日: 2022年5月7日

  • 「きまぐれオレンジ☆ロード」―原作の絵と高田明美氏の絵

    「きまぐれオレンジ☆ロード」―原作の絵と高田明美氏の絵

     数年前、久しぶりに「きまぐれオレンジ☆ロード」を読んで、また関心をもつようになった。

     その時に、私の知っている「きまぐれオレンジ☆ロード」とは違う絵が「きまぐれオレンジ☆ロード」の絵として出回っていることが気になった。

     それはアニメ版の絵であった。

     私はそれまでアニメ版のことを全く知らず、アニメ版の絵も見たことがなかったのである。

     アニメ版のキャラクターデザインは高田明美氏による。

     漫画「きまぐれオレンジ☆ロード」の絵と高田明美氏の絵との関係について考えてみた。


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    違い

     アニメ版の絵は、原作の絵とは違うものになっている。

    高田明美氏の言葉

     もともと高田明美氏の画風は、漫画「きまぐれオレンジ☆ロード」の画風とは距離のあるものであった。

     高田明美氏自身そのことを認めている。

    最初に絵を見た時は「私よりも、いのまた(むつみ)さんに頼んだほうがいいんじゃないか」ってちょっと思ったりもしたんですが。

    高田明美が明かす〝暇つぶし〟から始まった『パトレイバー』秘話

     そういう高田明美氏がアニメ版のキャラクターデザインを担当した。

     そしてもともと距離のある高田明美氏の画風をさらに推し進めていったようである。

    『うる星やつら』はあまりバリエーションのあるイラストを描く余裕がなかったんですけれど、けっこうお任せだった『オレンジロード』はどっちかというと芸能プロの社長みたいな感覚で、「預けてもらった大事なタレントをどう売っていこうかな」みたいな視点で描いていました。

    高田明美が明かす〝暇つぶし〟から始まった『パトレイバー』秘話

     「お任せだった」から、「預けてもらった」から、高田明美氏は自分の思うようにしたということのようである。

     原作の絵をアニメで再現しようとは考えていなかったようである。

     アニメ版に関しては、自分のものとして、自分の思うようにやっていこうと考えていたようである。

     以上の発言は下のインタビューから↓

    https://animageplus.jp/articles/detail/33157

    違和感

     アニメ版のキャラクターデザインは、もともと原作とは距離のある画風の高田明美氏が、自分の思うように描いたものであるから、それだけ原作の絵と離れたものになったのである。

     アニメ版の鮎川まどかは、原作の鮎川まどかとは性格が違うように見える。着るものも違う。

     「きまぐれオレンジ☆ロード」のようにキャラクターの絵が特に重要な作品で、アニメ版のキャラクターデザインを担当する人が「芸能プロの社長みたいな感覚で」自分の思うように売っていくということは、どうなのか、と思わないでもない。

    原作者の言葉

     114分あたり。

     寄せられた質問に答えるコーナーで、

     アニメ化された時にキャラクターデザインの高田明美さんの絵に刺激を受けたのでは?

    という質問があった。それに対して、

    「それはないです。高田明美さんじゃなくて、いのまたむつみさんの影響が結構強いんじゃないかなと思います」と答えている。

     漫画「きまぐれオレンジ☆ロード」の絵はいのまたむつみさんの絵の影響を受けている。原作者が自ら認めている。

     高田明美氏も認めている通りである。

     漫画「きまぐれオレンジ☆ロード」はアニメの絵の影響を受けていると言われるが、いのまたむつみさんの絵の影響を受けているのである。

     高田明美氏の絵の影響を受けたのではない。

     アニメ版が始まった後の漫画の絵はアニメ版の絵に近くなっていない。

     原作の絵は高田明美氏の絵の影響を受けたということは、他でも聞いたことがあるが、どこから出て来たのであろうか?

     漫画「きまぐれオレンジ☆ロード」の絵はいのまたむつみさんの影響を受けていることを考えると、いのまたむつみさんがアニメ版のキャラクターデザインをやることが正解だったのではないかと思われる。


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    「アニメージュ」1987年5月号

     「アニメージュ」1987年5月号には、TVシリーズのキャラクターデザインについての高田明美氏の言葉がある。(98頁)

    『ジャンプ』のイベント用アニメでもキャラデザを担当した高田明美さんのことばです。
    「今回は、より原作に近ずけたつもりです。~」

    「アニメージュ」1987年5月号、98頁

     1985年の『ジャンプ』のイベント用アニメでも高田明美氏はキャラクターデザインを担当していた。

     TVシリーズでは、その前回のキャラクターデザインより原作に近づけたというのである。

     どういうことか?

