月: 2024年5月

  • 【東京都知事選】蓮舫氏とその支持者の田崎史郎・野村修也両氏批判 情報の使い方

    【東京都知事選】蓮舫氏とその支持者の田崎史郎・野村修也両氏批判 情報の使い方

     東京都知事選に出馬した立憲民主党の蓮舫参議院議員とその支持者の情報の使い方には問題があるのではないか?

     蓮舫氏が出馬して間もなく、蓮舫氏とその支持者によって田崎史郎氏、野村修也氏の発言が批判された。しかしその批判は田崎氏、野村氏の発言に対して当たっていないようである。蓮舫氏とその支持者に寄って、事実と異なる物語が作られているようである。

     事実と異なる物語を作るかたちで政治が動かされることは批判されなくてはならない。

    発端

     2024年5月27日、立憲民主党の蓮舫参議院議員が党本部で記者会見を開いて、東京都知事選に出馬することを表明した。そこで蓮舫氏は「公約は追って公表します」と言った。そのことが問題の発端となった。

    田崎史郎氏とのやりとり

     蓮舫氏の出馬についてテレビ番組で田崎史郎氏が発言した。それを蓮舫氏自身が取り上げて反論した。

    5月27日「Live News イット!」を巡って

     蓮舫氏は5月27日18時10分のポストで田崎史郎氏の発言を取り上げて「残念です」と言った。

     蓮舫氏が引用しているのは「デイリー」の記事。

    https://www.daily.co.jp/gossip/2024/05/27/0017702338.shtml

     その記事は、フジテレビの番組「Live News イット!」での田崎氏の発言を次のように伝えている。

    田崎氏は「蓮舫さんの会見、確かにうまいんですけど、攻撃的すぎるな、と僕は感じました」と話す。「蓮舫さん、果たして何をやりたいんですか?都政に国政を持ち込みたいんですか?と。じゃなくて、都政をどうするか、と語ってほしいわけです」と指摘していた。

    デイリー 田崎史郎氏 蓮舫氏の出馬会見に「攻撃的すぎる」「何をやりたい?」と疑問「都政どうするか語って」

     「都政に国政を持ち込みたいんですか?」というのは蓮舫氏が小池都知事の都政に対する批判を自民党の政治に対する反対と結びつけているからであろう。

     いずれにせよ田崎氏が語ったのは「都政をどうするか、と語ってほしい」ということである。

     それに対して蓮舫氏は『「都政をどうするか」を私の公約と共に日を改めて発表します』と言っている。

     ところが蓮舫氏は田崎氏に対して「何も聞かず番組で語られている姿、残念です」と田崎氏が悪いかのように話を結んでいる。田崎氏が蓮舫氏に対して「都政をどうするか、と語ってほしい」と言ったことは批判されなくてはならないことではないが、蓮舫氏のポストでは田崎氏に非があるかのようである。

    5月27日「情報ライブ ミヤネ屋」

     蓮舫氏と同じ立憲民主党の杉尾秀哉議員が田崎氏の発言に対して激しい言葉を使っていることをも取り上げておこう。

     杉尾氏が引用しているのは、5月27日の日本テレビ「情報ライブ ミヤネ屋」での発言を取り上げた「デイリー」の記事。

     田崎氏の発言は読売テレビの特別編集委員の高岡達之氏の次の質問を受けたもの。

    読売テレビの特別編集委員の高岡達之氏は、「全国の地知事選挙に行くが、(通常は)私がこの先、知事になったらと夢を語るというのが都知事選でもあるかと思ったが、なかった」と印象を語り、「批判票だけで、蓮舫さんは勝ち目があるんでしょうか?」と田崎氏に質問した。

    デイリー 田崎史郎氏「蓮舫氏の攻撃性を都民どう判断?」出馬会見で自民批判連発にミヤネ屋識者「批判票だけで勝ち目ある?」

     その質問に対して田崎氏が次のように語ったという。

    これから蓮舫さんは、政策発表をして、夢を語るようになるんでしょうけども、蓮舫さんの魅力は、きょうの会見でもよく表れているんですが、攻撃性なんですね。攻撃性に対して、東京都民がどう判断するか。ちょっと引いちゃう人もいるかもしれないですね

    デイリー 田崎史郎氏「蓮舫氏の攻撃性を都民どう判断?」出馬会見で自民批判連発にミヤネ屋識者「批判票だけで勝ち目ある?」

     このやりとりをみると、蓮舫氏が会見で「知事になったらと夢を語る」ということがなくて、「批判」だけ、「攻撃性」だけであったという客観的事実があって、それに対して、田崎氏はその「攻撃性」を蓮舫氏の魅力としつつ、「東京都民がどう判断するか」であって、「ちょっと引いちゃう人もいるかもしれない」と言っている。

     田崎氏の「ちょっと引いちゃう人もいるかもしれない」というところは蓮舫氏に対して批判的ということもできるが、客観的な事実をもとにして可能性を語っているだけのことのようである。

     杉尾議員が語るように「蓮舫さんを貶める事を目的とした発言」ではない。そういう田崎氏の発言を『常に「権力と共にある」ことをモットーとする』ということと関係づけることも正しくない。

    5月28日「ひるおび!」

     次に蓮舫氏が5月28日「ひるおび!」での田崎氏の発言に反論したポスト。

     蓮舫氏が引用しているのは「デイリー」の記事。

    https://www.daily.co.jp/gossip/2024/05/28/0017704800.shtml

     上に引用したように、蓮舫氏は5月27日に「デイリー」の記事を引用して次のように語っていた。

     それに対して田崎氏は5月28日のテレビ番組「ひるおび!」で次のように答えた。

     これを受け、田崎氏は「だから今日、電話したんですよ。議員会館の事務所に。蓮舫さんの事務所に。直通電話に5回、代表電話(を通じて)から2回、計7回電話で誰も出ない。おかしいでしょ。秘書いないんじゃないかと思う」と苦笑いでコメント。「いつでも取材を受けるというなら、いつでも連絡できる態勢にしてくださいと蓮舫さんにお願いしたい、と申し上げた上で」と訴えた。

    デイリー 田崎史郎氏、嘆く 蓮舫議員が「いつでも取材受ける」投稿で「計7回電話」も「誰も出ない」

     蓮舫氏は「いつでも取材を受ける」と言い、「何も聞かず番組で語られている姿、残念です」と言って、田崎氏が取材せずに蓮舫氏について語ったことしないことを問題としていた。それに対して田崎氏は、その後取材しようとしたのにできなかったというのである。

     そこで蓮舫氏は「会館の電話ではなく私の携帯に直接どうぞ」と言っている。

     田崎氏が言うように議員会館の蓮舫氏の事務所に「計7回電話で誰も出ない」ということは問題ではないか? 蓮舫氏はそのことに答えなくてはならないのではないか? そのことに答えずに、田崎氏は蓮舫氏の携帯に直接かけなくてはならなかったかのように語っている。そして支持者も田崎氏がしなくてはならないことをせずに蓮舫氏を叩いているかのように語っている。

     ちなみに先日の「イット!」での発言について、田崎氏は「キャスターの方が夢がないって言うんで(政策については)いずれ発表しますからってわざわざ蓮舫さんの主張を代弁した」と言ったという。

    野村修也氏の発言

     中大法科大学院教授で弁護士の野村修也氏の発言に対しても田崎氏の発言に対すると同じような批判がなされた。

     町山智浩氏による批判を野村氏自身が引用して反論している。

     町山氏が取り上げたのは「日刊スポーツ」の記事。

    https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/202405280001651.html

     野村氏は5月28日「情報ライブ ミヤネ屋」で次のように発言したとその記事は伝えている。

    都民の立場から見れば、自分たちの生活に近いところの政治ですのでね、私たちに一体どういうメリットがある政治をしてくれるのかってことに、結構みんな注目するとは思うんですよね。昨日の記者会見では、公約は後ほど説明するっておっしゃってましたので、都民はきっとどんな公約が出てくるのかってことを今注目してるんじゃないかって気がします

    日刊スポーツ 野村修也氏、蓮舫氏の都知事選出馬表明に「一体どういうメリットがある政治をしてくれるのか」

     この記事によると、野村氏は蓮舫氏を批判していないようである。公約を見たいと言っているだけである。

     野村氏自身が町山氏の批判に対して反論しているように「蓮舫候補に対して、まだ公約が示されていないので、それを早く見た、見てから評価したい」ということのようである。

     町山氏は野村氏が「小池百合子はメリットがある」と言ったとして反論しているが、野村氏はそういうことを言っていないようである。

     町山氏はどうして野村氏が言っていないことを言ったと思い込んだのか?

     町山氏が引用した記事のタイトルは『野村修也氏、蓮舫氏の都知事選出馬表明に「一体どういうメリットがある政治をしてくれるのか」』というものであった。その中の「一体どういうメリットがある政治をしてくれるのか」というところに、蓮舫氏は「メリットがある政治」をしないのではないかという野村氏の考えが現れていると受け取ったのではないか?

     野村氏はその後も同様の批判を繰り返されたという。

    おわりに

     蓮舫氏が公約を公表しなかったことが問題の発端であった。

     5月30日のアエラドットのインタビューによると、蓮舫氏は「選挙戦略」によって公約の公表を後にしているらしい。

     もちろんプランはありますし、私はリアルに実現できる政策を公約として掲げます。ただ、具体的な公約発表のタイミングは、選挙戦略に大きくかかわります。ですから、もう少しお待ちください。皆さんがワクワクする公約を準備しているので。

    アエラドット 【独自】蓮舫「私ほどふさわしい人はいない」 国際都市・東京のトップを目指す理由【単独インタビュー】

     蓮舫氏が出馬した後も公約を公表していないという状況で、田崎史郎氏、野村修也はそのことにテレビ番組で触れた。

     しかし野村氏はそのことで蓮舫氏を批判していないようである。

     田崎氏もそのことでは批判しておらず、蓮舫氏の「攻撃性」について少しネガティヴな可能性を語った。

     ところが田崎氏も野村氏も蓮舫氏を強く批判したかのように取り上げられて蓮舫氏とその支持者に批判された。

     蓮舫氏もその支持者も勝ちたいという気持ちが強いあまり、一見敵であるかのように見えた人を敵として反論してしまうのであろうか?

     記事を読むとその批判が当たっていないことはわかる。しかし見出しは一見現実以上に蓮舫氏に敵対的であるかのようにも見える。

    田崎史郎氏 蓮舫氏の出馬会見に「攻撃的すぎる」「何をやりたい?」と疑問「都政どうするか語って」

    田崎史郎氏「蓮舫氏の攻撃性を都民どう判断?」出馬会見で自民批判連発にミヤネ屋識者「批判票だけで勝ち目ある?」

    野村修也氏、蓮舫氏の都知事選出馬表明に「一体どういうメリットがある政治をしてくれるのか」

     メディアの注意が足りないのであろうか? わざとそうしているのであろうか?

