カテゴリー: 政治

  • 「犯人の思う壺」? 安倍元首相銃撃事件以後の世の中の動きについての考察 ①犯人の思い

    「犯人の思う壺」? 安倍元首相銃撃事件以後の世の中の動きについての考察 ①犯人の思い

     安倍晋三元首相が銃撃され、死亡した後の日本の社会・政治は、犯人の望みを叶える方向に動いているのではないか? 「犯人の思う壺」になっているのではないか?

     その問題について、詳しく考えてみる。

     関連記事↓

     「犯人の思う壺」というのは、犯人の思う通りになることである。

     犯人の望みを叶えるというのは、犯人の望む通りになることである。

     まず「犯人の望み」ということについて考える。

    山上被告の望み

     安倍晋三元首相を銃撃した山上徹也という人物の望みは、必ずしも明らかにされていない。

     そのことに関する言葉はあるが、その言葉によっては必ずしも明らかにされていない。

     その問題に関して、内田樹氏が下の対談で言及している。

    https://dot.asahi.com/articles/-/200822

     内田氏の語ることによりつつ考えてみよう。

    形式

     まず形式。

     内田樹氏が対談で語るように、

     山上被告の言葉の出し方は「自分の行動の意味を第三者の解釈に委ねる」かたちになっている。

     これは「自分の政治的主張を周知する」ことを目的とする伝統的なテロリズムとは異なるかたちである。

    供述

     事件の後、供述が報道された。

     山上被告が語ったことが伝えられたのであるが、そのことは、警察、報道機関を通して世に伝えられた。

     警察とか報道機関に委ねるかたちである。

    手紙

     7月17日、山上被告が事件の前にジャーナリストの米本和弘氏に送った手紙が報道された。

    https://jp.reuters.com/article/idJP2022071701000224

     この手紙は、山上被告が自分の考えをそのまま現わしたものということができる。

     しかし山上被告はこの手紙を米本氏に送っている。―直接世に訴えているのではなく、米本氏に委ねているのである。

     米本氏は7月13日に気づいたといわれている。

     差出人名を記さず、氏名住所の書かれた合意書のコピーを同封したと伝えられているが、そのことも相手に委ねているようである。

    https://www.yomiuri.co.jp/national/20220717-OYT1T50010/

    ツイッターアカウント、書き込み

     山上被告のものとされるツイッターアカウントのツイート、米本氏のブログへの書き込みも見出された。

     しかしいずれも山上被告が事件を起こした自分の主張を明らかにするものとして世の中に訴えた言葉ではない。

    内容

     次に内容。

     山上被告が語った言葉では、犯行の理由は必ずしも明らかにされていない。

     内田氏が語るように「自分自身の言葉で「私はこういう理由でこの行為に至った」という開示をしていない」。

    供述

     まず、報道された山上被告の供述では、山上被告が何故に犯行を決意したのか、よくわからない。

     山上被告は事件後、警察に次のように語ったとされている。

     「安倍元首相ではなく、統一教会のトップ、韓鶴子(ハンハクチャ)総裁を撃ちたかった。でも、コロナで日本に来ないので、統一教会と深い関わりのある安倍元首相を撃ちました」

     弁解録取書が作成されたのは、銃撃からわずか30分後。警察はこの時点で、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への恨みから安倍元首相を襲ったという犯行動機を把握したのだった。

     さらにその日の夕方までの取り調べで、山上容疑者は安倍元首相との「深い関わり」についても詳しく説明していく。「もともと統一教会を日本に引き込んだのは、岸信介元首相だ。ただ、すでに死んでいるので、その孫の安倍元首相を狙った」。教団友好団体のイベントに安倍元首相がビデオメッセージを送ったことも知っていたという。

    朝日新聞 銃撃直後に語っていた「深い関係」 教団名を伏せ続けた警察の内幕

     このような言葉では犯行の理由は理解できず、逆に様々な疑問が生ずる。

    統一教会への恨み

     第一に、犯行動機は「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への恨み」にあるというところ。

     朝日新聞の記事には次のように書かれている。

    教団を恨む原因は、教団の信者になった母親の高額献金で一家の生活が苦しくなったことだった。こうした供述は一貫し、ぶれることがなかった。

    朝日新聞 銃撃直後に語っていた「深い関係」 教団名を伏せ続けた警察の内幕

     しかし「教団の信者になった母親の高額献金で一家の生活が苦しくなった」ということは、事件の20年前のことである。

     20年前のことを理由として事件を起こしたということは、理解に苦しむことである。

    https://www.tokyo-sports.co.jp/articles/-/232836

    山上容疑者にとっては忘れられないことなのだろうが、20年もたってから旧統一教会との関係を理由に安倍氏を銃撃するとは何とも理解に苦しむ。

    東スポ 安倍元首相銃撃の山上容疑者の背後に2つの〝反アベ団体〟か 捜査当局が重大関心

     長い年月をかけた敵討ちの話は古今東西にあるが、いずれも意思はあるのに機会を得るまでに時間がかかった場合である。

     山上被告の場合、20年の間機会が得られなかったとか、20年後にはじめて機会を得たとかいう話は伝えられていない。

     山上被告は、韓鶴子総裁を撃ちたかったが「コロナで日本に来ないので」安倍氏を撃ったと語ったと伝えられている。「コロナ」は2020年からで、「コロナで日本に来ないので」韓総裁を撃つ機会が失われたということは、その犯行の意思は2020年前後からでなくてはならない。

     相手が変わっているのではないか? ということも問題となる。

     20年前の母親の献金に関する統一教会に対する恨みは、20年前の母親の献金に関わった人に対するものである。20年後の統一教会では中の人が変わっているのではないか?

     恨みを韓鶴子総裁に向けることにも疑問がある。 安倍元首相に向けてることにはさらに疑問がある。

     20年の間に母親の献金の返金が行われていることも問題になる。―山上被告の母親は、20年前に破産した後に統一教会から5000万円の返金を受けている。山上被告自身も署名している。

    https://www.yomiuri.co.jp/national/20220821-OYT1T50114/#r1

     返金によって「母親の高額献金で一家の生活が苦しくなった」という状況は変わっているのではないか?

     山上被告も署名したということは、山上被告にとってもそこで問題は解決していたのではないか?

     読売新聞の記事は全国弁連の弁護士の「返金請求を困難にさせる狙いなのは明らか」という言葉を引用している。統一教会が返金すべきであるのに合意書によって相手に請求権を放棄させたというのである。

     山上被告の場合どうであったかわからないが、5000万円の返金がなされて、母親がそれ以上の返金を求めていないと伝えられているが、そういう場合に統一教会にそれ以上の返金義務があるのであろうか?

     いずれにせよ、「母親の高額献金で一家の生活が苦しくなったこと」は統一教会だけによることではなく、信者である母親によることでもある。母親が返金を求めていないとすると母親によることになる。

     それにもかかわらず、山上被告の恨みが統一教会に対してだけ向けられていることも、問題となることである。

    安倍元首相を撃った理由

     次に、統一教会への恨みから「安倍元首相を襲った」というところ。

     安倍氏は統一教会との「深い関わり」があったと山上被告は語ったようであるが、「深い関わり」とは何か、明らかでない。

     「詳しく説明していく」というので、どういうことが明らかにされるかと思っていると、「もともと統一教会を日本に引き込んだのは、岸信介元首相だ。ただ、すでに死んでいるので、その孫の安倍元首相を狙った」というだけである。

     岸氏が「統一教会を日本に引き込んだ」かどうかはさておいて、ここでは岸氏のことが語られているだけである。安倍氏と統一教会との「深い関わり」については何も語られていない。

     岸氏が「すでに死んでいるので、その孫の安倍元首相を狙った」というのは、岸氏に対する恨みから孫の安倍氏を撃ったということであるが、そうだとすると安倍氏を撃つ理由はなかったようである。

     「教団の信者になった母親の高額献金で一家の生活が苦しくなったこと」と安倍氏とはどういう関係があるのか?

    手紙

     山上被告が米本氏に送った手紙を読んでも、どうして犯行を決意したのか、よくわからない。

    統一教会への恨み

     まず統一教会への恨みに関わるところ。

    私と統一教会の因縁は約30年前に遡ります。
    母の入信から億を超える金銭の浪費、家庭崩壊、破産、、、
    この経験と共に私の10代は過ぎ去りました。
    その間の経験は私の一生を歪ませ続けたと言って過言ではありません。

    個人が自分の人格と人生を形作っていくその過程、
    私にとってそれは、
    親が子を、家族を、何とも思わない故に吐ける嘘、
    止める術のない確信に満ちた悪行、
    故に終わる事のない衝突、その先にある破壊。

    REUTERS 元首相銃撃、手紙で示唆か

     10代のころのことで統一教会を恨んでいるようである。

     しかしそれだけでは、40代になって犯行を決意した理由はよくわからない。

    安倍氏を撃った理由

     安倍氏を撃ったことに関しては次のような言葉がある。

    苦々しく思っていましたが、安倍は本来の敵ではないのです。
    あくまでも現実世界で最も影響力のある統一教会のシンパの一人に過ぎません。

    REUTERS 元首相銃撃、手紙で示唆か

     ここでも「本来の敵ではない」という安倍氏を銃撃したのは何故か? という大きな問題が明らかにされないままになっている。

     多くの人は行間を読み込んでいるが、本人は明らかにしていない。

    犯行

     この手紙では、肝心の犯行についても明確に書いていない。暗示するような書き方をしている。

    安倍の死がもたらす政治的意味、結果
    最早それを考える余裕は私にはありません。

    REUTERS 元首相銃撃、手紙で示唆か

     読売新聞の記事も「手紙には「安倍(元首相)の死」という文言があるが、犯行を示唆しつつも明確に予告しているわけではなく、不可解な点もある」と書いている。

    https://www.yomiuri.co.jp/national/20220718-OYT1T50064/

    まとめ

     山上被告の言葉から次の要素を取り出すことができる。

    ・20年以上前の統一教会との関係による苦しみ

    ・文鮮明氏の一族に対する犯行の意思

    ・安倍氏に対する犯行

     山上被告は、20年以上前の統一教会との関係による苦しみから統一教会に対して恨みを抱いていた。その恨みから文鮮明氏の一族に対する犯行を企てていたが、結局安倍氏に対する犯行を決意した、というのである。

     しかし、

     20年以上前の苦しみからその20年後に犯行を決意した、ということは理解に苦しむことである。

     統一教会に対する恨みから安倍氏に対する犯行を決意した、ということも理解に苦しむことである。

     そういう理解に苦しむことを山上はそのまま投げ出している。

    20年の問題

     山上被告が20年前のことを持ち出して統一教会に対する恨みを述べていることについて、考えてみよう。

    私怨と義憤

     白井聡氏は次のように語っている。

    山上被告がツイッターなどに書き込んだ内容を読むと、個人として統一教会を恨んでいただけでなく、より普遍的な見地から同教団の反社会性を絶対に許せないという思いが滲んでいます。

    AERAdot. 「政治的テロリズム」よりも「社会的承認」 安部元首相殺傷事件から変わった権威に対する暴力の動機

     山上被告の書いたことの中には二つのことがあるというのである。

    ・統一教会に対する個人的な恨み

    ・より普遍的な見地から許せないという思い

     私怨もあるが義憤もある、ということである。

     そのことは、山上被告が事件前に米本和弘氏に送った手紙にもみることができる。

    私と統一教会の因縁は約30年前に遡ります。
    母の入信から億を超える金銭の浪費、家庭崩壊、破産、、、
    この経験と共に私の10代は過ぎ去りました。
    その間の経験は私の一生を歪ませ続けたと言って過言ではありません。

    REUTERS 元首相銃撃、手紙で示唆か

     というところは「個人として統一教会を恨んでいた」ことを現わすところ。

     それに対して、

    世界の中の金と女は本来全て自分のものだと疑わず、
    その現実化に手段も結果も問わない自称現人神。

    私はそのような人間、それを現に神と崇める集団、それが存在する社会、
    それらを「人類の恥」と書きましたが、今もそれは変わりません。

    REUTERS 元首相銃撃、手紙で示唆か

     というところは「より普遍的な見地から同教団の反社会性を絶対に許せないという思い」のようである。

     内田樹氏は、テロリストは「自分の言いたいことのほとんどを諦めて、政治的意図だけに限定する」ものであるとして、山上被告のように「トラウマがどうしたというような個人史的な事情なんかをつらつらと書き連ねる」ものには「テロリストの資格はない」というように語っている。

     「政治的意図だけに限定する」というのは、義憤に限定することである。

     「トラウマがどうしたというような個人史的な事情なんかをつらつらと書き連ねる」というのは、私怨を述べることである。

     テロリストは義憤から事をなすものである。それに対して山上被告は私怨を述べているのでテロリストではない、というのである。

     しかし白井氏が言うように、山上被告は私怨も義憤も持っている。

     テロリストと対立する類型というより、テロリストと異なるところと同じところとを合わせもった類型とみるべきではないか。

    飛躍

     山上被告の義憤、「より普遍的な見地から同教団の反社会性を絶対に許せないという思い」には、飛躍がある。

     山上被告は米本氏のブログへの書き込み(2020年9月7日)に「統一さんは既に統一教会の奴隷」と書いている。そして統一教会は「文一族による人類奴隷化計画」だと語っている。

    まさか統一教会が文一族による人類奴隷化計画だというのが陰謀論だとおっしゃる訳ではないでしょう?(笑)

    あと10年をポジティブに生きる記録 [2020/09/07 11:34] まだ足りない
    http://yonemoto.blog63.fc2.com/blog-entry-1170.html#comment_list

     統一教会が滅ぶことが「全ての統一教会に関わる者の解放」というのは、統一教会は信者を奴隷にするという考えによることであろう。

    必要なのは許す事でも忘れる事でもない。
    彼等の罪を償わせ切ること。
    (中略)

    統一教会が滅んで悲しむのはこの世に害なす事が生き甲斐の者しかいない。
    何の遠慮がいろうか?

    我、一命を賭して全ての統一教会に関わる者の解放者とならん

    あと10年をポジティブに生きる記録 2020/12/12 23:41 まだ足りない
    http://yonemoto.blog63.fc2.com/blog-entry-1188.html#comment_list

     (「まだ足りない」のところにプロトンメールへのリンクがある)

     統一教会は「文一族による人類奴隷化計画」という思想は、山上被告自身の経験から飛躍していている。

     山上被告の経験では山上被告の母親は自主的に統一教会を信仰していた。しかし統一教会は「文一族による人類奴隷化計画」という思想では、奴隷にされたもの、自主性をなくされたものとされる。

     その飛躍によってすべての信者は奴隷とされ、自主性のないものとされ、そういう山上被告によって解放されるものとされる。

     これは他の人の自主性を認めない思想である。

     他の人の自主性によって行われていることを理解しない思想である。

     そういう思想では、自分の母親も自主性をもっていないことにされる。

     山上被告の「より普遍的な見地から同教団の反社会性を絶対に許せないという思い」はこういうものであった。

     普遍的であるかのようなかたちをとっているが、一人よがりになっている。義憤のかたちをとっているが、私怨になっている。

     山上被告は9月7日の書き込みで、「文一族による人類奴隷化計画」という山上被告の主張は陰謀論ではない、と笑っている。

     しかし具体的な現象の背後に単純な原因があると論証もなくきめつけて、その「原因」によって具体的な現象を説明する陰謀論である。

     山上被告は2020年にはそういう思想を持っていた。

     米本氏に送った手紙にもそういう思想が示されている。文鮮明氏一族に対する殺意はそういう思想からきている。

     安倍氏に対する犯行もそういう思想からきているようである。

     山上被告がいつどうしてそういう思想を自分のものとしたのか、よくわからない。

     「世界日報」の記事は、2005年から返金のことで山上家を訪れ山上被告と交流があった奈良の教会の元幹部の「教会に対する反発は当然ありました。しかし自分が教会を潰しに掛かろうと思っていたわけではないと思う」という言葉を載せている。

     その交流は2009年まで続いたという。

     早くからもっていたかもしれないが、2009年以後に凝り固まっていったものではないかと思われる。

     山上被告がその後に統一教会について語ること、自分と統一教会の因縁について語ることは、そういう飛躍した思想によってである。

    「精神的に未熟」?

