映画「踊るニューヨーク」(原題は “Broadway Melody 1940” )は、1940年に公開された映画。
フレッド・アステアは1933年から1939まで、RKOでジンジャー・ロジャーズと共演した映画を連発していたが、そのRKOから離れ、ジンジャー・ロジャーズからも離れて、MGMで出演したのがこの映画「踊るニューヨーク」。
それまでRKOのスターであったフレッド・アステアが、MGMのスターであったエレノア・パウエル(Eleanor Powell)と競演した映画である。
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映画「踊るニューヨーク」のあらすじ
ジョニー(フレッド・アステア)はキング(ジョージ・マーフィー)と組んでダンスを踊っていた。
ところでジョニーはひそかにクレア(エレノア・パウエル)というダンスのスターを愛していた。
たまたまクレアのダンス・パートナーを探していたケイシー(フランク・モーガン)が、ジョニーのダンスをみてジョニーをクレアの相手役にしようと考えていた。
ところが誤解によって、ジョニーではなくキングがクレアの相手役とされることになった…。
映画「踊るニューヨーク」のみどころ
ダンス
映画「踊るニューヨーク」のみどころは、RKOのスターであったフレッド・アステアと、MGMのスターであったエレノア・パウエルの競演である。
ジュークボックス・ダンス
二人で踊るのは、映画後半。
一回目はジュークボックスの音楽に乗ったダンス。
ランチの後、ダンスのやり方について話しながら互いにダンスをやり合っていると、店長が気を利かしてジュークボックスの音楽を流す。その音楽に乗って二人でタップダンスを始める。
気軽な感じで始めて、二人で技巧を凝らしたタップダンスを楽しそうに踊っているところは見ごたえがある。
ビギン・ザ・ビギン
終盤、コール・ポーターの名曲「ビギン・ザ・ビギン」(”Begin the Beguine”)に合わせた大がかりなダンスがある。
その中でも最後にフレッド・アステアとエレノア・パウエルが笑顔で出て来て二人で技巧を凝らしたタップダンスを踊るところは、高く評価されている。
フレッド・アステアとエレノア・パウエルのダンス
エレノア・パウエルはジンジャー・ロジャーズなどとは違う類のダンサーである。
フレッド・アステアが腰に手をまわしても、背筋が非常にしっかりしていて、フレッド・アステアの腕に包まれたようにならず、ジンジャー・ロジャーズなどのように「ロマンティック」にならない。
フレッド・アステアも次のように語っている。
She “put ‘em down” like a man, no ricky-ticky-sissy stuff with Ellie.
Steps in Times, p.242
Steps in Time: An Autobiography
日本語版。
彼女は男のようにまわりを圧倒する。めめしいところがまったくない。
「フレッド・アステア自伝」、314頁
フレッド・アステア自伝 Steps in Time
そういうエレノア・パウエルとフレッド・アステアのダンスは、二人が張り合うようなものになっている。
フレッド・アステア一人のダンス
フレッド・アステアが一人で踊るところもある。
エレノア・パウエルの演ずる人物に対するひそかな想いを、 “I’ve Got My Eyes on You” を歌ってから、エレノア・パウエルの写真を持って踊る、というかたちで表現している。
その他
ジョージ・マーフィーも、フレッド・アステアと、あるいはエレノア・パウエルと、あるいは三人で多く踊っている。
映像美
映画「踊るニューヨーク」は背景の美術が凝っている。
白黒であるが、白黒が豪華に見えるように作られている。
フレッド・アステアによると、はじめカラーで作られることになっていたが、時勢のために白黒で撮ることになったようである。
It was my understanding originally that Broadway Melody would be made in color, and now I was informed that owing to the ominous state of world affairs, it would not.
Steps in Time, p.241
Steps in Time: An Autobiography
日本語版。
私の元々の理解では、『踊るニューヨーク』はカラーで撮られるとのことだったのだが、険悪な世界情勢を考えてそうしないことになったと聞かされた。
「フレッド・アステア自伝」、313頁
フレッド・アステア自伝 Steps in Time
カラーでやるつもりであったのができなくなって、白黒に力を入れたのであろうか。
ストーリー
フレッド・アステアの演ずる人物がエレノア・パウエルの演ずる人物のことを心から愛していて、しかしその気持ちを隠しているという話は面白い。
しかしそういう話にするために、ジョージ・マーフィーの演ずる人物は悪者にされてしまって、かわいそうでもある。
ブロードウェイ・メロディー
原題 “Broadway Melody 1940” (「ブロードウェイ・メロディー」1940年版)が示しているように、MGMの「ブロードウェイ・メロディー」シリーズの1940年版。
エレノア・パウエルは1936年版、1938年版、そしてこの1940年版と続けて出ているが、それまで成り上がる役であったのが、1940年版ではスターの側になっている。
1938年版では、ジョージ・マーフィーはエレノア・パウエルと仲のいい役であったが、1940年版では、叱られる役になっている。
1940年版はフレッド・アステアが加わったことによって、1936年版、1938年版とは違う感じの作品になっている。
「踊るニューヨーク」の裏側
「踊るニューヨーク」についてのフレッド・アステアの言葉はフレッド・アステアの自伝にある。
フレッド・アステア自伝 Steps in Time
ボブ・トーマス著「アステア ザ・ダンサー」にはエレノア・パウエルの言葉がある。
アステア―ザ・ダンサー
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