アメリカの抗議運動 香港の抗議運動との関係

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政治
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 2020年5月25日、米国ミネソタ州ミネアポリスで、ジョージ・フロイドという黒人男性が、偽札を使用したという疑いで逮捕される間に白人警官によって首を膝でおさえつけられて、死亡した。

 その動画が伝えられて、多くの人の見るところとなった。それに対して抗議運動が起こった。抗議運動はアメリカ各地で起こったのみならず、ヨーロッパでも、オーストラリアでも起こった。日本でも起こったという。

 このことについて、様々な角度から論ずることができるが、ここでは香港の抗議運動との関係について論じてみよう。

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香港の国家安全法

 この運動は、あれよあれよという間に大きくなっていった。それをみて、私は、香港の抗議運動にとって好ましくないことではないかと思った。

 香港の抗議運動は、どういう状況にあったか?

 国家安全法という問題に直面していた。

 中華人民共和国の2020年の全国人民代表大会は、新型コロナウイルスの影響で、5月22日から始まった。
 そこで中華人民共和国は香港版国家安全法を採択した。

 香港の民主派は、これによって、香港の自由は奪われるとして抗議した。

アメリカの抗議運動の効果

 アメリカの抗議運動は香港の抗議運動に対してどういう効果をもたらしたか?

 私が感じたことは次の通り。

 第一に、香港の抗議運動も、アメリカの抗議運動も、いずれも「抗議運動」として同じように見える。

 それまでは香港の抗議運動だけが目立っていた。しかし二つの抗議運動が並んでいると、香港の抗議運動はそれだけ目立たなくなる。
 抗議運動と警察との対立、警察による催涙弾など、同じように見える。

Inside Edition
White House Denies Using Tear Gas on Protesters(2020/06/04)
動画の中で、医師が催涙弾によって新型コロナウイルスに感染する危険について語っているが、それより前に、抗議行動自体危険ではないのか?
The Sun

Peaceful protest near White House dispersed with tear gas and rubber bullets(2020/06/02)
このように怒号が飛び交うことに、感染の危険はないのか?

 しかもアメリカの人種差別に対する抗議運動は、アメリカ中にひろがるのみならず、アメリカの外にもひろがっていて、量的にも、香港の抗議運動より目立つ。

 このように、アメリカの抗議運動がさかんになればなるほど、香港の抗議運動は目立たなくなるのではないか?

 第二に、アメリカの抗議運動は、トランプ政権を、自由平等に反対する圧制者として批判している。

 しかしトランプ政権こそは、それまで香港の抗議運動の強力な支持者であった。
 2019年11月の香港人権・民主主義法も、トランプ政権によって成立したものである。

 アメリカの抗議運動によって、トランプ政権が自由平等に反するものとされると、そのトランプ政権によって支持されている香港の抗議運動が、中華人民共和国に対して自由平等を主張することの意味が曖昧になる。

印象と実態

 香港の抗議運動とアメリカの抗議運動は、似ているようにも見える。

 しかし違うのではないか。

 香港の抗議運動は、中華人民共和国が香港の自由を奪うことに反対するものである。

 アメリカの抗議運動は、警察官による人種差別、暴力に反対するものである。

 しかしトランプ政権が警察官による人種差別、暴力を支持しているのではない。

 トランプ大統領は、抗議運動に対して催涙弾を用いたこと、軍を動員するといったことを批判されている。

 しかしトランプ大統領は、平和的な抗議に反対しているのでなく、平和的な抗議でないものに反対しているのである。

中華人民共和国

 中華人民共和国にとって、アメリカの抗議運動は都合のいいことであったにちがいない。
 中華人民共和国はそれまで、新型コロナウイルスについて隠蔽していたこと、香港の国家安全法のことで、アメリカをはじめとする国々から非難されてきた。
 アメリカの抗議運動によって、実態はどうであれ、トランプ政権はダブルスタンダードをとっていると非難することができるからである。

 華春瑩報道官はそれまで香港の国家安全法について次のように弁護していた。

 香港の国家安全法は、米国が自国内でやっていることと同じことだという論法である。
 そしてジョージ・フロイド事件を次のように使っている。

 アメリカの抗議運動は、中華人民共和国にとって都合のいいことである。したがって、中華人民共和国が自ら起こしたのではないかという考えも出てくる。

 真相はわからない。

天安門事件

 6月4日は、1989年に天安門事件が起こった日である。

 2020年の6月4日には、世界中の人々が天安門事件に思いをはせて、中華人民共和国という国のことを批判的に考えるのではないか、と私は思っていた。

 中華人民共和国から出てきた新型コロナウイルスによって、世界の多くの人が損害を被っている。
 その上に、中華人民共和国は、香港の国家安全法によって、香港の自由を奪おうとしている。
 中国と民主主義との関係を考える上で、天安門事件は重要な事件である。

 ところがアメリカの抗議運動によって、多くの人の関心は天安門事件に向かわなかったのではないかと思われる。
 香港では天安門事件の日に追悼集会が行われた。

アフリカ 

 最後に、中華人民共和国とアフリカとの関係について触れておこう。

 華春瑩報道官も、趙立堅報道官も、アメリカの抗議運動に関して、中華人民共和国は、アフリカ諸国の側に立つと語っている。

 中華人民共和国はアフリカと深い関係になっている。
 新型コロナウイルス感染に際しても、医療物資を送って関係を強めようとしていた。

 黒人に対する差別問題に関して、中華人民共和国は、アフリカ諸国との友好関係をもとにして抗議運動を支持するというのである。

 思えば、今度のアメリカの抗議運動の前にも、新型コロナウイルスの感染の中で、アフリカ人種に対する差別が話題となることが何度かあった。

 たとえば、世界保健機関(WHO)のテドロス事務総長が台湾から差別されたということもあった。

CNBC Television
WHO chief addresses death threats and racist insults: ‘I don’t give a damn'(2020/04/08)

 これを聞いたときには、おかしなことを言うと思った。
 台湾政府が公式に人種差別的な発言をしたとは思えない。民間にそう発言があったとしても、それを台湾からのものと名指すことはおかしい。
 テドロス氏に対して批判的な発言をした人は世界中にいる。なぜ台湾に限るのか?
 そう思ったのである。

 中華人民共和国で、アフリカ人が差別されたという話もあった。

 BLM運動において、中華人民共和国における人種差別はどのように考えられているのであろうか?

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