     内田樹氏は、山上被告は「精神的に未熟」であった、とみなしている。

    自分の意図を適切に伝えるような言葉を持っていなかった。それだけ精神的に未熟だったということです。

    AERAdot. 「政治的テロリズム」よりも「社会的承認」 安部元首相殺傷事件から変わった権威に対する暴力の動機

     古来のテロリストは「わずかな文字数のうちに自分の意図を誤解の余地なく書く」という「かなりの知的な成熟」を備えていた。

     山上被告はそういう「知的な成熟」を備えておらず、「精神的に未熟」であったというのである。

     山上被告は自分の意図を明らかにしないことによる効果を考えている可能性があるとも内田氏は語っている。

    どういう意図でやったのかはっきりさせないほうが、いろいろな人がああでもない、こうでもないと仮説を立ててくれる可能性がある。

    AERAdot. 「政治的テロリズム」よりも「社会的承認」 安部元首相殺傷事件から変わった権威に対する暴力の動機

     そのことを考えてやっているというのである。

     内田氏は、山上被告はそのことを「無意識的な計算」によってやっていると語る。

    行動の意図を明らかにしない方がむしろ効果的だという無意識的な計算が働いている。

    AERAdot. 「政治的テロリズム」よりも「社会的承認」 安部元首相殺傷事件から変わった権威に対する暴力の動機

     「無意識的な計算」ということは「精神的に未熟」であることからきていることのようである。

     しかし山上被告は「意識的な計算」によってやっているかもしれない。

     内田氏は山上被告が自分の意図を適切に伝えないことの効果は「被言及回数が増える」ことにあるという。そうして「社会的承認を得たい」とか「集団的記憶に自分の名前を刻み込みたい」とかいう欲求を満足させようとしたというのである。

     実際には、山上被告を被害者と見て手を差し伸べようとする動きが起こっている。

     山上被告の表現によってそういう効果が生じている。

    減刑を求める声

     「女性自身」の2022年9月8日の記事。

     山上被告の境遇に同情し、山上被告を被害者として、減刑を求める声が報道されている。

     上の記事では、そういう動きに対して嫌悪感を示す声をも取り上げている。

     内田樹氏もその嫌悪感に近い考えを持っているようである。

     内田氏は、上に取り上げた対談において、テロリストの条件として「その代償として自分の命を差し出す」ことを挙げて、山上被告にはそのことがないゆえにテロリストの条件を満たしていないと語っている。

    自分の行為の意味を明らかにして、かつ自分が殺す相手の命と引き換えに自分も死ぬという覚悟がない行動を「政治的テロリズム」と呼ぶわけにはゆかない。仮に行為の政治的目的が開示されていたとしても、相手を殺すだけで自分は生き延びるつもりなら、それはただの「暴力」です。独裁者が反対派を虐殺するのと変わらない。

    AERAdot. 「政治的テロリズム」よりも「社会的承認」 安部元首相殺傷事件から変わった権威に対する暴力の動機

     「ただの「暴力」」「独裁者が反対派を虐殺するのと変わらない」などと厳しく批判している。

     山上被告自身が厳刑、「生き延びる」ことを求めているかどうか、わからないが、山上被告の減刑を求める人は、山上被告が「生き延びる」ことを求めるのである。

     山上被告を被害者として生き延びさせようとする動きは、山上被告の暴力を無視、あるいは軽視しているのではないか、という問題を内田氏は出しているのである。

     内田氏はまた次のように言う。

    政治的テロリズムというのは、自分の政治的主張を広く世間に伝え、それを実現する合法的な手立てが他にないので、最後の手段として暴力を選ぶというもののはずです。だから、刑事罰を受ける覚悟で行なう。

    AERAdot. 「政治的テロリズム」よりも「社会的承認」 安部元首相殺傷事件から変わった権威に対する暴力の動機

     ここでも山上被告に「自分が殺す相手の命と引き換えに自分も死ぬという覚悟」がないことを問題としているのであるが、ここでは自分の主張を「実現する合法的な手立てが他にないので、最後の手段として」ということを「政治的テロリズム」の条件としている。

     山上被告が暴力を用いる時に「実現する合法的な手立てが他にない」状況があったかどうかという問題を内田氏は出しているのである。

     2022年6月12日、安倍晋三元首相銃撃事件の第1回公判前整理手続きが行われることになっていたが、不審物が届いたとして奈良地裁は手続きを中止した。

    https://jp.reuters.com/article/idJP2023061301000022

     量刑の減軽を求める署名を入れた段ボール箱1箱が不審物と見なされて、手続きは中止されたのである。

     6月12日の公判前整理手続きには山上被告も出席する予定であった。

     第1回公判前整理手続きは10月13日に行われたが、山上被告は出席しなかった。弁護団に対し「手続きに自分が出席しようとしたことで騒ぎになった。次回以降出席するかどうか、よく考えたい」と話していたという。

    https://www.asahi.com/articles/ASRBF3D05RBCPTIL017.html

     山上被告の減刑を求める動きによって、山上被告その人が表に出ず裏に隠れることになる、ということは、事件後に起こったことを象徴することである。

    参観日

     「精神的に未熟」ということに関して、山上被告の言葉で気になるものをとりあげる。

     共同通信の2022年12月7日の記事では、授業参観に関する山上被告の言葉を伝えている。

     安倍晋三元首相の銃撃事件で、殺人容疑で送検され鑑定留置中の山上徹也容疑者(42)が「母親が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の用事に行って授業参観に来なかった」などと、精神鑑定の担当医に少年期の不満を漏らしていることが7日、関係者への取材で分かった。

    共同通信 「母が参観来ず」と容疑者不満
    https://jp.reuters.com/article/idJP2022120701001005

     山上被告の母は統一教会のために子供の養育をおろそかにしたと言われている。

     そのことで山上被告は統一教会を恨んだと言われている。

     「母親が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の用事に行って授業参観に来なかった」ということは、その例のようである。

     しかし山上被告の母親が統一教会に入信したのは山上被告が10代の時である。

     10代で母親が授業参観に来ないことのために統一教会を恨んだというのは、異常ではないかと思われる。

     それとも実際はそうではなかったのであろうか?

    大学

     次にNHKの1月13日の、山上被告が服役したあとは「大学へ行きたい」と言ったという記事。

    https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20230113/2000069873.html

     山上被告は「母親が旧統一教会、「世界平和統一家庭連合」に入信し多額の献金をしたことなどで、家庭が困窮し大学に進学できなかった」と言われている。

     大学に進学したかったにもかかわらず、統一教会のために進学できなかった。そこで服役したあとに大学へ行きたいというのである。

     拘置所では大学に行くための勉強をしていたという。

    今月10日まで、鑑定留置が行われた大阪拘置所では、大学に行くための勉強をして過ごし、親族からは英語の資格の教材や英和辞典が差し入れられ、特に英語に力を入れて学んでいたということです。

    NHK 安倍元首相銃撃事件 被告“服役したあとは大学へ行きたい”

     まず、内田樹氏の「相手を殺すだけで自分は生き延びるつもりなら、それはただの「暴力」です」という批判が問題となる。

     次に、山上被告が20年前に大学に進学できず、服役した後に大学に行きたいということは、20年の間大学に行きたかったということのようであるが、それほど大学に行きたかったという人が、20年の間大学に行かなかったのは何故か? という問題がある。

     服役した後には、その20年の間より状況はよくなっているのか?

     記事によると、「服役後の費用として使ってください」などとして金が送られて、2022年10月までに100万円を超えていたというが、そういうことで状況はよくなっているのか?

     山上被告が大学に進学できなかった時から間もない時に大学に行きたいと言っているとすると、理解できるかもしれない。

     ただしこの記事で山上被告が言ったとされている言葉は、山上被告の伯父が言ったことであるかもしれない。

    若く見える?

     事件の後、山上被告は何度かテレビに出たが、いつも前髪で額を覆うような髪型にしていた。

     前髪で額を覆う髪型は、初期のビートルズと同じように、若く見えるという効果がある。

     意識してそうしているのか、無意識にそうしているのか、わからない。

     山上被告が若く見えれば見えるほど、10代の統一教会との経験は近いことのように思われる。

     若く見えれば見えるほど、周りが手を差し伸べなくてはならない未成年のように見えるかもしれない。

    切迫感

     山上被告が米本氏に送った手紙の最後の言葉。

    安倍の死がもたらす政治的意味、結果
    最早それを考える余裕は私にはありません。

    REUTERS 元首相銃撃、手紙で示唆か

     ここで余裕がないという言葉が何のことを言っているのか、明らかではない。

     しかし余裕がないということは、追い詰められているということである。

     何かよくわからないが、犯行の前に追い詰められているというのである。

     被害者であるかのような印象を与える言葉である。

    まとめ

     山上被告の望み、思いは明らかにされていない。

     統一教会に対する恨みということは、了解できないことではない。

     しかし40代の人物が自分の10代の時のことを理由として恨みを晴らすということは、了解しがたいことであるのに、そのことについての説明はない。

     山上被告には、私怨だけでなく義憤もあったようである。統一教会には普遍的な観点から問題があるとして、その問題の解決を考えたというのである。

     しかしその義憤にも説明が欠けている。

     統一教会には普遍的な見地から問題があるというには、統一教会に対する客観的な分析がなくてはならない。

     山上被告が持っているのは統一教会は「文一族による人類奴隷化計画」という陰謀論のような思想である。

     そういう思想では、山上被告は母親のことも理解できないであろう。

     山上被告は近年母親からか離れていたと言われている。統一教会から離れて行きながら、近年の統一教会の実情を知ることができたのであろうか?

     統一教会の相談件数は近年減ってきているのに、減る前に事件を起こさずに、減った後に事件を起こしていることも、奇妙である。

     統一教会は「文一族による人類奴隷化計画」という陰謀論のような思想においては、信者の具体的な姿も、時間も、問題とならないということであろうか?

     山上被告が何故に安倍元首相を銃撃したのか、ということも説明が欠けている。

     安倍氏と統一教会の関係を問題としたようであるが、何を問題としたのか、よくわからない。

     あれだけ大きな事件を起こしたのに、理由がよくわからないというのは奇妙なことである。

     このように山上被告の望み、思いは明らかではない。

     内田樹氏が言うように伝統的なテロリストと違うのである。したがってその望みを叶えるということも、違うかたちになる。

     たとえば五・一五事件は伝統的なテロリストによるものであって、専ら義憤によってなされている。そしてその述べた明確な政治的主張が人を動かしたのである。

     それに対して山上被告の言葉は私怨と義憤が混在したものである。

     まず私怨における被害の主張に対して救わなくてはならないという声が出てきた。

     そして義憤における、統一教会は「文一族による人類奴隷化計画」とか、安倍氏と統一教会の関係とかいう根拠のない陰謀論が推し進められた。

     次に、犯人の望みを叶えていると言われる動きの中で重要な人物について考える↓

  • 山上被告は統一教会のせいで大学に行けなかったのではない? マスメディアの闇

    山上被告は統一教会のせいで大学に行けなかったのではない? マスメディアの闇

     安倍晋三元首相暗殺事件の山上徹也被告は、母親が統一教会に高額の献金をしたことによって大学に行くことができなかったと言われている。

     ところが事実はそうではなかったという証言が出てきた。

    早い時期の記事

     母親が統一教会に高額の献金をしたことによって大学に行くことができなかったという話は、暗殺事件から間もなく広まった。

     2022年7月15日に次のような記事が出ている。

    https://nordot.app/920491196673671168?c=39550187727945729

    山上容疑者の伯父は、容疑者が経済難で大学に進学できなかったと明らかにした。

    共同通信 「山上容疑者、経済難で大学進学できず」

     統一教会に対する恨みには、それだけの原因があったというのである。

     統一教会はそれだけ悪いことをしたということでもある。

     しかしこの話に対しては疑問も出ていた。

     親が金を出せなくても、大学に行くことはできるのではないか?

     奨学金制度を使うとかアルバイトによって金を稼ぐとかによって大学に通っている人はいるのではないか?

     実際には大学に行かずに、伯父の支援によって予備校に通って公務員試験を受けているのであるが、伯父はそれだけの支援をしたのに、何故に大学受験の支援をしなかったのか?

     伯父の話。

    頭脳は明晰だし勉強する意欲もあった。ところが家庭の経済状況から大学進学は断念せざるをえなかった。消防士になるための公務員試験向け予備校に通いたいというので、私が費用の75万円を工面した。
    それで何度か受験したのだが、筆記試験は通っても、最後は合格できなかった。徹也は強度の近眼でね。それがネックになったようだ。これが2001年頃のこと。

    東洋経済 山上容疑者を凶行に駆り立てた一族の「壮絶歴史」

    https://toyokeizai.net/articles/-/616833?

     「消防士になるための公務員試験向け予備校に通いたい」と言ったというのは、どういうことなのか?

    それまでの”山上像”を否定する証言

     「週刊文春」2023年5月4・11日ゴールデンウィーク特大号は、「山上の遠戚にあたる人物」による「これまでの”山上像”を否定する」証言を取り上げている。

    https://bunshun.jp/denshiban/articles/b5817?utm_source=twitter.com&utm_medium=social&utm_campaign=denshibanPublished

     その人物はまず山上被告の母親が破産したゆえに大学進学をあきらめたということを否定する。

    こうした経済状況が原因で、徹也が大学進学を諦めたというのはちょっと違うと思います

    「週刊文春」2023年5月4・11日ゴールデンウィーク特大号34頁

     そして次のように語る。

    徹也は、いろんな大学を受験したものの、志望校ではない奈良産業大学しか受からなかった。それで大学進学を選ばなかったと聞きました

    「週刊文春」2023年5月4・11日ゴールデンウィーク特大号34頁

     経済状況が原因で大学進学を諦めたのではなく、大学受験に失敗したゆえに大学進学を選ばなかったというのである。

     大学に進学しなかったのは、統一教会のせいではなく、自分のせいだというのである。

    根拠のない言説

     母親が統一教会に献金したことによって大学に進学できなかった、という広く伝わっている話は何であったのか?

     検証せずに伝えられているのではないか?

     安倍氏暗殺事件に関する報道、そしてその後の統一教会に関する報道には、このように根拠の曖昧なまま広まっているものが多い。

     統一教会のせいで大学に進学できなかったすると、それだけ統一教会が悪かったことになる。

     自分で大学進学を選ばなかったとすると、統一教会はそれほど悪くなかったことになる。

     暗殺事件を考える上でも統一教会について考える上でも重要なことであるにもかかわらず、根拠の曖昧な報道がなされていたことになる。

     「週刊文春」が取材した「山上の遠戚にあたる人物」に取材すればわかったことが、事件から10カ月後に報道されている。

     報道機関は何をしているのか?

    疑問

     大学進学に関しては、その前にも気になる記事があった。

     たとえば1月13日の記事。

    https://www3.nhk.or.jp/kansai-news/20230113/2000069873.html

     被告が「服役したあとは「大学へ行きたい」などと話した」と伝える記事である。

     被告はそれまでいた大阪拘置所で大学に行くための勉強をしていたという。

    今月10日まで、鑑定留置が行われた大阪拘置所では、大学に行くための勉強をして過ごし、親族からは英語の資格の教材や英和辞典が差し入れられ、特に英語に力を入れて学んでいたということです。

    NHK 安倍元首相銃撃事件 被告“服役したあとは大学へ行きたい”

     以上のことを、記事は「被告は、母親が旧統一教会、「世界平和統一家庭連合」に入信し多額の献金をしたことなどで、家庭が困窮し大学に進学できなかったといいます。」ということと関係づけているようである。

     以前に大学に進学できなかったので、将来大学に進学しようということであろうか?