     いずれにせよ、記事を読まずに見出しだけで決めつけることは批判されなくてはならないことである。

     蓮舫氏が田崎氏とのやりとりで、自分が批判されたことは問題とせずに、田崎氏の方に問題があるかのように話をもっていっているところは気になる。

     いずれにせよ、蓮舫氏とその支持者による以上のようなやり方は問題とされなくてはならない。内輪では盛り上がるかもしれないが、必要もなく敵を増やすやり方である。こういう人が権力をとると、相手のことを正確に調べずに貶めるのではないか?

  • 正体を隠して政治を動かす権力者・共同通信―上川外相「うまずして」発言を巡って

    正体を隠して政治を動かす権力者・共同通信―上川外相「うまずして」発言を巡って

     上川外相の発言が話題になった。しかしその発言がどうして話題になったかを考えると、発言そのものではなく、その発言を話題にした共同通信の動きが問題として見えてくる

     多くの人は共同通信に問題があると思っていない。しかし上川氏の発言を巡る動きのように共同通信には問題があるところがある。共同通信は上川氏に悪い印象をつけ、発言を撤回させることができる権力者である。しかしその正体は隠れている。

     今度のことなどによって共同通信の問題を知る人は多くなった。しかしなお全体の中では少数にとどまっている。多くの人が共同通信の問題を知ってその解決に向かって動かなくてはならない。

    上川外相の発言と共同通信の報道

     2024年5月18日19時ころ、共同通信が伝えた上川陽子外務大臣の発言が問題とされて、翌日19日に上川氏が自分の発言を撤回するに至った。

     しかし上川氏の発言で問題とされたことと、上川氏の発言そのものとは同じでなかった。

     記事によると、上川氏は静岡県知事選で自民党推薦候補を当選させることを「うむ」と言って、「私たち女性がうまずして何が女性か」と言った。

     上川陽子外相は18日、静岡県知事選応援のため静岡市で演説し、自民党推薦候補の当選に向け「私たち女性がうまずして何が女性か」と述べた。新知事を誕生させる趣旨とみられるが、出産困難な人への配慮を欠くと指摘される可能性がある。

    共同通信 「うまずして何が女性か」と上川陽子外相

     ところが共同通信は「出産困難な人への配慮を欠くと指摘される可能性がある」ということを問題としている。

     上川氏は共同通信も認めるように「新知事を誕生させる趣旨」で「私たち女性がうまずして何が女性か」と言ったのであって、子供を産まない女性を否定などしていない。しかし共同通信はそういう問題があるかのように語っている。

     「うまずして何が女性か」を見出しにしていることも、上川氏が子供を産まない女性を否定したかのような印象を与える。

     下の記事参照

    表と裏

     上川氏の発言そのものと、共同通信がそれに対して与えた印象とは異なるものになっている。

     そのことは調べればわかることである。それゆえにSNSで多くの人が、共同通信のつくり出した印象、そしてその印象によって上川氏を非難する人に対して反論した。

     しかし多くの人は報道をそのまま受け取る。報道であると言われたことはあると受け取る。

     共同通信は事実をそのまま伝えるように思われている。

     多くのメディアが共同通信の記事を流すということもある。たとえば、

     まずYahooニュース。(18日18時55分)早い。中身は共同通信のはじめの記事

    https://news.yahoo.co.jp/articles/1338f0baaa083714c8cab0d9528ccd46def492ba

     毎日新聞は18日19時33分。共同通信の記事。発言要旨が加わっている。

    https://mainichi.jp/articles/20240518/k00/00m/010/236000c

     日経新聞は18日19時35分。21時49分に更新。共同通信の記事。発言要旨が加わっている。

    https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA182PU0Y4A510C2000000/

     東京新聞18日21時54分。

    https://www.tokyo-np.co.jp/article/327958

     朝日新聞は19日0時49分に記事を出した。「共同通信が報じ、朝日新聞は関係者に確認した。」とある。

    https://www.asahi.com/articles/ASS5L4PQ5S5LUQIP00DM.html

     そしてNHKは19日5時27分、「上川外相「うまずして何が女性か」静岡県知事選挙の応援演説で」という共同通信の記事と同じ見出しで同じように上川氏が「うまずして何が女性か」と述べたということを前面に出した記事を出している。

    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240518/k10014453911000.html

     このように多くのメディアは共同通信が流したことをそのまま流しているのであるが、読者、視聴者には、多くのメディアがそれぞれ独自に取材して同じ結論を得ているかのように見える。

     共同通信が正体を隠した権力者であるというのはそういうことを言うのである。多くの人に上川氏が悪いことを言ったかのような、悪い考えを持っているかのような印象を与えることができた。上川氏に発言を撤回させることもできた。

    選挙との関係

     そもそも問題とされた上川氏の発言は、選挙の応援演説でのことであった。川勝氏が辞めた後の静岡県知事をどうするかという選挙である。共同通信は上川氏の応援演説の印象を悪く見せているわけである。

     共同通信のような強大な力をもった権力者が選挙において印象操作することは問題とされなくてはならないことではないか?

     日本ファクトチェックセンターも選挙における誤情報を問題にしている。

    https://www.factcheckcenter.jp/info/others/fact-check-weekly-20240519/

     朝日新聞の「EU、選挙を見据えMSに情報要求 生成AI使った偽情報対策で」という記事を引用し、

    https://www.asahi.com/articles/ASS5K543YS5KUHBI02SM.html?ref=factcheckcenter.jp

     EUがロシア系のメディアの活動を禁止する決定を引用している。

    https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_24_2682?ref=factcheckcenter.jp

     今度の共同通信の動きもそのように問題とされなくてはならないことではないか?

     ところが共同通信が記事を配信した次の日に1週間のファクトチェックをまとめているのに共同通信のことを問題にしていない。

     「ファクトチェック」ということでまさに問題としなくてはならないことえはないか?

    外交への影響

     上川氏の発言に関して、立憲民主党の泉健太代表は「外相としての資質も疑われる発言だ」と言ったという。

    立憲民主党の泉健太代表は19日、上川陽子外相の静岡県知事選を巡る発言に関し「冷静に言葉を伝えなければ、外交上の問題も発生する。外相としての資質も疑われる発言だ」と記者団に語った。

    共同通信 外相としての資質疑われる発言と立民代表

     共同通信が伝えている。放火した人が火事のことを伝えているようである。

     今度のことでは上川氏の発言より、共同通信の伝え方に問題がある。「外交上の問題も発生する」というが、その原因を作っているのは共同通信である。

     たとえば英語版で共同通信は誤解を招くようなことを外国に向けて発信している。

     上川氏は選挙で候補者を当選させることに「うむ」という言葉を使ったのに、その「うむ」という言葉を前面に押し出している。

     次の記事では「childbirth」すなわち子供を産むことが前面に押し出されている。

     外相について事実を伝えるのではなく事実をゆがめて外国に向けて発信する共同通信の資質こそ、問われなくてはならないのではないか?

     産経新聞の取材に対して共同通信社国際局は次のように答えたという。

    一連の発言は『出産』を比喩にしたものと考えられます。上川氏が『出産』と明示的に述べなかったとしても、発言の解釈として『childbirth』という表現を用いました

    産経新聞 外相「うまずして」英訳記事、男性に言及あり「明示なくても『出産』比喩」 共同通信回答

     上川氏が「比喩」として「明示的に述べなかった」「出産」(=childbirth)を見出しにして実際の発言と違う印象にしたという理解しがたいことを行ったわけである。

     共同通信の中に問題を解決しようとする動きはないのか? 組織的に印象操作の道を突き進むということなのか? 政治家は批判されると改めるのに、共同通信にそういうことはないのか?

     そもそも記者の名前がわからないままであることも気になる。外相に発言を撤回させるほどの権力者であるのに名前は明らかでない。

    おわりに

     共同通信の正体は多くの人には見えない。しかし印象操作をする力を持っている。政治家の発言を歪曲して撤回させることもできる。

     そのことは一歩踏み込めばわかることである。しかし多くの人は与えられたことをそのまま受け取っている。

  • 上川外相の「うまずして何が女性か」発言―印象操作するマスメディアの問題

    上川外相の「うまずして何が女性か」発言―印象操作するマスメディアの問題

     上川陽子外務大臣の発言が話題になった。

     ところが間もなくその発言を伝えた共同通信のやり方が問題とされた。―印象操作をしたというのである。

    「うまずして何が女性か」

     2024年5月18日19時ころから、上川陽子外務大臣の発言が話題となっていた。―上川氏の「うまずして何が女性か」という言葉が問題とされた。

     「うまずして何が女性か」ということは、子供を産まない女性を否定することのようである。上川氏は子供を産まない女性を否定する考えを持っているようである。

     子供を産まない女性を否定する考えは、非難されなくてはならない、上川氏は非難されてなくてはならないと言われた。例えば、

     上川氏は言ってはいけないことを「言っちゃった」というのである。

     このように上川氏の「うまずして何が女性か」という発言をかつての柳沢氏の「女性は生む機械」という発言と同様のものとみなす人も多かった。

    共同通信による印象操作

     しかし問題とされた上川氏発言は、子供を産まない女性を否定するものではない

     そのことは、共同通信の上のポストで引用されている記事「上川氏「うまずして何が女性か」 静岡知事選の応援演説で」を読めばわかる。記事によると上川氏は子供を産まない女性を否定する発言をしていない。

     上川陽子外相は18日、静岡県知事選の応援のため静岡市で演説し、自民党推薦候補の当選に向け「この方を私たち女性がうまずして何が女性でしょうか」と述べた。新たな知事を誕生させるとの趣旨の発言だが、野党からは「子どもをうまない女性は女性ではないと受け取られかねない不適切な発言だ」(立憲民主党の逢坂誠二代表代行)との批判が出た。

    共同通信 上川氏「うまずして何が女性か」 静岡知事選の応援演説で

     上川氏は選挙の応援演説で、自党推薦候補を当選させることを「うむ」と言った。したがって「うまずして何が女性でしょうか」ということは、私たち女性はその候補を当選させなくてはならないということである。子供を産まない女性を否定する発言ではない。

     共同通信の記事でも「新たな知事を誕生させるとの趣旨の発言」と認められている通りである。

     共同通信はその時の動画も配信している。

    KYODO NEWS 【速報】上川外相「うまずして何が女性か」 静岡県知事選の応援演説で発言

     問題はその記事と見出しの関係である。

     記事によると、上川氏は子供を産まない女性を否定する考えなど述べていない。しかし『「うまずして何が女性か」―上川氏、選挙演説で発言」という見出しは、上川氏が子供を産まない女性を否定する考えを示したかのような印象を与える。その記事を受けて、そのように受け取った人は、上に引用した白坂和哉氏のように多かった。

     記事の中で見出しと関わると思われるのは「子どもをうまない女性は女性ではないと受け取られかねない不適切な発言だ」という逢坂誠二氏の言葉である。

     しかし「子どもをうまない女性は女性ではないと受け取られかねない不適切な発言だ」ということは、上川氏が「子どもをうまない女性は女性ではない」と言っていないことを認めることではないか? それにもかかわらずどうして「受け取られかねない」ということが生ずるのか?

