伊藤詩織氏の事件に対する疑問

広告
政治
広告

(※当サイトはアフィリエイト広告を利用しています)

 2020年9月に、「TIME」誌が2020年世界で最も影響のある100人を発表した。その中に、台湾の蔡英文総統、香港のネーサン・ローが入っていることを知って、世界の多くの人の注目を集めてよかったと思っていると、伊藤詩織氏もその中に入っているという。

 伊藤詩織氏が裁判所の前で勝訴と書いた紙を持っている写真が掲載されている。

 その記事を書いているChizuko Uenoというのは、あの上野千鶴子氏であろうか?

 伊藤詩織氏は、「TIME」誌が「世界で最も影響ある100人」のうちの1人に選ぶほど大きな存在である。

 そこで、控訴審に際して、私がこれまで伊藤詩織氏の事件について考えたことをまとめておこうと思った。

広告

一方的な報道

 2019年12月18日、裁判所の前で勝訴の紙を持ったコート姿の女性が一斉に報道された。

 私はそれまでその事件について全く知らなかった。伊藤詩織氏の勝訴をよしとする報道ばかり並んでいるのをみて、それだけ事実関係が明らかになっているのだろうと思った。

 しかし相手の山口敬之氏は直ちに控訴するという。言い分があるということである。どういう言い分があるのか? 多くのメディアは伝えないので、自分でしらべてみた。

 しらべてみると、事実はそれほど明らかではない。山口敬之氏の主張は相当に筋が通っている。現状のように一方的に報道されるような事件ではないのではないのではないかと思った。

 左翼勢力が左翼運動として伊藤詩織氏を支持しているように見えることも気になった。事件に対する判断は、あくまでも事件そのものを検証することによってきまるべきであるのに、伊藤詩織氏を支持している人たちの中に政治的な党派性によってきめようとしている人が多いように見えた。

 ここでは、政治的な党派性と関係なく、事件そのものについて考える。

資料

 伊藤詩織氏の主張は著書「Black Box ブラックボックス」(文藝春秋者、2017年)にある。


Black Box

 山口敬之の主張は、「月刊HANADAプラス」にある。

事件の概要

伊藤詩織氏の主張

 2015年4月3日金曜日の夜、伊藤詩織氏は山口敬之氏と待ち合わせして、山口敬之氏のいきつけの串焼き屋、鮨屋で食事をした。(「ブラックボックス」45~48頁)

 山口敬之氏は伊藤詩織氏に、TBSが伊藤詩織氏をプロデューサーとして採用する話があると語った。二人が会ったのはそのことのためであった。(同、42~45頁)

 伊藤詩織氏は二軒目の鮨屋で二度目にトイレに入った時から「記憶はない」という。(同、49頁)

 伊藤詩織氏が目を覚ました時に、山口敬之氏に「のしかかられていた」。(同、49頁)

 伊藤詩織氏は「トイレに行きたい」といって、「トイレに駆け込んで鍵をかけた」。(同、50頁)しかしトイレから出ると、「再びベッドの引きずり倒された」。(同、50頁)それに対して伊藤詩織氏は「抵抗し続けた」。(同、51頁)そして英語で「罵倒」した。(同、51~52頁)山口敬之氏は「「ごめんね」と一言謝った」。(同、53頁)伊藤詩織氏は「服を急いで身にまとった」、そして「荷物をまとめて足早に部屋を出た」(同、54頁)

山口敬之氏の主張

手記

 山口敬之氏によると、伊藤詩織氏は「自分の酒量を過信して飲みすぎた」。(【独占手記】私を訴えた伊藤詩織さんへ「前編」)

 山口敬之氏は伊藤詩織氏をホテルの自分の部屋に連れて行ったことについて、「神奈川県に住んでいるあなたを送っていったら作業が時間内に終わらない。しかし、あなたは自力では帰れそうにない。私はやむなく、当時逗留していたホテルで休んで酔いを醒ましてもらい、自分の作業を終えてから送って帰るしかないと判断しました。」と説明している。(同)

 そして「私はあの日、あなたに薬物を飲ませたり、いやがるあなたを部屋に連れ込んだりしなかったのと同様に、部屋のなかでもあなたの意思に反する行動は一切していない」と語っている。(同)

 同意があったということである。

 伊藤詩織氏は「「朝まで意識がなかった」のでは決してなく、未明の時間に自ら起き、大人の女性として行動し、そしてまた眠った」という。(同)

