「犯人の思う壺」? 安倍元首相銃撃事件以後の動きについての考察 ②紀藤弁護士等

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出口を指し示して導く人 政治
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 安倍元首相が殺害された後、日本の社会も政府も犯人の望みを叶える方向に進んでいるのではないか、「犯人の思う壺」になる方向に進んでいるのではないか、と言われている。

 そのことについて詳しく考える。

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 犯人の望みを叶える、ということは、犯人の望みと、それを叶える動きとからなる。

 まず安倍氏を銃撃した山上徹也の意図について↓

 次に犯人の望みを叶える動きについて考える。

 ここでは事件の後の日本を導いてきた紀藤正樹弁護士を取り上げる。

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紀藤弁護士の二つの主張

 事件の後の紀藤弁護士の主張は、7月11日の紀藤弁護士のツイートにおいて明確に示されている。

 紀藤弁護士の7月11日のツイートには二つの主張がある。

・安倍氏殺害事件は統一教会の反社会性が暴発したもの

・安倍氏殺害事件は安倍氏が統一教会に対して適切に対処しなかったゆえに起こった

 第1の主張によると、事件の原因は統一教会の「反社会性」にある。

 問題を解決するためには、統一教会の「反社会性」をどうにかしなくてはならないということになる。

 第2の主張によると、事件の原因は政治家と統一教会の関係にある。

 問題を解決するためには、政治家と統一教会の関係をどうにかしなくてはならないということになる。

その後の流れ

 その後、紀藤弁護士は統一教会の専門家のようなかたちで盛んにテレビに出演して、上のような主張を広めた。

 マスメディアも紀藤弁護士の主張する通りに統一教会の「反社会性」を問題とし、統一教会と政治家の関係を問題とした。

 共産党、そして立憲民主党もそのことを問題とし、岸田首相もそのことを問題とするに至った。

 たとえば2022年8月31日、岸田首相は、自民党所属国会議員は統一教会との関係を絶つと宣言した。

 これは紀藤弁護士等の第2の主張を受けたものということができる。

 第1の主張に関しては、紀藤弁護士はテレビで盛んに語ったほかに、2022年8月26日から開催された消費者庁の「霊感商法等の悪質商法への対策検討会」に委員として参加している。(霊感商法等の悪質商法への対策検討会の開催について

 岸田首相はそういう紀藤弁護士等の動きを受けて、2022年末に新法を成立させるに至った。

 そして2023年10月13日、岸田政府は世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対して解散命令請求を行うに至った。

 紀藤弁護士は「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する解散命令請求に関して、令和5年10月12日に行われた」盛山正仁文部科学大臣の臨時記者会見を「歴史に遺すべき素晴らしい」会見と評している。

 紀藤弁護士の望む通りのことを岸田政権は行ったということである。

 このように、紀藤弁護士の事件後の主張は7月11日のツイートにまとめられており、その主張にマスメディア、野党、そして岸田政権は従っていったのである。

犯人の望みを叶える

  紀藤弁護士の主張を「犯人の望みを叶える」ということから考えてみよう。

紀藤弁護士の主張と犯人の主張

 事件後の紀藤弁護士の二つの主張は、山上被告の二つの主張と対応している。

 統一教会の「反社会性」をどうにかしなくてはならないという紀藤弁護士の第1の主張は、統一教会について「人類の恥」という山上被告の考えと近いようである。

 政治家と統一教会の関係をどうにかしなくてはならないという紀藤弁護士の第2の主張のうち、安倍元首相と統一教会のこれまでの関係には問題があったということは、安倍元首相と統一教会の関係ゆえに安倍元首相を撃ったという山上被告と近いようである。