     いずれにせよ上川氏が言っていないことを言ったかのように「受け取ら」せている共同通信の見出しこそ「不適切」と言わなくてはならない。

    逢坂誠二氏の発言

     ちなみに共同通信は上に引用した記事の前に「「うまずして何が女性か」と上川陽子外相」と題する記事を公開していた。その記事には逢坂誠二氏の発言はなく、次のように書かれている。

     上川陽子外相は18日、静岡県知事選応援のため静岡市で演説し、自民党推薦候補の当選に向け「私たち女性がうまずして何が女性か」と述べた。新知事を誕生させる趣旨とみられるが、出産困難な人への配慮を欠くと指摘される可能性がある。

    共同通信 「うまずして何が女性か」と上川陽子外相

     この記事でも上川氏の発言を「新知事を誕生させる趣旨」と認めながら、「出産困難な人への配慮を欠くと指摘される可能性がある」と語っている。

     前の記事で「出産困難な人への配慮を欠くと指摘される可能性がある」とあるところが、後の記事では『野党からは「子どもをうまない女性は女性ではないと受け取られかねない不適切な発言だ」(立憲民主党の逢坂誠二代表代行)との批判が出た。』となっている。

     共同通信の記者は、前の記事の時には逢坂氏の発言を知らなかったが、後の記事の時には知っていたということのようである。

     前の記事は18日19時19分に公開、18日19時39分に更新とされている。(「Published 2024/05/18 19:19 (JST)」 「Updated 2024/05/18 19:39 (JST)」)

     後の記事は18日21時54分公開、19日13時46分更新とされている。(「Published 2024/05/18 21:54 (JST)」 Updated 2024/05/19 13:46 (JST)」)

     その間に逢坂氏が上川氏の発言を批判する発言をしていて、それを知った共同通信の記者が記事に取り入れたのであろうか?

     しかし逢坂氏はどうして上川氏が静岡市で「上川氏の女性支持者が多く集まった屋内の集会」で語ったことを知ったのであろうか? 函館にいたのではないか? 逢坂氏は上川氏の発言を批判するのに適した状況にあったのか?

    https://go2senkyo.com/seijika/123556/posts/893459
    https://go2senkyo.com/seijika/123556/posts/893778

     共同通信の記者はどうして逢坂氏の発言を知ったのか?

     共同通信の記者が逢坂氏に上川氏の発言を伝えてそれに対する意見を聞きに行ったのであろうか? しかしそうだとすると逢坂氏は共同通信によって印象操作されたことを受け取ったのではないか?

     そもそも上川氏の発言は「子供を産まない女性は女性ではない」という考えを示したものと受け取られるものか? というところに問題はある。

     上川氏の発言がそういうものであるならば、誰でもそう受け取るであろう。ところが実際には、そう受け取る「可能性」を言い出したのは共同通信である。

     その次の記事で逢坂氏がそのように受け取って批判したと共同通信が伝えているが、その批判は共同通信の影響を受けたものではないか?

     逢坂氏が共同通信によらずに上川氏の発言を知ることができたならば、他にも多くの人が共同通信によらずに上川氏の発言を知ることができたのではないか? 実際には多くの人は共同通信の記事によって上川氏の発言を知って批判している。

     立憲民主党の蓮舫議員は18日19時58分に共同通信の記事を引用して上川外相を非難している。

    蓮舫議員18日19時58分のポスト

    蓮舫議員はその後、上のポストを削除して19日8時11分、次のようにポストした。

     「『比喩』だとしても」ということを付け加えている。(その他いくつか変わっているところがある)もともと共同通信の記事でも「新知事を誕生させる趣旨とみられるが」ということはあった。いずれにしてもそのことゆえに差別発言ではないことになるはずであるが、共同通信も蓮舫議員も、どういう論理かわからないが、差別発言であるかのように語っている。

     蓮舫議員はその後もそういう方向で進んでいる。

     ちなみに下のポストには18日19時20分とあるが、そのポストで引用されている記事は18日21時54分公開、19日13時46分更新となっているものである。つまりそのポストより後に公開されたとされる記事をそのポストに引用しているかたちになっているのである。

    「うみの苦しみ」

     上川氏は問題とされた演説で「今日は男性もいらっしゃいますが、うみの苦しみは本当にすごい。」とも言っている。

    (静岡県知事選の候補として)一歩を踏み出していただいたこの方を、私たち女性がうまずして何が女性でしょうか。

    私も初陣のときに皆さんに「うみの苦しみにあるけれども、ぜひうんでください」と演説で申し上げた。この候補者のことを思うと、その場面が頭によぎる。

    今日は男性もいらっしゃいますが、うみの苦しみは本当にすごい。でもうまれてくる未来の静岡県、今の静岡県を考えると、私たちは手を緩めてはいけない。力を結集すればこの戦いを勝ち抜くことができる。

    日本経済新聞 「うまずして何が女性か」 上川外相、静岡知事選応援

     そのことが問題とされた。

     津田大介氏などはそのことを取り上げて共同通信の報道に問題はないと言っている。

     「国語の勉強やり直した方がいい」という津田氏の主張に従って「国語の勉強」をしてみよう。

     問題は、津田氏の『本人が「(男性にはわからないものとしての)出産」の文脈で「うむ」を使ってるんだから、そりゃその比喩の適切性が問われる』というところ。

     上川氏の「今日は男性もいらっしゃいますが、うみの苦しみは本当にすごい。」という言葉はたしかに「(男性にはわからないものとしての)出産」という意味で「うむ」という言葉を使っている。

     しかし『私も初陣のときに皆さんに「うみの苦しみにあるけれども、ぜひうんでください」と演説で申し上げた。』の中の「うみの苦しみ」は「(男性にはわからないものとしての)出産」という意味ではない。もっぱら選挙で当選させるという意味である。「ぜひうんでください」もそう。

     「(静岡県知事選の候補として)一歩を踏み出していただいたこの方を、私たち女性がうまずして何が女性でしょうか。」の中の「うまずして」も選挙で当選させるという意味である。「女性」も子供を産むかどうかということと関係ない。

     津田氏は『本人が「(男性にはわからないものとしての)出産」の文脈で「うむ」を使ってるんだから』というが、「うむ」という言葉は上のように使われている。したがって「その比喩の適切性が問われる」こともない。

     津田氏の言い方では一見やはり上川氏の発言には問題があったかのようである。しかし上川氏の発言の何が悪いのか、よくわからない。

     共同通信社国際局は5月21日、産経新聞の取材に対して次のように上川氏の「今日は男性もいらっしゃいますが」というところを引用して答えたという。

    同社国際局は、上川氏の一連の発言が「出産」を比喩にしたものと考えられる背景について、コメントで「(上川氏は)『この方を私たち女性がうまずして何が女性でしょうか』と述べ、さらにその後に『うみの苦しみは、今日は男性もいらっしゃいますが、本当にすごい』と述べています」と指摘した。

    産経新聞 外相「うまずして」英訳記事、男性に言及あり「明示なくても『出産』比喩」 共同通信回答

     ここで「上川氏の一連の発言が「出産」を比喩にしたものと考えられる背景について」というのはどういうことか、よくわからない。いずれにせよ、共同通信が上川氏の「この方を私たち女性がうまずして何が女性でしょうか」という発言を取り上げる時にその後の「うみの苦しみは、今日は男性もいらっしゃいますが、本当にすごい」ということをも考えてのことだったということであるとすると、共同通信の記事にそのことはなかったのであるからおかしい。その後に話題になったので取り入れたのではないか?

    逆に女性を貶めることでは?

     共同通信をはじめとして上川氏の発言を歪曲して非難している人は、女性を貶めているのではないか?

     上川氏の発言は選挙における女性の力に訴えたものであった。その発言を歪曲して非難することは、上川氏が語った女性の力を貶めているのではないか?

     上川氏は5月19日午前、発言を撤回したが、その時に次のように語っている。

    この発言は、私を古くからご支援いただいている女性支援者を中心にお声がけをさせていただいた個人演説会の最後の発言であります。私自身、2000年の激戦の中で初当選をさせていただきましたが、その際、女性のパワーで私という衆議院議員をうんで、誕生させてくださった皆さんにいま一度、皆さんの女性パワーを発揮していただき、大村知事を誕生させよう、そうした意味で申し上げたところでございます。ただ、私の申し上げました女性パワーで未来を変えるという私の真意と違う形で受け止められる可能性がある、というご指摘を真摯(しんし)に受け止めさせて頂き、このたび撤回をさせて頂きたいと思います。

    朝日新聞デジタル 上川外相、発言撤回 「真意と違う形で受け止められる可能性がある」

     上川氏は「女性パワーで未来を変える」ことが発言の真意であったと語っている。発言をすなおに聞く限りそうとしか受け取れない。

     そういう上川氏の発言を、子どもをうまない女性を否定するものであったかのように印象操作して貶めようとしている共同通信は、「女性パワーで未来を変える」ことを貶めていることになるのではないか?

     たとえば上に引用した白坂和哉氏は上川氏を「女性でありながら女性の尊厳を踏みにじる輩」と断じて「名誉男性」と呼んでいる。こういう言葉は「女性の尊厳を踏みにじる」ものではないのか?

     津田大介氏は「上川外相の感覚はおかしい」ときめつけて、上川氏は「自民党の多くの男性議員たち」を「追従して」いるに過ぎないものと決めつけている。

     上川氏の主体性を認めず、男性に追従しているに過ぎないものときめつける。上川氏の言葉は「女性パワー」という女性の主体性を説いたものであったが、そのことも認めない。―そういうことは女性を貶めることではないか?

     そもそも上川氏の発言は上川氏の女性支援者を集めた個人演説でなされたものである。

     上川氏の発言はそういう女性支援者に対するものであった。上川氏の「女性」という言葉はそういう状況で発せられたものと考えられなくてはならない。

     共同通信の問題についてさらに

  • 能登半島地震―岸田首相・馳知事の「初動」に問題はあったか? 情報の整理

    能登半島地震―岸田首相・馳知事の「初動」に問題はあったか? 情報の整理

     2024年1月1日に起こった能登半島地震では、岸田文雄首相・馳浩石川県知事の「初動の遅れ」ということが早くから問題とされた。

     しかしその「初動の遅れ」ということは必ずしも明らかにされていないまま言われているのではないか?

     岸田首相・馳知事の「初動」の情報を整理しよう。

    問題

     岸田首相の「初動」に問題があったか? ということを考えるためには次のことを明らかにしなくてはならない。

    ・岸田首相は被災地についてどのような認識をもっていたか? (「認識の甘さ」が問題とされているが、どうであったのか?)