 そしてその後のことについて、「1度未明に起きたあと、再び眠りに落ちたあなたは、朝になってもう1度起きた。そして、私とごく普通の会話をし、ごく普通にホテルの部屋を出ていった。」と語っている。(同)

二段階の問題

 山口敬之氏の、伊藤詩織氏に対する反論は、二段階になっている。多くの人がそのことを知らないのではないかと思う。

 第一段階の問題は、性交に対して伊藤詩織氏の同意はあったか? という問題である。

 その第一段階の問題に対して、伊藤詩織氏は同意はなかったといい、山口敬之氏は同意はあったという。

 山口敬之氏によると、伊藤詩織氏が2015年に訴えて、2017年まで刑事事件として問題とされていたのは、性交に同意があったかどうか、というこの第一段階の問題であった。

 ところが2017年から伊藤詩織氏は、それまでと異なる主張をしだした、と山口敬之氏側は言う。それが第二段階の問題である。

 伊藤詩織氏が2017年から言い出したことは、著書「ブラックボックス」にまとめられている。

 伊藤詩織氏は「ブラックボックス」において次のように語っている。

 伊藤詩織氏は、前の夜の二軒目の鮨屋で気を失って、目を覚ますとレイプされていた。(「ブラックボックス」、49頁)しばらく犯された後に、一度トイレに逃れたが、出てきたところをベッドに押し付けられた。しばらく抵抗すると山口氏は動きを止めた。(同、51頁)そこで伊藤氏は着替えて「ホテルの前からタクシーに乗った」。それは「五時五十分頃」であった。(同、55頁)

 以上の記述を考えると、伊藤詩織氏が目を覚ましてから、ホテルを出てタクシーに乗った「五時五十分頃」まで、それほど時間はたっていなかったと思われる。伊藤詩織氏は「目覚めたのはホテルを出た時間から逆算して午前五時台であることは確かだった」と語っている。(同、92頁)

 それに対して山口敬之氏は次のように語っている。

 伊藤詩織氏は「未明の時間に自ら起き、大人の女性として行動し、そしてまた眠った」。そして再び眠って、起きた後に「ごく普通の会話をし、ごく普通にホテルの部屋を出ていった。」という。(同)

 山口敬之氏によると、山口敬之氏のホテルの部屋で、伊藤詩織氏はしばらく眠った、そして未明に起きた時に、性交は行われた。その後に二人は再び眠った。そして、朝起きて、会話して別れた。

 山口敬之氏側によると、はじめに問題とされたのは、未明に行われた性交に、同意があったかどうかということであった。

 ところが伊藤詩織氏は「ブラックボックス」において、性交は、伊藤氏がホテルを出る少し前の「五時台」に行われた、と言い出した。

 伊藤詩織氏は「五時台」に目が覚めた後の記憶はあると言っている。記憶がある時間帯に、「ブラックボックス」に書かれているような強姦、暴行、強姦未遂があった、というのである。

 それに対して山口敬之氏は、伊藤詩織氏が「ブラックボックス」に書いているような、「五時台」のことは、伊藤詩織氏が2017年から言い出したことであって、それまで言われておらず、問題とされていなかったという。

 要するに、第二段階の問題とは、伊藤詩織氏が「ブラックボックス」において語っているような、朝五時頃の強姦、暴行は、虚偽ではないか、という問題である。

考察

ブラックアウト

 まず第一段階の問題、性交に同意があったか、ということについて。

 山口敬之氏は捜査員から「ブラックアウト」ということによって説明できると言われたという。

 「ブラックアウト」とは「アルコールの影響で、記憶の一部または全部が欠落してしまう現象」である。(【独占手記】私を訴えた伊藤詩織さんへ「前編」)

 伊藤詩織氏はアルコールによって記憶がなくなった、とすると、伊藤詩織氏が未明のことについて記憶がないと言うことと、伊藤詩織氏は性交に同意していたと山口敬之氏が言うこととは、矛盾しない、というのである。

 山口敬之氏は伊藤詩織氏に対して「あなたは記憶がないからこそ、「ブラックアウトではなかった」と断言することは絶対にできない。」といっている。(【独占手記】私を訴えた伊藤詩織さんへ「後編」)

 たしかに伊藤詩織氏には記憶がなかったのであるから、その記憶のない時間帯において、山口敬之氏との性交に同意していた可能性を否定することはできない。

 伊藤詩織氏は「ブラックボックス」において、警察に「密室の中で起こったことは第三者にはわからない」、「ブラックボックス」と説明されたという。(「ブラックボックス」、172~173頁)

