高田明美氏が「きまぐれオレンジ☆ロード」のアニメ版のキャラクターデザインになったいきさつ

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きまぐれオレンジ☆ロード
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 「きまぐれオレンジ☆ロード」の作者まつもと泉先生が亡くなって間もなく、たまたまYahooニュースで1月前に行われた高田明美氏のインタビューを読んで、違和感があった。

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高田明美氏の言葉

 違和感があったのは、高田明美氏が「きまぐれオレンジ☆ロード」のアニメ版のキャラクターデザインになったいきさつを語るところ。

高田 原作者のまつもと泉さんは『魔法の天使 クリィミーマミ』が好きで、アニメ化が決まった時に指名があって始まった感じですね。最初に絵を見た時は「私よりも、いのまた(むつみ)さんに頼んだほうがいいんじゃないか」ってちょっと思ったりもしたんですが。

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 これによると、

・原作者のまつもと泉先生が指名したことによって、高田明美氏はアニメ版のキャラクターデザインを担当することになった。

・高田明美氏自身は必ずしも適任ではないと思っていた。

 私はそれまで高田明美氏がアニメ版のキャラクターデザインを担当することになったことに、まつもと泉先生は関わっていないと思っていた。

 それゆえに違和感があった。

違和感の理由

 高田明美氏がアニメ版のキャラクターデザインを担当することに、まつもと泉先生は関わっていないと私は何故に思ったか。

 第一に、まつもと泉先生の言葉と矛盾している。

 第二に、当時の状況を考えると、違うのではないかと思われる。

 第三に、まつもと泉先生が高田明美氏を指名する動機が理解できない。

まつもと泉先生の言葉

 第一に、まつもと泉先生が生前に語っていたことは、高田明美氏が語ることと食い違っている。

 まつもと泉先生は、小説版「新きまぐれオレンジ★ロード そしてあの夏のはじまり」(1994年)の「postscript」において、自分が「きまぐれオレンジ☆ロード」のアニメ版にどのように関わってきたかを次のように説明している。

今まで、アニメなどの原作のマンガ以外のオレンジロードは、絵に関しても、ストーリーに関しても所詮、他人の手で描かれるため、良いものになろうが、つまらなかろうが「オレンジロード風ガイドライン」からそう逸脱したものにならなければ、私はなるたけ関わる必要がないと決め込んでいた。だからアニメと私の原作とではストーリーが少しくらい違っていても、あまり注文など口は出さないようにしてきた。

「新きまぐれオレンジ★ロード そしてあの夏のはじまり」集英社、1994年、242頁

 まつもと泉先生は、「アニメなどの原作のマンガ以外のオレンジロード」に対して「なるたけ関わる必要がないと決め込んでいた」と語っている。

 しかも、アニメの「きまぐれオレンジ☆ロード」の「絵に関しても」そうしていたと語っている。

では何故、私がアニメに関わらないかといえば、あまりに原作者がああだ、こうだ、と口をだすアニメで今まで出来の良い物にお目にかかったことはなかったし、原作者が自分のマンガをアニメ化されて、一人はしゃぎして「声優は誰が良い」だの、「作監は誰が良い」だのと小躍りするのは、あまり見ていてかっこいいものじゃないと自分では思っていたからだ。

「新きまぐれオレンジ★ロード そしてあの夏のはじまり」集英社、1994年、242頁

 まつもと泉先生は、原作者がアニメに対して「声優は誰が良い」とか、「作監は誰が良い」とかいうことは「あまり見ていてかっこいいものじゃないと自分では思っていた」という。

 そういう人にとっては、キャラクターデザインは高田明美氏が良いと指名することも「見ていてかっこいいものじゃない」ということになるのではないか?

 アニメ化の時にはキャラクターデザインを指名していたのに、小説版の時にはそういうことを「あまり見ていてかっこいいものじゃないと自分では思っていた」と書くとは考え難い。

当時の状況

 第二に、「きまぐれオレンジ☆ロード」のアニメ版が作られた時の状況を考えると、キャラクターデザインが高田明美氏に決まったのは、まつもと泉先生によることではなく、他の要因によることと思われる。

スタジオぴえろ

 「きまぐれオレンジ☆ロード」のアニメの製作は、スタジオぴえろ(と東宝)である。

 スタジオぴえろは、1987年のTVシリーズの前に、1985年の「ジャンプ・スペシャルアニメ・大行進85」というイベントで、「きまぐれオレンジ☆ロード」が「こちら葛飾区亀有公園前派出所」とともにアニメ化された時にアニメーション制作を担当していた。

 布川郁司氏によると、スタジオぴえろは当時「ジャンプ作品をとるための作戦」をたてていた。(「クリィミーマミはなぜステッキで変身するのか?」日経BP社、2013年、92頁)

それができた記念すべき作品が『きまぐれオレンジ★ロード』でした。これは当初、「ジャンプフェスタ」というイベントのために三十分のアニメ作品を作るという話でした。それでクリィミーマミと同じ高田明美さんにキャラクターデザインをお願いして制作したのです。

「クリィミーマミはなぜステッキで変身するのか?」日経BP社、2013年、94頁

 ここで言われているように、1985年のアニメのキャラクターデザインは、布川氏の依頼によって、高田明美氏が担当することになった。

 まつもと泉先生の指名によってではない。

 その後に、スタジオぴえろは「オレンジ★ロードを、ジャンプフェスタだけでなく、テレビシリーズにしたい」と考えて、「東宝のテレビ事業部に話を持っていって、作品を製作してもらえないかと打診し」た。そうして1987年のTVシリーズはできることになったと布川郁司氏は語る。(同、95頁)

 1987年のTVシリーズのキャラクターデザインとして高田明美氏が選ばれたのは、1985年のアニメでキャラクターデザインを担当したいたからではないか?