    ・そしてどのように対応したか? (「初動の遅れ」が問題とされているが、どうであったのか?)

    被災地に対する認識

     2024年1月1日16時10分頃、石川県能登地方の深さ約15kmでマグニチュード7.6の地震が発生したが、その後の岸田首相・馳知事の「初動」はどうであったか?

     時事通信の「首相動静」では、地震発生後の岸田首相の動きは次のようにまとめられている。

    1月1日の地震後の岸田首相の動静
    • 16時10分
      地震発生

    • 17時16分
      岸田首相、官邸に到着
    • 17時17~18分
      報道各社のインタビュー
    • 17時19~34分
      林芳正、村井英樹、栗生俊一正副官房長官、松村祥史防災担当相、鈴木敦夫官房副長官補、原和也内閣情報官、高橋謙司内閣府政策統括官、森隆志気象庁気象防災監。
    • 18時25~51分
      林、村井、森屋宏、栗生正副官房長官、松村防災担当相、鈴木官房副長官補、原内閣情報官、高橋内閣府政策統括官、森気象庁気象防災監。
    • 21時26~22時01分
      林、村井、森屋、栗生正副官房長官、松村防災担当相、鈴木官房副長官補、原内閣情報官、高橋内閣府政策統括官、森気象庁気象防災監。
    • 22時15~25分
      坂口茂石川県輪島市長と電話
    • 22時30~40分
      泉谷満寿裕同県珠洲市長と電話
    • 23時35~38分
      報道各社のインタビュー
    • 23時39分
      官邸発
    https://www.jiji.com/jc/article?k=2024010100096&g=pol

     地震が発生して1時間後に官邸に到着。

     23時51分、官邸から出た後に岸田首相は次のようなポストをしている。

    ・「能登半島地震に対し、現地の情報を全力で収集して」いるといっている

    ・自衛隊機で防災担当副大臣以下の内閣府調査チームも金沢に到着しているという

    ・自衛隊の災害派遣、警察の広域緊急援助隊の派遣、消防の緊急消防援助隊の派遣を順次行っているという

     以上のことについて考えてみよう。

    東京から現地へ

     まず防災担当副大臣以下の内閣府調査チームを自衛隊機で現地に派遣したことについて。

     古賀防災担当副大臣は1月1日から1月19日まで現地に派遣されていたという。1月1日23時51分には金沢に到着していたと岸田首相は語っている。

     馳知事も地震が発生した時には東京にいて、その日のうちに石川県庁に入った。

    馳氏によると、地震当時は首都圏にいたが、交通機関が止まっていたため林芳正官房長官らに連絡した上で官邸に駆け付けたという。
     馳氏はオンライン会議で「人命最優先で対応をお願いしたい」と要請。終了後、記者団に「県庁の災害対策本部に入り、今後の対応を取ろうと思う」と述べ、官邸を出て自衛隊機を使い、同日中に地元に戻った。

    時事ドットコム 馳石川知事、官邸で初動指揮 県庁とオンラインで―能登半島地震
    https://www.jiji.com/jc/article?k=2024010100225&g=soc

     このことに関して興味深いことがあった。―その後に馳知事が「元日から24時間知事室に滞在して適時適切に指示を決裁していた」と言ったという記事に対して、立川雲水氏が「歴史修正発言」と言ったのである。

     「戦史/紛争史研究家」山崎雅弘氏も「ウソ」だと言っている。

     震災が発生した時に馳知事が石川県庁にいなかったことを問題としているようである。

     しかし1月1日の23時からであっても「24時間知事室に滞在」をしているとすると、「1月1日から24時間、知事室に滞在しております」ということは「ウソ」にはならない。

     岸田首相・馳知事の「初動の遅れ」に対する非難にはこういうことがあるので気を付けなくてはならない。

    現地の情報の収集

     次に、岸田首相の「能登半島地震に対し、現地の情報を全力で収集して」いるという言葉について考える。

     能登半島地震では岸田首相の「認識の甘さ」が問題とされた。そのことと関わることである。

     「能登半島地震に対し、現地の情報を全力で収集して」いるということは、まだ現地の情報を十分に把握していないということである。そういう意味で「認識の甘さ」があるということはできる。しかしまた「全力で収集して」いるということは、「認識の甘さ」にとどまろうとしていないということでもある。

     1月1日23時51分の岸田首相の被災地に対する認識は上に引用した通りであった。地震発生から23時ころまではどうであったか?

     1月8日の朝日新聞の記事は、題に「「初動を甘く見た」首相批判も」とあるように岸田首相が「初動を甘く見た」という批判を取り上げている。しかしその時のことを記した本文は、そういう批判とは違うことを示しているようである。

     地震発生直後の1日夕、首相は官邸幹部らに「これはひどい災害になるんじゃないか」と語っていた。だが、道路や通信インフラが破壊され、状況はなかなか分からなかった。日没直前というタイミングに加え、集落が点在する半島という地理的な特性が障壁になり、被害の深刻さの一端が見えてきたのは、同日午後10時を回ってからだ。

    朝日新聞DIGITAL 「初動を甘く見た」首相批判も 能登地震1週間、被害の全容つかめず
    https://www.asahi.com/articles/ASS1763HNS15OXIE01Y.html?iref=pc_ss_date_article

     まず、岸田首相は地震直後に「これはひどい災害になるんじゃないか」と語っていたことが伝えられている。岸田首相が「ひどい災害になる」可能性を考えていたということは、「初動を甘く見た」ということに反することではないか?

     岸田首相は地震直後に「これはひどい災害になるんじゃないか」という可能性を考えていたが、「状況はなかなか分からなかった」と言われている。「道路や通信インフラが破壊され」ていたからである。「日没直前というタイミング」「集落が点在する半島という地理的な特性」が「障壁」になったからである。

     状況が分からなかったことの原因はそういう「障壁」にあったということは、岸田首相にはなかったということではないか?

     2月1日の朝日新聞の記事も題に「認識甘かった」という言葉が使われている。しかしその記事で伝えている1月1日の官邸の様子は、「認識甘かった」という言葉と合わないようである。

     1月1日夜、官邸の執務室で岸田文雄首相は焦燥感に包まれていた。
     午後4時過ぎに石川県能登半島を震源とする震度7の激震が発生。首相はその約1時間後から、執務室で秘書官らと共に待機していた。つけっぱなしのNHKのテレビは、アナウンサーが津波からの避難を呼びかけ、炎に包まれる輪島市の市街地を映し出していた。
     だが、首相にもたらされるのは「道路が寸断されている」「生き埋めが発生している」といった断片的な報告ばかり。全体状況が分からないまま、刻々と時が過ぎた。

    朝日新聞DIGITAL 「認識甘かった」地震5時間、情報なき首相官邸 危機感共有されず
    https://www.asahi.com/articles/ASS215DNTS1ZUTFK017.html?iref=pc_ss_date_article

     この記事によると、岸田首相は地震発生約1時間後に官邸の執務室に入ってから、被災地の状況を知ろうとしていたが、明らかにならず「焦燥感に包まれていた」ようである。

     「認識甘かった」ということが問題とされるのは、厳しい現実と異なる甘い認識によって動いた(あるいはとどまった)場合であろう。

     しかしこの記事では、岸田首相は自分の認識は不十分であることを自覚して、正確な認識を求めていたとされている。どこに「認識甘かった」と問題とされるところがあるのか?

    特定災害対策本部と非常災害対策本部

     岸田首相は1月1日、まず特定災害対策本部を設置、23時ころ非常災害対策本部に格上げした。

     そのことを問題としている人がいる。

    https://note.com/hayakawayukio/n/n509c405f4219

     「能登半島地震で政府の初動が遅れたのは誤って特定災害対策本部を設置したから」というのである。そのことについて考えてみよう。

     1月1日23時51分、岸田首相はそれまで設置していた特定災害対策本部非常災害対策本部に格上げして、岸田首相が本部長になったことを伝えている。

    災害対策基本法

     特定災害対策本部も非常災害対策本部も、災害対策基本法によるものである。

     災害対策基本法では、災害が発生した時に、特定災害対策本部を設置する場合と非常災害対策本部を設置する場合が分けられている。

     非常災害対策本部を設置する場合は「非常災害が発生し、又は発生するおそれがある場合」である。

    第二十四条 非常災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、当該災害の規模その他の状況により当該災害に係る災害応急対策を推進するため特別の必要があると認めるときは、内閣総理大臣は、内閣府設置法第四十条第二項の規定にかかわらず、臨時に内閣府に非常災害対策本部を設置することができる。

    災害対策基本法

     特定災害対策本部を設置する場合は、災害の「規模が非常災害に該当するに至らないと認められるものに限る」。

    第二十三条の三 災害(その規模が非常災害に該当するに至らないと認められるものに限る。以下この項において同じ。)が発生し、又は発生するおそれがある場合において、当該災害が、人の生命又は身体に急迫した危険を生じさせ、かつ、当該災害に係る地域の状況その他の事情を勘案して当該災害に係る災害応急対策を推進するため特別の必要があると認めるもの(以下「特定災害」という。)であるときは、内閣総理大臣は、内閣府設置法第四十条第二項の規定にかかわらず、臨時に内閣府に特定災害対策本部を設置することができる。

    災害対策基本法

     非常災害対策本部の長は「内閣総理大臣」。

    第二十五条 非常災害対策本部の長は、非常災害対策本部長とし、内閣総理大臣(内閣総理大臣に事故があるときは、そのあらかじめ指名する国務大臣)をもつて充てる。

    災害対策基本法

     特定災害対策本部の長は「防災担当大臣その他の国務大臣」。

    第二十三条の四 特定災害対策本部の長は、特定災害対策本部長とし、防災担当大臣その他の国務大臣をもつて充てる。

    災害対策基本法

     それゆえに岸田首相は「特定災害対策本部を非常災害対策に格上げして」自ら本部長を務めることになったのである。

    状況の認識

     今取り上げている「能登半島地震で政府の初動が遅れたのは誤って特定災害対策本部を設置したから」という記事は、2024年1月の能登半島地震は「非常災害」に当たると主張する。したがって特定災害対策本部ではなく、非常災害対策本部を設置しなくてはなかったというのである。

    2021年5月の法改正で新設した特定災害対策本部は、非常災害に至らない、死者・行方不明者数十人規模の災害のとき設置するものとされる。能登半島地震には当てはまらない。これは、230人の死者がカウントされたいまだから言えるわけではない。地震学の知識を少しでも持っていれば、地震後ただちに発表された震源位置と震度7,そしてマグニチュード7.6、深さ16キロを聞いてただちにわかったことである。

    能登半島地震で政府の初動が遅れたのは誤って特定災害対策本部を設置したから

     問題になるのは「地震学の知識を少しでも持っていれば、地震後ただちに発表された震源位置と震度7,そしてマグニチュード7.6、深さ16キロを聞いてただちにわかったことである」というところ。

     後から振り返ると、2024年1月の能登半島地震は「非常災害が発生し、又は発生するおそれがある場合」に違いない。

     岸田首相は1月1日23時ころに非常災害対策本部を設置するまで、どうしてそう考えていなかったのか?