 しかし次のように反論している。

しかし、意識の無い状態で部屋に引きずり込まれた人が、その後、どう「合意」するのだろうか? こんなことを克明に証明しなければならないなら、それは法律の方がおかしいと思う。

「ブラックボックス」、173頁

 伊藤詩織氏は、「意識の無い状態で部屋に引きずり込まれた」ので、「合意」することができないというのである。

 しかし伊藤詩織氏は、他のことにおいて、その記憶の無い時間帯における自分の言動を、自分の意思によるものだと主張している。

 4月3日の夜、鮨屋からホテルまで二人がタクシーで行った時に、伊藤詩織氏が「近くの駅で降ろして下さい」と言ったというタクシー運転手の証言を聞いて、伊藤詩織氏は、「やはり、最後まで自分は家に帰ろうとしていたのだ」と書いている。(同、126~127頁)

 伊藤詩織氏が、記憶の無い時間帯に昏睡状態であったとすると、性交に同意しなかったということはできる。しかしそうでなかったことは、伊藤詩織氏自身が認めていることである。

 伊藤詩織氏は「法律の方がおかしいと思う」と言うが、伊藤詩織氏が性交に同意したかしなかったか、第三者にも、伊藤詩織氏自身にもわからないのに、強姦罪は成立すべきであろうか?

 まとめよう。

 伊藤詩織氏が記憶のない時間帯に性交が行われた。伊藤詩織氏がその性交に同意していたかどうかは、第三者にはわからない。伊藤詩織氏自身にもわからない。

Tシャツ

 伊藤詩織氏が性交に同意していたかどうか、第三者にも、伊藤詩織氏自身にもわからない。

 そこで前後の状況から考えるほかない。

 伊藤詩織氏の「ブラックボックス」と、山口敬之氏の手記とを読み比べて、Tシャツのことは決定的ではないか、と私は思った。

両者の主張

 伊藤詩織氏は、ホテルの山口敬之氏の部屋から出るときに、山口敬之氏のTシャツを身に着けていた。そのことは、山口敬之氏も、伊藤詩織氏も、認めていることである。

 山口敬之氏によると、伊藤詩織氏は「ブラウスが少し生乾きなんだけど、Tシャツみたいなものをお借りできませんか」といった。それに対して山口敬之氏は「別に断る理由もなかったので、パッキング途中のスーツケースを指し、「そのなかの、好きなものを選んで着ていっていいですよ」」といった。そこで伊藤詩織氏は山口敬之氏の「Tシャツのうちの1つを選び、その場で素肌に身に着け」た。(【独占手記】私を訴えた伊藤詩織さんへ「後編」)

 山口敬之氏はそのことに関して「レイプの被害に遭ったと思っている女性が、まさにレイプされた翌朝、レイプ犯のTシャツを地肌に進んで身に着けるようなことがあるのでしょうか?」と言っている。(同)

 レイプされた直後に、自分をレイプしていた人のTシャツを身に着けることに抵抗を感じない人は少ないのではないか、と私も思う。特にTシャツは肌に触れる面積の広いものである。

 伊藤詩織氏も部屋に帰るとすぐに「ゴミ箱に叩き込んだ」と語っている。(「ブラックボックス」、55頁)

 しかし伊藤詩織氏は、部屋に帰るとすぐに「ゴミ箱に叩き込んだ」という気持ちを持っていたのに、部屋に帰るまでそのTシャツを身に着けるという、その気持ちに反することをしていた。

 伊藤詩織氏はTシャツを身に着けたことについて次のように書いている。

ようやく見つけたブラウスは、なぜかびしょ濡れだった。なぜ濡れているのか聞くと、山口氏は「これを着て」とTシャツを差し出した。
 他に着るものがなく、反射的にそれを身につけた。

「ブラックボックス」、54頁

 これによると、伊藤詩織氏は自ら進んで山口敬之氏のTシャツを身に着けたのではない。ブラウスが「びしょ濡れ」で、他に着るものがなく、何か着るものをもとめていたところに、山口敬之氏がTシャツを差し出していたので、「反射的」に身に着けた、というのである。

 しかしよく考えてみるとおかしいようである。

疑問一

 第一に、伊藤詩織氏は、少し前まで自分をレイプしていた人のTシャツを借りなくてはならないほどの状況にあったであろうか?

 そういう状況にあったとすると、Tシャツを借りてもしかたがないということになる。

 たしかにブラウスは「びしょ濡れ」であった。「びしょ濡れ」のブラウスは着心地のいいものではないであろう。しかしレイプされた直後である。着心地がよくなくても、部屋を出ることを優先するのではないか?

