「小西文書」問題からの小西洋之参議院議員とマスメディアの戦い

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 2023年3月初め、小西洋之参議院議員は総務省の「内部文書」を公開して、参議院予算委員会などで岸田首相、高市経済安全保障担当大臣を追及したが、3月28日、予算は滞りなく成立した。

 そこで問題は一段落したと思われた。

 ところがその後の小西議員の言動によって事態は意外な方向へ進んだ。

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小西議員とマスメディアの対立

 小西議員が総務省の「内部文書」なるものを公開して、放送法に関して岸田首相、高市大臣を追及し始めると、マスメディアも同様に放送法に関して岸田首相、高市大臣を追及した。

 高市大臣がその文書について捏造されたものといい、そうでない場合は辞職すると言ったことを受けて、マスメディアにも力が入ったようであった。

 3月28日までは、小西議員とマスメディアとは同じ方向に向かっているように見えた。

 ところが3月28日以後、小西議員の言動によって両者は対立する方向へ進んだ。

時事通信に対して

 まず3月28日の時事通信の記事に対して、小西議員は次のように批判している。

 時事通信の記事は、高市大臣の捏造発言によって文書の正確性が焦点となって、本丸の放送法の解釈に関しては議論が深められず、うやむやになっているというものである。

 放送法の解釈には問題があるということでは、小西議員と同じような方向を向いている。

 ただし小西議員によると、3月17日の参議院外交防衛委員会で、2015年の高市大臣の答弁以降の放送法の解釈の変更を小西議員が全面撤回させたことになっている。

 それゆえに時事通信の「新解釈の撤回を目指したが、予算委で議論が深まったとは言い難い」というのは「誤報」だということになる。

 しかし小西議員が挙げる3月17日の外交防衛委員会で総務省は2015年の高市大臣の答弁でも放送法の解釈は変わっていないと語っている。解釈の変更がなかったということは、小西議員による撤回もなかったということではないか?

 小西議員と同様に、放送法の解釈の問題を追及してきた時事通信も、小西議員によるそれまでの解釈の撤回を認識していなかった。

 小西議員の語る、2015年の解釈変更の「全面撤回」は、総務省にも時事通信にも認められていないが、本当にあったのであろうか?

 いずれにせよ、予算成立後、小西議員はマスメディアを攻撃しだした。

 時事通信だけでなく日経新聞に対してもその報道を問題としている。

「サル」発言

 次に、3月29日に小西議員が衆議院の憲法審査会について「サル」とか「蛮族」とか評していたことが問題とされた。

 そのことについて小西議員はオフレコだったと主張。

 オフレコを報道されたということは、2月3日の荒井総理大臣秘書官(当時)のオフレコの発言が報道されて問題とされ、更迭されたことを思い起こさせる。

 しかし毎日新聞は、オフレコということも、撤回したということも、否定している。

 29日の小西氏への取材は、毎日新聞を含む複数社が参加。実名報道を前提とする「オンレコ」取材で、ICレコーダーで録音していた。小西氏は「サル発言」の前後に「オフレコ発言しないほうがいいかもしれないけど」「サルって言ったら差別発言になるのかな?」などと述べたが、撤回や修正はしなかった。

毎日新聞 立憲・小西氏が発言陳謝 「憲法審、毎週開催ってサルのやること」

 FNNも明確な発言撤回はなかったと語っている。

小西氏は、“あくまでもオフレコ取材と認識していて、すぐに撤回修正した”と主張している。

しかしFNNが、29日の小西氏の発言内容を精査したところ、記者団に対し、発言を撤回するとは明確に述べてはいなかった。

FNNプライムオンライン 小西議員「サル」発言を陳謝 「冒とくだ!」批判相次ぐ

 3月30日、小西議員は国会内で会見を開いて、「サル」などの発言について謝罪した。

 ところが「お詫び」のツイートでも、オフレコの場での発言で、即時に撤回の意志を表示したにもかかわらず、前半だけが切り取られて報道されたと主張している。

 自分が悪かったというより、報道機関が悪かったというのである。

 テレビ東京がその会見を「ほぼノーカット」で配信している。

テレ東BIZ 【ほぼノーカット】立憲・小西議員「サルがやること、蛮族行為だ」の発言で謝罪・釈明(2023年3月31日)

 ここでも小西議員は、オフレコでの発言であって即時に撤回したにもかかわらず、前半だけが切り取られて報道されたと語っている。

 しかし小西議員の説明を聞いても、オフレコであったとか、即時に撤回したとかいうことは明確でないようである。

 3月の間、小西議員が公開した文書の正確性をめぐる議論が行われてきたからか、正確性が気になるが、小西議員の言動に十分な正確性はあるであろうか?