     上に引用した記事によると、「断片的な報告ばかり」で「全体状況が分からない」からということのようである。

     早川氏は1月1日20時に開催された第1回特定災害対策本部会議での気象庁から出席した気象防災監の発言を取り上げて次のように語っている。

    じっさい、1日20時03分に開催された特定災害対策本部会議の冒頭で、気象庁から出席した気象防災監が「震源はごく浅く、マグニチュード7.6。速報値であるが、これは阪神・淡路大震災のマグニチュード7.3を上回ったもの。揺れそのもので、相当の被害が出ている可能性を考えている」と発言した(議事録)。大津波警報にばかり世間の目が向いていたとき、気象防災監は地震専門家として、揺れによって大きな被害が発生していると正しく警告した。いまそのとき大勢が生き埋めになっているとする深刻な指摘だ。しかし、会議は途中で立ち止まることなくそのまま進行した。

    能登半島地震で政府の初動が遅れたのは誤って特定災害対策本部を設置したから

     気象防災監は地震専門家として、早川氏と同様の認識を持っていたというのである。「しかし、会議は途中で立ち止まることなくそのまま進行した。」というのである。

     しかし議事録に記されていることは、早川氏が語ることと違うようである。

     気象防災監はたしかに「揺れそのもので、相当の被害が出ている可能性を考えている」と言っている。しかしそのことについてはそれだけしか言っていない。そしてそれより多く津波について言っている。この議事録で最も多く津波について語っているのが気象防災監である。

     建物倒壊に関しては他の人が語っている。

     内閣府政策統括官は「建物倒壊等による生き埋めが 6 件発生している」こと、「建物等の被害については、倒壊が多数発生しているとのこと」を取り上げている。

     警察庁の警備局長も、「石川県警に多数の通報。建物倒壊に関するものが多い。」と言っている。ただし「人的被害に関するものは調査中で不明」と言っている。

     何故にそのことを取り上げないのか?

     議事録によると、建物倒壊が多いことは伝わっていたが、人的被害に関しては明らかになっていなかったようである。

    非常災害対策本部

     朝日新聞の1月8日の記事によると、第1回特定災害対策本部会議を開いて間もなく、岸田首相は輪島、珠洲両市長と電話して被害の深刻さを知ったことによって、特定災害対策本部を非常災害対策本部に格上げした。

     「住宅の倒壊が多数あり、道路も寸断され重機も入らない。金沢市からの輸送も無理だ」「過去にない広範囲の被災だ。電気・水も止まっている。携帯電話もつながらない」
     石川県の輪島、珠洲両市長から電話で聞き取った首相は、初会合を開いたばかりだった特定災害対策本部を一転、非常災害対策本部に格上げするように指示し、自らが本部長に就いた。

    朝日新聞DIGITAL 「初動を甘く見た」首相批判も 能登地震1週間、被害の全容つかめず

     その記事では次のようなことも伝えられている。

    官邸幹部は「初めは被害の程度がわからず、役所も非常災害対策本部にする段階ではないと言っていた」と話す。

    朝日新聞DIGITAL 「初動を甘く見た」首相批判も 能登地震1週間、被害の全容つかめず

     これによると、「初動を甘く見た」のは岸田首相個人の問題ではなく、役所も情報が把握できていなかったということではないか?

     読売新聞の2月5日の記事では、岸田首相は17時ころに地震の規模が大きいことを聞いて17時30分に特定災害対策本部を「いったん設置」し、その約5時間後に非常災害対策本部に格上げしたと伝えている。

    発生直後、政府内には「被害は軽微ではないか」との希望的観測さえあったが、「道路の寸断で被害状況の把握もままならない」といった情報が次々と寄せられた。
     岸田首相も1日午後5時頃、能登地方を地盤とする自民党の西田昭二衆院議員との電話で、「昨年の地震とは揺れが全く違う。能登を助けてください」と窮状を訴えられた。
     政府は、同日午後5時30分に「特定災害対策本部」(本部長・松村防災相)をいったん設置。首相は「空振りでも構わない」と判断し、約5時間後に首相をトップとする「非常災害対策本部」に格上げした。

    読売新聞 道路・情報寸断で「陸の孤島」になった能登、自衛隊の救助難航…初動対応の「定石」通じず
    https://www.yomiuri.co.jp/national/20240205-OYT1T50005/

     ここでは呉語5時ころの西田議員との電話がきっかけとなったとされている。

     岸田首相が特定災害対策本部を非常災害対策に格上げする時に「空振りでも構わない」と判断していたということは、「空振り」になるかもしれないと思われ情報しか与えられていなかったということであろう。そしてそれにもかかわらず格上げすることを決めたということであろう。

     このように各社の報道において、岸田首相は与えられた情報が増えるに従って対策を格上げするのみならず、与えられた情報以上に積極的に動いていたと伝えられている。

    震災対応

     次に問題となるのは、岸田首相・馳知事の認識と、震災対応との関係である。岸田首相・馳知事の認識のために震災対応が遅れたのか?

    馳知事

     馳浩石川県知事は1月1日18時25分に、陸上自衛隊に派遣要請をして「明朝、朝一での対応をお願いした」とポストした。

     早川氏はそれを取り上げて「正気か」と言った。

     直ちに投入しなくてはならないのに、明朝、朝一から投入するのはおかしい、ということのようである。

     早川氏は後日、馳知事が『19時30分ころ記者団に対して「午後5時過ぎには、副知事を通じて自衛隊の派遣要請も出し、速やかに対応していただけると思うが、夜に入ったので、あすの朝、明けてから本格的な情報収集や救命活動に入ることになる」と述べていた』ことを知ったらしい。

     馳知事が地震発生後間もない時に自衛隊に派遣要請していたことを、それまで知らなかったようである。しかし早川氏は「これでは自衛隊は明朝まで動けない。明朝まで動きを封じられた」と断じている。馳知事の「認識の甘さ」のために自衛隊は動きを封じられたというのである。

     この主張には疑問がある。

     馳知事によって自衛隊は動きを封じられたのであろうか? できるだけ早く動こうとしても時間がかかったということはないのであろうか? 早川氏が後日知ったことは、そのことと関わることではないか?

    自衛隊

     震災直後に自衛隊を能登に派遣することには困難な状況があったと言われている。

     たとえば時事通信の記事では「北陸3県の陸自定員は1400人で、初日に投入した1000人はほぼ総動員に近かった」と言われている。

    https://www.jiji.com/jc/article?k=2024020300376&g=soc

     地震発生後の金沢駐屯地からの先遣隊の動きを、2月5日の読売新聞の記事は次のように伝えている。

     地震発生から1時間後。陸自の金沢駐屯地(金沢市)では先遣隊20人が高機動車2台に分乗し、約100キロ離れた輪島、珠洲市に向けて出発した。地割れや陥没に阻まれ、輪島中心部入りを断念。 迂回うかい 路を探すうち1台が動けなくなった。残る1台が珠洲市にたどり着いたのは翌2日の正午頃。すでに20時間近くたっていた。

    読売新聞 道路・情報寸断で「陸の孤島」になった能登、自衛隊の救助難航…初動対応の「定石」通じず

     地震発生から1時間後に金沢を出発した先遣隊が「輪島中心部入りを断念」、1台が動けなくなって、2日の正午に珠洲市に到着している。

     地震直後から動くものは動いていた。そしてできるだけ早く動こうとしても時間がかかった。ということではないか?

     名古屋市に司令部がある陸自第10師団は、地震発生直後に馳知事から派遣を要請されたという。そして間もなく派遣を開始した。

     地震発生から約30分後の午後4時45分、酒井秀典・第10師団長が馳浩石川県知事の要請を受けて災害派遣を開始。兵庫剛副師団長らが夜に守山駐屯地を車で出発し、2日未明に石川県庁の対策本部に着いた。

    朝日新聞DIGITAL 道路寸断、渋滞に阻まれた「前進」 陸自隊員、難渋の能登地震初動
    https://www.asahi.com/articles/ASS216WKWS1YUTFK001.html?iref=pc_ss_date_article

     朝日新聞の4月3日の記事で、兵庫剛・副師団長はその時のことを次のように語っている。

     元日夕の発災直後、石川県庁の対策本部経由で自衛隊に「数百人単位のヘリコプター空輸」を要望されたが、趣旨がわからない。兵庫氏は深夜に司令部を陸自車両で発ち、翌日未明に県庁に着いた。
     対策本部の拠点は6階。危機対策課に自衛隊と警察、消防が集まった。消防は消防庁長官の指示で東海・関西各府県から緊急援助隊が来ていたが、現状認識が共有されない。兵庫氏が呼びかけた。
     「頭をそろえましょう。被災状況がわからない。被災地へどうやって行けばいいかもわからない。情報を『見える化』しましょう」

    朝日新聞DIGITAL 能登地震直後 自衛隊副師団長が呼びかけた情報共有、見えた支援方針
    https://www.asahi.com/articles/ASS425WQJS36UTFK00B.html?iref=pc_ss_date_article

     「被災状況がわからない。被災地へどうやって行けばいいかもわからない」という状況だったというのである。自衛隊も消防も警察もそういう状況に対応して動いていたようである。

     馳知事の言葉によって動きを封じられたのではないのではないか?

