「きまぐれオレンジ★ロード」TVシリーズ第1話

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きまぐれオレンジ☆ロード
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 「きまぐれオレンジ★ロード」TVシリーズ第1話を見て気づいたことを書いてみる。


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原作

 「きまぐれオレンジ★ロード」TVシリーズ第1話は、原作漫画の第1話をもとにして作られている。


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 TVシリーズの作り手は、原作漫画の第1話をどうアニメ化したか?

タイトル

 まずタイトルを比べてみる。

 TVシリーズ第1話のタイトルは「転校生!恥ずかしながら初恋します」。

 原作漫画の第1話のタイトルは「まっ赤な麦わら帽子」。

 原作は「まっ赤な麦わら帽子」だけ。

 TVシリーズは「初恋」と言っていて、それも「初恋します」というようにそう言う主人公を出している。

階段の場面

 物語のはじめの階段の場面でも、原作漫画とTVシリーズとで感じが大きく違う。

季節

 原作の季節は夏という感じがする。あるいは夏に向かう季節。

 くっきりと明るい日差し。木の葉を揺らすさわやかな風。

 私がTVシリーズをみて物足りないと思うのは、原作は夏を描いているのに、TVシリーズはその夏を描いていないことによると気づいた。

 もっと鮮やかな色がほしいのに、控えめな色になっている。

 TVシリーズでは風に舞う桜の花びらが描かれている。

 4月のはじめを桜の花びらによって表現する伝統的なやり方であろうか。

 漫画「きまぐれオレンジ☆ロード」では夏は重要な意味をもっている。

 最終回の最後のページで、「「永遠の夏」の時代」としての「80’s」がうたわれている。

 「きまぐれオレンジ☆ロード」は夏を描いた漫画ということもできる。

 そういう作品であるゆえに夏から始まるのである。―夏から始まって夏に終わる。

 ここで「夏」というのは「永遠の夏」という意味。

 まつもと泉先生は、よしまさこ先生との対談でも、80年代について「夏、夏っていうイメージがすごく強くなかったですか」と言っている。

 それに対してよしまさこ先生は「そう!いつでもピーカンっていう感じでしたよねぇ。冬でも夏!(笑)」と答えている。(「もう一度あいたい」)


もう一度あいたい

 「冬でも夏!」という意味の「夏」。

 第1話が掲載されたのは「週刊少年ジャンプ」1984年第15号3月26日号。

 第8話がゴールデンウィークの話なのでそれより前にちがいない。

 それでも「夏」なのである。

 そういう意味の「夏」を、TVシリーズははじめから描いていないのではないか?

都会

 原作漫画の階段は、都会の階段という感じがする。

 TVシリーズの階段は住宅街の中にある階段である。

 漫画「きまぐれオレンジ☆ロード」は第1巻の袖で原作者が書いているように「シティ感覚SFラブストーリー(ギャグとゆー話もあるが…)」である。

 都会を主題にしている。

 TVシリーズはそうではない。

主人公

 TVシリーズでは、主人公の春日恭介を原作よりわざとかっこわるく描いているように見える。

 階段を数えながら上るところでもそうである。

 TVシリーズ第1話は、階段を上る主人公の足元から始まっているのであるが、そのことによって主人公をかっこよく描こうとしているようには見えない。

 原作の主人公はコンバースのスニーカーを履いている。格好をよくしている。

 原作の主人公は階段を駆け上っている。

 TVシリーズの主人公は歩いて階段を上っているように見える。

 飛んできたまっ赤な麦わら帽子を主人公が飛び上がってつかむところでも、原作漫画では体のばねをつかってとっているように描かれているのに、TVシリーズではたまたま飛び上がるととれたように描かれている。

 TVシリーズの主人公が帽子をとった姿は、何かかっこわるく見える。

出会い

 まっ赤な麦わら帽子を手に取った春日恭介は、階段の上にいたその帽子の持主、鮎川まどかと出会う。

 その時の二人の距離感が、原作とTVシリーズとで違う。

 TVシリーズでは離れている。原作ではそれほど離れていないように見える。

 原作で鮎川まどかが初めて出て来たコマで、二人はそれほど離れていないように描かれている。

 TVシリーズで鮎川まどかが初めて出て来た絵では、二人の間にある距離、段差が強調されている。その次に二人がともに入った絵では、二人は離れていて、春日恭介は急な階段の下の方にいるように描かれている。

