「小西文書」―高市大臣の主張する問題点の考察・整理

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 2023年3月初め小西洋之参議院議員が文書を公開して岸田内閣を追及しようとしたが、高市早苗経済安全保障担当大臣はその文書は事実に反すると主張した。

 高市大臣の主張をもとにして、文書の問題点について考察・整理する。

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高市大臣の主張

 高市大臣は、小西議員が公開した文書のうち、高市大臣に関わる4枚について事実に反すると主張している。

 第一に、「高市大臣レク結果(政治的公平性について)」と題する文書について、そのようなレクはなかったと主張している。

 そのことに関して高市大臣が挙げている根拠について考えてみよう。

 まず、礒崎陽輔総理補佐官(当時)に関して。

私が、礒崎元総理補佐官が放送法にご関心があったこと、また総務省情報流通行政局とやり取りをしていたのかもしれないことを初めて知ったのは、小西参議院議員が当該文書をマスコミに公開された今年(令和5年)の3月2日でした。
(中略)
 従って、平成27年2月の時点で、当該文書にあるような「補佐官からの伝言」(礒崎元総理補佐官と総務省情報流通行政局とのやり取り)や「平成27年5月12日の参議院総務委員会の答弁案」など、放送法の政治的公平の解釈に関するレクを受けたはずがありません。

公式ホームページ 総務省文書に関して参院予算委に提出した資料②

 文書には礒崎補佐官からの伝言が高市大臣に伝えられたと記されているが、そういうことはなかったというのである。

 次に「官邸」という言葉について。

私の発言として、「官邸には『総務大臣は準備をしておきます』と伝えてください」との記載も、明らかに不自然です。
 私は、指示をする時には、「官邸」という曖昧な表現ではなく、相手が「総理」なのか「官房長官」なのか「副長官」なのかを明確に致します。

公式ホームページ 総務省文書に関して参院予算委に提出した資料②

 高市大臣は、文書にあるような「官邸」という言葉の使い方をしないというのである。

 以上の二つの根拠はいずれも高市大臣の個人的な記憶、認識である。

 しかしさらに深く考えることもできる。

考察

 まず小西議員が公開した文書の「ストーリー」について、高市大臣がまとめているところをみておこう。

安倍内閣で総理補佐官を務めておられた礒崎前参議院議員が、前年(平成二十六年)秋以降、『放送法』第四条の解釈について、総務省の情報流通行政局長や放送政策課長と何度かやり取りをし、安倍晋三総理と私も電話でやり取りをし、官邸の意向を受けた私が、平成二十七年五月十二日の参議院総務委員会で、『放送法』第四条の解釈変更をするような答弁をしたというようなストーリーでした。

「月刊Will」5月号、29頁

 この「ストーリー」には、おかしなところがある。

 問題は、高市大臣が「官邸の意向を受けた」というところである。

 文書にある平成27年2月13日の「高市大臣レク」の時点では、礒崎氏はまだ安倍総理大臣に対する説明を行っていないことになっている。

 礒崎氏は12月18日に「政治的公平に係る放送法の解釈について、年明けに(補佐官から)総理にご説明しようと考えている。」と言ったと記されている。

 12月18日の磯崎氏は「具体的な進め方」について、安藤情報流通行政局長に次のように語ったと記されている。

磯崎補佐官 もちろん、官邸(補佐官)からの問合せということで、(多分変わらないだろうから)高市大臣にも話を上げてもらって構わない。こちら(官邸)で作るペーパーとそちら(総務省)で作るペーパーの平仄を合わせる作業を進めてほしい。こちらの資料も高市大臣にお見せしてもらって構わないし、こちらのペーパーを埋めるための回答ぶりについても早急に検討してほしい。政治プロセスは来年に入ってからだが、ペーパー自体は年内に整理したい。
安藤局長 一定の整理が出来た段階で、官邸(補佐官)からの問合せということでそのペーパーで返したいと高市大臣に説明した上で政治プロセスに入る形でお願いしたい。

礒崎総理補佐官ご説明結果(2R概要)

 このやりとりの中で「官邸」という言葉は礒崎補佐官のことをさすものとされている。

 そうすると、高市大臣は、「官邸」すなわち磯崎補佐官の「意向を受けた」という「ストーリー」になる。

 高市大臣は、この時点ではまだ安倍総理に説明もしていない磯崎補佐官の「意向を受けた」ことになるのである。

 礒崎氏は、高市大臣レクの直前の1月29日にも安藤局長に対して「高市大臣のご了解が得られれば、自分(補佐官)から今回の整理について総理にご説明し、(国会での質問等について)総理の指示を受ける形にしたい。」と語ったと記されている。

 安倍総理への説明は、高市大臣の了解の後に考えられていたというのである。

 2月13日の「高市大臣レク」で、高市大臣は安藤局長から「大臣のご了解が得られればの話であるが、礒崎補佐官からは、本件を総理に説明し、国会で質問するかどうか、(質問する場合は)いつの時期にするか、等の指示を仰ぎたいと言われている。」と言われたと記されている。

 つまり「高市大臣レク」は安倍総理への説明の前にあったとされている。

 そうだとすると、高市総務大臣は、安倍総理に説明がまだ行われていない、磯崎補佐官が進めているだけのことを、そのまま受け入れたことになる。

 そういうことがあるのであろうか?

 そして高市大臣は次のように答えたと記されている。

官邸には「総務大臣は準備をしておきます」と伝えてください。補佐官が総理に説明した際の総理の回答についてはきちんと情報を取ってください。総理も思いがあるでしょうから、ゴーサインが出るのではないかと思う。

高市大臣レク結果(政治的公平について)

 高市大臣はその中の「官邸」という言葉について、「私は、指示をする時には、「官邸」という曖昧な表現ではなく、相手が「総理」なのか「官房長官」なのか「副長官」なのかを明確に致します。」と主張している。

 この「官邸」という言葉は、たしかに奇妙である。

 上に述べたように12月18日の文書では、「官邸」とは磯崎補佐官のこととされていた。

 2月13日の「高市大臣レク」では、「官邸」が何を指すのか、曖昧になっている。

 高市大臣が誰に対しては「総務大臣は準備をしておきます」と伝えようとしたのか、曖昧になっている。

 高市大臣はこのレクが15分で行われたということもおかしいと指摘している。

そもそも、当該文書では15:45~16:00の15分間でレクが行われたことになっていますが、礒崎総理補佐官からの伝言を伺い、4枚の添付資料も含めて、放送法の解釈について説明を受けた上で、質疑応答を行ったとしたら、15分間では到底収らないはずだと考えております。

総務省文書に関して参院予算委に提出した資料②

 たしかに15分の間に高市大臣が、磯崎補佐官の考えをそのまま受け入れて、「官邸には「総務大臣は準備をしておきます」と伝えてください」と答えるまでのことをしたということは、理解しがたい。

 それまで磯崎氏と総務省官僚の間で数カ月の間、やりとりを重ねてきたことであるのに、高市大臣は15分のレクですべて理解して受け入れたということは、不自然ではないか?

 そもそも小西議員が公開した文書では、礒崎氏と総務省官僚の間のやりとりが多くて、高市大臣、安倍総理に関するものは少ない。

 「ストーリー」から考えると、高市大臣に関する分、安倍総理に関する分が多くなるはずではないか?

 実際には、高市大臣に関する分には、上に述べたようなことがある。

 高市大臣と安倍総理の電話に関する文書にも問題がある。

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