中国はロシアのウクライナ侵攻をどう考えるのか?

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 2022年2月4日に行われた北京冬季五輪開会式では、米国をはじめ多くの国が政府関係者を送らない「外交的ボイコット」をしたが、ロシアのプーチン大統領は出席した。

 開会式に先立って、プーチン大統領と習近平中国国家主席とは会談を行い、共同声明を発表した。

 2月20日に五輪の閉会式が行われた。

 その後に、ロシアはウクライナに侵攻を始めた。

 中国はそのロシアの行動をどう考えているのか?

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いとぐち

 ロシアがウクライナ侵攻を始めるまで、中国の人は、ロシアの侵攻などない、英米が自分の利益のために煽っているだけだと語っていた。

 「人民網」も、「中国に帰った中国人」宋文洲氏も、そうであった。

 実際には、ロシアが侵攻を始めた。

 「人民網」も、宋文洲氏も、間違えていたわけである。

 その間違いは、個人の問題にとどまることでなく、中国と関わることである。

 宋文洲氏は、中国を代表しているように見える。

 人民日報は、中国共産党中央委員会の機関紙である。

 宋文洲氏も、「人民網」も、中国と親しいロシアは、英米のような悪いものではないゆえに侵攻などしない、と語っていた。

 ところがロシアは侵攻という悪いことをした。

 中国側は、あれほど自信をもってしていた予測を外したことになっている。

 あれほど英米を馬鹿にしていたのに、英米が警戒したような悪いことをロシアが実行したので、英米が正しくて、中国は間違っていたことになっている。

 中国はロシアに裏切られたのであろうか?

 とはいっても、中国はその後もロシアより米国を攻撃し続けているようである。

 それとも実は知っていたのであろうか?

 ウクライナ国境にロシアが軍を集結させていた状況では、米英のように侵攻に警戒する方が自然で、中国のように米英が自分の利益のために煽っているときめつける方が不自然ではないかとも思うが、中国にとっては自然だったのであろうか?

検証

問題提起

 五輪が開幕して間もない2月6日、宋氏は「ロシアがウクライナを侵攻する」というのは、米国が「政治作戦」として言っていることだと語っていた。

 米国が悪い、米国が「陰湿」だというのである。

 そして「結果を見守ってください」と語っている。それほどその予想に自信をもっていたわけである。

 漫画は前から引用していたと思うが、米国が各国を従わせているということをあらわしているようである。

 今度のことも、米国が悪い企みに各国を従わせようとしているということであろうか。

 宋氏はこのようにその予想によって米国をはじめとする様々な国、人を馬鹿にしてきていた。

 宋氏の予想が覆ると、そのことも覆ることになる。―上に挙げられた国々ではなく、宋氏自身が誤解のとりこになっていたわけである。

 2月9日に宋氏は、米国とロシアと、「誰が嘘吐きかを確認する良い機会」だと言っている。

 たしかに「良い機会」である。

2月16日侵攻説

 2月16日にロシアが侵攻する、とバイデン米大統領が語った。

 宋氏はそのことを問題としている。

 その予測は外れると思っていたようである。

 2月15日。

 そして2月16日。

 予測は外れた、というわけである。

 しかし実際には、それから間もなくロシアがウクライナに侵攻した後から振り返ると、必ずしも予測が正しくなかったとは言えない。

 ロシアは、予測通り、ウクライナに侵攻する意図を持っていたからである。

 この場合、時期の予測が当たらなかったことは、それほど大きな問題ではない。駆け引きがあるからである。

 ロシアが侵攻する意図をもっていなかった場合には、米国が空騒ぎしただけであったということになる。そうであったならば、宋氏の批判は正しい。しかし今回そうではなかった。

 逆に、宋氏が何故にあれほど自信満々にロシアは侵攻しないと思い込んでいたのか、気になる。

英米の目標

 宋氏は当初、英米がロシアによるウクライナ侵攻に警鐘を鳴らすのは、英米自身の利益のためときめつけていた。

 まず米国は次のような利益のためにロシアがウクライナに侵攻すると煽ったと語っている。

 次に、「米国がEU経済と独自軍事体制を打撃するため」という。

 「ロシアと欧州との連帯を阻止する」という目標があるという。

 米国の真の狙いはロシアから欧州へのエネルギー供給を排除することだと語っている。

 本質は欧州と米国の戦いと語っている。

 ここまでのことをまとめると、パイプラインによるロシアから欧州へのエネルギー供給を止めることによって、ロシアと欧州との連帯を阻止し、その代わりに米国のガスと武器を押収に売るために米国は動いているというのである。

 英国も米国とともに欧州とロシアとの連帯を阻止しようとしているということであろうか。

 人民網でも同様に、米国が扇動して、欧州と対立していると言われている。

内政面で実績に劣るバイデン政権は、ウクライナ問題を利用して国民の関心をそらすとともに、ロシアを共通の敵に仕立て上げることで欧州の同盟国を抱き込み、米国が主導・掌握・コントロールする欧州秩序を維持する必要がある。そのため、ウクライナ情勢の緊張が続くことは米国の利益に資するのだ。しかし、ウクライナをめぐる軍事衝突の発生が米国に及ぼす影響は限定的だが、欧州諸国には難民の大量流入、対露制裁による巨額の経済的損失、「ノルドストリーム2」プロジェクトの頓挫といった耐え難い結果をもたらす。だからこそ、欧州はウクライナをめぐる衝突の回避を最重要目標としているのだ。