 紀藤弁護士の主張によって統一教会に対する解散命令請求が行われるに至った流れは、山上被告が望むものであったのか、よくわからない。

 紀藤弁護士の主張によって岸田首相が自民党議員と統一教会の関係を絶つと宣言するなどの流れは、山上被告が望むものであったのか、よくわからない。

 いずれにせよ、紀藤弁護士は山上被告と同じ考えを持っていて、その考えを推し進めた限りにおいて、犯人の望みを叶えている、ということができる。

 ただし、紀藤弁護士はもともと持っていた自分の考えによって動いているのであって、山上被告の望みを叶えているのではないというであろう。

問題のすり替え

 いずれにせよ、紀藤弁護士はその考えのために、問題のすり替えを行っている。

 その7月11日のツイートでは、

 第1に、安倍元首相殺害事件は統一教会を恨んでいるという人物の反社会性が暴発したことであるにもかかわらず、紀藤弁護士は統一教会の反社会性が暴発したこととしている。

 第2に、安倍元首相殺害事件は犯人のせいで起こったことであるにもかかわらず、安倍氏に責任があるとしている。

 安倍元首相殺害事件において、統一教会の「反社会性」は明らかではない。統一教会と政治家の関係の問題は明らかではない。しかし紀藤弁護士はそのことこそ事件の原因だと語った。

 それに対して安倍元首相殺害事件において、犯人の暴力は明らかであるが、紀藤弁護士はそのことを問題としない。

 統一教会の「反社会性」をどうにかしなくてはならないとか、統一教会と政治家の関係をどうにかしなくてはならないとかいうことは、事件の前からの紀藤弁護士の主張である。

 その主張によって、問題のすり替えは行われた。

 マスメディアは紀藤弁護士の問題のすり替えに乗った。

 安倍元首相殺害事件に対して、犯人を問題とせず、統一教会を問題とし、統一教会と政治家の関係を問題とすることによって、関心は犯人から統一教会、政治家に向けられた。統一教会、政治家に対する追及が行われるうちに、犯人のことはかえりみられなくなっていった。

 そのことは犯人の考えと同じである限りにおいて、犯人の望みを叶えるものということができる。

 紀藤弁護士の言動において注意すべきは、そういう問題のすり替えである。

反社会性

 紀藤弁護士は統一教会の「反社会性」を問題としているが、紀藤弁護士の問題のすり替えこそ問題とされなくてはならないことではないか?

 紀藤弁護士は、安倍元首相殺害事件という重大な事件に対して、加害者を被害者とし、被害者を加害者として秩序を混乱させた。

 その後の統一教会の問題、統一教会と政治家の関係の問題に対する追及は、いずれも紀藤弁護士等によって必ずしも十分な根拠なしに行われた。

 そういう紀藤弁護士が現実には日本の政治を動かしていった。

 紀藤弁護士は統一教会の「政治への浸透」を問題としたが、そういう紀藤弁護士の「政治への浸透」が現実には起こっている。

 紀藤弁護士は、統一教会は「組織的な政界浸透作戦」を行ってきたと主張した。それに対して日本は「対処法を持たなかった」と主張していた。

 しかし安倍氏殺害事件以後、紀藤弁護士等の主張によって、政府が解散命令請求を行うに至った流れは、紀藤弁護士自身による「政治への浸透」が成功したことを示すことである。

 そのことはまた、紀藤弁護士が「政治への浸透」を問題とした統一教会は、そういう紀藤弁護士の「政治への浸透」に対抗することができるほど「政治への浸透」を行っていなかった、ということを示すことでもある。

 そもそも紀藤弁護士が語ったような統一教会の「政治への浸透」があったのか? ということが問題となる。

7月12日の声明と記者会見

 事件後の紀藤弁護士の考えは、これまで述べてきたように7月11日のツイートに示されているが、その考えが広く示されたのは7月12日の全国霊感商法対策弁護士連絡会の声明と記者会見であった。

