日: 2020年8月22日

  • 橋下徹氏の中国についての発言(2020年8月16日の「日曜討論the PRIME」)

    橋下徹氏の中国についての発言(2020年8月16日の「日曜討論the PRIME」)

     2020年8月16日のフジテレビの「日曜報道the PRIME」で、橋下徹氏の言うことを聞いていて、理解に苦しんだので、整理してみた。

     7月26日の「日曜報道the PRIME」で、橋下徹氏が、二階氏のような政治家を増やすべきだと言ったことも理解に苦しんで、整理してみた。今回の発言も、前回の発言と関係があるが、やはり理解に苦しんだ。

     それほど重要なことかと何度も思った。しかし橋下氏は、現在の日本において影響力のある人である。それよりまず、私が橋下氏の言葉を聞いて不快に感じたことを解きほぐして気持ちよくなりたいとおもった。

    議題

     香港の国家安全維持法によって黎智英氏、周庭氏が逮捕されたことに対して、日本政府は重大な懸念を有しているという声明を出した。それに対して中華人民共和国は内政干渉をやめるように言った。

     そのことについて、スタジオにいる、橋下氏、櫻井氏、甘利氏の三人はどう考えるか、というかたちで討論は始まった。

     櫻井氏、甘利氏は、中華人民共和国が国内において、自由、民主、人権に反対し、国際的な信義に反対することに対しては、米国をはじめとして非難する流れができている現在、日本は言うべきことを言うべきだという。

     橋下氏は、それに対して、中華人民共和国に「内政干渉」と言われないようにすべきだという。

     橋下氏は、言い方に気を付けるべきだという。簡単に反論されるような言い方はすべきでないという。

     あくまでも日本の安全保障ということから言うべきだという。

     そこまでは、理解に苦しむことはない。

    域外適用

     橋下氏は、香港の国家安全維持法に対して、「域外適用」ということを問題とすることに反対する。「域外適用」は他の国にもあるというのである。

     その主張は、それだけでみると、問題ないようである。

     しかし今回の番組において、橋下氏がそのことを力説することにどういう意味があるのか、理解に苦しむ。

     橋下氏の主張は、香港国家安全維持法の問題は「域外適用」ということだけにあるという人に対してのみ意味があることである。

     今回の討論の相手である櫻井氏も甘利氏も、香港国家安全維持法の問題は「域外適用」ということだけにあると言っていない。

     討論番組において、討論の相手が言っていないことを反駁することに意味があるだろうか?

     橋下氏も、香港の国家安全維持法の中身には問題があるという。櫻井氏、甘利氏と同じ考えであるとすると、櫻井氏も甘利氏も言っていないことのために時間を浪費したことの意味はますますわからなくなる。

    英中共同声明

     次に橋下氏は、中華人民共和国中共同声明に反して香港の一国二制度をなくしたことに対して、日本がどこまで口をはさむことができるかを問題とする。

     中共同声明は中二国間のことである。そのことについて、日本が口を出すならば、日本は、日共同宣言の北方領土問題に関して中華人民共和国が口をはさんでくることを認めなくてはならない、という。

     このあたりも理解に苦しむ。

     思うに、理想論と現実論とが混ざり合っている。

     第一に、日本の北方領土問題と、中華人民共和国の香港問題とは違うと多くの日本人が考えるであろう。日本の北方領土問題に中華人民共和国が口を出すことと、中華人民共和国香港問題に日本が口を出すこととは違うと考えるであろう。

     自己中心的な主観的な感情によって違うと考えるのではなく、客観的に違うと考えるであろう。

     日本の北方領土において、日本はソ連に侵略された領土の返還をもとめている。

     中華人民共和国香港に関して、国際的な信義に反対し、自由、民主、人権に反対することを行っている。

     日本が、自由、民主、人権、国際的な信義のために、中華人民共和国香港に対してやっていることを批判することと、中華人民共和国が日本の北方領土問題に口をはさむことに反対することとは、矛盾することではない。

