【考察】西浦博氏の第5波の予測が正しくなかったことについて

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政治
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 京都大学大学院医学研究科教授の理論疫学者、西浦博氏は、東京オリンピック2020が開催されている間にも、新型コロナウイルスのために中止を主張していた。

 しかし西浦氏の主張に反して、オリンピックは中止されず、最後まで開催された。

 西浦氏は、8月中頃にはロックダウンの必要を主張した。

 しかし西浦氏の主張に反して、ロックダウンは行われなかった。

 ところが8月末にパラリンピックが行われていたころには、感染は落ち着いてきていた。

 西浦氏の予測は正しくなかったのである。

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過大な予測

TumisuによるPixabayからの画像

 西浦博氏は2021年8月31日にBuzzFeedのインタビューを受けて居る。(公開は9月1日、2日)

 パラリンピックが行われていた時である。 (開会式は8月24日、閉会式は9月5日)

 その時には感染が減少に向かっていたことを西浦氏は認めている。

こうした分析から総合的にみると、今の状態が続けば、感染者の減少はさらに続くと判断していいと思います。

Buzzfeed 少し喜んで、でもまた引き締めて 西浦博さんが悩みながら分析したコロナの現状

 そのインタビューにおいて、西浦氏は次のように語っている。

デルタ株の流行が起き、他の国の流行状況も見ていると、人出がこれだけある中で減らすのは「もう無理かもしれない」と本気で思っていました。
(中略)
だから、感染者が落ちているかもしれないデータをこの数週間見ている時、なぜなのだろうとずっと思考を巡らしていました。

デルタ株にオリンピック、お盆や連休……それでもなぜ感染者は減った?西浦博さんが4つの仮説を検証

 感染を減少させることは「もう無理かもしれない」というのが西浦氏の予測であった。

 ところが現実には「感染者が落ちている」。

 予測したことと異なることが現実には起こった。そこで西浦氏は理解することができなかったというのである。

 西浦氏は具体的には次のように予測していた。

7月後半は2を超えていたので、当初、8月後半には万を超えるだろうとする予測値を出していました。明らかにそれは過大評価でした。でも、その予測を出した時は十分にあり得ると思っていました。

デルタ株にオリンピック、お盆や連休……それでもなぜ感染者は減った?西浦博さんが4つの仮説を検証

 その予測は「過大」であったと西浦氏も認めている。

 また「そのシナリオは8月前半のものが過大でした。」と言い、「当初の予測と違って、なぜここまで感染者が減ったのかを考えているのですが、」と言っている。

科学

 西浦氏は「その予測を出した時は十分にあり得ると思っていました。」と語っているが、正しくない予測は正しくない予測にすぎない。

 予測した時点で正しくなかったのである。

 正しくない予測をしたということは、科学的に正しくないことをしたということである。

 西浦氏はその正しくない予測を、8月の中頃まで正しいと思い込んでいたようである。その間、科学的に正しくないことを語っていたわけである。

 西浦氏は、十分な根拠なしに、その正しくない予測を正しい予測であるかのように語って、他人におしつけていた。科学者として問題があるのではないか?

 西浦氏はその正しくない予測が正しくないかもしれないということを、結果が現れるまで考えていなかったように見える。科学者として問題があるのではないか?

 そもそも予測にはいつでも不確実なところがあると思われるのに、西浦氏は自信満々で自分の予測を他人におしつけていた。科学者として問題があるのではないか?

政治

 西浦氏はその正しくない予測をもとにした政治的な主張をしていた。

正しくない

 正しくない予測をもとにした政治的な主張は、正しくないものになる。

リスク対策

 危険に対してはどちらかというと過大に予測した方がいいということはできるかもしれない。

 しかしそういうことは政治が決めるべきことである。西浦氏等の専門家が決めることではない。

 第5波の中でのオリンピック、ロックダウンについて意見が対立していた中で、西浦氏のように過大な予測によって、一方が正しく、他方は正しくないかのように語ったことは、正しいことではない。

