ結果、フランク・シナトラが代わりにやっている。


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    後のこと

     ロレンツ・ハートは1943年に亡くなった。

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