「きまぐれオレンジ☆ロード」―漫画とTVシリーズの違いについて

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きまぐれオレンジ☆ロード
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 漫画「きまぐれオレンジ☆ロード」と、漫画「きまぐれオレンジ☆ロード」を原作として作られたアニメ版TVシリーズとの間には色々と違うところがある。


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漫画とアニメ版TVシリーズ

 「きまぐれオレンジ☆ロード」は「週刊少年ジャンプ」で1984年15号(3月26日号)から連載を開始した漫画。

 その漫画「きまぐれオレンジ☆ロード」を原作としたアニメ「きまぐれオレンジ☆ロード」のTVシリーズは1987年4月6日から放映された。

 そのTVシリーズが放映されている間に、「週刊少年ジャンプ」1987年42号(9月28日号)で漫画「きまぐれオレンジ☆ロード」は終わった。

 TVシリーズは1988年3月7日に終わった。

私の経験

 私は前に漫画「きまぐれオレンジ☆ロード」を読んでいた。

 数年前、たまたま漫画「きまぐれオレンジ☆ロード」を読んで、関心をもって調べている時にはじめてTVシリーズの存在を知った。

 それまでTVシリーズの存在を知らなかったのである。

 そこでTVシリーズを取り寄せてみた。

 しかしどうにも楽しむことができない。


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何故にTVシリーズを楽しむことができなかったか?

 私は漫画、アニメのことに詳しくなくて、何故にTVシリーズを楽しむことができないか、よくわからなかった。

 そのうちにわかってきた。

一般論

 漫画、アニメに詳しくないと、漫画を原作としたアニメは漫画をアニメのかたちにしただけのものと思ってしまう。

 実際には、漫画の作者と違う人がアニメを作る。

 その人によって絵も話も原作と違うものになる。

1980年代の漫画原作アニメ

 1980年代の漫画原作アニメでは、アニメの作り手が原作の通りに作らずに、原作と違うように作ることが広く行われていた。

 「うる星やつら」のアニメ版(1981~1986年)はそのことで有名であった。

 「うる星やつら」のアニメ版では、アニメの作り手が「暴走」して原作と違うものにしてしまうことが多かったが、そのことで評判になって、大ヒットした。

 「きまぐれオレンジ☆ロード」のTVシリーズを制作したスタジオぴえろは、その「うる星やつら」を制作したところである。

 「きまぐれオレンジ☆ロード」でも、「うる星やつら」と同じように、アニメの作り手に「暴走」させることを考えていたと思われる。

「きまぐれオレンジ☆ロード」のTVシリーズの作り手の言葉

 「きまぐれオレンジ☆ロード」のTVシリーズの作り手の言葉をとりあげてみる。

監督 小林治氏

 TVシリーズの監督小林治氏は次のように語っていたと言われている。

小林治が監督を務めた『きまぐれオレンジ☆ロード』について取材した際に、それに関する話をうかがった。小林監督は「どう思われているか分からないけれど、自分はこういった作品でも、たとえば世界名作劇場と同じような作りにしたいと思っている」と話してくれた。

WEBアニメスタイル アニメ様365日 第169回 カメラで撮られた世界としての『クリィミーマミ』

 必ずしも明らかでないが、原作の漫画「きまぐれオレンジ☆ロード」の感じをそのままアニメにするのではなく、それとは異なるような、「たとえば世界名作劇場と同じような作り」にしたいということのようである。

キャラクターデザイン 高田明美氏

 キャラクターデザインを担当した高田明美氏は次のように語っている。

『うる星やつら』はあまりバリエーションのあるイラストを描く余裕がなかったんですけれど、けっこうお任せだった『オレンジロード』はどっちかというと芸能プロの社長みたいな感覚で、「預けてもらった大事なタレントをどう売っていこうかな」みたいな視点で描いていました。

高田明美が明かす〝暇つぶし〟から始まった『パトレイバー』秘話

 「預けてもらった大事なタレントをどう売っていこうかな」というのは、原作漫画の感じをどうやってアニメにするかということではなく、高田明美氏のやり方でやっていくということであろう。