    緊急消防援助隊

     次に消防庁の緊急消防援助隊について。

     石川県の災害危機管理アドバイザーも務めてきた神戸大名誉教授の室崎益輝氏は朝日新聞の1月14日の記事において、緊急消防援助隊に関して次のように語っている。

    今回は遅れた。緊急消防援助隊の投入も小出しで、救命ニーズに追いついていない。本来は「想定外」を念頭に、迅速に自衛隊、警察、消防を大量に派遣するべきでした。

    朝日新聞DIGITAL 「初動に人災」「阪神の教訓ゼロ」 能登入りした防災学者の告白

     「迅速に自衛隊、警察、消防を大量に派遣するべきでした」というのであるが、特に緊急消防援助隊の投入について「小出し」であったと批判している。

     緊急消防援助隊は「被災地からの要請を待たずに地震発生直後から出動」したと伝えられている。

     総務省消防庁は今回、地震発生の約20分後に各地の消防に出動を要請。東日本大震災に匹敵する揺れや大津波警報の発令に加え、正月休み中であることも加味した判断だった。同庁担当者は「甚大な被害が想定され、元日だったことから状況の把握と要請に時間を要すると危惧した」と振り返る。
     意識したのは、生存率が急激に下がるとされる「発生後72時間」。72時間を迎える1月4日には、約1800人が救命・救助に当たり、輪島市で80代の女性を救出した。同庁幹部は「消防の使命は人命救助。72時間を意識して、初動から大規模な人員を投入した」と語る。

    時事ドットコム 初の「要請前出動」 活動広がる緊急援助隊―東日本以来の大規模投入・能登地震
    https://www.jiji.com/jc/article?k=2024022700760&g=soc

     陸自第10師団の兵庫副師団長も、1月2日未明の石川県庁に「消防は消防庁長官の指示で東海・関西各府県から緊急援助隊が来ていた」と語っている。

     1月1日20時の特定災害対策本部会議で総務省は「被災自治体からの応援要請はないが、総務省では、ニーズ把握実施中」と言っていた。

     総務省消防庁は甚大な被害を想定して、人命救助のために「初動から大規模な人員を投入した」というのである。まさに早川氏のような考えを持って動いていたようである。

     しかしそれでも1月4日までにその半数しか「被害集中地域」に行くことができなかったと共同通信の1月28日の記事は伝える。

     能登半島地震当日に指示を受け被災地に向かった11府県の「緊急消防援助隊」約1900人のうち、発生72時間以内の1月4日までに石川県珠洲市や輪島市の被害集中地域に入り活動できた隊員が約半数にとどまったことが28日、各消防への取材で分かった。道路損壊や土砂崩れの多発で大型消防車などの走行が阻まれたのが要因で、ルートが限られている半島特有の災害対応への課題が改めて明らかになった。

    共同通信 72時間以内の援助隊入り半数 珠洲、輪島の被害集中地域
    https://nordot.app/1124308515280355625

     室崎氏は「緊急消防援助隊の投入も小出しで、救命ニーズに追いついていない」と言ったが、緊急消防援助隊を実際より多く投入することはできたのであろうか?

    警察の広域緊急援助隊

     室崎氏は自衛隊、消防のみならず警察も「大量に派遣するべきでした」と語っている。

     警察は石川県の要請を受けて広域緊急援助隊を派遣した。こちら

     埼玉県の派遣した広域緊急援助隊の記事がある。

    1日の夜に車で埼玉県を出発し、翌2日朝には石川県に入りました。そのあと七尾市に向かいますが道路の被害や激しい渋滞でたどりつけず、最終的には3日になって、ようやく能登半島の先端部に近い珠洲市に到着することができました。

    NHKさいたま放送局 能登半島地震 埼玉県警広域緊急援助隊「まともな道路がひとつもない」 困難な救助活動振り返る
    https://www.nhk.or.jp/shutoken/saitama/article/018/47/

    岸田首相による非常災害対策本部の初会合

     早川氏は岸田首相がすぐに非常災害対策本部を設置しなかったことを非難したが、その上に、次の日の朝に初会合を開いたことを非難した。

    翌朝、岸田首相が官邸にあらわれたのは8時52分。馳知事と電話会談したあと非常災害対策本部の初会合を9時23分に開いた。じつに地震から17時間後だった。わずか55分で初会合を開いた2016年4月熊本地震と比べると、無為に過ぎた時間の長さに慄然とする。

    能登半島地震で政府の初動が遅れたのは誤って特定災害対策本部を設置したから

     しかし能登半島地震の発生後17時間後に非常災害対策本部の初会合を開いたことを、熊本地震の発生後55分で初会合を開いたことと比較して、前者の「無為に過ぎた時間の長さ」を問題とすることはおかしくないか?

     岸田首相は地震発生後、17時16分から23時39分まで官邸にいて被災地の情報収集をしていた。そしてその情報をもとにして「いったん」特定災害対策本部を設置し、その後に非常災害対策本部に格上げした。わからなかった状況が次第に明らかになってくるとともに対応を上げていったということではないか?

     第1回非常災害対策本部会議で岸田首相は「時間の経過、夜明けとともに被害状況が徐々に明らかになってきている」と語っている。

    時間の経過、夜明けとともに被害状況が徐々に明らかになってきている。被災者の救命救助は時間との勝負。特に建物の倒壊等による被害者は一刻も早く救出する必要がある。

    非常災害対策本部会議(第 1 回)議事録

     室崎氏は「被災状況の把握が直後にできなかったために、国や県のトップがこの震災を過小評価してしまったのではないでしょうか。初動には人災の要素を感じます。」と語った。室崎氏は岸田首相のように「時間の経過、夜明けとともに被害状況が徐々に明らかになってきている」というのと違うやり方を知っているのか?

     岸田首相が非常災害対策本部初会合を開くまでに時間がかかったことによって、震災対応が遅れたということにも疑問がある。

     自衛隊、警察には地震直後に石川県から派遣要請があって、動いていた。消防は要請されずに動いていた。

     岸田首相が第1回非常災害対策本部会議で言うように、自衛隊も、警察の広域緊急援助隊も、消防の緊急消防援助隊も非常災害対策本部会議の前から動いていたのであって、非常災害対策本部会議の後から動くのではない。

    自衛隊、警察の広域緊急援助隊、消防の緊急消防援助隊については、昨夜のうちに自衛隊の航空機などあらゆる手段をもちいて現地に部隊を進め、順次救命・救助等の活動を開始しているが、引き続き、部隊を最大限動員し、住民の安全確保を最優先に救命救助活動に全力を尽くしていただきたい。

    非常災害対策本部会議(第 1 回)議事録

     岸田首相が「部隊を最大限動員」することを求めていることは重要である。岸田首相を批判した人が語ったように、わざと小出しにすることを岸田首相は求めていない。

     早川氏は非常災害対策本部初会合が遅かったために次のようなことになったと語っている。

    1日20時03分の特定災害対策本部会議で決めた応急対策が、翌2日9時23分まで13時間継続した。本部長が防災担当大臣で、総理大臣でなかったことは自衛隊の士気に大きく影響しただろう。消防の救命救急活動も、必要最大限のものにはならなかっただろう。

    能登半島地震で政府の初動が遅れたのは誤って特定災害対策本部を設置したから

     しかし自衛隊も消防も自分達で情報を把握して、その情報に対応して動くのではないか?

     現実には兵庫副師団長が言うように、当初、自衛隊、警察、消防で「現状認識が共有されない」状況であった。それぞれの現状認識がバラバラであったということであろう。それぞれ「被災状況がわからない。被災地へどうやって行けばいいかもわからない。」という状況にあった。そこで「情報を『見える化』しましょう」ということになった。

     岸田首相・馳知事はその動きを妨げたのであろうか?

     早川氏は最後に次のように語っている。

    地震の翌日2日から4日まで、救命救急のために重要だとされる最初の72時間は冬の北陸地方にはめずらしい好天が続いた。風が弱くて視界もよく、ヘリコプターを飛ばすのに支障ない天候だった。不幸中に訪れたあの幸いを生かすことができなかったのが残念だ。

    能登半島地震で政府の初動が遅れたのは誤って特定災害対策本部を設置したから

     しかし自衛隊も警察も消防も地震発生直後から動いていた。そして発生後72時間を意識して動いていたのに、困難な状況があったのである。

     それに対して早川氏は何をすべきであったと言っているのであろうか?

    おわりに

     まとめよう。

     能登半島地震では、岸田首相は被災地の状況についてはじめは正確な情報が得られなかったが、次第に明らかになっていった。そのことは自衛隊なども同様だったようである。岸田首相個人の認識の甘さなどということではないようである。

     岸田首相個人の認識の甘さなどということを問題とするより、能登半島地震では「被災状況がわからない。被災地へどうやって行けばいいかもわからない。」という状況が生じたことを問題としなくてはならないのではないか?

     室崎氏は「被災地で起きていることを把握するシステムが機能しなかった」と語っているがどういうことか? そういうシステムがあったということか?

     能登半島地震では、自衛隊、警察、消防などは震災直後から動いていた。それぞれ独自に情報を集めて、その情報をもとにして動いていた。岸田首相・馳知事によってその動きを妨げられることはなかったようである。

  • 能登半島地震における自粛要請とそれに反対する思想

    能登半島地震における自粛要請とそれに反対する思想

     2024年1月に起こった能登半島地震では、これまでの地震で問題にならなかったことが問題になった。たとえば被災地能登への移動に対して自粛が要請されたことである。

     自粛の要請に対して反対する思想が出て来た。山本太郎議員の能登入りはその思想を代表するものであった。山本議員の能登入りを巡って両者の対立は高まった。

    自粛の要請

     能登半島地震が起こって間もなく、交通の問題が起こった。能登はもともと道路が限られているが、地震によってその道路が寸断された。そこで能登への支援物資輸送の妨げにならないようにということで、能登へ行くことを自粛することが求められた。

     馳知事も

     岸田首相も

    与野党党首会談

     1月5日に与野党党首会談が行われた。この与野党党首会談は能登半島地震における自粛に関して重要である。

     岸田首相は1月4日、野党に党首会談を申し入れた。

     時事通信は5日の記事で「首相側近の木原誠二幹事長代理が4日朝、党国対に野党との調整を要請し、実現に至った」という関係者の言葉を伝えている。

    https://www.jiji.com/jc/article?k=2024010501010&g=pol

     立憲民主党、公明党、日本維新の会、国民民主党、共産党はその申し入れを受け入れた。

     そうして1月5日に行われた与野党党首会談において、日本維新の会が当面の能登視察自粛を提言、6与野党は合意した。

     立憲民主党が与野党党首会談で当面の能登視察に同意したことは重要なことである。

     立憲民主党は2023年からパーティ券不記載問題で自民党を厳しく追及してるところであった。震災対応に関しても、与野党党首会談でも31項目からなる「『令和6年能登半島地震』に関する申し入れ」を渡して、内容の実現を求めている。

     しかし1月6、7、8日の3連休は国会議員が被災地に入らないようにすることについて合意するなど、力を合わせてもいた。立憲民主党は与野党党首会談で「復旧の妨げにならないように一般車両の乗り入れ規制について政府から全国的にメッセージを発信すること」を申し入れていたという。

    https://cdp-japan.jp/news/20240105_7196

     立憲民主党は震災に対しては「現場にいる党所属の近藤和也衆院議員と頻繁に連絡をとりながら対応」して、「党災害対策本部を開き、順次状況をヒアリングし、政府の後押しをしていきたい」というように、現場の実情を基にして「政府の後押し」をしていた。

    https://cdp-japan.jp/news/20240109_7201

     近藤議員は自民党石川県連代表の宮本周司参議院議員、石川3区の西田昭二衆議院議員と力を合せていた。

     そうして1月6、7、8日の3連休は国会議員が被災地に入らないようにすることについても合意していたのである。

     馳知事も1月6、7、8日の3連休の能登への不要不急の移動の自粛を求めた。

    山本太郎議員の能登入り

     ところが山本太郎議員は1月5日、能登に入った。与野党党首会談の日である。

     そして2日間「様々聞きとりした」という。与野党党首会談で国会議員が被災地に入らないようにすることについて合意した1月6、7、8日の3連休に入っている。

     自粛を提言した日本維新の会の音喜多議員が、山本議員の能登入りを非難することは当然のことである。

     その一方で山本議員の行動は、左派のインフルエンサーに支持されている。

     たとえば内田樹氏は山本議員に同意しているようである。総理大臣がやらなくてはならないのにやっていないことをやっていると語っている。

     山崎雅弘氏も山本議員の投稿を重要なものとみなしている。「いかなる従属的秩序にも属していない」ことによって、被災地の住民の実情について『「本当のこと」をありのままに言える』と考えているようである。

     ちなみに山崎氏はその1週間後、岸田首相の被災地訪問に対しては『現地視察の目的が「やってる感の宣伝に使う写真と動画を撮るため」なのが丸わかり』とか『本当に自国民の命や暮らしに「関心がない」』とか酷評している。山本議員に対して言ったことと正反対である。

     しかしたとえば音喜多議員によると、岸田首相は山本議員より前に山本議員が報告したことは知っていて、そのために動いていたのであるから、「自国民の命や暮らし」のために働いていたことになり、山本議員は被災地への交通を困難にさせたのであるから『自国民の命や暮らしに「関心がない」』ことになる。山本議員の方が『現地視察の目的が「やってる感の宣伝に使う写真と動画を撮るため」なのが丸わかり』と言われるのではないか?

