フレッド・アステアの映画「絹の靴下」 ミュージカル版「ニノチカ」

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フレッド・アステア
Photo by Susan Wilkinson on Unsplash
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 「絹の靴下」(原題は “Silk Stockings” )は、1957年に公開されたミュージカル映画。

 パリに来たソ連の女性の役人に、アメリカ人の映画プロデューサーが惚れ込んで口説く、という話。

 ソ連の女性の役人をシド・チャリース、アメリカ人の映画プロデューサーをフレッド・アステアが演じている。

 「バンド・ワゴン」の次にフレッド・アステアとシド・チャリースが共演した映画で、この映画の二人のダンスも見どころが多い。

 この映画の後、フレッド・アステアはミュージカル映画に出演しなくなる。(その次は10年後の1968年)


絹の靴下(字幕版)
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「絹の靴下」の話

 映画「絹の靴下」は、1939年に公開された映画「ニノチカ」をもとにしている。


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 問題を解決するためにソ連の女性の役人ニノチカがパリに来る。

 パリでその問題に関わっていたフランスの侯爵は、ニノチカが資本主義的な享楽を否定することに驚くが、惚れ込んで口説く。

 「絹の靴下」の話は大体において同じ。

 ただしニノチカを口説くのは、フランスの侯爵ではなく、アメリカの映画プロデューサーになっている。

主題

 話が変わったことによって主題も変わっている。

対立

 「ニノチカ」は、資本主義に反対するソ連の文化と、資本主義を代表するバリの文化との対立を描いていた。

 「絹の靴下」は、資本主義に反対するソ連の文化と、資本主義を代表するアメリカの文化の対立をパリを舞台として描いている。

アメリカ文化

 主人公をアメリカの映画プロデューサーとしたことによって、「絹の靴下」はアメリカの文化を正面から扱うことができた。

 アメリカ映画はアメリカの文化を代表するものである。

 そういうアメリカ文化がソ連の文化と対立する。―たとえばソ連の音楽と対立する。

ソ連の文化

 ソ連の文化が資本主義と対立するものと描かれていることは同じ。

 「絹の靴下」ではソ連の音楽の特殊性が問題となる。

 また、ソ連がバレエの国として特徴づけられている。―そのことによってシド・チャリースのバレエが生きる。

「ニノチカ」から「絹の靴下」へ

 1939年に公開された映画「ニノチカ」はヒットした。

 そこで映画「ニノチカ」をもとにしたミュージカルが作られた。

 音楽はコール・ポーターが作った。

 そうしてできたブロードウェイ・ミュージカル「絹の靴下」は1955年に開幕した。

 映画「絹の靴下」はそのブロードウェイ・ミュージカルをもとにして作られて、1957年に公開された。

「絹の靴下」ということ

 日本語の題は「絹の靴下」とされているが、原題は “Silk Stockings” 、シルクのストッキングである。

 シルクのストッキングが、資本主義的な享楽を象徴するものとされているのである。

 映画「ニノチカ」では、そのことは帽子によって表現されていた。

 ニノチカがシルクのストッキングを履くところに、コール・ポーターは「絹の靴下」( “Silk Stockings” )という楽曲を作った。

 映画「絹の靴下」では、ニノチカがそれまで着ていた服を脱いで、絹の靴下を身に着けていくところは、シド・チャリースのバレエによって表現されている。

 豪華なホテルの中で豪華な下着姿の伸びやかな踊りが美しいところ。

 しかしその下着姿での踊りは、撮影当時、ヘイズオフィスの検閲によって問題があるとされたと言われている。

 映画「絹の靴下」の日本語版のポスターには「おシャレをしたい女性はゼヒ!コウ奮したい殿方もゼヒ!」と書いてある。(「華麗なるミュージカル映画の世界」、98頁)


’S Wonderful―“Musical” The Graphic Work 華麗なるミュージカル映画の世界。

 そういう映画でもある。

 映画女優役のジャニス・ペイジが下着姿で「サテンとシルク」( “Satin and Silk” )を歌うところも、そういう方向だということができるかもしれない。

ナンバー

 「絹の靴下」、「サテンとシルク」以外の楽曲について。

「あなたのすべて」 “All of You”

 フレッド・アステアがニノチカ(シド・チャリース)を口説く「ロマンティック」な歌。

 この楽曲によって対立していた二人が踊りを合わせていく。

「結ばれる運命」 “Fated to Be Mated”

 フレッド・アステアがシド・チャリースと意気投合したところで歌う。

 そして二人で広い空間で楽しそうに踊る。

 やはり二人の踊りには独特の魅力がある。

「ザ・レッド・ブルース」 “The Red Blues”

 ソ連に帰ったニノチカが、大勢の隣人とともに踊る。

 たのしい踊り。

 シド・チャリースはうまい。

「ステレオフォニック・サウンド」 “Stereophonic Sound”

 1950年代後半に映画が売りにしていたテクニカラー、シネマスコープ(横長の画面)、ステレオフォニック・サウンドをからかう歌。

 ジャニス・ペイジとフレッド・アステアが歌い、踊る。

 ダンスの流行がタップダンスからバレエに移ったことも。

「ザ・リッツ・ロール・アンド・ロック」 “The Ritz Roll and Rock”

 フレッド・アステアの最後の見せ場。

 フレッド・アステアはコール・ポーターに当時流行り出したロックンロールをとりいれた楽曲をもとめた。

 そうしてできたのがこの曲。

 フレッド・アステアはトップハット姿で踊る。

「絹の靴下」のDVD

 「絹の靴下」はDVDが出ている。

 特典映像「コール・ポーター・イン・ハリウッド Satin and Silk」では、シド・チャリースのナレーションによって映画撮影の時の様子が語られている。―監督ルーベン・マム―リアンのこと、作詞作曲家コール・ポーターのこと、フレッド・アステアのことなど。


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