シリーズ構成、脚本 寺田憲史氏

 寺田憲史氏が原作の感じをアニメ化しようと考えいなかったことは、様々なところからうかがうことができるが、ここでは小説版のあとがきの中の言葉を挙げておこう。

自由な雰囲気で物作りができたのも、まつもとさんが、われわれ映像スタッフを信じて任せてくれたからだと思う。

「新きまぐれオレンジ☆ロード そしてあの夏のはじまり」

 「自由な雰囲気で物作りができた」というのは、原作にとらわれることなくやりたいことをやったということであろう。

文芸 静谷伊佐夫氏

 文芸担当の静谷伊佐夫氏の言葉もとりあげておこう。

 TVシリーズの放映開始前に「アニメージュ」1987年4月号の新番組紹介で語っているもの。

 ある日、制作部長から「こんどウチでやる『きまぐれオレンジロード』の文芸をやるように」といわれた。喜んだと同時に、ちょっとアセった。
 というのも、マンガ週刊誌は毎週欠かさず読んでいるが、このページだけは毎週欠かさず飛ばしていたからだ。それはべつにこの作品がきらいというわけではなくて、ボクは”青春もの”全般がきらいなのだ。なぜかというと”ウソ”が多いからだ。
 だって、中・高校生のころって、みんなすごくドロドロ、ウジウジしてなかったか⁉ いっぺんだてスカッとしたことなんてなかったんじゃないのか⁉ ボクはそうだった…。
(中略)
 ボクも何本かおきにシナリオを書かせてもらえる。(中略)ボクが書く1本1本のシナリオに、ボク自身が体験した脂ぎった体臭をはらんだ「青春」を描いていきたい。―それが喜んだ理由。
 そんな気持ちで「きまぐれオレンジロード」に立ち向かっているんだ。

「アニメージュ」1987年4月号、94頁

 静谷氏も原作の感じをアニメにしようとは考えておらず、原作と異なる自分の「青春」を描くと語っている。

 それにしてもこの発言は、原作ファンにとって衝撃的である。

 「マンガ週刊誌は毎週欠かさず読んでいるが、このページだけは毎週欠かさず飛ばしていた」という人がTVシリーズの文芸を担当するということも、原作ファンにとって残念なことである。

 その人が「ボク自身が体験した脂ぎった体臭をはらんだ「青春」を描いていきたい」と述べていることも、原作ファンにとって残念なことである。

 当時の原作ファンはこれを読んでがっかりしたのではないか?

 静谷氏の言葉と同じ頁には、「陽あたり良好!」のTVシリーズの制作担当の金正廣氏の「スタッフは前作「タッチ」とほぼ同じメンバー。全員あだち作品のよき理解者ばかり」と言う言葉もある。

 「陽あたり良好!」のTVシリーズの作り手は「全員あだち作品のよき理解者ばかり」であるというのに対して、「きまぐれオレンジ☆ロード」のTVシリーズの作り手は原作を無視して「ボクの青春」を描いていきたいと言っているのをみると、さらにがっかりする。

まとめ

 このように「きまぐれオレンジ☆ロード」のTVシリーズの作り手の主要な人物は、原作をどうアニメにするかということを考えておらず、どうやって原作と異なる自分の作品を作るかを考えていた。

 作る人が異なるゆえに出来たものも違うものになっただけではない。

 それぞれが原作と異なる自分の方向に向かっていたのである。

原作ファンの反応

 「きまぐれオレンジ☆ロード」のTVシリーズは、絵も話も演出も原作と違うものになった。

 しかもTVシリーズは原作と違うだけでなく、原作と違う方向に向かっている。

 原作を読んでから、そのアニメ版としてTVシリーズをみると、違和感がある。

 原作に思い入れある人ほどその違和感は強く不満を感ずるであろう。

 原作のあの絵、あの話、あの場面をアニメの形でみようと思っても、絵も話も演出も変わっているので満足することはできない。

 原作ファンでTVシリーズをみて楽しむことができなかった人は少なくなかったのではないか?


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