科学と政治

 西浦氏は科学の範囲を超えて、政治に踏み込んでいる。

 西浦氏も、専門家は科学的な「リスク評価」にとどまるべきであって、その範囲を超えて政治的な発言をしてはならない、という考えをもっていた。

 下の記事↓でもそういう考えを述べている。

 しかし西浦氏がオリンピックの中止を主張したことも、ロックダウンの必要を主張したことも、科学の範囲を超えて政治の範囲に踏み込んだものである。

 オリンピックを中止するかどうか、ロックダウンを行うかどうか、いずれも政治の問題である。

 政治の問題について、西浦氏のように専門家として自分の主張を科学的であるかのように語ると、他の人の自由な意思は抑圧される。

 今回は西浦氏の予測が正しくなかったことによって、その問題が見やすくなった。

オリンピック

写真AC

 オリンピックに関する西浦氏の言葉をとりあげてみる。

開催前

 西浦氏はオリンピックの開催前にオリンピックのリスクを強調して「国際的に恥をかく事態も」と語っていた。

 しかし西浦氏が語ったような「国際的に恥をかく事態」にはならなかった。

 西浦氏はその過大な予測によって国民の自由な意思を抑圧したということができる。

開始直後

 西浦氏はオリンピックが開幕して間もなく、中断を提案した。

 東京オリンピック2020は、7月21日に競技が始まって、23日に開会式が行われたが、西浦氏は24日に中断を提案している。

 オリンピックの中断を提案することは、専門家の範囲を超えて政治に踏み込んだものと言わざるを得ない。

 しかも開会式の次の日に五輪を中断するという大変な政治的決断を、専門家として科学的であるかのように語っているのである。

 この時にも西浦氏の予測は過大であった。

 西浦氏によると、「この時点でオリンピックを中断」しなくてはならないようである。

 現実には、オリンピックを中断しなかったが、それにもかかわらず、西浦氏の予測に反して、8月のうちに感染は減少に向かった。

 西浦氏の提案したように「この時点でオリンピックを中断」しなくてはならない、ということはなかったように見える。

 西浦氏がこの時点で正しく予測していなかったことを考えると、西浦氏は、オリンピックと感染との関係、オリンピックを中断すること感染との関係についても正しく知らなかったのではないかと思われる。

 正しく知らなかったにもかかわらず、専門家として正しいことであるかのように見せて、政治的な決断を強要していたとのであろうか?

 危険に対して過大に予測するという考え方でも、すでに言ったように、対立する意見の一方を正しいとすることは正しいことではない。

 西浦氏の提案するようにオリンピックを開会式の次の日に中断することは、多くの人にとって容易に受け入れることのできないことと思われる。

 西浦氏は五輪を開催して「国際的に恥をかく」かもしれないと語っていたが、西浦氏が提案したように五輪を中断することは、「国際的に恥をかく」ことになったのではないかと思われる。

 ところが西浦氏はそういう気持ちを全く無視して、自分の主張が科学的に正しいものであるかのように押し付けている。

謝罪要求

 オリンピックの閉会式は8月8日に行われた。

 8月13日に西浦氏は東京都知事に謝罪を要求していた。

 小池都知事がオリンピックは「人出を増やす要因にはならなかった」と語ったことに対して、西浦氏は「五輪で感染制御の声が届きにくくなっ」たゆえに、謝罪しなくてはならないというのである。

 私は当時このツイートを読んで違和感があった。この時点でそれほど五輪と感染との関係が明らかになっているとは思えなかったからである。

 その後に西浦氏の予測が正しくなかったことが明らかになった。

 西浦氏は都知事に「足下の現実」を見るように言っているが、西浦氏自身「足下の現実」が理解できなくなった。それまでもわかっていなかったのである。

 西浦氏はこの時点で上のようなことを言うだけの科学的根拠をもっていなかったのではないか?

 以下、「人出」について、「感染制御の声 」について、詳しく考えてみよう。

人出

 西浦氏はその後のインタビューにおいて、オリンピックと人出の関係について次のように語っている。

東京都医学総合研究所社会健康医学研究センターの西田淳志先生の分析したデータが示していますが、4連休が終わった時は繁華街の夜間の滞留人口が減りました。その後は横ばいです。
どちらかというとオリンピック後半期は、「人流」と言われたものを見れば増加しました。
接触とか夜間の繁華街でハイリスクの行動を取ることに関して言えば、オリンピックの影響はほぼなかった、つまり、明らかな増加も減少もなかった、と思います。
減ったということもなければ、途中から人流が増えてもいる。滞留人口は変わっていないので、あとは、バブルや定期的検査がきちんと実行されていたか、五輪中の接触の変化が日本での影響に流行を及ぼしたか。オリンピックの影響を人流以外で示していくことが必要だと思います。