     それまで大学進学には障壁があったが、「服役したあと」にはなくなるということであろうか?

     それほど大学に行きたいという気持ちがあって、成人して20年以上の間何をしていたのであろうか?

     次のようなところも気になる。

    被告は医師に対して、「20歳ごろに、勉強のために伯父にパソコンを買ってもらったが、勉強しなかった」などの出来事も話していたということです。

    NHK 安倍元首相銃撃事件 被告“服役したあとは大学へ行きたい”

     伯父の支援を受けていた時のことのようであるが、その時に勉強の機会を与えられても「勉強しなかった」というのである。

     その時には、大学に行きたいという気持ちはなかったようである。

     その20年後に大学に行きたいという気持ちが出てきたのか?

     大学の話が伯父からばかり語られていることも気になる。

     7月15日の記事で「容疑者が経済難で大学に進学できなかったと明らかにした」のは伯父であった。

     1月13日の記事で被告が「服役したあとは「大学へ行きたい」などと話した」ことを伝えたのも伯父である。

     伯父は被告に対して大学に行くことをもとめたという。

    妹との手紙を通じて、伯父は「服役後は大学で学を身につけ、世の中のためになってほしい」などという思いも伝えているということです。

    NHK 安倍元首相銃撃事件 被告“服役したあとは大学へ行きたい”

     被告が大学に行きたいというのは、事実であるのか? 伯父の思いが混じっていないか?

  • 「小西文書」―高市大臣の主張する問題点の考察・整理

    「小西文書」―高市大臣の主張する問題点の考察・整理

     2023年3月初め小西洋之参議院議員が文書を公開して岸田内閣を追及しようとしたが、高市早苗経済安全保障担当大臣はその文書は事実に反すると主張した。

     高市大臣の主張をもとにして、文書の問題点について考察・整理する。

    高市大臣の主張

     高市大臣は、小西議員が公開した文書のうち、高市大臣に関わる4枚について事実に反すると主張している。

     第一に、「高市大臣レク結果(政治的公平性について)」と題する文書について、そのようなレクはなかったと主張している。

     そのことに関して高市大臣が挙げている根拠について考えてみよう。

     まず、礒崎陽輔総理補佐官(当時)に関して。

    私が、礒崎元総理補佐官が放送法にご関心があったこと、また総務省情報流通行政局とやり取りをしていたのかもしれないことを初めて知ったのは、小西参議院議員が当該文書をマスコミに公開された今年(令和5年)の3月2日でした。
    (中略)
     従って、平成27年2月の時点で、当該文書にあるような「補佐官からの伝言」(礒崎元総理補佐官と総務省情報流通行政局とのやり取り)や「平成27年5月12日の参議院総務委員会の答弁案」など、放送法の政治的公平の解釈に関するレクを受けたはずがありません。

    公式ホームページ 総務省文書に関して参院予算委に提出した資料②

     文書には礒崎補佐官からの伝言が高市大臣に伝えられたと記されているが、そういうことはなかったというのである。

     次に「官邸」という言葉について。

    私の発言として、「官邸には『総務大臣は準備をしておきます』と伝えてください」との記載も、明らかに不自然です。
     私は、指示をする時には、「官邸」という曖昧な表現ではなく、相手が「総理」なのか「官房長官」なのか「副長官」なのかを明確に致します。

    公式ホームページ 総務省文書に関して参院予算委に提出した資料②

     高市大臣は、文書にあるような「官邸」という言葉の使い方をしないというのである。

     以上の二つの根拠はいずれも高市大臣の個人的な記憶、認識である。

     しかしさらに深く考えることもできる。

    考察

     まず小西議員が公開した文書の「ストーリー」について、高市大臣がまとめているところをみておこう。

    安倍内閣で総理補佐官を務めておられた礒崎前参議院議員が、前年(平成二十六年)秋以降、『放送法』第四条の解釈について、総務省の情報流通行政局長や放送政策課長と何度かやり取りをし、安倍晋三総理と私も電話でやり取りをし、官邸の意向を受けた私が、平成二十七年五月十二日の参議院総務委員会で、『放送法』第四条の解釈変更をするような答弁をしたというようなストーリーでした。

    「月刊Will」5月号、29頁

     この「ストーリー」には、おかしなところがある。

     問題は、高市大臣が「官邸の意向を受けた」というところである。

     文書にある平成27年2月13日の「高市大臣レク」の時点では、礒崎氏はまだ安倍総理大臣に対する説明を行っていないことになっている。

     礒崎氏は12月18日に「政治的公平に係る放送法の解釈について、年明けに(補佐官から)総理にご説明しようと考えている。」と言ったと記されている。

     12月18日の磯崎氏は「具体的な進め方」について、安藤情報流通行政局長に次のように語ったと記されている。

    磯崎補佐官 もちろん、官邸(補佐官)からの問合せということで、(多分変わらないだろうから)高市大臣にも話を上げてもらって構わない。こちら(官邸)で作るペーパーとそちら(総務省)で作るペーパーの平仄を合わせる作業を進めてほしい。こちらの資料も高市大臣にお見せしてもらって構わないし、こちらのペーパーを埋めるための回答ぶりについても早急に検討してほしい。政治プロセスは来年に入ってからだが、ペーパー自体は年内に整理したい。
    安藤局長 一定の整理が出来た段階で、官邸(補佐官)からの問合せということでそのペーパーで返したいと高市大臣に説明した上で政治プロセスに入る形でお願いしたい。

    礒崎総理補佐官ご説明結果(2R概要)

     このやりとりの中で「官邸」という言葉は礒崎補佐官のことをさすものとされている。

     そうすると、高市大臣は、「官邸」すなわち磯崎補佐官の「意向を受けた」という「ストーリー」になる。

     高市大臣は、この時点ではまだ安倍総理に説明もしていない磯崎補佐官の「意向を受けた」ことになるのである。

     礒崎氏は、高市大臣レクの直前の1月29日にも安藤局長に対して「高市大臣のご了解が得られれば、自分(補佐官)から今回の整理について総理にご説明し、(国会での質問等について)総理の指示を受ける形にしたい。」と語ったと記されている。

     安倍総理への説明は、高市大臣の了解の後に考えられていたというのである。

     2月13日の「高市大臣レク」で、高市大臣は安藤局長から「大臣のご了解が得られればの話であるが、礒崎補佐官からは、本件を総理に説明し、国会で質問するかどうか、(質問する場合は)いつの時期にするか、等の指示を仰ぎたいと言われている。」と言われたと記されている。

     つまり「高市大臣レク」は安倍総理への説明の前にあったとされている。

     そうだとすると、高市総務大臣は、安倍総理に説明がまだ行われていない、磯崎補佐官が進めているだけのことを、そのまま受け入れたことになる。

     そういうことがあるのであろうか?

     そして高市大臣は次のように答えたと記されている。

    官邸には「総務大臣は準備をしておきます」と伝えてください。補佐官が総理に説明した際の総理の回答についてはきちんと情報を取ってください。総理も思いがあるでしょうから、ゴーサインが出るのではないかと思う。

    高市大臣レク結果(政治的公平について)

     高市大臣はその中の「官邸」という言葉について、「私は、指示をする時には、「官邸」という曖昧な表現ではなく、相手が「総理」なのか「官房長官」なのか「副長官」なのかを明確に致します。」と主張している。

     この「官邸」という言葉は、たしかに奇妙である。

     上に述べたように12月18日の文書では、「官邸」とは磯崎補佐官のこととされていた。

     2月13日の「高市大臣レク」では、「官邸」が何を指すのか、曖昧になっている。

     高市大臣が誰に対しては「総務大臣は準備をしておきます」と伝えようとしたのか、曖昧になっている。

     高市大臣はこのレクが15分で行われたということもおかしいと指摘している。

    そもそも、当該文書では15:45~16:00の15分間でレクが行われたことになっていますが、礒崎総理補佐官からの伝言を伺い、4枚の添付資料も含めて、放送法の解釈について説明を受けた上で、質疑応答を行ったとしたら、15分間では到底収らないはずだと考えております。

    総務省文書に関して参院予算委に提出した資料②

     たしかに15分の間に高市大臣が、磯崎補佐官の考えをそのまま受け入れて、「官邸には「総務大臣は準備をしておきます」と伝えてください」と答えるまでのことをしたということは、理解しがたい。

     それまで磯崎氏と総務省官僚の間で数カ月の間、やりとりを重ねてきたことであるのに、高市大臣は15分のレクですべて理解して受け入れたということは、不自然ではないか?

     そもそも小西議員が公開した文書では、礒崎氏と総務省官僚の間のやりとりが多くて、高市大臣、安倍総理に関するものは少ない。

     「ストーリー」から考えると、高市大臣に関する分、安倍総理に関する分が多くなるはずではないか?

     実際には、高市大臣に関する分には、上に述べたようなことがある。

     高市大臣と安倍総理の電話に関する文書にも問題がある。

  • 「小西文書」問題からの小西洋之参議院議員とマスメディアの戦い

    「小西文書」問題からの小西洋之参議院議員とマスメディアの戦い

     2023年3月初め、小西洋之参議院議員は総務省の「内部文書」を公開して、参議院予算委員会などで岸田首相、高市経済安全保障担当大臣を追及したが、3月28日、予算は滞りなく成立した。

     そこで問題は一段落したと思われた。

     ところがその後の小西議員の言動によって事態は意外な方向へ進んだ。

    小西議員とマスメディアの対立

     小西議員が総務省の「内部文書」なるものを公開して、放送法に関して岸田首相、高市大臣を追及し始めると、マスメディアも同様に放送法に関して岸田首相、高市大臣を追及した。

     高市大臣がその文書について捏造されたものといい、そうでない場合は辞職すると言ったことを受けて、マスメディアにも力が入ったようであった。

     3月28日までは、小西議員とマスメディアとは同じ方向に向かっているように見えた。

     ところが3月28日以後、小西議員の言動によって両者は対立する方向へ進んだ。

    時事通信に対して

     まず3月28日の時事通信の記事に対して、小西議員は次のように批判している。

     時事通信の記事は、高市大臣の捏造発言によって文書の正確性が焦点となって、本丸の放送法の解釈に関しては議論が深められず、うやむやになっているというものである。

     放送法の解釈には問題があるということでは、小西議員と同じような方向を向いている。

     ただし小西議員によると、3月17日の参議院外交防衛委員会で、2015年の高市大臣の答弁以降の放送法の解釈の変更を小西議員が全面撤回させたことになっている。

     それゆえに時事通信の「新解釈の撤回を目指したが、予算委で議論が深まったとは言い難い」というのは「誤報」だということになる。

     しかし小西議員が挙げる3月17日の外交防衛委員会で総務省は2015年の高市大臣の答弁でも放送法の解釈は変わっていないと語っている。解釈の変更がなかったということは、小西議員による撤回もなかったということではないか?

     小西議員と同様に、放送法の解釈の問題を追及してきた時事通信も、小西議員によるそれまでの解釈の撤回を認識していなかった。

     小西議員の語る、2015年の解釈変更の「全面撤回」は、総務省にも時事通信にも認められていないが、本当にあったのであろうか?

     いずれにせよ、予算成立後、小西議員はマスメディアを攻撃しだした。

     時事通信だけでなく日経新聞に対してもその報道を問題としている。

    「サル」発言

     次に、3月29日に小西議員が衆議院の憲法審査会について「サル」とか「蛮族」とか評していたことが問題とされた。

     そのことについて小西議員はオフレコだったと主張。

     オフレコを報道されたということは、2月3日の荒井総理大臣秘書官(当時)のオフレコの発言が報道されて問題とされ、更迭されたことを思い起こさせる。

    https://mainichi.jp/articles/20230204/k00/00m/010/203000c

     しかし毎日新聞は、オフレコということも、撤回したということも、否定している。

     29日の小西氏への取材は、毎日新聞を含む複数社が参加。実名報道を前提とする「オンレコ」取材で、ICレコーダーで録音していた。小西氏は「サル発言」の前後に「オフレコ発言しないほうがいいかもしれないけど」「サルって言ったら差別発言になるのかな?」などと述べたが、撤回や修正はしなかった。

    毎日新聞 立憲・小西氏が発言陳謝 「憲法審、毎週開催ってサルのやること」

    https://mainichi.jp/articles/20230330/k00/00m/010/228000c

     FNNも明確な発言撤回はなかったと語っている。

    小西氏は、“あくまでもオフレコ取材と認識していて、すぐに撤回修正した”と主張している。

    しかしFNNが、29日の小西氏の発言内容を精査したところ、記者団に対し、発言を撤回するとは明確に述べてはいなかった。

    FNNプライムオンライン 小西議員「サル」発言を陳謝 「冒とくだ!」批判相次ぐ

    https://www.fnn.jp/articles/-/507096

     3月30日、小西議員は国会内で会見を開いて、「サル」などの発言について謝罪した。

     ところが「お詫び」のツイートでも、オフレコの場での発言で、即時に撤回の意志を表示したにもかかわらず、前半だけが切り取られて報道されたと主張している。

     自分が悪かったというより、報道機関が悪かったというのである。

     テレビ東京がその会見を「ほぼノーカット」で配信している。

    テレ東BIZ 【ほぼノーカット】立憲・小西議員「サルがやること、蛮族行為だ」の発言で謝罪・釈明(2023年3月31日)

     ここでも小西議員は、オフレコでの発言であって即時に撤回したにもかかわらず、前半だけが切り取られて報道されたと語っている。

     しかし小西議員の説明を聞いても、オフレコであったとか、即時に撤回したとかいうことは明確でないようである。

     3月の間、小西議員が公開した文書の正確性をめぐる議論が行われてきたからか、正確性が気になるが、小西議員の言動に十分な正確性はあるであろうか?

     上の動画の35分くらいから、産経新聞の記者が前の晩、小西議員からその記事に関してLINEを受けたと語っている。

     次のような文面であったという。

    オフレコで、しかもその場で撤回した発言を、よくも書くなあと呆れますが、書くのであれば、以下の発言をちゃんと追記するように伝えて下さい。修正しないなら、意図的な記事として法的措置をとります。

    産経新聞記者

     小西議員も認めているので事実であったようである。

     産経新聞の記者は、まずその記事は共同通信の記事だという。

     そして小西議員の言動は、編集権への介入ではないかと小西議員に問うた。

     それに対して小西議員は、(その記事を出したことが?)違法行為であるゆえに、編集権への介入ではないと語っている。

     そして記者会見における産経新聞の記者の「態度」も含めて法的措置をとるという。

     小西議員は3月の間、高市大臣等によって、政治権力が報道の自由に対して圧力をかけてきたとして、それに対して報道の自由を守る立場をとってきたかのように語ってきた。

     ところがその小西議員自身が報道の自由に対して政治権力によって圧力をかけているのではないかと疑われることになったのである。

    フジテレビと産経新聞に対して

     小西議員はフジテレビ(と産経新聞)を責めるツイートを連投した。

     まず「産経とフジテレビについては今後一切の取材を拒否します」

     そしてフジテレビを放送法第4条違反でBPO等に告発することができるという。

     放送法がどのように適用されるかが問題となっていたが、小西議員は積極的に適用されると考えているようである。

     「フジテレビは政治圧力以前に局内に元々そうした歪んだ人材がいることが深刻だ」

     「元放送政策課課長補佐に喧嘩を売るとはいい度胸だと思うが」

     政治権力による圧力にならないのか?