 上の動画の35分くらいから、産経新聞の記者が前の晩、小西議員からその記事に関してLINEを受けたと語っている。

 次のような文面であったという。

オフレコで、しかもその場で撤回した発言を、よくも書くなあと呆れますが、書くのであれば、以下の発言をちゃんと追記するように伝えて下さい。修正しないなら、意図的な記事として法的措置をとります。

産経新聞記者

 小西議員も認めているので事実であったようである。

 産経新聞の記者は、まずその記事は共同通信の記事だという。

 そして小西議員の言動は、編集権への介入ではないかと小西議員に問うた。

 それに対して小西議員は、(その記事を出したことが?)違法行為であるゆえに、編集権への介入ではないと語っている。

 そして記者会見における産経新聞の記者の「態度」も含めて法的措置をとるという。

 小西議員は3月の間、高市大臣等によって、政治権力が報道の自由に対して圧力をかけてきたとして、それに対して報道の自由を守る立場をとってきたかのように語ってきた。

 ところがその小西議員自身が報道の自由に対して政治権力によって圧力をかけているのではないかと疑われることになったのである。

フジテレビと産経新聞に対して

 小西議員はフジテレビ(と産経新聞)を責めるツイートを連投した。

 まず「産経とフジテレビについては今後一切の取材を拒否します」

 そしてフジテレビを放送法第4条違反でBPO等に告発することができるという。

 放送法がどのように適用されるかが問題となっていたが、小西議員は積極的に適用されると考えているようである。

 「フジテレビは政治圧力以前に局内に元々そうした歪んだ人材がいることが深刻だ」

 「元放送政策課課長補佐に喧嘩を売るとはいい度胸だと思うが」

 政治権力による圧力にならないのか?

 「放送法に違反し偏向報道を続けるNHKとフジテレビに対し、放送法などあらゆる手段を講じて、その報道姿勢の改善を求めたいと考えます」

TBS

 小西議員はTBS社長の発言をも問題としている。

 TBSの社長は「小西文書」に関して「現場は委縮していない」と言ったという。

 それに対して小西議員は「文書が示す報道の自由への侵害、今国会での違法解釈の全面撤回など、自らの見解を国民に説明する責務を負っている」と語っている。

 しかし「文書が示す報道の自由への侵害」ということも「今国会での違法解釈の全面撤回」ということも小西議員が言っていることではあるが、必ずしも他の人が同意していることではない。

 総務省は、解釈は一貫して変わっていないと言っている。

 それにもかかわらず、報道機関は小西議員の主張を「国民に説明する責務を負っている」のか?

 そういうことは「報道の自由への侵害」にならないか?

テレビ朝日

 ついでに、テレビ朝日の社長が、「小西文書」に関して現場への影響はなかったと語ったことを取り上げて置こう。

 テレビ朝日の篠塚浩社長は28日の定例記者会見で、放送法の「政治的公平」の解釈に関する総務省の行政文書を巡り「これまでも常に放送法に基づいて公平・公正な報道に努めてきたし、今後も同じように公平・公正な報道に努めたい」と述べた。

 2015年作成の行政文書には、同局の「報道ステーション」の番組名も登場していた。篠塚社長は文書の中身の評価は避けた上で「当時、何かがあったかというと一切ないし、現場への影響もありません」と強調した。

「今後も公平公正に報道」 テレビ朝日の篠塚社長 | 共同通信

朝日新聞

 3月31日には、小西議員と朝日新聞との対立が生じている。

 朝日新聞政治部記者の鬼原民幸氏は、「放送法の政府統一見解は、今この瞬間も現存し続けて」いると考えていた。

 それに対して小西議員は、2015年の高市大臣の答弁以来の放送法の解釈は、3月17日に小西議員によって撤回されたことになっていると反対している。

 3月28日の時事通信の記事に反対したのと同じである。

 朝日新聞は3月初めに小西文書が総務省の「内部文書」を公開した時から、小西議員と近い立場をとってきたようであったが、他のテレビ局、新聞とともに距離を置いているようである。

 朝日新聞の記事を批判↓

 朝日新聞官邸クラブが小西議員の発言を、「小西文書」における磯崎陽輔氏の発言と並べた。

 それに対して小西議員が反発している。

終わりに

 3月初めに小西議員が総務省の「内部文書」を公開して、参議院の予算委員会などで高市大臣などを追及した時には、マスメディアも同じように高市大臣等による放送法の解釈の変更を問題としていた。

 ところが28日に予算が成立して、小西議員と高市大臣の対立が一段落ついて間もなく、小西議員とマスメディアの対立が生じたことで、情勢は変わった。

 それまで小西議員は、報道の自由を守るために高市大臣等と戦っているようなことを語っていた。

 マスメディアが小西議員の側についたのはそれゆえでもあった。

 ところが今度は、小西議員は自分を守るために報道に対して圧力をかけているように見える。

 それまで主張していたのは何だったのか?

 法のためではなく自分のためだったのではないか?

 そのことは直接にマスメディアと対立することであるゆえに、マスメディアも小西議員と対立するに至った。

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