人民網日本版 2月17日 ウクライナ情勢の誇張、米欧それぞれに思惑

 この記事にあるように、バイデン政権が現在低下している支持率の対策として、ロシアによるウクライナ侵攻を言い出したということは、宋氏も言っている。

 次の記事も同様。

 2月21日の記事でこういうことを言っていることからも、ロシアと中国との間で意思疎通がなかったのではないかと思われる。

米国政府はロシアが近くウクライナに「侵入」するとの宣伝を連日繰り返している。ロシア側がウクライナへの武力行使の意図はないと繰り返し強調し、米国と始めとする西側に対しその安全保障上の懸念を真剣に受け止めるよう望む中でもなお、米政府は「侵略はいつでも起こり得る」と言い張っている。戦争の危機を誇張・宣伝し、意図的に緊張をつくり出す米側のこうした行為は、不信と分断を激化させ、ウクライナ危機及びこれに関係する問題の適切な解決を妨げるだけだ。

人民網日本語版 2月21日 戦争の危機の誇張・宣伝はウクライナ危機の解決に無益

 ロシアがウクライナに侵攻した後からみると、米英は警戒すべきことを警戒していたと思われる。

 宋氏や人民網が語ることは、空想のようである。

イラク戦争

 米国がロシアはウクライナに侵攻すると語ったことを、宋氏は、イラク戦争の時に米国が語っていたことと同じようなこととみなしていた。

 2月18日のツイート。

 2月21日のツイートでも、両者を全く同じようにみなしている。

 イラク戦争の時と同じように、今度も米国は自国の利益のために口実を設けて戦争を始めようとしているというのである。

 英国に対しても同じように批判している。

 こういう論法は2月10日に趙立堅氏がやっていた。

 これをみると、中国政府もそう考えていたように見える。

 実際には、米国が語っていたように、ロシアはウクライナに侵攻した。

 中国政府も、米国の過去の行動から導き出したパターンにとらわれていて、ロシアの実情を知ることができなかったのであろうか?

米国の情報網

 宋氏は、はじめ米国の情報力を馬鹿にしていた。

 2月19日には、『米国の「情報力」は凄い』と皮肉を言っている。

 「偽情報をばら撒く米国」と言うのである。

 2月20日にも『米国の「情報力」』を馬鹿にしている。

 イラク戦争などのパターンによってみるのが正しいと思い込んでいたようである。

 2月20日にも、米国の「情報力」を馬鹿にしている。

 アフガニスタンの時のことをもちだしている。

 このように宋氏は米国の「情報力」を繰り返し馬鹿にしていた。

 ところが、2月25日には、宋氏は米国の情報力がすぐれていることを認めている。

 米国の情報が正しかったことが明らかになったからである。

 ついでに宋氏がリツイートした中華人民共和国駐大阪総領事のツイートもとりあげておこう。

 2月19日のツイートで、米国に対して「戦争デマをばらまく」と語っている。

 「戦争で血をすってきた凋落覇権アメリカが世界平和が続くと持たない」というのは、宋氏と同様の見方。

 逆にそれこそ「デマ」ではないか?

 それにしても総領事として言葉遣いが「異常」。

謝罪

 宋氏の以上の見通しは外れた。

 現実にロシアはウクライナに侵攻した。

 米英が自国の利益のために語っていたのではなかった。

 宋氏自らそのことを認めて謝罪している。

 宋氏は、「プーチンはまるで別人のようで…」と語っている。

 宋氏がそれまで見て、予想していたのとは別人のようにプーチン大統領は動いたというのである。

 それまで宋氏はプーチン大統領を擁護していたが、現実のプーチン大統領は擁護できないことをしたと考えているようである。

 しかしまた「そこまで追い込まれたのか」というように同情してもいる。

 宋氏はロシア国内の専門家にとっても想定外であったという記事を引用している。

 宋氏は侵略を支持しないという。

 ただし同時に米国に反対することを忘れない。

中国の態度

 宋氏はそれぞれの時の中国の態度を伝えている。

 2月13日のツイート。

 後から見ると、事情を知っていたロシア、米国に対して、中国は事情を知らずにいたのではないかとも思われる。

 2月22日。ウクライナ東部の親ロ派地域の独立をプーチン大統領が承認したことを受けて。

 ロシアに対しては賛成できないという。

 しかしまた米国も悪いということは言い続ける。

 2月25日。ロシアによるウクライナへの全面侵攻開始を受けて。

 やはりロシアも悪いが米国も悪いという主張。

 「ロシア」という言葉が出てこない。

まとめ

 ロシアがウクライナに侵攻するまで、宋文洲氏も人民網も、英米がそのことをいうのは自分の利益のためだと語っていた。

 実際にはロシアはウクライナに侵攻した。

 宋氏等の予想は外れた。

 ロシアと中国とは一致していないようにも見える。

 それとも実は一致しているのであろうか?

 いずれにせよ宋氏等はその後、ロシアと距離をとりながらも、ロシアを攻撃せず、米国等に対する批判を続けている。

 2月25日には、プーチン大統領と習近平国家主席との間で電話会談が行われた。

ロシアのプーチン大統領は25日、中国の習近平国家主席と電話会談し、ウクライナとハイレベル協議を開催する意向があると述べた。習主席は、ロシアとウクライナの対話を通じた問題解決を支持すると伝えた。中国外務省が協議内容を公表した。

REUTERS 2022年2月25日 プーチン氏「ウクライナとハイレベル協議の意向」、中国主席に表明

 距離をとりながらも連携するかたちか。

 ちなみに3月4日から13日まで開催される北京パラリンピックはどうなるのであろうか?

 プーチン大統領は、北京五輪の開会式に出席して、閉会式の後にウクライナへの侵攻を始めたので、北京五輪を立てたようである。

 しかしウクライナ侵攻という大事件によって、北京五輪の印象は薄れているのではないか?

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