     「放送法に違反し偏向報道を続けるNHKとフジテレビに対し、放送法などあらゆる手段を講じて、その報道姿勢の改善を求めたいと考えます」

    https://twitter.com/konishihiroyuki/status/1641072454914416645?s=20

    TBS

     小西議員はTBS社長の発言をも問題としている。

    https://mainichi.jp/articles/20230401/dde/018/040/008000c

     TBSの社長は「小西文書」に関して「現場は委縮していない」と言ったという。

     それに対して小西議員は「文書が示す報道の自由への侵害、今国会での違法解釈の全面撤回など、自らの見解を国民に説明する責務を負っている」と語っている。

     しかし「文書が示す報道の自由への侵害」ということも「今国会での違法解釈の全面撤回」ということも小西議員が言っていることではあるが、必ずしも他の人が同意していることではない。

     総務省は、解釈は一貫して変わっていないと言っている。

     それにもかかわらず、報道機関は小西議員の主張を「国民に説明する責務を負っている」のか?

     そういうことは「報道の自由への侵害」にならないか?

    テレビ朝日

     ついでに、テレビ朝日の社長が、「小西文書」に関して現場への影響はなかったと語ったことを取り上げて置こう。

     テレビ朝日の篠塚浩社長は28日の定例記者会見で、放送法の「政治的公平」の解釈に関する総務省の行政文書を巡り「これまでも常に放送法に基づいて公平・公正な報道に努めてきたし、今後も同じように公平・公正な報道に努めたい」と述べた。

     2015年作成の行政文書には、同局の「報道ステーション」の番組名も登場していた。篠塚社長は文書の中身の評価は避けた上で「当時、何かがあったかというと一切ないし、現場への影響もありません」と強調した。

    「今後も公平公正に報道」 テレビ朝日の篠塚社長 | 共同通信

    朝日新聞

     3月31日には、小西議員と朝日新聞との対立が生じている。

     朝日新聞政治部記者の鬼原民幸氏は、「放送法の政府統一見解は、今この瞬間も現存し続けて」いると考えていた。

     それに対して小西議員は、2015年の高市大臣の答弁以来の放送法の解釈は、3月17日に小西議員によって撤回されたことになっていると反対している。

     3月28日の時事通信の記事に反対したのと同じである。

     朝日新聞は3月初めに小西文書が総務省の「内部文書」を公開した時から、小西議員と近い立場をとってきたようであったが、他のテレビ局、新聞とともに距離を置いているようである。

     朝日新聞の記事を批判↓

     朝日新聞官邸クラブが小西議員の発言を、「小西文書」における磯崎陽輔氏の発言と並べた。

     それに対して小西議員が反発している。

    終わりに

     3月初めに小西議員が総務省の「内部文書」を公開して、参議院の予算委員会などで高市大臣などを追及した時には、マスメディアも同じように高市大臣等による放送法の解釈の変更を問題としていた。

     ところが28日に予算が成立して、小西議員と高市大臣の対立が一段落ついて間もなく、小西議員とマスメディアの対立が生じたことで、情勢は変わった。

     それまで小西議員は、報道の自由を守るために高市大臣等と戦っているようなことを語っていた。

     マスメディアが小西議員の側についたのはそれゆえでもあった。

     ところが今度は、小西議員は自分を守るために報道に対して圧力をかけているように見える。

     それまで主張していたのは何だったのか?

     法のためではなく自分のためだったのではないか?

     そのことは直接にマスメディアと対立することであるゆえに、マスメディアも小西議員と対立するに至った。

  • 高市大臣の「政治的公平について」のレク、出席者全員記憶がない!?

    高市大臣の「政治的公平について」のレク、出席者全員記憶がない!?

     令和5年3月22日に総務省は「「政治的公平」に関する行政文書の正確性に係る精査について」と題する文書を出した。

     3月初めに小西洋之参議院議員が出した文書に対して、高市早苗経済安全保障担当大臣は、文書に記されている平成27年2月13日のレクなどは事実に反すると主張してきた。

     総務省がその大臣レクに出席したと文書に記載されている人物に聞き取りを行った結果が、上の文書である。

     それによると、問題の大臣レクに出席していたと記載されている人物の中に、その大臣レクの記憶がある人はいないようである。

    各人の発言

     文書には「②レクや電話連絡の有無及びそのテーマ」と題して、その大臣レクに出席していたと記載されている人に大臣レクの有無などについて聞き取りをした結果が記されている。

     大臣レクは、総務省が公表した文書の30枚目に記載されている。今度の文書では「文書整理 No.21」とよばれている。

     大臣室に6人が出席して行われたと記されている。

     今度の文書では「関係者A」「関係者B」「関係者C」「関係者E」「関係者F」と高市元総務大臣と記されている。

     「関係者A」「関係者B」「関係者C」は文書の作成に関わった人。

     「関係者A」は文書の「原案」作成者。「関係者B」は「確認しながら進めていた」、「関係者C」は「それほど多くの修正は必要なかった」という人。「それほど多くの修正は必要なかった」ということは「修正」をしていたということではないか?

     3人とも「修正の有無」について記憶は定かではないと語っている。

     文書作成に関わった「関係者A」「関係者B」「関係者C」は、大臣レクはあった、あるいは、なかったとは考えにくいという。

     「関係者A」―「大臣レクは行われたのではないかと認識している」

     放送法4条の解釈という重要な案件を大臣に全く報告していないというのはあり得ないと思う。
     具体的な日付については、約8年前でもあり、詳細についての記憶は定かではないが、日頃確実な仕事を心がけているので、上司の関与を経てこのような文書が残っているのであれば、同時期に放送法に関する大臣レクは行われたのではないかと認識している。

    総務省 「政治的公平」に関する行政文書の正確性に係る精査について

     「関係者B」―「大臣レクが存在しなかったとは認識しにくいのではないかと思う」

     このような資料が残っているのであれば、また、本件の大きな流れとして、個々の発言内容は別として、放送法第4条に規定する「政治的公平」について大臣レクが存在しなかったとは認識しにくいのではないかと思う。
     礒崎補佐官自身が官邸内を仕切られるご意向だったので、こちらはその前に高市大臣へのご説明とご了解が得られることが大前提であるとの認識で動いていた。

    総務省 「政治的公平」に関する行政文書の正確性に係る精査について

     「関係者C」―「大臣レクがなかったとは考えにくいと認識している」

     作成者と同様の事実認識を有しており、当時の放送法第4条の解釈についての全体の対応は、大きな流れとして、放送法第4条の解釈について大臣レクがなかったとは考えにくいと認識している。

    総務省 「政治的公平」に関する行政文書の正確性に係る精査について

     高市大臣はそのような大臣レクはなかったという。―「担当局からレクや資料を受けたことはない」

     平成 27 年2月中旬の時期に、NHK予算やそれに付す大臣意見に関するレクを受けた可能性はありうるとは思うが、放送法の政治的公平の補充的解釈について、同年2月 13 日を含め5月 12 日の答弁前夜より前の機会に、担当局からレクや資料を受けたことはない。

    総務省 「政治的公平」に関する行政文書の正確性に係る精査について

     「関係者E」「関係者F」は、レクに同席していたとされている人。

     「関係者E」は文書に記載されているような大臣レクがあったとは思わないという。―「文書にあるような内容の大臣レクがあったとは思わない」

     この時期には、NHK予算など放送に関するレクがあったとしてもおかしくはないが、個々のレクについては覚えていない。
     放送法の政治的公平の答弁に関しては、5月 12 日の委員会前日に大臣の指示を受けて夜遅くまで答弁のやりとりがあったことを覚えており、その前の2月に文書にあるような内容の大臣レクがあったとは思わない。

    総務省 「政治的公平」に関する行政文書の正確性に係る精査について

     「関係者F」は記憶にないという。―「大臣レク文書に記載された内容のレクについても記憶にない」

     NHK予算の時期でもあり、この時期に放送に関するレクが何らかあったとしてもおかしくないが、8年も前のことであり、個々のレクの時期や内容は記憶にない。この2月 13 日付けの大臣レク文書に記載された内容のレクについても記憶にない。

    総務省 「政治的公平」に関する行政文書の正確性に係る精査について

    記憶がある人はいない

     このように、

    ・文書作成に関わった「関係者A」「関係者B」「関係者C」は、大臣レクはあったと思うと語っている。

    ・高市大臣、「関係者E」「関係者F」は、なかった、あるいは記憶にないと語っている。

     興味深いのは出席したとされる6人のうち、1人も大臣レクの記憶があるという人はいないということである。

     高市大臣、「関係者E」「関係者F」は、レクはなかった、あるいは記憶がないと言っているので当然である。

     問題は、大臣レクはあったという「関係者A」「関係者B」「関係者C」。3人は、自分の記憶を根拠としていない。

     「関係者A」は「詳細についての記憶は定かではない」と語っている。大臣レクがあったとする根拠は「このような文書が残っているのであれば」ということである。

     「関係者B」も「このような資料が残っているのであれば」ということを根拠としている。

     もう一つの根拠は「本件の大きな流れ」ということである。

     「関係者C」も「大きな流れ」ということを根拠としている。

     「③平成 27 年2月 13 日のレクにおける個別の発言内容について」と題するところでは、その3人は次のように答えている。

     「関係者A」

     個々の発言内容は記憶が定かではないが、上司の関与を経てこのような文書が残っているのであれば、概要として間違っていないと認識している。

    総務省 「政治的公平」に関する行政文書の正確性に係る精査について

     やはり記憶は定かではなく、「このような文書が残っているのであれば」ということを根拠としている。

     「関係者B」

     個々の発言内容は必ずしも記憶が定かではないが、このような資料が残っているのであれば、当時の情報流通行政局の同席者間での受け止めはこのようなものであったと思っている

    総務省 「政治的公平」に関する行政文書の正確性に係る精査について

     やはり記憶は定かではなく、「このような資料が残っているのであれば」ということを根拠としている。

     「関係者C」

    個々の発言内容は記憶が定かではない。

    総務省 「政治的公平」に関する行政文書の正確性に係る精査について

     やはり記憶は定かではない。

     小西議員は大変な出来事のように語っているのに、当事者には記憶がないのである。

    大きな流れ

     大臣レクがあった、あるいはなかったと語っている「関係者A」「関係者B」「関係者C」にも、大臣レクの記憶はなく(記憶は定かでなく)、その代わりに文書が残っていることと、「大きな流れ」ということを根拠としている。

     「大きな流れ」とは、文書のはじめにまとめられているように、平成26年11月から礒崎補佐官(当時)と総務省とのやりとりから平成27年5月12日の高市大臣の答弁までの「流れ」であろう。

     しかしその「流れ」について、大臣レクがあったという「関係者A」「関係者B」「関係者C」と、高市大臣、「関係者E」「関係者F」とで、認識が違っている。

     前者は、それまでの礒崎補佐官と総務省のやりとりが2月13日の大臣レクにつながり、そして5月12日の大臣答弁につながったという「流れ」があったという。

     それに対して後者は、2月13日の大臣レクはなく、5月12日の大臣答弁は礒崎補佐官と関係がないという。

     高市大臣はそもそも礒崎補佐官と放送法について連絡をとったことがないという。

     まず、総務大臣たる私の権限の範囲の話について礒崎補佐官が動いておられることを知った時点で、補佐官ご本人に直接連絡をとり、意図や内容をお尋ねしていたはず。私と礒崎補佐官が直接連絡をとりあっていないことは本件資料からも明らかである。

    総務省 「政治的公平」に関する行政文書の正確性に係る精査について

     礒崎氏も。

     高市大臣は、5月12日の答弁の前に大臣レクがなかった根拠として、答弁前夜に明け方近くまでドタバタしていたことを挙げている。

     本件の内容からみて、仮に、担当局から前もってレクを受け了解していたのだとすれば、5月 12 日の答弁前夜になって明け方近くまでドタバタすることはあり得ない。時間がない中、自分が納得いくまで、大臣室と担当局との間で前例や理論構成を詰めてもらったのが先日提出したペーパーであり、その上で答弁に臨んだ。

    総務省 「政治的公平」に関する行政文書の正確性に係る精査について

     奇妙なことに、答弁前夜のことについても、人によって認識が違っている。

     高市大臣の認識は上の通りである。

     「関係者E」の認識も同じようである。

     委員会前日に大臣が答弁案をチェックした際、大臣から指示があり、担当課に資料を作ってもらったこと、担当課とのやり取りが深夜までかかったことを覚えている。大臣が答弁案を了承されたのか、不安に思っていた記憶がある。

    総務省 「政治的公平」に関する行政文書の正確性に係る精査について

     「関係者F」も。

     答弁前日に高市大臣の確認が行われ、大臣から答弁に関する論点について原局に整理するよう指示があり、原局から提出された資料を確認した上で答弁されたことは覚えている。

    総務省 「政治的公平」に関する行政文書の正確性に係る精査について

     それに対して「関係者A」は、「大臣室からの指示で資料を作ったか」ということについては「はっきりしない」と語っているが、答弁前夜の「ほぼオールナイト」のやりとりを記憶している。

     大臣室からの指示で資料を作ったかもしれないが、はっきりしない。ほぼオールナイトで大臣室とやりとりしていた記憶はある。

    総務省 「政治的公平」に関する行政文書の正確性に係る精査について

     ところが「関係者B」は「大臣室からの指示で資料を作った」という「記憶はない」という。

     大臣室からの指示で資料を作った記憶はない。

    総務省 「政治的公平」に関する行政文書の正確性に係る精査について

     「関係者C」はやりとりについての記憶がないという。

     答弁前夜の大臣室とのやりとりについての記憶はない。

    総務省 「政治的公平」に関する行政文書の正確性に係る精査について

     「関係者B」「関係者C」が答弁前夜の大臣室とのやりとりについて記憶がないというのは、そういうやりとりはなかったということであろうか?

     高市大臣は「大きな流れ」がなかった根拠として答弁前夜のドタバタを挙げた。そのドタバタがなかったということは、「大きな流れ」と整合性があるか。

     しかし「関係者A」は「大臣室からの指示で資料を作ったか」は「はっきりしない」と言いつつも、「ほぼオールナイトで大臣室とやりとりしていた記憶はある」と語っている。

     高市大臣等と同じように答弁前夜に「ほぼオールナイトで大臣室とやりとりしていた記憶はある」のに、「大臣室からの指示で資料を作った」のではない、ということはあるだろうか?

     「関係者B」「関係者C」が語る「大きな流れ」は、「当時の情報流通行政局の同席者間での
    受け止め」として共有された物語であったかもしれないが、そのことが事実であったかというところに問題はある。

     文書がある、ゆえにその文書に記されたことがあったと考えることは、自然なことである。

     しかし文書に記された相手に確認をとっていない。

     その相手に、事実に反すると言われている。―高市大臣のみならず、他の同席者もそう語っている。

     それに対して文書作成者の側は「記憶が定かでない」。

  • マスメディアによる一方的な統一教会報道に入った裂け目 橋田家の場合

    マスメディアによる一方的な統一教会報道に入った裂け目 橋田家の場合

     世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が公開した動画によって、現代日本のマスメディアの一方的な報道に裂け目ができた。

     2022年10月、マスメディアは橋田達夫さんの訴えを取り上げた。(橋田達夫さんは自ら顔を出し、名前を出している)―妻が統一教会に入信したことによって、家族が崩壊し、息子の命も奪われたというのである。

     10月20日、世界平和統一家庭連合(以下家庭連合)は、記者会見において、橋田達夫さんの元妻橋田淳子さんの動画を公開した。

     橋田淳子さんはその動画において、これまで橋田達夫さんによって語られたことについて説明している。その説明によると、橋田達夫さんが語ったこととは異なる事情があったようである。

     その動画が公開されるまで、マスメディアは橋田達夫さんの語ることだけを取り上げていた。

     ところが当事者である橋田淳子さんが橋田達夫さんとは異なる説明をした。

     そこに裂け目ができた。

     その裂け目に対してマスメディアはつくろおうとしたが…。

    「ミヤネ屋」の対応

     読売テレビ「ミヤネ屋」は10月20日の放送で家庭連合の記者会見を中継していた。

     ところがその記者会見の中で橋田淳子さんの動画が流れ始めると、個人情報に関する問題があるとしてその動画を放送しなかった。

     デイリーの記事では次のようにまとめられている。

     橋田さんに関する話が約3分ほど続いたところで、番組はスタジオにカメラが戻り、沢口実歩アナウンサーが「いま、個人情報に関する内容があったということで、会見からスタジオに戻させていただきました」と説明。キャスターの宮根誠司が「橋田さんの元奥様の証言がここで話されて、そこには個人情報が入っているので、精査してからまたお伝えしたい」と補足した。

    デイリー ミヤネ屋 統一教会の会見ナマ中継も異例の途中打ち切り「個人情報に関わる内容あった」

    https://www.daily.co.jp/gossip/2022/10/20/0015739111.shtml

     「いま、個人情報に関する内容があったということで、会見からスタジオに戻させていただきました」とはどういうことなのか?