     以上は理想論である。

     現実論としては、日本は米国のような力を持っていないゆえに、中華人民共和国に対して理想論の通りに言うことができないのではないか、という問題がある。

     橋下氏は、その現実論を主張しているようである。

     ただし橋下氏の主張では、理想論と現実論とが混同されているように聞こえる。

    TikTok

     甘利氏は、TikTokによって情報が中華人民共和国政府に抜き取られることを問題とする。

     そのことはすでに様々な国で問題になっている。日本も問題としなくてはならないという。

     それに対して橋下氏は、日本は米国についていくほかなく、安全保障上断ち切るべきところは断ち切らなくてはならないが、経済上利益をとるべきところはとるというように賢くやるべきだという。

     橋下氏の考えでは、TikTokは、「安全保障上断ち切るべき」ところに入るのであろうか、それとも「経済上利益をとるべき」ところに入るのであろうか、よくわからない。

    米国に対する認識

     橋下氏は、米国の現在の対中政策はトランプ大統領個人によるものであって、今度の大統領選で大統領がかわると、政策も変わるかもしれない、そのことに備えるべきだという。

     橋下氏は前回もそう言っていた。橋下氏の「現実論」の根拠はそこにあるようだ。

     たしかに大統領によって政策が変わるおそれはある。

     しかし甘利氏、櫻井氏も言うように、米国の現在の対中強硬政策は、トランプ大統領が主導しているものではなく、議会が主導している。現在、続々と出されている対中強硬法案は、米国議会で、与野党によって支持されて可決されたものである。

     大統領が変わっても、その流れはとどまらないのではないか。

     今度の大統領選で民主党も対中強硬策を出している。

     民主党の経済外交について、「中国包囲に照準」と伝えられている。

     現在、台湾の蔡英文政権も、ファイブアイズの国々も、米国とともに中華人民共和国に対抗することに踏み出している。そういう状況で、米国がそのはしごを外すことを考えるべきであろうか?

    日本国内に対する認識

     甘利氏も櫻井氏も、日本の企業は、中華人民共和国の企業と関わると情報、技術がとられる危険があって、そのために米国中華人民共和国と関係を持つものを制裁しようとしているにもかかわらず、そのことについて警戒心が薄いことを問題としている。

     それに対して橋下氏は、日本は経済上利益をとるべきところはとるというように賢くやるべきであるのに、自民党をはじめ国会議員の様子をみると、全部断ち切れなどというので、懸念をもっているという。

     橋下氏は前も同じようなことを言っていたが、やはり理解に苦しむ。

     現在、日本の政府も、経済界も、甘利氏、櫻井氏が言うように、中華人民共和国に対して断ち切る方向に行き過ぎておらず、逆に、警戒心が薄くて、断ち切らなすぎている。

     橋下氏は、自民党をはじめ国会議員の様子を問題としているが、甘利氏、櫻井氏が問題としている日本の政府、経済界に対してどう考えるのか? 日本全体にとってはそちらの方が問題ではないか?

    難民

     橋下氏は、周庭氏をサポートするという議論で、抗議すべきだということに対して、異論があるという。

     日本は、香港だけでなく、ウイグルでも、どこでもいいから、政治的な難民をどこからもどんどん受け入れるという制度を作るべきだという。

     え・・・?

     香港、ウイグルはともかく、なにゆえにそのほかに、「どこでもいいから、政治的な難民をどこからもどんどん受け入れるという制度を作るべきだ」ということになるのか?

     そもそも難民を受け入れることには問題がある。

     それより前に抗議すべきではないのか?

    終わりに

     今回の番組を見ていて、橋下氏の言動に対して不快に感ずるところが多かった。

     自分なりに分析してみると、こういうことではないかとおもう。

     橋下氏は、安全保障の観点から、日本は中華人民共和国との関係を重視すべきだという立場をとっているようである。そういう立場に同意するとしても、反対するとしても、橋下氏がどっしりと構えて、相手を納得させるように語ったならば、不快に感じなかったのではないかとおもう。

     橋下氏が、櫻井氏の言うことをさえぎって、「そこはわかってます」と言うのは不快であった。「そこはわかってます」というのは、部分的に同意するということであろうが、どこまで同意して、どこから反対するのか、よくわからない。それゆに不快に感じたのである。