     立憲民主党員であるが小西洋之議員が、6与野党の自粛に反対していることは重要なことである。立憲民主党の中でも小西議員のような人は、6与野党の自粛に合意した立憲民主党より、それに反対した山本議員に近い考えを持っているようである。

     近藤和也議員が自粛を求めたポストに対して、渡辺輝人弁護士が「自分は今回の能登半島の被災について門外の者だと言ってるのと同じでは」と言ったことは、多くの人に非難された。

     渡辺弁護士は、山本議員の能登入りをよしとする考えを持っているようである。

    まとめ

     2024年1月の能登半島地震への対応を巡って、SNSでは激しい対立があった。被災地への移動の自粛は、激しい対立が生じたことであった。

     ただしその対立は、自民党と立憲民主党の対立では必ずしもなかった。立憲民主党はむしろ自民党と合意していた。6与野党の合意と、それに対するれいわ新選組、左派インフルエンサー、立憲民主党左派の対立であった。

     能登半島地震では、被災地救援のために被災地への移動の自粛が要請されなくてはならないと言われた。

     それに対して後者は、制限に反対した。後者は、山本議員が言うように「あまりの政府の後手後手に、命が蔑ろにされている」という考えを持っているので、自身が観に行かなくてはならないということになる。

  • 能登半島地震―首相は新年会に出席してはいけないのか?

    能登半島地震―首相は新年会に出席してはいけないのか?

     2024年1月5日に岸田首相が新年会に出席したことについて、1月1日に起こった能登半島地震との関係で問題とされた。

     地震が起こった時に首相は新年会に出席してはいけないのか?

    経済3団体共催の新年会

     2024年1月5日、岸田首相は経済3団体共催の新年会に出席してあいさつした。

    HAYABUSA氏

     同日、HAYABUSA氏はその日の首相動静にそのことが記されていることを取り上げて、問題とした。

     HAYABUSA氏が問題としているのは、

    ・「こういう非常時に」首相が「新年会に挨拶に行くこと」は「常識的に有り得る話なのか」?

    ・「代理に任せるならまだ分かる」―ということは「代理に任せる」方がいいのにそうしなかったこと

    ・沖縄の玉城知事が首里城消失の時に「現地の予定を全てキャンセルして帰国した」ことと比較して、そうしなかったことを問題としている

     以上の主張に対しては疑問がある。

     玉城氏が首里城消失を知った2019年10月31日と比べられるのは、能登半島地震が起こった2024年1月1日であって、2024年1月5日ではないのではないか?

     玉城氏は首里城消失を知って、それから対応を始めなくてはならなかった。岸田氏は1月1日に地震が起こってから1月5日まで対応をしてきている。しなくてはならないことは、はじめに多くて次第に少なくなってくるのではないか?

     経済3団体の新年会に出席してあいさつすることは、どうしても止めなくてはならなかったことなのか? 積極的な意味はないのか?

     代理に任せるとよかったことなのか?

    2024年の経済3団体共催の新年会

     2024年の経済3団体共催の新年会は『名称から「祝賀」を取って「新年会」に変更』されたというように、震災に配慮して行われた。

    https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240105/k10014310191000.html

    会場では3団体のトップが「金びょうぶ」の前で出席者らを出迎えるのが恒例でしたが、ことしは金びょうぶは取り除かれ、会の冒頭、出席者らは地震や事故で亡くなった人たちに黙とうをささげました。
    また、会場ではアルコールの提供もとりやめとなり、乾杯の発声も行われませんでした。
    経団連の十倉会長は、あいさつで「すでにさまざまな企業が物資の供給やインフラの復旧、生活サービスの維持、生活復旧支援などに取り組んでいる。経済界は引き続き、被災地の皆さまに寄り添った支援を行っていく」と述べました。
    経団連では会員企業に対して寄付や物資などの提供を呼びかけています。
    また、日本商工会議所も被災した地域の商工会議所で中小企業や小規模事業者の資金繰りなどの相談に応じる窓口の設置をサポートするなど、経済界でも支援の動きが進んでいます。

    NHK 経済3団体の新年会 祝賀ムードは自粛 地震被災地を支援の考え

     その後に各企業の代表が震災対応について語っている。

     経済界の震災に対する取り組みを明らかにする場としての意味があったのではないか?

     朝日新聞の1月6日の記事では次のように伝えられている。

     能登半島地震の被災地を支援する企業の動きが本格化している。食品や日用品大手の物資支援だけでなく、中には自社の「強み」を生かした取り組みも。被災地に向けては、5日に開かれた経済団体の新年の会合でも企業トップの発言が相次いだ。

    朝日新聞 山パン、日清、ユニ・チャーム 翌日から物資輸送→費用は国が後払い
    https://www.asahi.com/articles/ASS156QC2S15ULFA01M.html

     岸田首相はその新年会で「経済の好循環を確かなものにしていくためには物価上昇を上回る賃上げが不可欠だとして、実現に向けた経済界の協力を要請し」たという。

     震災対応とは別のことである。しかし経済のことを語ってはいけないのか? 経済のことは震災からの復興とも関わってくることではないか?

    山崎雅弘氏

     ところで「戦史/紛争史研究家」山崎雅弘氏はHAYABUSA氏の上の言葉を引用しつつ、さらに激しいことを言っている。

     首相の新年会出席は「災害対応の最高責任者である総理大臣が、生き埋めの被災者そっちのけで「財界人のご機嫌取り」を優先しているという話」であると言うのである。また「財界人との関係だけが大事で、下級国民は死んでても興味ない」とも語っている。

     これは言い過ぎではないか?

     第一に「生き埋めの被災者そっちのけ」とか「下級国民は死んでても興味ない」とかいうことは明らかではない。震災直後から震災対応を続けていた岸田首相がその間に新年会に出たことは、そのように言われなくてはならないことなのか?

     第二に経済3団体の新年会に出たことをもって『「財界人のご機嫌取り」を優先している』とか「財界人との関係だけが大事」とかいうことにも疑問がある。岸田首相はその新年会で財界人に対して賃上げを求めている。そして国民の所得が増加することを求めている。

     賃上げのことは、次の連合の新年互礼会と関わる。

    連合2024新年互礼会

     岸田首相は同日、連合の新年互礼会にも出席していた。

    https://www.gov-online.go.jp/press_conferences/prime_minister/202401/video-277511.html

     そこでもまず震災について述べた後、賃上げについて述べている。

     連合の新年互礼会ではまず芳野会長が震災に対する対応について語ったという。

     冒頭、芳野友子会長は主催者を代表し、1月1日の令和6年能登地方地震発生について、被災された方へのお悔やみとお見舞いを述べ、今後の連合の対応として、対策本部の設置や救援カンパ等の支援活動、政府・政党、経済団体への要請行動といった取り組みの実施を表明しました。

    聯合ニュース 連合2024新年互礼会を開催
    https://www.jtuc-rengo.or.jp/news/news_detail.php?id=2070

     2024年の連合の新年互礼会には、震災に対する取り組みについて表明すること、賃上げを求めること、という意味があったようである。

     連合の新年互礼会には、立憲民主党の泉健太代表も出席している。

    1月1日に発生した令和6年能登半島地震により大きな被害が発生したことを踏まえ、互礼会では予定をしていた鏡割りなどを取りやめ、また会の冒頭では犠牲者の方々を追悼する黙祷を出席者全員で行いました。
     互例会には泉代表の他、大島敦企業団体交流委員長らも出席し、連合や各産別の役員と懇談し、また能登半島地震の被害者の救命・救助、被災地の復興についても意見交換を行いました。

    立憲民主党公式サイト 泉代表、「連合2024新年互礼会」に出席
    https://cdp-japan.jp/news/20240109_7203

     ところで、鳩山由紀夫元首相は1月25日に、岸田首相が連合の新年会に出席したことについて「唖然とした」と語っている。

     岸田首相が新年会に出席したことを「初動の遅れ」と関係づけている。「対応の遅れが大きく命に関わる」とか「時間との勝負である」とか言うことはその通りだと思うが、岸田首相が連合の新年会に出席することによってそういう問題が生ずるのであろうか?

     連合の新年会に対して山崎雅弘氏の言葉はさらに激しくなっている。

     「常に電力会社を含む大企業側」というのは原発に対する態度について言っているようである。

     しかし「自民党や財界人など支配層との関係だけが大事で、下級国民は死んでても興味ない」と言うのは言い過ぎではないか? 連合の新年会では震災に対する取り組みについて意見交換されていたというのであるから、被災した国民のことを考えていたにちがいない。

    時事通信社の新年互礼会

     岸田首相は同日時事通信社の新年会にも出席していた。

    https://www.gov-online.go.jp/press_conferences/prime_minister/202401/video-277525.html

     山崎雅弘氏は時事通信社に対しても「住民が大勢生き埋めの状態で新年会に招いた」と強烈な言葉で責めている。

     しかし生き埋めの住民に対する政府の対応は、首相が数分新年会に出席するかどうかによって変わることなのであろうか?

     山崎氏は首相が新年会で震災について触れたところがいかに少なかったかを強調している。そして「すぐに経済の話」に移ったと言っている。そのことは岸田首相が「一般国民の命の重さ」を軽くみていることを現わしているというのである。

     しかしマスメディアの人が集まった新年会で、震災に対する取り組みについて述べることには意味があるのではないか? また経済について語ることは「一般国民」のためではないか?