     「個人情報が入っているので、精査してからまたお伝えしたい」とはどういうことなのか?

     動画が流れる前にどうして「個人情報が入っている」ときめつけることができるのか、よくわからない。

     動画は、橋田達夫さんがそれまで語ってきたことについて、橋田淳子さんが事情を説明するもので、「個人情報が入っている」ゆえに放送できないものとは思えない。

     放送する前に「精査」するとしても、動画をみれば問題がないことはわかる。それにもかかわらず、その日の放送では動画の内容を伝えず、次の日の放送で伝えたのはどうしてか? 何を「精査」したのか?

    問題

     問題は、マスメディアがその報道する内容について可能な限り裏取りをする責任を果たしていないのではないか、ということにある。

     橋田達夫さんの訴えを取り上げるのに、橋田達夫さんの語ることだけを聞いて、裏取りをしていないのではないか?

     橋田淳子さんの言い分は当然聞いておかなくてはならないはずであるのに、聞いていなかったのではないか?

     「ミヤネ屋」の次の日の放送で、紀藤正樹弁護士が橋田淳子さんの動画の説明に反論していたが、その紀藤氏の発言も、裏取りをした上でなされたもののようではなかった。

     そもそも十分に裏取りができていたならば、橋田淳子さんの動画に対して直ぐに対応できるのではないか?

     マスメディアが裏取りをせずに、対立する当事者の一方の発言だけを取り上げて他方を排除する、という恐るべきことが行われているのではないか?

     しかもそういう報道が国会議員を動かして立法につながっているように見える。

    それぞれの発言

     以下、橋田達夫さん、淳子さんの発言を取り上げる。

    ・まず、淳子さんの発言までにマスメディアが取り上げてきた橋田達夫さんの言葉

    ・その次に、橋田淳子さんの動画における言葉

    ・淳子さんの言葉に対する達夫さんの反応、その他の人の反応

    元夫の主張

    「高知新聞」

     橋田達夫さんの言葉が取り上げられたのは、9月24日の高知新聞あたりからのようである。

     9月24日、高知新聞は、統一教会によって家庭が崩壊し息子の命まで奪われたという男性の声を伝えた。

    https://www.kochinews.co.jp/article/detail/596015

     1983年に結婚して2人の息子が生まれたが、1993年に夫が単身赴任した時に、妻が統一教会に入信してから問題が生じたという。

    「報道特集」

     10月1日、TBSの「報道特集」が橋田達夫さんのことをとりあげた。

     この番組で初めて名前を出したと言われている。

    TBS NEWS DIG Powered by JNN
    「家庭崩壊」「虐待」「自殺」“国からも見捨てられた”旧統一教会の信者家族が語る苦しみ【報道特集10月1日放送】 2022/10/01

     動画の前半には別の統一教会2世のことが取り上げられているが、ここでは橋田達夫さんのことだけを取り上げる。

    妻の入信

     「報道特集」では、結婚から6年後に夫が大阪に転勤して、その後に妻も大阪に来てから、異変が生じたと言われている。

     橋田達夫さんが大阪に転勤した時に、妻は高知で統一教会に入信していて、その後に大阪に来たが、毎日統一教会の教団の施設に通っていた、と橋田達夫さんは語っている。

    妻の教団活動

     妻は教団活動に没頭して教会や韓国に行って家をあけることが多く、子供は放置されていた、と橋田達夫さんは語る。

    夫婦喧嘩

     妻が統一教会に入信してから夫婦喧嘩が多かった、と橋田達夫さんは語る。

    田んぼ売却

     長男が中学一年で不登校になって、妻は子供を救うためにということで、悪霊がついているという田んぼを売却した、と橋田達夫さんは語る。

    離婚

     橋田夫妻は9年前に離婚。子供たちは妻のもとにとどまり、橋田達夫さんは家族の近くの倉庫で暮らすようになったという。

    長男の焼身自殺

     一昨年、36歳になった長男は焼身自殺をした。長男はその2年前から暴力的になって母親をなぐったこともあったという。

    教団訪問

     番組の最後に橋田達夫さんは「報道特集」のスタッフとともに、家庭連合の高知の教会に行っている。

     橋田達夫さんは家庭連合に話を聞くことをもとめたが、面会は拒否された。

    山上容疑者との比較

     橋田達夫さんの話のはじめに「信者の妻が高額献金したことで、山上容疑者のケースと同様、家庭崩壊に追い込まれたという」というナレーションがある。

     たしかに、山上容疑者の家族に関して伝えられていることと似ているようである。―母親が統一教会に没頭して高額な献金をしたことによって、家庭が崩壊し、長男が自殺した等。

    「モーニングショー」

     上に挙げた「報道特集」で橋田達夫さんは「報道特集」のスタッフとともに、家庭連合の高知の教会に行って、話を聞くことを求めていた。

     その後に、家庭連合の改革推進本部長・勅使河原秀行氏が橋田達夫さんのもとに話を聞きに訪ねてきた。

     10月18日のテレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」はそのことを伝えていた。↓(動画はなくなった)

    https://www.youtube.com/watch?v=4V_T_sb0CVw
    ANNnewsCH
    【旧統一教会】被害男性 国会で涙…“アポなし訪問”勅使河原氏「メディア出ないで」【羽鳥慎一 モーニングショー】(2022年10月18日) 2022/10/18

     まず橋田達夫さんが国会に行った時の映像が流された。

     国会で立憲民主党の山井和則議員が橋田達夫さんの語ったことを取り上げているところを、橋田達夫さんが傍聴している映像。

     その後に開かれた会見で、橋田達夫さんは勅使河原氏が来た時のことについて語る映像。

     橋田達夫さんの訴えは山井議員によって国会に出されたのである。

     そして橋田達夫さんが、勅使河原氏が来た時のことを語る。

    ・勅使河原氏に来ると言われて、橋田達夫さんは断った、という。

    ・勅使河原氏はマスクを外してきたと橋田達夫さんは語る。

    ・勅使河原氏が来て、橋田達夫さんは「怖かった」ので、警察を呼んだという。

    ・「統一教会の強引さ・密室さ」はやめなくてはならないと橋田達夫さんは言う。

    ・橋田達夫さんは勅使河原氏にメディアに出てほしくないと言われたという。

    元妻の主張

     10月20日、家庭連合の記者会見で公開された橋田淳子さんのインタビュー動画↓

    世界平和統一家庭連合公式チャンネル
    橋田淳子さんインタビュー

     橋田達夫さんが語っていたそれぞれのことについて、橋田淳子さんが説明している。

    毎日教会に行って家を空けていた?

     大阪にいた時は、子供が保育園と小学校に行っていたので、教会に行って家を空けていたが、高知に帰ってきてからは、親がいるので教会に行けず、月1回2回であった。

     教会に行って子供を放置することはなかったようである。

    夫婦喧嘩

     統一教会に入ったから喧嘩するようになったのではない。

     教会に入る前からいつも喧嘩していた。

     逆に、教会に入って、喧嘩はいけないといわれて喧嘩しなくなった。

     橋田達夫さんは酒を飲むとよく怒った。子供を泣かせることもあった。

     これによると、家庭の崩壊、子供の虐待の原因は、統一教会ではなく橋田達夫さんにあったようである。

    長男と教会

     長男は教会に行っていないが、橋田淳子さんが教会に行くことに反対しておらず、どちらかというと賛成の方であった。教会に対する恨みは一切なかった。

     長男の自殺と統一教会は関係がないというのである。

     長男は統一教会と関係なく霊的で「声が聞こえる」と言っていた。

     教会の人にも病院に連れて行ったらと言われていた。

    田んぼ売却

     橋田淳子さんが売った田んぼは、淳子さんが母親から受け継いだ先祖代々の土地であるという。

     そうであるとすると、橋田達夫さんは関係ないことになる。

     長男が霊的なことで「売った方がいい」と言ったので、売りたくなかったが、売ったと橋田淳子さんは語る。

     そうであるとすると、売ったことは、長男と対立することではなく、長男から出たことになる。

    達夫さんに対して

     息子のことに関して申し訳ないと思っている、達夫さんと息子の仲を執り成せばよかったが、できなかったと橋田淳子さんは語る。

    くいちがい

     橋田淳子さんが語ることは、橋田達夫さんが語ることと大きく違う。

     橋田達夫さんによると、統一教会によって家庭が崩壊し、長男は亡くなったようであるが、

     淳子さんによると、家庭に対する統一教会の影響はそれほど大きくなく、家庭が崩壊した原因は達夫さんにもある(離婚の原因、子供が母のもとにとどまった原因)。長男が亡くなったことは、統一教会と関係がない。

     田んぼの売却に関しては、そもそも淳子さんの相続した財産であるとすると、達夫さんとは関係がないことになる。

     長男に関しては、夫婦が離婚した後、淳子さんのもとにとどまっていたのであるから、達夫さんより淳子さんの方がよく知っていたのではないか? と思われる。

    淳子さんの発言に対する橋田達夫さんの反応

     日本テレビ、TBSが伝えた、淳子さんの発言に対する橋田達夫さんの反応には気になるところがあった。

    日本テレビ

     日本テレビは橋田淳子さんの動画に対する橋田達夫さんの反応と、元2世信者・小川さゆりさんのコメントを伝えた。

    日テレNEWS
    “統一教会”6回目の記者会見 怒りの声も…“家庭崩壊”訴える男性「ここまでやる?」 2022/10/20

    橋田達夫さん

    勅使河原氏に対して

     勅使河原氏が記者会見で、橋田達夫さんを訪問したことについて「とにかく会って事情やお話を伺わなければいけないという動機でありました」と語ったことに対して、橋田達夫さんは「うそ」と言っている。

     勅使河原氏が自ら語る動機に対して、橋田達夫さんが何故に「うそ」ということができるのか、よくわからない。

    淳子さんに対して

     橋田達夫さんは、淳子さんの動画が流れたのをみて、「ここまでやる?」と言い、教会に対して「これは許せん」と言っている。

     淳子さんの行動が問題とされている状況で、本人が説明することに対して許せないという意味がわからない。

     淳子さんに対して「この女 一切生活はできないですよ」と言っていることも気になる。

     「人の金も持っていって」と言うが、いつどこでそういうことがあったのか?

    小川さゆりさん(仮名)

     最後に元二世信者・小川さゆりさん(仮名)が出てきて、「過去一番最低な会見」と評している。そのことも取り上げておこう。

     マスメディアがそれまで淳子さんの言い分を聞かずに、橋田達夫さんの語ることだけを取り上げていたと思われるところで、淳子さんの言葉が公開されたことは、それだけ真実に近づくことで、そのことだけでも「過去一番最低な会見」とは思えない。

     この会見では、多くの二世信者が出てきて、これから責任者となって教会を改革していくと勅使河原氏が語っていた。小川さゆりさん(仮名)はそのことを非難している。―「二世たちに寄り添うという形には全く見えなくて、二世たちを昇格させてあげたでしょうとすごく上から目線にしか聞こえなくて、正直ちょっとあのシーンが一番信じられなかったです」と評している。

     これもよくわからない。

     現に多くの二世たちが昇格しているのであるから、それだけ「二世たちに寄り添う」方向へ進んでいるのではないか?

     小川さゆりさん(仮名)が統一教会・家庭連合のことについて何でも論評することのできる人物のようにテレビ局に扱われていることにも違和感がある。

     元信者であるゆえにそうでない人より教会のことをよく知っているではあろう。

     しかし教団全体について断ずることができるほど多角的な知識をもっているのか?

    TBS「報道特集」

     TBSの「報道特集」は10月22日に、家庭連合の記者会見を責める内容を流した。(動画はなくなった)

    https://www.youtube.com/watch?v=QVi2RUFS9HE
    TBS NEWS DIG Powered by JNN
    旧統一教会 会見に元妻の動画「ここまで家族を壊すのか」信者家族・橋田達夫さんの怒り【報道特集】|TBS NEWS DIG 2022/10/22

    勅使河原氏の訪問について

     まず橋田達夫さんが勅使河原氏の訪問を批判しているところ。

     橋田達夫さんも「報道特集」のスタッフも、10月1日の「報道特集」で教団と話がしたいと言っていた。

     それを受けて、勅使河原氏が話を聞きにきたことを非常識であるかのように責めることは、理解に苦しむ。

     話を聞いてほしいのか? ほしくないのか?

    橋田淳子さんの動画について

     次に元妻の動画が公開されたことについて。

     橋田達夫さんは「卑劣。最低。」と強い言葉を使って批判している。

     橋田淳子さんが事実に反することを悪しき意図をもって語っているのであれば、そういうことはできるかもしれないが、そのことを示すことができるのか?

     橋田達夫さんは「勅使河原氏は「ここまで」家族を壊すのか?」とも言っているが、同じ。

    ・橋田達夫さんは橋田淳子さんについて「彼女は死んだ人間に全部負わせている」という。「生きた人間が責任を負っていかないと」という。

     ―長男が亡くなったことについて言っているようであるが、二人の認識は違うので、まず何が正しいかを明らかにしなくてはならないのではないか?

    ・長男が霊的になったことは統一教会と関係があると橋田達夫さんはいう。

     ―長男が統一教会に行っていなかったことは、橋田達夫さんも認めている。統一教会に行っていなかった長男が、どうして統一教会によって霊的になるのか?

     TBSの村瀬氏は勅使河原氏に対して「ご自身が橋田達夫さんのお話を聞かれる前に、一方的に奥さんの話をこういう記者会見の場で流すというのは、それ自体が私は橋田達夫さんに対する圧力だと思います」と言っていた。

     一方の当事者である橋田淳子さんが語ることと違う橋田達夫さんの訴えばかりをマスメディアが取り上げている状況で、橋田淳子さんの語ることを公開する前に、勅使河原氏は橋田達夫さんの話を聞きに行かなくてはならないというのは、どういう意味なのか?