 上に現れた鮎川まどかに対して春日恭介は下から見る。―このことは春日恭介と鮎川まどかとの関係を象徴しているように見える。鮎川まどかは精神的に上にいるものとして現れる。それに対して春日恭介は精神的に下から見るのである。

 この場面の原作とTVシリーズの描き方の違いは、それぞれの、鮎川まどかと春日恭介の描き方の違いを示すものと考えることができる。

 原作においては、鮎川まどかが上、春日恭介が下ではあるが、二人はそれほど離れていない。それゆえに親しくなる。

 TVシリーズにおいては、鮎川まどかが上であることは原作より強調され、春日恭介が下であることも原作より強調されている。二人の間の距離は原作より大きい。それにもかかわらず鮎川まどかは春日恭介に好意を抱くとされている。

学校

制服の色

 原作漫画を先に読んでいると、ジャンプコミックス第6巻の表紙の青いセーラー服の印象が強くて、TVシリーズで灰色になっているのをみて物足りなく思う。


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小松、八田

 主人公春日恭介が転校してきた学校では、隣の席に小松、八田がいる。

 原作では小松しか出てこない。(原作で八田が出て来るのは第3話)

 原作の小松は「女の子好き」である。(JC1巻146頁)

 TVシリーズの小松もそのことは同じ。

 ただし原作の小松はTVシリーズと比べると中高生男子としてリアルに見える。

 TVシリーズの小松、八田は、「女の子好き」ということを誇張して作られたキャラクターに見える。ドタバタコメディのために作られたキャラクター。

 TVシリーズで、小松がすぐに同じ学校の女子の写真を出して見せるとか、八田がそれを見て鼻血を出して小松、春日にかけるとか、原作にないことであるが、ドタバタコメディであって、リアルではない。

鮎川まどか

 TVシリーズでは、鮎川まどかは音楽室で一人、サックスを吹いている。

 原作の鮎川まどかはサックスを吹かない。

 中学生でホームルームをさぼって音楽室で一人でサックスを吹いているというのはかなり特殊な方向に一人で突き進んでいる人である。

 そういう人と、原作よりかっこわるく取り柄なくされた春日恭介とは、釣り合うのか? と思ってしまう。

河原の乱闘

 春日恭介が妹とともに河原に行くと、河原ではひかるが大勢の不良学生の男に囲まれて傷つけられようとしていた。

 そこに土手から鮎川まどかが現れて、その男どもを倒していって、ひかるを救った。

 春日恭介はそこで出て来て、鮎川まどかに声をかける。

 原作では、学校の裏側で鮎川まどかとひかるが煙草を吸っていたところに、春日兄妹が出くわして、春日恭介が鮎川まどかに声をかけたことになっていた。

違い

 原作を先に読んで、TVシリーズのこの場面をみると衝撃を受ける。

背景

・暗い雲が垂れ込めている。→原作で重じられる80’sの夏の感じではない。

・河原→原作で重んじられる都会ではない。

相手

 相手の不良学生も都会的ではない。

 量で迫ってくる。

 間抜けでもある。

鮎川まどか

 そういう相手に対して鮎川まどかは正面から戦っている。

 大男と腕力で戦う。そして勝っている。

 ピックを武器にするなど、荒唐無稽でもある。

 原作と違う。

超能力

 つっこみどころ。

 この乱闘の間、春日兄妹が離れたところから怖がって傍観しているところが描かれている。

 しかし春日兄妹がもっている超能力によって、乱闘を(気づかれないようにして)解決することはできたのではないか?

 少なくとも自分の身に危険はないのでは?

 春日恭介の妹のくるみの超能力はこの第1話のこの場面までに、たんすを飛ばすとか、離れた猫を引き寄せるとか、自分に向かって突っ込んでくるバイクをとめるとか、見せてきている。

再会

 乱闘の後に、春日恭介が鮎川まどかと交わす言葉は、原作と大体同じ。

 原作では、鮎川まどかが春日恭介の言葉によって心を動かしているところが描かれている。

 TVシリーズでは、原作の鮎川まどかが心を動かしたところでも表情を変えない。

 ここでも、春日恭介を原作よりかっこわるく描き、鮎川まどかを原作より高く描いているのである。

 その結果、この場面には恋愛ものの要素が少なくなっている。

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