 ましてや自分のブラウスが「びしょ濡れ」であるからといって、その代わりに、少し前まで自分をレイプしていた人のTシャツをわざわざ借りて着る人がいるだろうか?

 その上に、伊藤詩織氏は当時コートを着ていた。(「ブラックボックス」、47~48頁)

 Tシャツを借りなくては人前に出ることができない状況であっただろうか?

疑問二

 第二に、山口敬之氏がTシャツを差し出した、ということは、不自然ではないか?

 「ブラックボックス」では山口敬之氏がTシャツを差し出したと書かれている。山口敬之氏が差し出したのであって、伊藤詩織氏がもとめたのではないということである。

 しかし伊藤詩織氏がTシャツを山口敬之氏にもとめないのに、山口敬之氏が自分からTシャツを伊藤詩織氏に差し出すであろうか?

疑問三

 第三に、伊藤詩織氏が山口敬之氏のTシャツを「反射的」に身に着けた、ということは、不自然ではないか?

 「反射的」に身に着けたということは、よく考えずにしたということである。伊藤詩織氏は、ほかに着るものがないことで頭がいっぱいになっていたので、少し前まで自分をレイプしていた人のTシャツを身に着ける、ということを考えていなかった、ということであろうか。

 しかしブラウスが「びしょ濡れ」だったからといって、今身に着けるTシャツは、少し前まで自分をレイプしていた人のものだ、ということを意識しないでいることができるであろうか?

 その上に、Tシャツは、身に着けるのにそれなりに手間がかかるものである。両手を通し、首を通さなくてはならない。そして広い範囲の肌と触れなくてはならない。上半身は、人が身近に感ずるところである。

 Tシャツを身に着ける間に、そのTシャツは少し前まで自分をレイプしていた人のものである、ということに思いを致さないでいられるであろうか?

第二段階の問題との関係

 伊藤詩織氏が山口敬之氏のTシャツをわざわざ借りて、部屋に帰るまで身に着けていた事実は、伊藤詩織氏がその少し前まで山口敬之氏に強姦され、暴行されていたという「ブラックボックス」の記述とつじつまが合わないのではないか?

早朝の出来事について

 伊藤詩織氏が「ブラックボックス」において、4月4日の早朝、ホテルの山口敬之氏の部屋で起こったこととして書いていることには、いろいろと気になるところがある。

 第一に、山口敬之氏は何故に伊藤詩織氏が目を覚ます時にレイプしたのか?

 伊藤詩織氏が語るように、山口敬之氏がデートレイプドラッグを使っていたとしても、伊藤詩織氏をアルコールで酔わせたとしても、伊藤詩織氏が目を覚ます前にするためではないか?

 第二に、伊藤詩織氏が目を覚ました後に、山口敬之氏は何故に事態をつくろおうとか、関係を修復しようとかいうことを全くしないのか?

 山口氏は社会的地位を持っていたゆえに、そういうことを気にしなかったと伊藤詩織氏は主張しているようである。

 しかし山口敬之氏はそれほどの地位をもっていただろうか? 現に伊藤詩織氏に訴えられているではないか? 伊藤詩織氏が語っているような山口敬之氏の言動の証拠を伊藤詩織氏が持っていたならば、山口敬之氏は追い詰められていたのではないか?

 第三に、伊藤詩織氏は山口敬之氏のレイプから一度トイレに逃げ込むことができたのに、そのトイレの中で得られる安全をすぐに捨てて、ドアを開けて自分を直前までレイプしていた人のところへ行った、というが、おかしくないか?

 第四に、伊藤詩織氏は山口敬之氏に対して必死の抵抗をし、英語で罵倒したと言っている。山口敬之氏に反対する意思をそれだけ明らかにしたというのである。

 ところが、伊藤詩織氏はその後にそういう意思を示さなくなっている。それどころか、山口敬之氏のTシャツをわざわざ身に着けている。不自然ではないか?

 山口敬之氏も、伊藤詩織氏が自分に反対するところをそれだけはっきりと見たのに、全く関係を修復しようとしていない。これまた不自然ではないか?