    立憲民主党、全国弁連

     10月20日、橋田淳子さんの動画が公開されたその日に、立憲民主党など野党は、同日の家庭連合の記者会見について、全国霊感商法対策弁護士連絡会の阿部克臣弁護士からヒアリングを行った。

    https://cdp-japan.jp/article/20221020_4706

     阿部弁護士は橋田達夫さんの代理人も務めているという。その発言↓

     阿部弁護士は橋田さんの代理人も務めており、そうした立場からも教会の会見について、「一言で言うと、非常に強い憤りを感じた」と語り「(子どもが自らの命を絶つなど)橋田さんがどのくらい苦しんできたか、悲しんできたか。今日の会見からはそれを気遣い、慮るなどまったく感じられなかった」「(教団は)主張見解をまくし立てるばかり」だと強く批判しました。

     元妻が出てきたことについては、「現在もまだ信者」「当然、教団を守るような、教団の意向に沿うような回答をするに決まっている」と語る一方で「わざわざライブ配信をされているような会見に動画を出ししゃべらせるというのは、非常に可愛そうなこと」だと指摘しました。

    立憲民主党公式サイト 同日の教会会見と自民議員との政策協定について「統一教会国対ヒアリング」を実施

     阿部弁護士は橋田淳子さんについて「現在もまだ信者」「当然、教団を守るような、教団の意向に沿うような回答をするに決まっている」と語っているが、これは阿部氏の推測に過ぎない。そうであるかもしれないが、そうでないかもしれない。

     動画を見る限り、橋田淳子さんが教団のために語っているようには見えない。

     それを教団に命令されたときめつけている阿部弁護士の方が異様である。

     いずれにせよ、橋田達夫さんの語った様々なことに対して、実情と異なると橋田淳子さんが語っているのであるから、阿部弁護士はどちらが事実として正しいかという問題に答えなくてはならないはずであるが、答えていない。

     阿部弁護士は橋田達夫さんの代理人として、橋田達夫さんの訴えの客観的な証拠を持っているはずではないか? 何故に客観的な証拠によって論ずるのでなく、「非常に強い憤りを感じた」と感情だけを述べているのか?

     「橋田さんがどのくらい苦しんできたか、悲しんできたか。今日の会見からはそれを気遣い、慮るなどまったく感じられなかった」というが、橋田淳子さんは達夫さんに対して申し訳ないと思っていると述べている。

     立憲民主党公式サイトはその時の山井和則衆院議員の発言を次のように伝えている。

     旧統一教会の記者会見では、元妻が多額の献金を行い、子どもが自らの命を絶つなど家庭が崩壊したという高知県在住の橋田達夫さん(12日の国対ヒアリングでもその実情を説明)の元妻の語る映像を流しており、山井和則衆院議員(党対策本部副本部長)は「あたかも橋田達夫さんの発言が事実に反するかのような妻の方の映像を流された」と説明しました。

    立憲民主党公式サイト 同日の教会会見と自民議員との政策協定について「統一教会国対ヒアリング」を実施

     「あたかも橋田達夫さんの発言が事実に反するかのような妻の方の映像を流された」というのは、橋田達夫さんの発言は事実に反しないということであるが、客観的な根拠はあるのか?

     阿部弁護士は橋田淳子さんについて「現在もまだ信者」「当然、教団を守るような、教団の意向に沿うような回答をするに決まっている」ときめつけたり、「教団がいくらコンプライアンスや改革案などを並べてみてもまったく意味がないし説得力がない」ときめつけたり、自分の思い込みをそのまま相手に押し付けているが、それでは相手のことを理解できないのではないか?

     どうも統一教会・家庭連合を「カルト」として追及する全国霊感商法対策弁護士連絡会の方が「カルト」のように見えるところがある。

    「ミヤネ屋」10月21日

     10月21日の「ミヤネ屋」は、前日の家庭連合の記者会見を取り上げ、前日に放送しなかった橋田淳子さんの動画をも取り上げた。

    勅使河原氏のアポなし訪問

     「ミヤネ屋」でも勅使河原氏が橋田達夫さんをアポなしで訪問したことをとりあげて、スタジオでは発言する出演者がみな橋田達夫さんの側に立って勅使河原氏を批判していた。

     アポなし訪問はよくないかもしれないが、話を聞いてほしいと言われて話を聞きに行ったことは、それほど悪いことなのか?

     有田芳生氏は、統一教会では上司の命令に絶対に服従することになっていて、勅使河原氏も上司の命令によって動いているので非常識な行動をするのだと語ったていたが、「ミヤネ屋」の出演者全員が、宮根氏の司会の下、一糸乱れず家庭連合に対して過剰に非難しているところは、裏でどういう打ち合わせがあったのか、見てみたくなる。

    「矮小化」

     さて、橋田淳子さんの動画について。

     紀藤正樹弁護士は、前の日のツイートで、会見で「矮小化」が行われたと非難していた。

     その「矮小化」ということについて、紀藤氏自ら「ミヤネ屋」で説明している。

     宮根氏が「橋田さんと旧統一教会の問題がいつの間にか橋田さんと元奥さんの話になっている」ように見えるというのに対して、紀藤氏は「矮小化する理屈でしょうけれども」と答えている。

     以下、紀藤氏の言葉。

    昨日の会見を見てですね、勅使河原さんていうのは橋田さんに対して悪いと思っていないんですよね、結局ね。悪いと思っていないから、素直な謝罪というか端的な謝罪にならずに、エクスキューズ、言い訳がずっと続くわけですよね。で、うそをついているところはちゃんと反論をしないとというふうになるわけですけど、全体について、大まか、どちらが悪いかという議論をした時には、橋田さんの言い分がもし正しければですよ、統一教会がやはり問題があるっていうことがわかるわけなので、それはやっぱり金額も含めてどの程度統一教会が橋田さんの奥さんからお金を奪ったのか、あるいは献金を受け取ったのかっていうことは、明らかにしなければ、橋田家全体でどの程度被害を受けたのかわからないじゃないですか。大前提のところがすっぽり抜け落ちているんですよね。

    「ミヤネ屋」2022年10月21日

     紀藤氏の発言は以下でもまとめられている。

     要するに、橋田達夫さんによると、統一教会が悪くて橋田家は被害を受けたということであったが、淳子さんによると、統一教会は悪くないことになる。そのことを「全体の紛争を矮小化している」と紀藤氏は語っているようである。

     注意すべきは「橋田さんの言い分がもし正しければですよ」という紀藤氏の言葉。

     これによると、紀藤氏は橋田達夫さんの言い分が正しいかどうか、確証をもっていないようである。

     確証をもっていないのに、一方では、橋田達夫さんの言い分が正しいとして、統一教会が悪いということを「大前提」としているようである。

     統一教会が悪くて素直に謝罪しないのであれば、「反省のかけらもない」ということもできる。

     しかし現在統一教会が悪いということの確証はない。そういう状況で素直に謝罪しないことは「反省のかけらもない」というのとは違う。

     このツイートも同様。

     阿部弁護士もそうであったが、紀藤弁護士も、自分の思い込みでしかないことを、客観的な事実としてしまうところがあるようである。

     自分に問題があるのに反省せず、他者に問題があるときめつけるのは、全国霊感商法対策弁護士連絡会のスタイルなのか? いずれにせよ、これこそ社会的に問題がある存在ではないか?

    田んぼ売却

     橋田淳子さんが田んぼを売ったことについて。

     紀藤氏は次のように言う。

    田んぼを売ったことについては争いがないわけですよね。どちらが売るようになったのかという動機の面に争いがあるんですね。長男が言ったのか、お母さん側が言ったのかという問題があると思うんですけど、
    (中略)
    長男がどうして田んぼに行くのを嫌がって「お母さん売ったらええよ」っていうようになったか、前の経緯がすっぽり抜けているんですよ。(中略)最終的に長男に同意させた可能性すらあるんですよね。前の経過が、統一教会の関与あるいは、お母さんがどういう説明をしたのかというところに関わるわけですけども、
    (中略)
    橋田さんは証言されているんですよ。教団が妻に悪霊がつくからと言って、子供が暴れだす、だから田んぼの名義を変えたらよくなると言われたと。その前の段階を橋田さんは言われているんですね。
    ところが橋田さんの奥さんは、その前の段階をすっぽり抜かして、長男がええよと言ったと、でもその前の段階、なぜ長男が自分の名義じゃない土地をですよ、行くのを嫌がったり、ええよというのかっていうのは、経過として非常に不自然じゃないですか?
    だから私はその前段階が抜けていると思うんですね。
    だからそこをきっちり勅使河原さんが聞き、…私は聞き取っていると思うんですけども、勅使河原さんが隠しているとしか私は見えませんね。

    「ミヤネ屋」10月21日

     淳子さんは田んぼを売ったことについて、統一教会に行っていない長男に「声が聞こえる」と霊的なことを言われて売ったと語った。

     それに対して紀藤氏は、橋田達夫さんの証言によって、統一教会に言われて売ったという「前の段階をすっぽり抜かして」いるという。

     しかしそもそも淳子さんはその「前の段階」がないと語っている。

     紀藤氏が橋田達夫さんの証言に依拠するためには、橋田達夫さんの証言が正しく、淳子さんの証言は正しくないことを証明しなくてはならないのであるが、そうせずに橋田達夫さんの証言をそのまま正しいとしようとしている。

     それまでに橋田達夫さんの証言を裏取りせずにそのまま真実として受け取っていて、それと反する淳子さんの証言が出てきても、橋田達夫さんの証言が正しいということを貫いて、淳子さんの証言を排除しようとしているようである。

     こういうことがテレビで正義のように行われていることは、恐るべきことである。

     TBSの「ひるおび」で橋田淳子さんの動画について八代英輝弁護士が次の日に次のように語ったと「デイリー」が伝えている。

    八代氏は「要するにメディアを自分たちで使って一個人の方を、被害者を潰そうとしているんですよね、組織的に。そのやり方は非常に卑劣だと思いますよね」と憤りを隠さなかった。

    デイリー 八代弁護士 統一教会会見は「ミヤネ屋に合わせてやった」と推測「やり方は非常に卑劣」

    https://www.daily.co.jp/gossip/2022/10/21/0015742719.shtml

     「メディアを自分たちで使って一個人の方を、被害者を潰そうとしているんですよね、組織的に。」というのは、「ミヤネ屋」、全国弁連がやっていることではないか?

     裏取りもなく悪者とされた統一教会・橋田淳子さんが事実は違うという動画を出したのに、「ミヤネ屋」、「ひるおび」は事実の裏取りなしでそれまでの主張に固執して、淳子さんの主張を「組織的に」「潰そうとしている」。

     恐ろしい世の中である。

     ちなみに紀藤氏は10月20日のツイートで、同日の家庭連合の会見で二世信者を教区長としたことについて次のように論評している。

     二世信者が教区長とされたことは、改善の方向へ進むことではないか? 何ゆえにそのことを認めずに、欠点をつこうとするのか?

  • 安倍元首相銃撃事件以後、紀藤正樹氏等によって変化したマスメディアの論調

    安倍元首相銃撃事件以後、紀藤正樹氏等によって変化したマスメディアの論調

     2022年7月8日、安倍晋三元首相が銃撃されて、死亡した。

     その後にマスメディアの論調は奇妙に変化した。

     いつの間にか、マスメディアは、

    ・容疑者が恨んでいたという統一教会・家庭連合を追及し

    ・容疑者が問題としていたという、安倍氏と統一教会・家庭連合とつながり、その他の自民党議員と統一教会・家庭連合とのつながりを追及した。

     その追及は何か月も続いた。

     多くの人の目の前で殺人が行われたにもかかわらず、その行為は問題とされずに、殺された安倍氏と、容疑者が恨んでいたという統一教会・家庭連合が悪者とされたのである。

     世の中がひっくり返ったようである。

     どうしてそういうことが起こったのか?

     容疑者の母親が統一教会に1億円献金して20年前に破産したという報道で、高額の献金をさせる統一教会に対して多くの人が疑問をもったことは事実であろう。

     しかしそれから20年後、統一教会から離れ、母親とも離れて41歳になっていた容疑者が、統一教会を恨んで人を殺したことは、理解しがたいことである。安倍氏を殺したことはさらに理解しがたいことである。それにもかかわらず、報道はその方向へ進まなかった。

     統一教会・家庭連合をよく知る人としてテレビに出てきた紀藤正樹弁護士、鈴木エイト氏等が、話を統一教会・家庭連合に向けていった。そして統一教会・家庭連合と自民党議員とのつながりに向けていったのである。

    紀藤正樹弁護士の考え

     紀藤正樹弁護士の考えは、事件から間もない7月11日のツイートにすでに出来上がっている。

     このツイートにおいて紀藤氏は、

    ・事件は「統一教会の反社会性」が「暴発してしまった」もの

    ・安倍氏は統一教会に対してすべきことしなかったゆえに殺害された

     と語っている。

     事件は「統一教会の反社会性」が「暴発してしまった」ものであるとすると、問題は容疑者の行為ではなく、統一教会・家庭連合にあるということになる。

     安倍氏は統一教会に対してすべきことしなかったゆえに殺害されたとすると、容疑者より安倍氏が批判されるべきだということになる。

     その後マスメディアはその方向で進んだ。

     しかし以上の紀藤氏の主張はおかしい。

    「統一教会の反社会性」が「暴発してしまった」?

     第一に、事件は、容疑者の「反社会性」が「暴発してしまった」ものである。

     それを「統一教会の反社会性」が「暴発してしまった」ものと紀藤氏が何故にきめつけることができるのか、理解に苦しむ。

     容疑者が2022年にどうして安倍氏を殺すことを決意したのか、いまだに明らかになっていない。

     紀藤氏は何故に、いまだに明らかになっていない容疑者の考えをきめつけることができるのか?

    安倍氏の自業自得?

     「安倍元首相がせめて統一教会問題に目を向け距離をとってもらえばこの事件はおきなかった」という紀藤氏の言葉も理解に苦しむ。

     何故に容疑者の行動を予測することができるのか?

    弁護士連絡会の7月12日の声明

     紀藤氏が加わっている全国霊感商法対策弁護士連絡会が7月12日に出した「安倍晋三元首相 銃撃事件に対する声明」も重要である。

     紀藤氏自らツイッターで紹介している。

     全国弁連の声明↓

    https://www.stopreikan.com/seimei_iken/2022.07_seimei_abe.htm

     この「安倍晋三元首相銃撃事件に対する声明」もおかしい。

     声明は、1で被疑者の行為を「決して許されない」こととして、安倍氏の冥福を祈っている。

     それはいいのであるが、声明全体の中では、そのことは軽い前置きにしか見えない。

     弁護士連絡会が重視しているのは明らかに1ではなく、その後の2、3である。

     2では「山上被疑者の苦悩や教会に対する憤りも理解できます」と言い、「家庭を崩壊させる統一協会の活動について行政も政権を担う党の政治家もこの30年以上何も手を打ってきませんでした。」と政治家の不作為を責めている。

     殺人事件を起こした容疑者より、統一教会、そして統一教会に対して不作為であったという政治家を問題としているのである。

     容疑者の「憤り」が必ずしも明らかになっていないのに「理解できます」と言っていることは、理解しがたい。

     3では安倍氏が「昨年9月12日の「神統一韓国のためのTHINK TANK2022希望前進大会」(UPFのWEB集会)でビデオメッセージを主催者に送り、その中で文鮮明教祖(2012年死去)の後継の教祖韓鶴子氏に「敬意を表します」と述べたこと」を取り上げて、「その献金勧誘行為や信者獲得手法について繰り返し違法である旨の判決が下されている統一協会やそのダミー組織の活動について支持するような行動は厳に慎んで頂きたいと改めて切実にお願いいたします。」と述べている。

     殺された安倍氏のビデオメッセージを重い問題としている。

     殺人事件の直後に、被害者に問題があったということはおかしくないか?

     しかもその「ビデオメッセージ」は、殺人行為と比べて釣り合うような問題とは思えない。その「ビデオメッセージ」ゆえに安倍氏は殺されてもしかたがないなどということは成り立たない。

    鈴木エイト氏

     鈴木エイト氏は、統一教会・家庭連合と自民党議員との関係を問題として追及して、今度の事件で有名になった人である。

     紀藤氏等と同じ考えのようで、統一教会と政治家との関係について、先に立って進めていたようである。

     事件が起こった次の日に、鈴木エイト氏は早くも問題を容疑者から統一教会にすり替え、政治家との「不適切な関係」にすり替えている。

    ・「反社会的カルト団体と指摘される教団を巡るトラブル」→問題は「反社会的カルト団体」にあるとされる。

    ・「当該団体と不適切な関係にあった安倍元首相」→問題は安倍氏にあるとされる。

     鈴木エイト氏も、全国弁連と同じように、容疑者の行為は絶対に許されるものではないと言っている。

     しかし全国弁連と同じように、その言葉は軽く響く。

     全国弁連と同じように鈴木エイト氏は、問題をすり替えて、容疑者を問題とするより、統一教会を問題とし、統一教会と政治家との関係を問題としているからである。

     政治家と統一教会との関係、特に安倍氏と統一教会との関係については、鈴木エイト氏が7月12日に次のように豪語していたことが多くの人の心をひきつけた。

     「統一教会と安倍元首相のズブズブの関係を明確な論拠で語ることができるのは私以外にいません」!

