「きまぐれオレンジ☆ロード」の劇場版「あの日にかえりたい」と「アニメージュ」

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きまぐれオレンジ☆ロード
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 「アニメージュ」は、「きまぐれオレンジ☆ロード」の劇場版「あの日にかえりたい」に対しても、もちあげる動きをとっていた。

 「アニメージュ」はその前にも「きまぐれオレンジ☆ロード」のTVシリーズをもちあげる動きをとっていた。

 「きまぐれオレンジ☆ロード」の劇場版「あの日にかえりたい」が出来る前に「アニメージュ」であったことについては、前に書いた。

 ここでは「あの日にかえりたい」が公開された後に「アニメージュ」であったことについて書く。

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「アニメージュ」1989年1月号

 「アニメージュ」1989年1月号の投稿欄では、「きまぐれオレンジ☆ロード」の劇場版「あの日にかえりたい」の感想で特集が組まれている。(195頁)

 「きまぐれオレンジ☆ロード」の劇場版「あの日にかえりたい」は、原作ファン、TVシリーズファンの反発を買うような出来になっている。

 この特集のはじめに「それぞれの「オレンジ★ロード」」という題で、「10月に公開された「きまぐれオレンジ★ロード~あの日にかえりたい」について、それぞれの“思い”を読んでください」とあるのは、反発があったことを認めているのである。無視することはできなかったのである。そしてその批判的な投稿をもとりあげるというのである。

 そうして取り上げられた投稿は次の通り。

投稿

 四本の投稿が載せられていた。

 第一は、「心の動きが現実的だ」と題する投稿で、「周囲からは「ゼンゼン「きまぐれ」じゃない」とか「恭介がひどすぎる」との声が聞かれましたが、自分としてはよかったと思います。」というもの。

 第二は、「“受験生”という立場から見た「きまぐれ」」と題する投稿で、「「アニメージュ」でも「暗い」とか「ノリがテレビとちがう」と書いてありましたが、受験と三角関係を明るくやればウソになると思います。」と劇場版を擁護して、「私にとってこの映画は、いつまでも心の奥に名作としてしまっておけると確信しています。」というもの。

 第三は、「キャラのよさを無視、本来の魅力がない」と題する投稿で、「けっこう期待していたのに、まさに裏切られたという感じである。」、「けっきょく、しりきれトンボで終ったテレビのラストのほうがマシである。」というもの。

 第四は、「マジメに青春していて、やっぱり「きまぐれ」」と題する投稿で、「たしかに、原作ともテレビシリーズとも、ちがったふんい気をただよわせ、一部その批判はあたっているでしょう。」と認めつつ、「しかし、この作品もまたマジメに青春しているという点において「オレンジ★ロード」の世界です。」というもの。

問題

 この四本の投稿の選び方は偏っている、と私は思う。

 第一の投稿、第四の投稿は劇場版「あの日にかえりたい」をよしとするものでありながら、批判の存在を前提としていることは、「あの日にかえりたい」に対して反発が大きかったことをあらわすことである。反発の方が大きかったことをあらわすことである。

 この特集では、劇場版を批判する投稿を多く載せなくてはならなかったと私は思う。称賛する投稿を載せてもいい。賛成反対同数でもいい。いずれにせよ、批判する投稿を多く載せなくてはならなかったと思う。

 ところが実際には、称賛する投稿が3、批判する投稿が1となっている。称賛する投稿の方が多くなっているのである。

 これでは「あの日にかえりたい」に対する当時のファンの反応を反映していないと思う。

 選者はコメントで「いずれにしても「早く決着をつけてほしい」というお便りも多かったわけで、そんなファンはどう見ていたのかな。」と言っている。1988年8月号のコメントでもそうであったが、劇場版の作り手の意に沿うファンの存在に言及することによって、劇場版を擁護しようとしているようである。

 「アニメージュ」がアニメ版を擁護する立場をとることは、必ずしも悪いことではない。問題は、「アニメージュ」の姿勢が一貫していないことにある。「アニメージュ」はそれまで反対の姿勢をとっていたのである。

 たとえば、ちょうど2年前の1987年1月号の投稿欄では、「那由他」のアニメ版を原作と比較して批判する投稿を載せて、選者のコメントに「11月号には「那由他よかった」というおたよりが載りましたが、全体の数からいくと「よくない」という意見が多かったことを報告しておきましょう」と書いている。(135頁)

 「那由他」に関しては、「よくない」という意見が多かったことをわざわざ報告しているのである。

 ところが、「きまぐれオレンジ☆ロード」に関しては、「よくない」という意見が多かったかどうか、明らかにすることはない。逆に擁護する意見を多くとりあげている。

「劇場アニメ70年史」

 「アニメージュ」との関係でもう一つ気になるのは、「劇場アニメ70年史」のことである。

 「劇場アニメ70年史」については、小黒祐一郎氏が次の記事で説明している。

 「劇場アニメ70年史」は「TVアニメ25年史」とともに「アニメージュ創刊10周年を記念して企画されたもの」である。「編集のメインとなったのは、データ原口こと原口正宏さん」で、小黒祐一郎氏は「解説原稿の担当」であったという。

 この「劇場アニメ70年史」の帯には「大正6年「芋川椋三玄関番之巻」から昭和63年「きまぐれオレンジ★ロード」まで」とある。「きまぐれオレンジ☆ロード」の劇場版「あの日にかえりたい」は、「劇場アニメ70年史」の最後の作品という重要な位置に置かれているのである。

 「あの日にかえりたい」の解説には次のような言葉がある。

三角関係が崩壊したあとの現在をモノトーンで、過去の部分をカラーにした画面は、3人の過去をなつかしむ心情を表現して、印象的だった。

「劇場版アニメ70年史」、136頁

 その表現を称賛しているようである。

 ところで、併映された「陽あたり良好!」の劇場版「KA・SU・MI 夢の中に君がいた」の解説には次のような言葉がある。

あだち充の原作からはかけ離れた展開となり、キャラクターの持つ魅力も生かせずに終わった感がある。

「劇場版アニメ70年史」、137頁

 こちらは「原作からはかけ離れた展開となり、キャラクターの持つ魅力も生かせずに終わった」ことを批判しているようである。

 しかし「原作からはかけ離れた展開となり、キャラクターの持つ魅力も生かせずに終わった」ということは、「きまぐれオレンジ☆ロード」の「あの日にかえりたい」にも言うことができることである。

 「陽あたり良好!」劇場版に対しては、そのことによって批判しながら、「あの日にかえりたい」に対しては、そのことを言わないことは、おかしい。

まとめ

 これまで明らかにしたように、「アニメージュ」は「きまぐれオレンジ☆ロード」の劇場版「あの日にかえりたい」を、他の作品と比較して不公平なことをしてまで擁護していた。

 その数年後に、「あの日にかえりたい」の望月監督がジブリで「海がきこえる」の監督をしたことと関係があるのであろうか?

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