 選んだのは、1985年のアニメと同じく、スタジオぴえろの布川氏ではないか?

 スタジオぴえろと高田明美氏との間には、それまでにタツノコプロ、「うる星やつら」、「クリィミーマミ」と深い関係があった。

日本テレビ

 「きまぐれオレンジ☆ロード」のTVシリーズの企画制作は日本テレビである。

 「きまぐれオレンジ☆ロード」のテレビシリーズの日本テレビのプロデューサー堀越徹氏は、「クリィミーマミ」のプロデューサーでもあった。

 189頁で触れられているように、「きまぐれオレンジ☆ロード」のアニメ版のスタッフは、「クリィミーマミ」と「ほぼ同じ」であった。

 日本テレビは「きまぐれオレンジ☆ロード」をアニメ化するにあたって、前にヒットした「クリィミーマミ」のスタッフを起用したのである。

 高田明美氏は「クリィミーマミ」のキャラクターデザインを担当していた。

 高田明美氏はその流れで選ばれたと思われる。

高田明美氏を指名する理由

 高田明美氏が語るように、まつもと泉先生が高田明美氏を指名したとすると、その理由がわからない。

 まつもと泉先生はそれほど高田明美氏の描く「きまぐれオレンジ☆ロード」を求めていたのか?

 高田明美氏の言い方では、まつもと泉先生は「魔法の天使 クリィミーマミ」が好きであったゆえに選んだようである。

 まつもと泉先生は「魔法の天使 クリィミーマミ」が好きであったかもしれない。

 しかし「きまぐれオレンジ☆ロード」の絵柄は「クリィミーマミ」の絵柄とは距離があるものである。

 高田明美氏も「最初に絵を見た時は「私よりも、いのまた(むつみ)さんに頼んだほうがいいんじゃないか」ってちょっと思ったりもした」と認めているように、まつもと泉先生の「きまぐれオレンジ☆ロード」の絵柄は、高田明美氏の絵柄とは距離があるものであって、いのまたむつみ先生の絵柄に近いものであった。

 それにもかかわらず、いのまたむつみをおいて、距離のある絵柄の高田明美氏をわざわざ求めるであろうか?

まとめ

 高田明美氏が「きまぐれオレンジ☆ロード」のアニメ版のキャラクターデザインに選ばれたのは、スタジオぴえろ、日本テレビによることと思われる。

 まつもと泉先生は、そのことを快諾したこかもしれないが、積極的に指名したとは考え難い。

 指名したとすると、小説版での発言と矛盾する。

 また、距離のある絵柄の高田明美氏をわざわざ指名する理由も理解できない。

高田明美氏に対する不満

 高田明美氏の後半の発言も気になったので、書いて置こう。

『うる星やつら』はあまりバリエーションのあるイラストを描く余裕がなかったんですけれど、けっこうお任せだった『オレンジロード』はどっちかというと芸能プロの社長みたいな感覚で、「預けてもらった大事なタレントをどう売っていこうかな」みたいな視点で描いていました。

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 こういうところは原作に思い入れある者には気になる。

 高田明美氏の原作と距離のある作風で原作のキャラクターを「預けてもらった」ものとみなして、「芸能プロの社長みたいな感覚」で描いていったのであるから、原作と違う方向に行ってしまったわけである。

 原作でいいと思っていた絵が、アニメ版でどのように表現されているかと期待していると、全く違う絵になっていたり、全く出てこなかったりして、がっかりすることが多かった。

肉感的?

 もう一つ気になったところ。

 インタビュアーが、高田明美氏のキャラクターデザインは原作と比べて「肉感的」だと語っているところがある。

まつもとさんはポップで軽い印象の絵でしたからね。一方、高田さんが再構築したキャラクターはかなり肉感的というか。

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 高田明美氏のキャラクターデザインは「肉感的」であろうか? 特に、原作と比べて「肉感的」であろうか?

 そもそも高田明美氏の絵柄は「肉感的」でなかったゆえに、「うる星やつら」のキャラクターデザインに起用されたのでなかったか?

 高田明美氏のキャラクターデザインは、顔を大きく、体を小さくデフォルメしたものであって、「肉感的」ということから遠ざかっているように見える。

高田 CDを出していたユーメックスの女性担当の方がかなりイケイケな人で、「じゃあ今度はこういう路線を狙ってみようか!」と次々とそういうシチュエーションを注文してくるんですよ。「恥ずかしい!」って言いながら描いていました。

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 CDでは何故に高田明美氏の絵ばかり使われて原作の絵が使われなかったのであろうか?

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