     見出しは「これなら原作ファンもナットク! 可憐さと色気を見事に調和させた高田”まどか”」となっている。

     前回のキャラクターデザインでは、原作ファンは納得しなかったということであろう。

     今回は、前回より原作に近づけたゆえに原作ファンも納得する、ということであろう。

     この記事には色々と興味深いところがある。

    原作ファンに気を遣っている

     TVシリーズの放映開始後に「アニメージュ」は「きまぐれオレンジ☆ロード」の原作ファンの声をかえりみなくなっていくが、この時には原作ファンに気を遣っていた。

    比較的

     「今回は、より原作に近ずけた」というのは前回と比べてのことである。前回より比較的に原作に近いということである。

     実際には、原作から離れている

     高田明美氏は具体的に次のようにしたと語っている。

    「~単行本の8~9巻あたりを参考に、等身を少し伸ばし、ちょっぴりおとなっぽい感じにしました」

    「アニメージュ」1987年5月号、98頁

     「単行本の8~9巻あたりを参考に」したというが、そこに描かれている高田明美氏の絵と、その参考にしたという「単行本の8~9巻あたり」の絵とは距離がある。


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    頭と体

     「等身を少し伸ばし」というのは、頭の大きさに対して、首から下の体の大きさを伸ばしたということではないかと思われる。

     「少し伸ばし」というのは、1985年の『ジャンプ』のイベント用アニメと比較して「少し伸ばし」たということであって、原作と同じようにしたということではない。

     アニメ版では、顔は大きく、体は小さくデフォルメされているが、原作漫画では、顔はそれほど大きくなく、体はそれほど小さくない。

     JC5巻あたりから、いのまたむつみさんの影響を受けて絵柄が変わって、頭は大きく、顔は小さくなっているが、体は小さくなっておらず、むしろさらにリアル寄りになっている。


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     アニメ版の絵では、首から下が小さくデフォルメされていることと関連して、原作ほど力を入れて描かれていないように見える。

     漫画「きまぐれオレンジ☆ロード」では、首から下の線が力を入れて描かれていて、美しいところが多い。そういうところがアニメ版ではなくなっている。

     アニメ版で顔が大きく体が小さくデフォルメされていることと関連してか、原作と構図が違うところが多い。

     TVシリーズの多くは原作の話をもとにしているのに、原作と同じような絵は少ないようである。

    太さ

     アニメ版では、顔が大きく、体が小さくデフォルメされている上に、その顔がまるっこい。

     原作はシュッとしているのに、アニメ版はまるっこくなっている。

     漫画「きまぐれオレンジ☆ロード」の「スタア誕生!の巻」でTVに映った自分たちをみて、くるみが「ぎゃーっ/あたし/こんなに/ふとって/ないよーっ」といい、まなみが「テレビって/ふとって/うつるんだって」というところがある。(JC17巻、41頁)


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     初めて読んだ時には、一般論を言っているのかと思っていた。

     ある時、TVシリーズの絵のことを言っているのではないかと思った。

     たとえばその頁のひかるがステージ上で歌っている絵のような細く美しい四肢の絵はTVシリーズにはないのではないか?

     この一連の話には、TVシリーズのことを扱っているところがある。(「春はアイドル!」では、春日恭介が独白で「わけで」を連発するとか、くるみが「ナイト・オブ・サマーサイド」を歌うとか)


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    対立

     高田明美氏によって「きまぐれオレンジ☆ロード」のアニメ版の絵は、原作の絵から離れたものとなった。

     アニメ版の絵のファンも少なくないようであるが、原作ファンで違和感を感じた人は多かったと思われる。

    「アニメージュ」

     雑誌「アニメージュ」は、アニメ版を持ち上げて原作を下げていたが、絵に関しては原作を評価していた。

     「アニメージュ」1988年4月号の「TVファイナル特集」で、「原作があくまでもキャラクターの絵が魅力の、軽~~~いノリのラブコメだった」と書いている。

     後半は原作を下げているが、前半は、原作の「キャラクターの絵が魅力」であることを認めている。

     1988年6月号の「スタッフ版アニメグランプリ」の「アニメーター部門」で、小黒祐一郎氏が「きまぐれオレンジ☆ロード」TVシリーズの総作画監督の後藤眞砂子氏の仕事を称賛しているが、高田明美氏のことは触れられていない。

    「BASTARD‼」

     漫画「きまぐれオレンジ☆ロード」の絵は連載後も人気があったと思われる。

     たとえば「きまぐれオレンジ☆ロード」の連載が終わった後に、「きまぐれオレンジ☆ロード」のアシスタントをやっていた萩原一至先生の「BASTARD‼」の連載が始まっているが、その「BASTARD‼」の人気はそのことと関係があると思われる。


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     大塚英志氏は「新文化」1988年11月17日号の「究極のおたくコミック」という文で、「BASTARD‼」の第一巻が「発売当日に都内の書店で瞬時に売り切れ、この種の出版物は必ず手に入れるぼくの周囲のマニア上がりのまんが家や編集者たちでさえ誰一人買えなかったというありさまであった」ことについて、二つの理由によって説明されていたという。

    「BASTARD‼」の人気の背景については既にいくつかの<解説>がされている。すなわち、ファミコンブームによって読者にポピュラーとなった「ドラクエ」的な<剣と魔法モノ>を少年誌で初めて手がけたこと、加えて作者は「きまぐれオレンジ☆ロード」の作者であるまつもと泉の元アシスタントであり、とにかく美少女キャラが可愛い。とりあえずこの二点がヒットの理由だとされている。

    「定本 物語消費論」、角川書店、平成13年、98頁

     「BASTARD‼」の異例の売り上げの二つの理由の一つは「きまぐれオレンジ☆ロード」に近い美少女キャラの絵だったというのである。

     それだけ「きまぐれオレンジ☆ロード」の絵は力があったということではないか?

    キャラクターグッズ

    「きまぐれオレンジ☆ロード」に関しては、アニメ版の絵によるキャラクターグッズが多く、原作の絵によるものは少ないように見える。

     同時代のあだち充作品、高橋留美子作品と比べても原作の絵によるものが少ないようである。

     上に述べたように原作の絵に力があったとすると、奇妙なことのようでもある。