 紀藤弁護士も加わっている全国霊感商法対策弁護士連絡会は7月12日「安倍晋三元首相 銃撃事件に対する声明」を出した。

 紀藤弁護士もツイッターでその声明について知らせている。

 その声明を読み上げる記者会見が行われて、紀藤弁護士等がその声明の趣旨を敷衍している。

ニコニコニュース ノーカット版【”統一教会”の献金などの活動を非難】紀藤正樹弁護士ら全国霊感商法対策弁護士連絡会が記者会見 2022/07/20

 向うからこちらをうかがうような山口弁護士の表情が印象的。

 文字起こし↓

 この声明・記者会見から、世の中の論調が、犯行に対する非難から統一教会に対する非難に導かれていった。

声明 代表世話人山口広弁護士

 記者会見では、はじめに声明が川井康雄弁護士によって読み上げられた。

 そしてまず代表世話人の山口広弁護士がその声明に関して発言した。

会見の意図

 山口弁護士のはじめの言葉はこの会見の意図を明らかにしている。

今日の会見設定を弁護団で決めた理由はですね、この声明に掲げています2と3と4につきます。

MBSNEWS 【記者会見の全容】「全国霊感商法対策弁護士連絡会」の会見『夫からの暴力』『自己破産』旧統一教会の二世信者も出席し”苦悩” 語る

 「この声明に掲げています2と3と4」とは何か?

 声明は1から5まである。

 1は犯人の行為は「許されない」と言うもの。

 2は、統一教会の献金による苦悩、教会に対する憤りを問題として「今回の行為は決して許されることではありませんが、こうした問題に対し社会としてどう取り組むべきかが改めて問われているとも思います」というもの。「行政も政権を担う党の政治家もこの30年以上何も手を打ってきませんでした」ということを問題としている。

 3は、安倍氏が統一教会の関連団体UPFにビデオメッセージを送ったような行為を非難するもの。

 4は、統一教会の霊感商法や勧誘の手口の問題に対する理解を求めるもの。

 5は、報道によって現役信者が傷つき苦しむことへの配慮をもとめるもの。

 弁護団がこの会見設定を決めた理由は「2と3と4につきます」ということは、弁護団が会見を開いて訴えたいことは、声明の2と3と4につきる、ということである。

 2と3と4は、統一教会の問題に対して手を打たなくてはならない、政治家のこれまでの統一教会との関係には問題があって改めていかなくてはならない、というものである。

 そのほかの1も5も会見で訴えたいことではないというのである。

 1の、犯人の行為に対して「許されない」と言うことは、会見で訴えたいことではないというのである。

 5の、報道によって現役信者が苦しむことへの配慮をもとめることも、会見で訴えたいことではないというのである。

 この会見は、事件を起こした犯人を問題とせず、事件との関係の明らかではない統一教会を問題とし、統一教会と政治家の関係を問題とするものだというのである。

 「安倍晋三 元首相 銃撃事件に対する声明」と題する声明、そしてその声明を読み上げる記者会見であるにもかかわらず、その銃撃という犯行は軽く扱われているのである。

 声明においても、記者会見においても、はじめに犯人の行為に対して「いかなる理由があろうとも決して許されないことです」と言うが、そのことについてはそれだけで終わる。そしてその後に別の問題が重要な問題として語られる。

 産経新聞は事件の1年後の2023年7月に、「殺人は許されないが」と前置きして、その後に「テロリストと背景・動機を絡め、過度に意味を与える」言説を批判する記事を出した。

 そういう言説は弁護士連絡会の2022年7月12日の声明、記者会見に始まっている。

 弁護士連絡会の2022年7月12日の声明、記者会見を問題としなくてはならない。

 声明の3において、安倍氏がUPFにビデオメッセージを送ったことを問題として、「統一協会のために人生や家庭を崩壊あるいは崩壊の危機に追い込まれた人々にとってたいへんな衝撃でしたし、当会としても厳重な抗議をしてきたところです。」というところも問題とされなくてはならない。

 安倍氏のビデオメッセージはそのような非難を受けなくてはならないものではない。

 それにもかかわらず、被害者である安倍氏を、十分な根拠なしに加害者であるかのように語っているのである。

 7月8日の安倍元首相殺害事件から間もない7月12日に、安倍元首相殺害事件という重大な事件の問題をすり替え、加害者を被害者とし、被害者を加害者とする記者会見が弁護士団体によって行われた。

 そしてその後、マスメディアはその弁護士団体の弁護士や同じ考えをもった学者、ジャーナリストばかりを出演させて、その論調が日本を覆った。

犯人の望みを叶える?