カルテ

 第二段階の問題に関しては、カルテという証拠がある。

 判決直後の双方の記者会見で、カルテのことがとりあげられている。

SankeiNews
【ノーカット】ジャーナリストの伊藤詩織氏が日本外国特派員協会で会見 2019/12/18

 34分40秒あたりで伊藤詩織氏が語っている。

「ブラックボックス」とカルテ

 「ブラックボックス」でも書かれているが、伊藤詩織氏は、そのことのあった4月4日土曜日、自分の部屋に帰った後に、産婦人科へ出かけた。(「ブラックボックス」、61頁)

 その産婦人科のカルテには「coitus(性交)AM2~3時頃、コンドームが破れた」と記されていた。―その時に伊藤詩織氏は医師に性交が行われた時間帯はAM2~3時頃であったと言った、ということである。

 「ブラックボックス」において伊藤詩織氏は、「五時台」に目を覚ました時にレイプされていた、と語っている。(「ブラックボックス」、92頁)

 当時のカルテに記載は、「ブラックボックス」の記述と合わないのである。

 それに対して山口敬之氏が、性交は未明に行われて、それから「五時台」に別れるまで二人は眠っていた、ということは、カルテの記載と合う。

 山口敬之氏側は、このことを証拠として、伊藤詩織氏が2017年から事実に反することを言い出したと主張している。第二段階の問題の証拠になると言うのである。

伊藤詩織氏の説明

 伊藤詩織氏は、そのカルテの記載は正確でないと主張する。伊藤詩織氏はその時に医師にそういうことを言わなかったというのである。

 伊藤詩織氏は、その時に医師との間でなされたやりとりについて、記者会見で次のように説明している。

 医師は性交の時間帯を聞いただけであった。それに対して伊藤詩織氏は早朝とこたえた。それだけであった。コンドームのことなど一言も言わなかった。(All she said was, “what time did it fail?”, and I said “early morning”. That’s it. That was the only conversation. We never discussed about condome.)

 「ブラックボックス」には、「四十歳前後のショートカットの女医さん」が「いつ失敗されちゃった?」と「淡々と言い放ち、パソコンの画面から顔も上げずに処方箋を打ち込む姿は、取りつく島もなかった」とある。(「ブラックボックス」、62頁)

疑問

 2019年の第一審の判決では、伊藤詩織氏の言う通りに、「カルテの記載内容の正確性には疑義がある」とされた。2019年の伊藤詩織氏の主張によって、2015年の当時のカルテの記載内容の正確性を否定したわけである。

 しかし伊藤詩織氏の言うことはおかしくないか?

 伊藤詩織氏によると、その医師は、カルテに性交の時刻を書くために、伊藤詩織氏に聞いた。それに対して伊藤詩織氏は「早朝」とだけ答えた。そこで医師はカルテに性交はAM2~3時に行われたと記した。そう伊藤詩織氏は語っている。

疑問一

 第一に、医師はそういう場合、聞き返すのではないか? 聞き返さないということがあるであろうか?

 医師は、カルテに性交の時間帯を書くために、伊藤詩織氏にその時間帯を聞いた。聞く必要があった。

 それに対して、伊藤詩織氏は「早朝」とだけ答えた。医師が答えてほしいことを答えなかったのである。

 しかし医師はカルテに性交の時間帯を書かなくてはならない。そういう場合に、医師はまず聞き返すのではないか?

 伊藤詩織氏によると、伊藤詩織氏が「早朝」とだけ答えたのを聞いて、医師は聞き返すことがなかったようであるが、そういうことがあるであろうか?

疑問二

 第二に、医師が自分で勝手に他人の性交の時間帯を捏造して記載するだろうか?

 伊藤詩織氏の説明によると、医師は、性交の時間帯について、伊藤詩織氏が「早朝」とだけ答えたことを受けて、勝手に自分で「AM2~3時頃」と書いた。

 医師は、目の前に伊藤詩織氏がいるのに、伊藤詩織氏に性交の時間帯を聞き返すこともせず、自分で勝手に性交の時間帯を考え出してカルテに記載したというのである。これはおかしなことではないか?

 まじめな医師であれば、捏造などしない。

 ふまじめな医師であれば、自分で勝手に他人の性交の時間帯を考え出すような面倒なことをしないのではないか?

疑問三

 もう一つ。

 伊藤詩織氏は医師に「early morning(早朝)」と言ったというが、「早朝」という言葉は、どちらかというと、「2~3時頃」より、5時頃をさすのではないか?

 「早朝」と言われて、「2~3時頃」のことだと思うということは、不自然ではないか?

証拠の重み

 2019年の判決では、2019年の伊藤詩織氏の主張によって、2015年の当時のカルテの記載内容の正確性を否定した。

 しかし2019年の伊藤詩織氏の主張は、2015年のカルテの記載と比べて、証拠としての価値は劣る。

コメント

タイトルとURLをコピーしました