     鈴木エイト氏はその「明確な論拠」を持っていると多くの人が思った。

     ところが何カ月たってもその「明確な論拠」は出てこない。

     ハッタリによって多くの人の心をひきつける手法(マインド・コントロール?)をとったようである。

     安倍氏が2021年9月に統一教会の関連団体UPFの集会にビデオメッセージを送ったことは、容疑者の供述として出ていた。

     しかしそのUPFの集会というのも、安倍氏、トランプ前米大統領、潘基文第8代国際連合事務総長のほか、次のような人が出ていたというものである。

    ソウル特別市・釜山市などの市長、忠清南道知事などの知事、欧州委員会委員長、グロリア・アロヨ第14代フィリピン大統領、デーヴェー・ガウダ第11代インド首相、ナターシャ・ミチッチ元セルビア大統領、アンソニー・カルモナ第5代トリニダード・ドバコ大統領、フンセン カンボジア首相

    やや日刊カルト新聞 速報!!安倍晋三前内閣総理大臣が統一教会系大規模イベントで演説、韓鶴子に敬意を表す

    http://dailycult.blogspot.com/2021/09/blog-post.html

     安倍氏がこういう集会にビデオメッセージを送ったことは、統一教会に利益を与えたというより、トランプ氏や潘基文氏が参加する国際的な会議に参加したとみるのが自然ではないか?

     「やや日刊カルト新聞」では安倍氏が韓鶴子総裁に敬意を表したことを取り上げて「教団最高権力者・韓鶴子に阿る基調演説を行った」と語っているが、演説のはじめに主催者に挨拶をしただけであって、演説の中心はその後にある。

     安倍氏のビデオメッセージによってどういう被害があったのかもよくわからない。

     自民党は比較的に統一教会・家庭連合と「接点」が多かったにちがいない。

     しかし自民党が統一教会・家庭連合を特別扱いした証拠はない。

     オウム真理教の事件があった1995年から安倍氏の事件があった2022年まで、安倍政権のほかに、社会党政権、安倍政権出ない自民党政権、民主党政権の時期もあった。

     その中で安倍政権の時、また自民党政権の時にに特に被害が増えたということもないようである。

     2012年に出版された「村山富市回顧録」では、オウム真理教、創価学会のことは取り上げられているが、統一教会のことは取り上げられていない。


    村山富市回顧録 (岩波現代文庫)

     1995年にも2012年にもそれほど問題と思っていなかったのではないか?

     統一教会が自民党を支配していたなどというのは、トランプ前米大統領の支持者の陰謀論以上に荒唐無稽な陰謀論である。

     そういう陰謀論がマスメディアで言われるという恐ろしいことが起こっている。

     鈴木エイト氏は、7月12日に古市氏が安倍氏と統一教会との関係を陰謀論扱いすることに反対しているが、そういう鈴木エイト氏の主張はまさに陰謀論ではないか。

    江川紹子氏

     次に江川紹子氏をとりあげる。

     7月17日に紀藤氏は、江川紹子氏の発言に同意している。

     江川氏はTV番組で「今回の事件で、社会的に問題のある団体と政治家との関係は見直さなければいけないということがいえる」と語った。

     紀藤氏はその動画を引用して、「安倍元首相銃撃事件をきっかけに、民主主義を目指す政治において「政治と金」の問題だけでなく「政治と人」の問題にもメスを入れていかないといけない問題である」と語っている。

     そしてそのことに「気付いていない、あるいは理解していない」人を批判している。

     ここは興味深いところで、このあたりから紀藤氏、江川氏のように「今回の事件で、社会的に問題のある団体と政治家との関係は見直さなければいけない」という主張が、その他の主張を抑えて力を持つようになっていくのである。

    有田芳生氏

     そして有田芳生氏。

     7月18日に統一教会本体への捜査がなされなかったことは「政治の力」によると聞いたと語った。

     紀藤氏はそれを引用してそのことが安倍氏の銃撃につながったと語っている。

     このあたりから、統一教会は本来は解散されるべきであるにもかかわらず、自民党の政治家によって不当に擁護されていたというような主張が盛んになった。

     ここでは必ずしも自民党と言われていない。

     オウムの事件から2022年までには、社会党政権も、民主党政権もあった。その中で自民党によって被害が拡大したという証拠はない。

     ところがなぜか自民党の議員ばかりが非難された。

     統一教会と政治家との関係ということで、第一に追及されるべきは有田芳生氏ではないかと思われる。

     有田氏は安倍氏の事件後、紀藤氏等とともに統一教会の専門家として、統一教会がいかに悪いものか力説している。

     しかし有田氏は2022年の参議院選挙で落選するまで国会議員であった。その間に統一教会に対して何をしたのか?

     第一に追及しなくてはならないはずである。

    四人組

     紀藤正樹氏、有田芳生氏、江川紹子氏は、1990年代にオウム真理教が事件を起こした時にさかんにテレビに出てきて有名になった人である。

     その3人が2022年に統一教会をめぐってテレビに出てきたことは興味深いことである。

     皆申し合わせたかのように同じことを言っていることも、興味深い。

     その動きは共産党と一致するものでもあった。

     志位氏は共産党の「統一教会との最終戦争」であることを認めている。

     自民党と統一教会との関係という鈴木エイト氏のハッタリに追随するより、現在日本を動かしているこちらの動きを追及すべきではないか?

    政治的影響

     安倍氏は死亡する前、左翼の人に事あるごとに攻撃されていた。

     しかし安倍氏が死亡した直後には、安倍氏に対する攻撃は少なくなっていた。

     それまで安倍氏を攻撃していた人の影響を受けて事件が起こったということで、批判されていた。

     ところが統一教会に対する恨みで殺されたとされ、紀藤氏等によって統一教会が悪の元凶とされ、安倍氏はその統一教会と「ズブズブ」であったとされた。

     それまで安倍氏を攻撃していた人は、統一教会との関係で安倍氏を攻撃することができるようになったわけである。

     また右寄りの人でも、統一教会は韓国の宗教であって、日本人の高額な献金が韓国に送られているということで、統一教会を非難し、自民党議員と統一教会との関係を非難する人も出てきた。

     また、8月31日に、岸田首相はマスメディアの連日の攻撃に答えるというかたちで、統一教会との関係を絶つというに至った。

    https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA309DV0Q2A830C2000000/

    「統一教会の反社会性」

     紀藤氏等は、「統一教会の反社会性」を第一の問題とする。

     そのためには安倍氏を殺した行為さえ、放置していいかのようである。

     ところが具体的に現在どのような「反社会性」があるのか、よくわからない。

     たとえば霊感商法の問題。

     紀藤氏は著書「マインド・コントロール」第2章で霊感商法を取り上げて、「日本で霊感商法の問題を引き起こしているのは、金額ベースでは統一教会の被害が最大だと考えて差し支えありません」などと語っている。


    決定版 マインド・コントロール

     しかし紀藤氏も認めているように、統一教会の霊感商法の被害額はその後減っている。

     紀藤氏自らとりあげる消費者庁「旧統一教会に関する消費生活相談の状況について」↓

     こういう状況では、統一教会の霊感商法を特に問題とする必要はないのではないか?

     鈴木エイト氏が2009年のコンプライアンス宣言後の霊感商法の例として7万円の印鑑を持ち出して、さわやかな笑いを巻き起こしたこともあった。

    まとめ

     紀藤氏は7月15日には次のようなことを言っていた。「犯罪被害者が浮かばれない事件にしてはいけない」「加害者側の動機も解明されないと次の予防にもつながらない」「議論の場をテレビ局でも作ってもらいたい」

     実際には紀藤氏等が統一教会・家庭連合を「加害者」ときめつけたことによって、その「被害者」に焦点が当てられて、「犯罪被害者」である安倍晋三元首相が浮かばれない状況が作られている。

     安倍氏を銃撃した容疑者も「被害者」の代表であるかのように扱われて、テロに対する予防に反する状況が作られている。

     紀藤氏等が、統一教会・家庭連合を「加害者」ときめつけたことによって、罪を犯していない統一教会・家庭連合の信者、二世が差別される状況が作られている。

  • 「犯人の思う壺」? 安倍元首相銃撃事件の後の世の中の動きについての考察

    「犯人の思う壺」? 安倍元首相銃撃事件の後の世の中の動きについての考察

     2022年7月8日、安倍晋三元首相が銃撃され、死亡した。

     統一教会を恨んでいた人物が、安倍氏は統一教会とつながりがあると思い込んでのこと、と報道された。

     その後、マスメディア・野党は統一教会の問題を追及し、岸田首相もその方向に進んで、解散命令請求が行われるに至った。

     この流れは「犯人の思う壺」ではないか? という批判がある。

     その問題について詳しく考えてみよう。

    郷原信郎氏の主張

     まず郷原信郎氏の『“「統一教会問題」取り上げるのは「犯人の思う壺」”論の誤り』という2022年8月7日の記事を取り上げる。

    https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/b2aff1e7edf2d9f0e8111c81929c68036fd70fe6

     政党や新聞社、テレビ局の間で「この問題をめぐって極端に対応が分かれている」が、そのことには「「安倍元首相を殺害した犯人の思う壺にしてはならない」、という意見が影響しているように思える」と郷原氏は言う。

     そして「安倍元首相を殺害した犯人の思う壺にしてはならない」という意見を代表とするものとして、元自民党副総裁の高村正彦氏の発言を取り上げる。

     高村氏は過去に統一教会の訴訟代理人を務めたことについて週刊文春の取材を受けて、次のように語った。

    勝共連合と統一教会がいいか悪いかは別として、この事件で統一教会が取り上げられることは、テロをやった人の思う壺なので正しいとは思えない

    週刊文春7月28日号

     それに対して郷原氏は次のように言う。

     「犯人の意図どおりの結果となり、目的が実現してしまうことで、模倣犯や同様の殺人行為が誘発される」という問題に対しては、「厳正な刑事処分が行われる」ことによって「犯人の再犯を防ぐだけでなく、同種の犯罪を抑止する「一般予防」も図られる」。

     ところで事件の捜査においては「犯行動機に関する供述を裏付ける事実があるのかどうか」が問題とされる。

     この事件のように「社会の耳目を集める事件」では、そういうことについて報道されることは当然のことである。「様々な方法で取材が行われ、裁判で明らかになる事実を先取りする形で報道が行われることになる」ことも当然のことだという。

     事件の背景として統一教会の「信者勧誘」や「多額の献金」について報道されることも、安倍氏の統一教会との関係について報道されることも、当然のことだというのである。

     そして高村氏の「犯人の思う壺」論に対して次のように語っている。

    山上容疑者の犯行の目的には、単に恨みを晴らすだけではなく、「最も政治的影響力が大きい旧統一教会のシンパであった安倍元首相」を殺害することで、社会の関心を旧統一教会の反社会性と、政権与党である自民党議員との関係に向けようとする「告発的動機」もあったように思える。実際に、事件を機に、その問題がマスコミ等で大きく取り上げられ、相当程度目的を実現している。

    高村氏が言う「犯人の思う壺」というのは、このような「告発的動機」の目的が達成されることを問題にしているように思える。しかし、その点について犯人の意図するとおりの結果になったからと言って、犯行自体が正当化されるわけではないし、処罰が軽減されるわけでもない。問題は、山上容疑者が行った「告発」を契機として、そのような問題を、社会がどう受け止め、どう扱うか、それらについてどう判断すべきかということだ。

    “「統一教会問題」取り上げるのは「犯人の思う壺」”論の誤り

     要するに、

    ・犯行に対しては厳正な刑事処分が行われることによって犯罪の抑止が図られる

    ・犯罪動機に関する供述を裏付ける事実があるのかどうかについて報道されることは当然のことである。そのことによって、提出された問題に対しては社会が判断すればいい

     ということである。

    考察

     郷原氏の主張について考えてみよう。

    統一教会問題の特殊性

     現実に起こっていることを考えると、郷原氏の主張には疑問がある。

     犯罪動機に関する供述を裏付ける事実があるのかどうかについて報道されることは当然のことのように思われる。

     しかし「犯行動機に関する供述を裏付ける事実があるのかどうか」ということは、まだ明らかになっておらず、これから明らかにされることであるにもかかわらず、犯人が語るような事実はある、という方向で報道されている。

     たとえば2023年に始まった京アニ放火殺人事件の裁判で、被告は京アニに「小説のアイデアを盗まれた」と主張している。

    https://www3.nhk.or.jp/lnews/kyoto/20231011/2010018617.html

     そのことは犯人の思い込みと報道されてきた。

     裁判でも『検察は「京アニに小説のアイデアを盗まれたと一方的に思い込んだ筋違いの恨みによる復しゅうだった」と主張しているのに対し、被告の弁護士は責任能力はなかったとして無罪を主張して』いる。

     検察は一方的な思い込みであったと言い、弁護士は責任能力はなかったと言っているのである。

     安倍氏殺害事件でも、安倍氏と統一教会との関係は犯人の思い込みと報道された。

     しかしいつの間にか、犯人が語ることが事実であるかのように報道された。統一教会に関しても、犯人が語ることが事実であるかのように報道された。

     犯人が語ったことが事実であるかどうか明らかにされていないのに、事実であるかのように報道された。

     そもそも犯人が語ったことが事実であるかということは、慎重に考えられなくてはならないことであるのに、安倍氏殺害事件では、犯人が語ったことは検証もされずに事実であるかのようにされているのである。

     郷原氏は「問題は、山上容疑者が行った「告発」を契機として、そのような問題を、社会がどう受け止め、どう扱うか、それらについてどう判断すべきかということだ。」というが、犯人の語ったことが検証もされずに事実とされて、多くの人に問題として突きつけられているということこそ問題である。

    裁判との関係

     郷原氏は、犯行に対しては厳正な刑事処分が行われることによって犯罪の抑止が図られるとし、犯罪動機に関する供述を裏付ける事実があるのかどうかについて報道されることは当然のことだとした。

     しかし安倍氏殺害事件に関しては、

    ・裁判によって事実が明らかにされる前に、事実であるかどうか明らかにされていないことがマスメディアによって報道された

    ・裁判が行われる前に、マスメディアの報道によって、被害者と加害者の逆転など秩序の混乱が生じた。

    事実

     事件から1年3カ月後の2023年10月13日、第1回公判前整理手続きが行われた。

     裁判はこれからである。

     「犯行動機に関する供述を裏付ける事実があるのかどうか」、「「旧統一教会」の山上容疑者自身やその家族に対する「悪事」が実際にあったのか、それがどの程度のものだったのか」、「そのような「旧統一教会への恨み」を安倍元首相に向けた理由が、了解可能なのか、合理性があるのか」ということが裁判によって明らかにされるのは、これからである。

     しかしそういうことが裁判によって明らかにされる前に、マスメディアは盛んにそういう事実があるかのように伝えた。

     岸田首相もそういうマスメディアの流れに従う方向に突き進んだ。

     2022年8月31日、岸田首相は自民党国会議員が世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と関係を絶つことを基本方針とした。

    https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/statement/2022/0831kaiken2.html

     自民党議員と統一教会との関係は絶たれなくてはならないものとしたのである。

     2023年10月13日、文部科学大臣は世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する解散命令請求を行った。

    https://www.mext.go.jp/b_menu/daijin/detail/mext_00421.html

     統一教会は解散命令を出されるべき団体だとしたのである。

     解散命令請求が行われた日は、第1回公判前整理手続きが行われた日である。以上のことは裁判の前に行われたのである。

     「「旧統一教会」の山上容疑者自身やその家族に対する「悪事」が実際にあったのか、それがどの程度のものだったのか」ということは、いまだに明らかにされていない。

     事件をきっかけとして、統一教会の「悪事」が問題とされ、政府が解散命令請求を行うに至ったのに、いまだにそのきっかけとなった事件において統一教会の「悪事」が実際にあったのか、明らかにされていないのである。

     問題とされた母親の献金について5000万円の返金がなされたと報じられているが、そうだとすると、統一教会はそれほど悪くなかったということになるのではないか?