デルタ株にオリンピック、お盆や連休……それでもなぜ感染者は減った?西浦博さんが4つの仮説を検証

 要するに、オリンピックの影響は「人流」というかたちでは現れなかったというのである。

 西浦氏は、オリンピックによって人流が減ったということに反対しているのであるが、「接触とか夜間の繁華街でハイリスクの行動を取ることに関して言えば、オリンピックの影響はほぼなかった、つまり、明らかな増加も減少もなかった、と思います。」と言っている。

 西浦氏が批判した小池都知事の発言は、「五輪と人出の関係否定」、五輪は「人手を増やす要因にはならなかった」というものであって、西浦氏もその後に同じ結論に達したように見える。

感染制御の声

 西浦氏は「五輪で感染制御の声が届きにくくなっ」たと語っている。

 しかし「五輪で感染制御の声が届きにくくなっ」たということは、測定が容易でないことではないか?

 この時点で西浦氏は、都知事に謝罪を要求することができるだけの科学的根拠をもっていたのであろうか?

 西浦氏も後で認めたように「人出」に関して五輪による影響はなかったということは、「五輪で感染制御の声が届きにくくなっ」たということによる影響は少なかったということではないか?

 西浦氏は後のインタビューにおいて、「声が届いているとは言い難い」状況があったと言い、五輪の「心理的な影響」は大きかったと語っている。

ーーとりあえず、感染者が減少傾向にある事は喜んでいいのですよね。

これはものすごくいいニュースだと思っています。デルタ株に関して、これまでもお話してきた通り、減るのかどうか怖いところがありました。
基本再生産数(※何も対策しない場合の一人当たりの二次感染者数の平均値)で言うと5を超えるような感染症を、人の行動を制限することで食い止める経験は、過去に一切なかったことだと思います。
しかも、社会経済活動はそれなりに続いています。すごく制御にとって後ろ向きな条件下なのです。緊急事態宣言が長引いて、声が届いているとは言い難い。中でも、オリンピック開催の心理的な影響は相当大きかったと思います。
宣言に効果がなく、ますます医療が厳しくなったらさらに厳しい措置をしなければなりません。どうしても仕方なければ、立法でロックダウンを考えてほしいという議論もこれまでになされてきました。
そんな中、私権が制限され、経済的な影響も甚大である対策を打たずに済む可能性が出てきたのは、本当に良い兆候だと思います。

Buzzfeed 少し喜んで、でもまた引き締めて 西浦博さんが悩みながら分析したコロナの現状

 現実には西浦氏の予測とは違うことが起こったこということは、西浦氏が語るほど「すごく制御にとって後ろ向きな条件下 」ではなかったということではないか?

 「緊急事態宣言が長引いて、声が届いているとは言い難い。」とか、「中でも、オリンピック開催の心理的な影響は相当大きかったと思います。」とかいう西浦氏の予測がそもそも正しくなかったのではないか?

 また、次のインタビューにおいて西浦氏は、五輪には「心理的インパクト」があったと語っている。

元からスタジアムの中での伝播の可能性は低いことはわかっていました。運営上は、全国民の移動率や接触率が急上昇せずに終わっていることは確かです。
だから主な影響として疑いなく言えるのは、心理的インパクトだと思います。心理的インパクトは数値化するのが困難ですが、他の点については、いくつかの分析はしていますので、より詳細な分析は今後研究として報告します。

デルタ株にオリンピック、お盆や連休……それでもなぜ感染者は減った?西浦博さんが4つの仮説を検証

 ここで「心理的インパクト」というのは、前に「五輪で感染制御の声が届きにくくなっ」たとか、「心理的な影響」とか言っていたことと同じことのようである。

 西浦氏は「元からスタジアムの中での伝播の可能性は低いことはわかっていました。」と言い、「全国民の移動率や接触率が急上昇せずに終わっていることは確かです。」と言って、「主な影響として疑いなく言えるのは、心理的インパクトだと思います。」と語っている。

 しかしそもそもその二つの要因がなくなっているのであるから、感染に対する五輪の影響は小さくなっているのではないか?

 そしてその「心理的インパクト」ということは西浦氏も「数値化するのが困難」と認めるものである。

 西浦氏は「疑いなく言える」と語っているが、曖昧ではないか?

疑問

 西浦氏が「五輪で感染制御の声が届きにくくなっ」たことをもって都知事に謝罪を要求していることは、これまでみてきたように根拠が曖昧がある。

 少なくとも西浦氏がツイートした時には明確でなかったと思われる。

 西浦氏はこのように十分に根拠がないのに他人を断罪する傾向があるのではないか?