 7月12日の声明、記者会見は、紀藤弁護士の7月11日のツイートと同じく、統一教会を悪としてその問題を追及しなくてはならないということ、そういう統一教会と政治家の関係を問題とするものである。

 その主張には、犯人の考えと同じところがあると思われる。その限りにおいて犯人の望みを叶えるものということができる。

 事実は明らかになっていないのに、「山上被疑者の苦悩や教会に対する憤りも理解できます」と理解を示していることは、犯人のことを理解しているのか? いないのか?

 犯人との関係ということでは、山口弁護士が「山上さんのお母さん」と言っているところは気になるところである。

私達が許せないのはですね、山上さんのお母さんが、平成14年、2002年に奈良地裁で自己破産しています。この自己破産は明らかに統一教会に対する過度の献金のためですよ。それ以外考えられませんよ。それを昨日の記者会見では、あたかも他人事のように言った上で、その後の言及はありません。おそらく献金させてます。

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 母親に対して「さん」をつけているのであろうか? それとも安倍元首相を銃撃した人物に対して「さん」をつけているのであろうか?

 その言葉に続く山口弁護士の言葉も、推測に過ぎないことを事実と断定する、思い込みが強い考え方が現れているので、取り上げておこう。

 「昨日の記者会見」とは、7月11日の世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の田中富広会長の記者会見である。それに対して異を唱えているのである。

MBS NEWS
【ノーカット】「旧統一教会」が会見『山上徹也容疑者の母親は会員、破産も把握』『高額献金要求かの記録はない』【安倍元総理銃撃事件】

 この記者会見において田中会長は「犯行の動機や一部メディアで報じられている献金問題に関しましては、警察が捜査中であると思われますので、この場での言及は避けさせていただきます」と言う。そして「この御家庭が破綻された諸事情は私どもも把握しておりません。そして現場に問い合わせても、なお当時のことを分かっている方もおられなくて、把握しきれていないのが現状です。ただ破綻されていたということは知っております」と語っている。

 山口弁護士はこういう発言を非難して「あたかも他人事のように言った上で、その後の言及はありません」と言うのである。

 しかし、20年前の事実について「この自己破産は明らかに統一教会に対する過度の献金のためですよ。それ以外考えられませんよ。」と根拠なしに推測で決めつけている山口弁護士は正しいのか?

 「把握しきれていない」という田中会長は正しくないのか?

 ちなみにこのことに関して次のような文春の記事がある。

 ある信用調査会社によると、1996年度まで黒字が続いていた会社は母親が社長を引き継ぐ前年の1997年度には4000万円を超える負債を抱え、その後銀行からの融資も認められなくなった。2002年には母親が自己破産。2009年から2017年までは、統一教会側も連絡が取りづらい状態が続いたという。

《安倍元首相銃撃》「母親はつながりが切れない、縁が切れない」親族が明かす山上徹也容疑者(41)の母親への“葛藤”と“宗教2世”の深い苦悩「私たちには幸福追求権がない」

紀藤弁護士

 7月12日の記者会見では紀藤弁護士も発言しているが、そこでも問題のすり替えを行っている。

 紀藤弁護士はまず、安倍元首相の殺害事件に、石井紘基氏の殺害事件の時の自分の経験を重ねて、「どれほど罪作りなのか」という。

1人の政治家をですね、自分の意見と違うとか、その自分の立場と違うとかあるいは怨恨とかですね、そういうことで殺めることが、どれほど罪作りなのかっていうのは、正直言ってとても重いものだと思います。

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 ここまでは、罪を重く考えているようである。

 ところが今度の事件の背後の話になって次のように語る。

でも、そのエネルギー、今自民党の政治家の人たちも…当然悲しみの中に憤りをお持ちだ、それはもう十分わかります。ですけどこの事件の背景に何があったか、つまりそのエネルギーを向けてほしいのはむしろ巨悪なんです。(中略)今回の事件も、単純にその個人の怨恨なのか、個人の怨恨が引き金になったっていうのはその背後には、統一教会のですね、かなり過酷な、献金ノルマみたいなものがあって、そして家族が崩壊したと、それが怨恨に繋がった可能性もありますよね。そうするとですね、やっぱりこれは憤りの対象の対象はですね、個々の信者とかに向けられるものではなく、やっぱり統一教会、巨悪にも向け向かうべきだと私は思います。