     「時事通信社は岸田首相を新年会に呼んだことで、岸田首相の震災対応の不備を厳しく批判できなくなったのではないですか?」ということに関しては、時事通信社は山崎氏ほど岸田首相の震災対応は悪いときめつけることはしていないようである。

     たとえば1月5日の次の記事では、5日の4年ぶりの与野党党首会談、既に閣議決定した2024年度予算案を修正し、予備費を増額するよう財務省に指示したこと、元日の地震発生以来、首相は記者団の取材に毎日2回応じていることを取り上げて、「異例の対応を矢継ぎ早に繰り出している」と語っている。

    https://www.jiji.com/jc/article?k=2024010501010&g=pol

     そして岸田首相の意図について「派閥の裏金疑惑で内閣支持率が2割前後に落ち込む中、震災対応を通じて指導力を演出する意図もあるとみられ」ると推測している。

     たしかに岸田首相がいいところを見せるために震災対応に努力したという方が、山崎氏のように「財界人との関係だけが大事で、下級国民は死んでても興味ない」という断定より真実に近いと思われる。

     山崎雅弘氏の発言もう一つ。

     1月5日の新年会への出席は非難されなくてはならないことになっている。岸田首相は「失策の責任をごまかす人間」ときめつけられている。そういうことは検証がなされた後でなくては言うことはできないのではないか?

    2024年1月5日の新年会のまとめ

     ここで2024年1月5日の岸田首相の行動をまとめよう。

     まず、10時45分に自民党新年仕事始めに出席して、あいさつしている。

     14時7分にホテルニューオータニ「鶴の間」で経済3団体共催の新年会に出席し、あいさつ、20分には同ホテルを出ている。

     15時1分から46分まで国会で与野党党首会談。

     16時14分、東日暮里のアートホテル日暮里ラングウッドの宴会場「ラングウッドホール」で連合の新年互礼会に出席し、あいさつ。27分、同ホテルを出る。

     17時、帝国ホテルでエマニエル駐日米大使と面会。7分~15分、ホテル内の宴会場「富士の間」で時事通信社、内外情勢調査会など主催の新年互礼会に出席し、あいさつ。18分、同ホテルを出る。

    https://www.nhk.or.jp/politics/souri/2024/01/05.html

    おわりに

     岸田首相が新年会に出席したことを巡る議論は、震災という非日常的な災害と、日常的な行事とがどのように関わるか? という問題でもある。

     音喜多議員は「気遣いは心に持ちつつ、日常活動・経済活動はできるかぎり通常通り行うべきだと思います」と語っている。

     2011年の東日本大震災の時と比べると、2024年の能登半島地震では、日常的なものの復帰は早かったと思われる。NHKが早くから日常の放送を再開したことは話題になった。東日本大震災の時には日常的なものの自粛が長く続いていた。そしてそのことによる弊害も言われていた。

  • 能登半島地震ではヘリコプターを多用できたか? 「知識人」の発言の問題

    能登半島地震ではヘリコプターを多用できたか? 「知識人」の発言の問題

     2024年1月1日に起こった能登半島地震では、ヘリコプターを巡る議論が激しくなっていた。

     ヘリコプターを多用すべきであったにもかかわらず、多用していないという批判が早くから行われた。それに対して、多用することができない状況があったという反論がなされた。

     そのやり取りの中での「知識人」の発言は注目に値すると思われた。

    ヘリコプターを多用すべきだったという主張

     ヘリコプターを多用すべきであったという主張の例として、五百旗頭真ひょうご震災記念21世紀研究機構理事長の言葉を挙げよう。

     五百旗頭氏は「元防衛大学校長で東日本大震災の国の復興構想会議で議長を務めた」人物である。

     ◆自衛隊の初動は今回、手抜かりがあったとみている。陸上自衛隊の全ての駐屯地に「ファスト・フォース」と呼ばれる初動部隊がある。24時間代わる代わる待機し、大きな災害があったらすぐに出動する部隊だ。最も被害が深刻だった石川県の輪島市や珠洲市は陸自の駐屯地がある金沢市から100キロも離れていた。道路が寸断され陸路から行けないと分かったら、すぐに海と空から救助に向かうことを決断しなければならなかった。
     ただ、海底が隆起して海から上陸することも難しかった。実際、発生2日目にはヘリ数十機の態勢を取ったというが、輪島市や珠洲市の寸断された集落への救助に時間を要した。今の自衛隊の能力からみればヘリ100機を出せたのではないか。陸からも、海からも大量の人員で救助に向かうことができないとなれば、空からの救助にすぐ切り替えなければならないのに、それができなかったのは非常に遺憾だ。

    毎日新聞 五百旗頭真氏がみる能登地震の対応 「自衛隊の初動に手抜かり」
    https://mainichi.jp/articles/20240301/k00/00m/040/350000c

    (この記事は2024年3月2日に配信されているが、五百旗頭真氏は3月6日に亡くなっている。亡くなる直前の記事である。)

     五百旗頭氏は能登半島地震に、他の地震と違う特殊な事情があったことを認めた。

    ・「道路が寸断され陸路から行けない」

    ・「海底が隆起して海から上陸することも難しかった」

     「陸からも、海からも大量の人員で救助に向かうことができないとなれば、空からの救助にすぐ切り替えなければならない」と五百旗頭氏は語る。

     ところが「今の自衛隊の能力からみればヘリ100機を出せた」にもかかわらず、「それができなかった」ことを五百旗頭氏は問題とする。そのことをもって「自衛隊の初動は今回、手抜かりがあったとみている」と言っているようである。

    現場の声

     「朝日新聞」の4月3日の記事「能登地震直後 自衛隊副師団長が呼びかけた情報共有、見えた支援方針」では、陸自第10師団の兵庫剛・副師団長のインタビューが載せられている。

    https://www.asahi.com/articles/ASS425WQJS36UTFK00B.html?iref=pc_ss_date_article

     まず『元日夕の発災直後、石川県庁の対策本部経由で自衛隊に「数百人単位のヘリコプター空輸」を要望された』というように、発災直後に石川県から「数百人単位のヘリコプター空輸」が求められていた。

     ところが「趣旨がわからない」という。

    ・「被災状況がわからない

    ・「被災地へどうやって行けばいいかもわからない

     兵庫氏は1月2日未明に石川県庁に着いた。そして「危機対策課に自衛隊と警察、消防が集まった」が、「現状認識が共有されない」状態であった。

     そこで兵庫氏が「情報を『見える化』しましょう」と言ったという。

     以上の兵庫氏の発言によると、五百旗頭氏が語るように「ヘリ100機を出せた」にもかかわらず出さなかったのではなく、「被災状況がわからない。被災地へどうやって行けばいいかもわからない。」という状況に対応せざるを得なかったようである。五百旗頭氏が語るように初動に「手抜かりがあった」のではなく、そうせざるを得ない状況があったようである。

     鬼木防衛副大臣は次のように語っている。

    ―初動が逐次投入との批判がある。

     情勢認識の差だ。地理的条件がほかの震災と全く違い、たくさんの人を入れられる状況ではなく、効果的でもなかった。政府はそこを認識した上で、適切な手順で人を入れた。きちんと状況を把握しつつ動くべきだ。2次被害もある。

    時事ドットコム 能登、大量投入「できる状況になし」 鬼木防衛副大臣インタビュー
    https://www.jiji.com/jc/article?k=2024012100192&g=soc

    伊賀治氏と地元民のやりとり

     SNSでは、ヘリコプターを使うことについて激しい論争が行われていた。

     その中で1月9日、伊賀治名誉教授と「地元民」を名乗る人との間に興味深いやりとりがあったので取り上げよう。

     1月8日、伊賀氏は画像を示して、被災地でヘリを使うことができないという主張を否定した。

     「できない理由を創作される方」というように、伊賀氏は、できない理由を言う人は、創作していると決めつけている。ないことをつくり出しているというのである。

     伊賀氏の主張に対して、地元民という人物が反論した。―ヘリが来ることのできるところにはすでに来ている。しかし能登には来ることのできないところが多いというのである。

     伊賀氏はその反論に対して、写真を示してヘリが降せないという主張に反対した。

     ここで「儲ける?」と言っているのは、伊賀氏の次の言葉に対するもの。

     伊賀氏は突然「付き合いきれんな」と言って「無視する」ことにしている。

     伊賀氏の主張と違うことが言われているのであるから、証拠を示して反論するか、相手の主張を受け入れるか、しなくてはならないと思われる。

     ところが、そういうことをせずに相手を「無視する」ことにして、自分の主張は正しいとして、相手の言葉は「儲ける」ためのものと決めつけている。

    「知識人」の陰謀論

     伊賀氏は上のやりとりの少し前のポストでは、次のように相手を「バイト」ときめつけている

     「ヘリが少ない」「初動が遅い」という伊賀氏の主張に対して反論してくる者は「バイト」であるというのである。―その背後に伊賀氏の「ヘリが少ない」「初動が遅い」という主張を「嫌がってる」者がいて、その者が「バイト」を使って伊賀氏に群がるようにしているというのである。

     しかしその背後に伊賀氏の「ヘリが少ない」「初動が遅い」という主張を「嫌がってる」者がいるということにも、その者が「バイト」を使って伊賀氏に群がるようにしているということにも、証拠はない。伊賀氏が想像しているだけのことのようである。

     根拠なく背後に動く力があるときめつけることを陰謀論という。

     仏文学者内田樹氏はそういう伊賀氏の言葉を引用して同意している。

     内田氏は「政府が決して触れて欲しくない」と語っている。伊賀氏は「ヘリが少ない」「初動が遅い」という主張を「嫌がってる」者がバイトを使っていると語ったが、「決して触れて欲しくない」のは政府だというのである。

     内田氏が『専門家だったら「ヘリを飛ばせるかどうか」の可否なんか自明のはず』と語っているところは重要なところである。内田氏も伊賀氏も、ヘリコプターを活用することはできるのに、活用されていない、という主張を「自明」のこととしている。

     「自明」のことに反対して「絡む」のは、そのことに「決して触れて欲しくない」政府によって動かされているにちがいないというのである。

     しかし上に挙げた伊賀氏と「地元民」のやりとりをみても、伊賀氏の正しさは自明ではないようである。

     「戦史/紛争史研究家」山崎雅弘氏も伊賀治氏の言葉を引用して次のように語っている。

     山崎氏も伊賀氏と同じように、伊賀氏に対する反論を「できない理由を創作」したものとみなしている。―「実際には「日本政府のやり方に問題はない」という結論から逆算して、それに都合のいい「知識の断片」だけをもっともらしく並べているだけです。」というように、日本政府のために正しくないことを「もっともらしく」語るものとみなしている。

     しかし上に挙げた「地元民」とのやりとりをみても、伊賀氏の正しさは自明ではないようである。

     逆に伊賀氏等の方が「実際には「日本政府のやり方に問題がある」という結論から逆算して、それに都合のいい「知識の断片」だけをもっともらしく並べているだけ」ではないかとも疑われる。

    おわりに

     2024年1月の能登半島地震では、能登半島の事情はどうなっているかということについても、どういう対応をしなくてはならないかということについても、議論が対立して、わかりにくくなっている。

     震災の実情を知ること、そしてどういう対応をすべきか知ることは、誰もが求めることである。そのことを妨げることは問題とされなくてはならない。