 しかも都知事のような政治的な立場の人に対して、専門家として科学的に根拠をもっているかのような言葉で謝罪を要求することは、科学者が科学の範囲を超えて科学の権威を悪用して政治に踏み込むことではないか?

ロックダウン

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 西浦氏は8月13日にロックダウンが必要だと主張していた。

 現実にはロックダウンは行われなかったが、それでも「新規感染を充分に下げること」はできた。

 西浦氏も8月31日のインタビューで、「私権が制限され、経済的な影響も甚大である対策を打たずに済む可能性が出てきた」と語っている。

 「ロックダウンをしないと新規感染を十分に下げることは困難」という西浦氏の予測は正しくなかったのである。西浦氏も自らそのことを認めている。

政治

 西浦氏は、「ロックダウンをしないと新規感染を十分に下げることは困難」という言葉について、科学者としての「リスク評価」の範囲内であって、政治的な発言ではないと考えているようである。

 ロックダウンしない場合にどうなるかということを客観的に示したにとどまるものと考えているようである。

 しかし西浦氏のツイートの言葉は、政治家にロックダウンをしなくてはならないと迫る政治的な主張に聞こえる。

 西浦氏の予測が正しくなかったことからも、科学的ではなく政治的であったように聞こえる。

その後の言葉

 西浦氏が後のインタビューにおいて次のように語っているところが気になった。

ニュースでご覧の通り、政府はロックダウンをしようとしませんでしたよね。
専門家としては、その条件下でどんな措置ならできるのか、水面下で必死に検討していました。措置の中身によっては社会に大きな影響を与えるだろうし、かと言って自粛が限界を迎える頃です。どうすればいいんだと頭を抱えていました。
その中で、今のような対策を何重かに重ねてしっかり実行していれば減少傾向に転じたということは、まずみんなで自信を持つべきことです。自信を持ってそのままもう少し継続したい。しっかり頑張れば9月中に、安定的に減っているように見えてくるはずです。

Buzzfeed 少し喜んで、でもまた引き締めて 西浦博さんが悩みながら分析したコロナの現状

 ここでも、政府はロックダウンをしようとしなかったと、その無為無策を批判しているようである。

 そしてそれに対して西浦氏等は「その条件下でどんな措置ならできるのか、水面下で必死に検討していました。」と、働いていたことを強調している。

 しかし西浦氏も認めているように、ロックダウンをしなくても「減少傾向に転じた」。ロックダウンをしなくても「減少傾向に転じた」ということは、西浦氏は正しくなくて、政府の方が正しかったということである。

 ところが西浦氏はそのことを反省せずに、なおも政府を悪者にし続けようとしているのである。

問題

 西浦氏の予測は正しくなかった。

 そのことに向き合って、わからないことはわからないとして、出直さなくてはならないのではないか?

 そうでなくては、これからも同じ過ちを繰り返すのではないか?

 たとえば西浦氏は8月31日のインタビューにおいて、9月以後のことについて次のように予測していた。

さらに先を考えると、9月は感染者が増えるような連休はありません。今、直近で怖いと思われる要素は、夏休み明けの学校再開の影響です。大学等の高等教育機関では9月中旬以降から開始するところが多いとうかがっていますが。

Buzzfeed 少し喜んで、でもまた引き締めて 西浦博さんが悩みながら分析したコロナの現状

 「夏休み明けの学校再開」で感染が拡大するおそれがあるというのである。

 現実には、西浦氏がおそれていたようなことは起こらず、9月から10月にかけて日本の感染者数は減少を続けた。

 その間にそれまでと異なる特別な対策は行われなかった。9月30日をもって緊急事態は終了した

 西浦氏は次のように語っている。

その中で、今のような対策を何重かに重ねてしっかり実行していれば減少傾向に転じたということは、まずみんなで自信を持つべきことです。自信を持ってそのままもう少し継続したい。しっかり頑張れば9月中に、安定的に減っているように見えてくるはずです。

Buzzfeed 少し喜んで、でもまた引き締めて 西浦博さんが悩みながら分析したコロナの現状

 西浦氏は「今のような対策を何重かに重ねてしっかり実行していれば減少傾向に転じた」というが、西浦氏はその「今のような対策」をそれではいけないと言っていた。

 西浦氏は正しくなかったことを正しくなかったと明らかにすることから始めなくてはならないのではないか?

 西浦氏が専門家の範囲を超えて政治に踏み込んだことについても、正しくなかったことを正しくなかったと明らかにすることから始めなくてはならないのではないか?

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