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 まさに問題のすり替えである。

 事件の背景には統一教会があるゆえに統一教会を「憤りの対象」とすべきだというのである。

 犯行に対する憤り、犯人に対する憤りを、統一教会に向けてほしい、向かうべきだと紀藤弁護士は言う。

 何故か? 統一教会の献金が「怨恨に繋がった可能性」がある、「そうするとですね、やっぱり」憤りは統一教会に向かうべきだと紀藤弁護士は言う。

 山口弁護士と同じく、可能性があるにすぎないことを事実のようにみなして、統一教会に憤りを向けるべきだというのである。

 犯人に対する憤りを統一教会に向けるということは、犯人の望みを叶えることかどうか、わからない。しかし統一教会は憤りを向けられるべき団体だということは、犯人の考えにちがいない。

 ちなみに紀藤弁護士が殺害された安倍元首相と重ねている石井紘基氏は、紀藤弁護士とともに反統一教会運動をしていた政治家である。

渡辺博弁護士

 その他の弁護士の発言についても考えておこう。

 渡辺博弁護士は記者会見において、統一教会に対する非難、政治家のこれまでの統一教会との関係に対する非難に終始している。

 統一教会については次のように語っている。

全ての財産は神様、今で言えば韓鶴子様のもので全て捧げなさいというのが残念ながら統一教会の教えですから、その結果が家庭崩壊になってしまうということです。

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 統一教会の教えでは信者は必ず「家庭崩壊になってしまう」というのであるが、これは事実であろうか?

 教えによってそうなると語っているところによると、事実を観察した上でそう言っているのではないのではないかと疑われる。

 常識的に考えて、その教えによって信者が必ず「家庭崩壊になってしまう」ような団体が、何十年もの間、一時期を除いてそれほど話題にならずに続いているということは、理解しがたい。

 ちなみに渡辺弁護士の「全ての財産は神様、今で言えば韓鶴子様のもので全て捧げなさいというのが残念ながら統一教会の教え」という言葉は、山上被告が米本氏に送った手紙の中の次の言葉と似ている。

世界の中の金と女は本来全て自分のものだと疑わず、
その現実化に手段も結果も問わない自称現人神。

REUTERS 元首相銃撃、手紙で示唆か

 たまたま同じようなことを考えたのであろうか? 影響を受けたのであろうか?

 いずれにせよ、渡辺弁護士は山上被告と同じような考えをもっていて、それを推し進めようとしている。望みを叶えようとしているようである。

 次に政治家と統一教会の関係について。

統一教会の被害者にとっては、政治家との繋がりがあるから、警察がきちんとした捜査をしてくれないというような思いがずっとあると思います。私どもにもあります。ぜひその点を、国会議員の先生方は、今回の事件を気にしていても、あの考えていただきたい。

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 渡辺弁護士は「政治家との繋がりがあるから、警察がきちんとした捜査をしてくれない」ということを問題としているのである。

 しかしそういう「ような思い」が統一教会の被害者に「ずっとあると思います」とか、「私どもにもあります」とかいうところをみると、証拠なしに思っているだけではないかと疑われる。

 ちなみに山上被告が同じようなことを語っていたということが伝えられている。

 一方、山上容疑者に誘われて西大寺の飲食店で食事をしたことがあるという男性は、山上容疑者からある悩みを打ち明けられていたという。
「(略)
 山上さんは続けて、『統一教会は、安倍と関わりが深い。だから、警察も捜査ができないんだ』と、あまり感情を出さない山上さんが、怒りにまかせたように話していました」

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 たまたま同じようなことを考えたのであろうか? 影響を受けたのであろうか?