     母親は返金を積極的に求めなかったと報じられているが、そうだとすると、統一教会はそれほど悪くなかったということになるのではないか?

     いずれにせよ、きっかけとなった事件すら明らかにされていない状況で話が進んでしまっているのである。

     「そのような「旧統一教会への恨み」を安倍元首相に向けた理由が、了解可能なのか、合理性があるのか」ということも、明らかにされていない。

     事件から1年3カ月たっても、そのことが了解可能になるようなことは出てきていない。

     それにもかかわらず、マスメディアは安倍氏やそのほかの自民党議員と統一教会との関係に問題があったかのように報じた。それを受けて岸田首相は、自民党議員と統一教会との関係は絶たれなくてはならないとした。

    法秩序

     事件に対して捜査が行われて、その結果をもとにして裁判が行われて、刑事処分が行われる、という流れに対して、この事件を巡る報道は、並走しているのではなく、暴走している。

     報道が捜査、裁判で明らかにされる事実をもとにせずに、統一教会を悪いものときめつけ、統一教会と自民党議員の関係を悪いものときめつけることは、裁判と並走することではなく、裁判と関係なく勝手に秩序を作ることである。

     そういう報道を受けて岸田首相が、自民党議員と統一教会との関係を断絶させ、統一教会に対して解散命令請求を行うことも、裁判と関係なく勝手に秩序を作ることであって、裁判との関係で問題が生ずる。

     郷原氏は、犯行に対しては厳正な刑事処分が行われることによって犯罪の抑止が図られると語った。そうして秩序は守られるということである。しかし現実には、裁判が行われる前に、報道が暴走して秩序が変えられるということが起こっている。

    紀藤弁護士の主張

     郷原氏は報道に対して「間違っているというのであれば、誤りを指摘し、反論すればよい」という。

    旧統一教会の欺罔的な入信勧誘や多額の献金要請などが反社会的なものとして報じられていることや、自民党議員への選挙協力などの報道内容が事実に反しているとか評価が間違っているというのであれば、誤りを指摘し、反論すればよいことである。旧統一教会と国会議員との関係を取り上げること自体が、山上容疑者の意図を実現し、「犯人の思う壺」になることを理由に差し控える理由は全くない。

    Yahooニュース “「統一教会問題」取り上げるのは「犯人の思う壺」”論の誤り

     紀藤正樹弁護士もその言葉を引用して同意している。

     紀藤弁護士は統一教会の専門家としてテレビに連日出演して統一教会を追及する動きの先頭に立っていた人である。

     たしかに「間違っているというのであれば、誤りを指摘し、反論すればよい」。

     紀藤氏のように長年統一教会とやりあってきた人であって、法律の専門家でもある人に対して、反論できる人は多くなかったと思われる。

     しかし橋下徹氏のように、紀藤氏に反対した人はいた。しかしマスメディアは紀藤氏の言葉を多く取り上げた。

     米本和弘氏などは、紀藤氏に反論することができたであろう。しかしマスメディアはほとんどその言葉を取り上げなかった。

     マスメディアは次第に紀藤氏と同じ考えを持った人ばかりを出演させるようになった。―有田芳生氏、鈴木エイト氏、櫻井義秀氏、塚田穂高氏など。

     その結果論調は一方的になった。

     そういう状況で根拠の明らかでないことが言いっぱなしにされた。

     「統一教会本体への捜査がなされなかったことが安倍元首相の銃撃につながった」というのは極めておかしなことである。

     「統一教会本体への捜査がなされなかった」ことに問題があったとしても、そのことから当然「安倍元首相の銃撃」が出てくるのではない。しかし紀藤氏はそう主張しているのである。

     紀藤氏は郷原氏の記事を引用した次の日、太田光・古市憲寿両氏の「このままでは山上容疑者の目論みどおり」という言葉を載せた記事を引用して次のように言っている。

     太田光氏の「このままでは山上容疑者の目論みどおり」ということは、高村氏の「この事件で統一教会が取り上げられることは、テロをやった人の思う壺」ということと同じようなことを言うもののようである。

     「第2の山上容疑者出ること恐れ」というところは意味がわからない。

     ここで紀藤氏は統一教会の「被害と巨悪」について語っているが、これは紀藤氏が語っているだけのことである。検証されなくてはならないことである。

     「犯人の思う壺」ということについてさらに考える。

     まず犯人について↓

     次に犯人の望みを叶えているのではないかと思われる人々↓

  • 統一教会の名称変更にについて

    統一教会の名称変更にについて

     統一教会は2015年に名称を変更したが、全国霊感商法対策弁護士連絡会は早くから名称が変更されると被害が拡大するとして、繰り返し反対してきた。

     その主張に気になるところがあるので書いてみる。

    申入書

     2015年3月26日に、全国霊感商法対策弁護士連絡会は文科大臣、文化庁長官、宗務課担当課長宛てに統一教会の名称変更に反対する申入書を出した。

    名称

     この申入書をみて、まず第一文にびっくりした。

     統一教会は、本年2月の責任役員会議で「世界基督教統一神霊教会」から「世界平和統一家庭連合」に変更するとの決定をしたとのことです。

    申入書(統一教会の名称変更申請について)

     「世界基督教統一神霊会」ではなくて「世界基督教統一神霊会」ではなかったのか?

     そうだとすると、名称変更を問題とする文書の第一文で、その問題としている名称を書き間違えるというおかしなことが起こっていることになる。

     「世界基督教統一神霊教会」でも正しいのであろうか?

    名称変更の目的

     弁護士連絡会は、統一教会が名称変更する目的を次のように断定して、反対している。

    この名称変更は、これまでの組織的違法行為による悪評が日本社会に広く浸透していることから、名称変更して新たな被害者を獲得するとともに、被害回復請求を抑制する目的で行うものであり、このような名称変更を認証しないよう申し入れます。

    申入書(統一教会の名称変更申請について)

     どうして2015年に名称変更を求めたかということについては、韓国の幹部が日本統一教会に年間300億円余の献金を指示したが、「統一教会と判っただけで多くの市民が離れていくために、名称を変更することで、最後まで正体を隠した資金そして人材獲得を達成しようとしている」と説明している。

     相当の根拠があって言っていると思うが、推測に過ぎないのではないかとも思う。

     まず「世界平和統一家庭連合」自らの説明を読んでみよう。

    1954年に設立されたときは「世界基督教統一神霊協会(統一教会)」という名前でした。当法人の創設者である文鮮明師は1997年4月8日、「世界基督統一神霊協会」の名称を「世界平和統一家庭連合」に変更すると明かされ、その意義として、以下のように語られました。 「長子権復帰、父母権復帰を完成したので、キリスト教統一だけでなく、世界統一時代へと越えていくのです。それで今日から名称が統一教会の名を替えて、世界平和統一家庭連合を1997年4月10日付で使用しなければなりません」「家庭の救いを通した、神様を中心とした世界平和統一家庭文化運動に転換します」 このような文師のみ言に基づき、すでに1997年5月19日以降、世界の教会では、「世界平和統一家庭連合」に名称変更を完了していましたが、日本では遅れて、2015年8月27日に名称を変更いたしました。

    世界平和統一家庭連合公式サイト Q&A

    ・名称変更は1997年の考えであった。

    ・1997年には「世界の教会では、「世界平和統一家庭連合」に名称変更を完了して」いた。

     こういう事情から考えると、名称変更を2015年の一時的な考えときめつけることには違和感がある。

     インターネットで誰でも見ることのできる公式サイトに統一教会との関係が明確に書かれていることを見ると、統一教会との関係を隠そうとしているようには見えない。

     全国霊感商法対策弁護士連絡会は申入書で次のように語っている。

    そもそも「世界平和統一家庭連合」なる名称は文鮮明の10年余前の思いつきのようですが、これが宗教団体であることさえ一般の人には判らないような名称であり、この団体名を名乗って被害者が宗教の勧誘であることに気付かないように仕組んでいるのです。

    申入書(統一教会の名称変更申請について)

     全国霊感商法対策弁護士連絡会は「この団体名を名乗って被害者が宗教の勧誘であることに気付かないように仕組んでいる」ということを問題としているが、下の記事で論じたように、統一教会がそれまでに正体を隠して活動していたこととあまり変わらないのではないか?

    現状認識

     申入書では、統一教会は「新たな被害者を獲得する」ために名称変更を求めたときめつけているが、そのことは「これまでの組織的違法行為による悪評が日本社会に広く浸透している」ことを前提としている。

     その「これまでの組織的違法行為による悪評が日本社会に広く浸透している」というところが気になる。

    統一教会による組織的反社会的違法行為の実情は、日本社会において広く知られるところとなり、霊感商法やビデオセンターによる勧誘等への一般市民の警戒意識はかなり浸透したと言えます。
     とりわけ、統一教会信者らによる霊感商法の手口による物品販売活動について、特定商取引法違反、薬事法違反、各種条例違反等による刑事摘発が相次いでなされたことなどにより、新たな被害発生はかなり抑止できているかと思います。

    申入書(統一教会の名称変更申請について)

     ここでも「統一教会による組織的反社会的違法行為の実情は、日本社会において広く知られるところとなり、霊感商法やビデオセンターによる勧誘等への一般市民の警戒意識はかなり浸透した」ことによって「新たな被害発生はかなり抑止できている」と語っている。

     しかし統一教会の問題が広く知られていたゆえに「新たな被害発生はかなり抑止できている」ということには違和感がある。

     2022年7月に安倍晋三元首相が銃撃された後に、マスメディアが連日統一教会のことを取り上げたことによって「日本社会において広く知られるところ」となったが、それまではそれほど知られていなかったのではないか?

     1990年代にもマスメディアが盛んに取り上げていたことがあったが、そういうことがない時にはそれほど「広く知られる」ことはなかったのではないか?

     「新たな被害発生はかなり抑止できている」ようになったのは、他のことによってではないか?

     たとえば「統一教会信者らによる霊感商法の手口による物品販売活動について、特定商取引法違反、薬事法違反、各種条例違反等による刑事摘発が相次いでなされたこと」ということにもよるかもしれない。

     次に気になること。

     2015年に名称変更が認められて、どうなったのか?

     全国霊感商法対策弁護士連絡会は、統一教会の名称変更を認めると被害が拡大するとして、反対していたが、その主張は正しかったのか?

     紀藤氏は「非なる”世界平和統一家庭連合”への名称変更を認めてしまった。その結果が今です。」と言っている。

     「今」どうなっているのか?

     名称変更による被害が数多く報告されているのか?

     紀藤氏が「今」というのは、紀藤氏のこれまでの発言から考えると、安倍氏が銃撃されたことを言っているのではないかとも思う。

     参照↓

     しかし上の記事でも論じたが、名称変更を認証したゆえに安倍氏が銃撃されたということは私には理解できない。

    https://stopreikan.com/kogi_moshiire/bunka_syumu/18_2017.8.4moushiire.pdf

    抗議文

     2015年名称変更申請認証に反対する全国霊感商法対策弁護士連絡会の抗議文では、名称変更に反対する理由として資料を三つ挙げた上で次のように語っている。

    このように名称変更前においてさえ、統一教会はその正体を隠して勧誘活動を「伝道」と称して行ってきたのです。

    抗議文(統一教会の名称変更申請の認証について)

     そして、次のように語っている。

    「統一教会」と「世界平和統一家庭連合」が、同一組織であることを知っている一般市民は皆無です。今回の名称変更のために、特定宗教団体であることさえ判らない表示で勧誘がなされるようになることが正当化されるので、これまで以上に被害が拡大することが憂慮されるのは当然のことです。

    抗議文(統一教会の名称変更申請の認証について)

     名称変更によって被害が拡大することについて語っている。

     しかし「名称変更前においてさえ、統一教会はその正体を隠して勧誘活動を「伝道」と称して行ってきた」上に「特定宗教団体であることさえ判らない表示で勧誘がなされるようになること」ことが加わっても、事態はあまり変わらないのではないか?

  • 紀藤正樹弁護士に対する疑問 統一教会の名称変更の資料について

    紀藤正樹弁護士に対する疑問 統一教会の名称変更の資料について

     紀藤正樹弁護士は、安倍晋三元首相が銃撃された後、早くからテレビで、Twitterで、統一教会の名称変更の問題を取り上げてきた。

     その紀藤氏がフジテレビの報道をとりあげて、「名称変更がいかに罪作りかを明らかにする資料として重要」だと語った。

     しかしその報道は「名称変更がいかに罪作りかを明らかにする資料」として役に立たないのではないかと思われる。

    紀藤氏が取り上げた動画

     紀藤氏がその動画を取り上げたツイート↓

     紀藤氏が引用した動画↓

    MasakiKito Official 弁護士紀藤正樹の公式チャンネル 2022/08/04
    統一教会の伝道の実態 「真夜中の事件簿」 2019年8月10日(土)『ディープな現場を直撃スクープ!』(フジテレビ)より一部抜粋

     この動画は、統一教会の伝道の「実態」を撮影したものである。

     紀藤氏はこの報道は「名称変更がいかに罪作りか」を明らかにするとか、「名称変更が宗教性の秘匿や正体を隠した伝道にいかにお墨付きを与えたか」がわかるとか語っている。

     しかしそういうことはこの動画ではわからない。

    勧誘のやり方

     統一教会の勧誘のやり方は、次のようなかたちになっている。

    ・統一教会であること、宗教であることを明かさずに、相手を勉強会に誘う。

    ・その勉強会で統一教会に入ることをもとめる。

     上の動画をみてもそのことはわかる。

    紀藤弁護士の主張の問題点

     上の動画で撮影されているのは、相手を勉強会に誘うまでである。

     紀藤氏の主張の問題点はそこにある。

     相手を勉強会に誘うまでの段階では名称変更はほとんど関係ないのである。

     その段階では、名称変更前には、統一教会であること、宗教であることを明かさずに勧誘していた。

     名称変更後には、家庭連合であること、旧統一教会であることを言わずに、あるいは言って勧誘しているようである。

     いずれの場合でも、統一教会であること、宗教であることを言わない場合は同じことになる。

     家庭連合と自ら名乗る場合、紀藤氏は「仮に家庭連合と言われても宗教性って理解できない」というが、そのことは、名称変更前に統一教会であること、宗教であることを言わないことと変わらない。

     また「仮に家庭連合と言われても宗教性って理解できない」のは、浸透していないからであるということもできる。

     さて、勉強会で統一教会に入ることをもとめる段階では、名称変更前には自身を統一教会として明かしたが、名称変更後には家庭連合として明かすことになる。

     そこで違うことはあるかもしれない。

     しかし家庭連合でも創始者文鮮明との関係などについて語られるとすると、あまり変わらないのではないかとも思われる。

    まとめ

     統一教会が名称を変更したことによって被害が生ずるところはあるかもしれない。

     いずれにせよ、紀藤氏がそのことを「明らかにする資料として重要」だとして引用した動画ではわからない。

     紀藤氏等は名称変更によって被害が拡大するとして反対してきたのであるが、被害がどういう状況で生ずるか、理解しているのであろうか?