 いずれにせよ、渡辺弁護士は山上被告と同じような考えをもっていて、それを推し進めようとしている。望みを叶えようとしているようである。

郷路征記弁護士

 次に郷路弁護士。

私達がやっている仕事の限りでは、統一教会は100%の悪であり、山上容疑者のお母さんも、それに発生して、山上容疑者自身も、その限りでは、統一教会との関係に限定すれば100%の被害者です。

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 「私達がやっている仕事の限りでは」というのは、統一教会から「被害者」、「信者」を救済するという仕事の観点から見る限りでは、ということであろうか。

 しかしそもそも事実が明らかになっていないのに「統一教会は100%の悪であり、山上容疑者のお母さんも、それに発生して、山上容疑者自身も、その限りでは、統一教会との関係に限定すれば100%の被害者です」ときめつけることは、異様である。

 郷路弁護士は、統一教会の信者は皆被害者であるという理解しがたい思想を持っている。

私達は、山上容疑者のお母さんが脱会してきた場合、そのお母さんの依頼を受けて、お母さんを被害者として、加害者である統一教会に対して損害賠償請求訴訟を提起し、統一教会から、献金として、取られたお金を回収して、それをお母さんにお渡しして、それをもとに、できるのであれば、失われた傷ついた家族の絆を回復していただきたい。失われた人生のいくらかでもとり戻していただきたい。そういった気持ちで仕事をさせていただいています。

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 現在信者であって統一教会等に対して被害を訴えていない人をも、被害者とすることを考えているのである。そして統一教会を訴えさせることを考えているのである。

 統一教会の信者として満足している人のことを考えていないのである。

 郷路弁護士の「統一教会は100%の悪」ということは、山上被告の考えと同じようである。

 その考えを推し進めることは、犯人の望みを叶えることになるのではないか。

二世

 記者会見には「顔も声も一切出さない、本日の会見で一切そのその後の取材等もなしという前提」で話をした二世信者が次のように語っている。

犯人のしたことに関しては、何一つ擁護することもないですし、正しいと思ってもいませんが、ただ、人生を統一教会によって破綻させられた身としては、理解できてしまうという苦しい心情があります。やったことに関しては、私は反対をして、反対というか間違っていると思いますが、それだけ統一教会は人生を破壊します。統一教会に関わってきた人たち、また二世と呼ばれる人たちがどんなに苦しい思いでいるかということも私はよく理解できます。そこの思いがですね、正しい方向に報道されて、今まで放置されてきたこの問題が少しでも解決に向かう方向に進んでいってくれればいいなというふうに思っています

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 この人も犯人の行為に対して「何一つ擁護することもない」「正しいと思ってもいません」とはじめに言って置いて、それから本題の統一教会非難に移っている。

 犯人の行為について「それだけ統一教会は人生を破壊します」というところは問題がある。

 犯人の行為を、「統一教会は人生を破壊します」ということを示す実例としていることのであるが、そもそも犯人と統一教会の関係は、明らかにされてはいない。

 「統一教会は人生を破壊します」と普遍的なかたちで断言していることも、渡辺弁護士と同様、多様な信者を観察した上で言っているのか、疑われる。

 犯人の行為は、統一教会がどれだけ悪いかを示すことにはならないのであるが、安倍元首相殺害事件では、犯人の行為によって統一教会がどれだけ悪いかを示すということが感情的になされているところがある。

 これも犯人に寄り添うことによって問題をすり替えるものである。

まとめ

 安倍晋三元首相殺害事件の後、間もなくマスメディアの論調が変わった。

 統一教会を問題とし、統一教会と自民党政治家の関係を問題とする論調になったのである。

 その論調の変化を主張したのが紀藤正樹弁護士と、紀藤弁護士が属する全国霊感商法対策弁護士連絡会であった。

 安倍元首相を銃撃した人物は、統一教会を問題とし、統一教会と安倍元首相の関係を問題としていた。

 その主張が重なる限り、紀藤弁護士と全国霊感商法対策弁護士連絡会は犯人の望みを叶えているということができる。

 ただしその主張は、紀藤弁護士と全国霊感商法対策弁護士連絡会の前から主張であった。自分たちの前からの主張を推し進めたにすぎないというかもしれない。

 いずれにせよ、問題のすり替えによって、秩序を混乱させてその主張を推し進めていることは、注目されなくてはならない。

 その主張は、事件を利用して推し進められている。事件後に彼等がその主張を推し進めることができたのは、事件があったからにちがいない。

 安倍元首相を銃撃した人物が、紀藤弁護士等と同じような主張を持っていたことに関して、その前に紀藤弁護士等の影響を受けていたのではないかということは問題になる。

 犯人は事件後の紀藤弁護士等の動きを期待していなかったか? ということも問題となる。

 前の記事で論じたように、犯人が20年前の統一教会との関係を理由として事件を起こしたことも、統一教会を恨んでいると言いながら関係の明らかではない安倍元首相を殺害したことも、理解に苦しむことである。

 ところが紀藤弁護士等が根拠なく統一教会を事件の原因ときめつけ、安倍元首相と統一教会の関係を事件の原因ときめつけて、そういう論調でマスメディアを導く中で、その理解に苦しむところはそれほど問題とされなくなった。

 安倍元首相殺害事件以後の問題のすり替えは、紀藤弁護士と全国霊感商法対策弁護士連絡会が主導したことである。紀藤弁護士と全国霊感商法対策弁護士連絡会は引き続き統一教会問題を主導している。その間、問題のすり替えは続くのである。

別れるところ

 ところで紀藤弁護士は、内田樹・白井聡両氏の対談を引用して次のように評している。

 紀藤弁護士の望むものではなかったようである。

 どういうことであろうか?

 紀藤弁護士が「せっかくの論者なのにもったいない」というのは、紀藤弁護士がいいと思う思想を持っている論者であるのに、その対談では紀藤弁護士がいいと思わない主張をしているということであろう。

 たとえば白井聡氏は1年前には次のように語っていた。

(旧統一教会との関係を騒ぎ立てるのは、安倍氏を銃撃した)山上徹也容疑者の思うつぼだとの批判があるが、暴力でなければ変えられないような状況を私たちが作ってしまった。テロが起きる前に我々の日本社会は腐り切り敗北していた。

東京新聞 「安倍政権の問題を示す必要ある」 元首相国葬を考えるシンポ、3200人視聴 東大の國分教授研究室が開催

 事件前の日本には「暴力でなければ変えられないような状況」があったとして、統一教会の問題を追及することは「犯人の思う壺」でもいいと語っていた。

 そうして国葬に対して「許してはならない」と主張していた。

 ところがその1年後の対談では、内田樹氏は、犯人に対して、犯人の行為に対して突き放すように語っている。

 内田樹氏は安倍元首相を銃撃した人物に対して、伝統的なテロリストと違って「精神的に未熟」なものとみなしている。そしてそれゆえに「自分の政治的主張を広く世間に伝え」ず、「自分の行動の意味を第三者の解釈に委ねる」と語っている。「どういう意図でやったのかはっきりさせないほうが、いろいろな人がああでもない、こうでもないと仮説を立ててくれる可能性がある。」とも言う。

 内田氏によると、犯人は自分の考えを自分で明らかにすることができないほど「精神的に未熟」で「社会的承認を得たい」という欲求をもった身勝手な人物である。

 統一教会の問題を伝え、統一教会と政治家の関係の問題を伝えた人物という、紀藤弁護士の考えとは違う。1年前の白井氏の考えとも違う。

 内田氏の考えによると、そういう自分の考えを自分で明らかにしない人物に対して、まわりが解釈を加えていることになっている。

 それでは紀藤弁護士等が勝手に解釈を加えて話を進めているということになってしまう。

 ところで、内田氏は、紀藤弁護士と近い思想を持っていると思われたのに、どうして紀藤弁護士から離れた考えを持つようになったのか?

 宮台真司氏襲撃事件を受けて、安倍元首相殺害事件を、内田氏が標的とされる可能性のある流れにあるものとして考え直したのではないかと思われる。

 対談中に内田氏が「安倍さん、岸田さん、宮台さんに対する襲撃」と言っているように、内田氏はその三つの事件に共通することを問題としている。

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