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  • 中国はロシアのウクライナ侵攻をどう考えるのか?

    中国はロシアのウクライナ侵攻をどう考えるのか?

     2022年2月4日に行われた北京冬季五輪開会式では、米国をはじめ多くの国が政府関係者を送らない「外交的ボイコット」をしたが、ロシアのプーチン大統領は出席した。

     開会式に先立って、プーチン大統領と習近平中国国家主席とは会談を行い、共同声明を発表した。

    https://www.bbc.com/japanese/60262771

     2月20日に五輪の閉会式が行われた。

     その後に、ロシアはウクライナに侵攻を始めた。

     中国はそのロシアの行動をどう考えているのか?

    いとぐち

     ロシアがウクライナ侵攻を始めるまで、中国の人は、ロシアの侵攻などない、英米が自分の利益のために煽っているだけだと語っていた。

     「人民網」も、「中国に帰った中国人」宋文洲氏も、そうであった。

     実際には、ロシアが侵攻を始めた。

     「人民網」も、宋文洲氏も、間違えていたわけである。

     その間違いは、個人の問題にとどまることでなく、中国と関わることである。

     宋文洲氏は、中国を代表しているように見える。

     人民日報は、中国共産党中央委員会の機関紙である。

     宋文洲氏も、「人民網」も、中国と親しいロシアは、英米のような悪いものではないゆえに侵攻などしない、と語っていた。

     ところがロシアは侵攻という悪いことをした。

     中国側は、あれほど自信をもってしていた予測を外したことになっている。

     あれほど英米を馬鹿にしていたのに、英米が警戒したような悪いことをロシアが実行したので、英米が正しくて、中国は間違っていたことになっている。

     中国はロシアに裏切られたのであろうか?

     とはいっても、中国はその後もロシアより米国を攻撃し続けているようである。

     それとも実は知っていたのであろうか?

     ウクライナ国境にロシアが軍を集結させていた状況では、米英のように侵攻に警戒する方が自然で、中国のように米英が自分の利益のために煽っているときめつける方が不自然ではないかとも思うが、中国にとっては自然だったのであろうか?

    検証

    問題提起

     五輪が開幕して間もない2月6日、宋氏は「ロシアがウクライナを侵攻する」というのは、米国が「政治作戦」として言っていることだと語っていた。

     米国が悪い、米国が「陰湿」だというのである。

     そして「結果を見守ってください」と語っている。それほどその予想に自信をもっていたわけである。

     漫画は前から引用していたと思うが、米国が各国を従わせているということをあらわしているようである。

     今度のことも、米国が悪い企みに各国を従わせようとしているということであろうか。

     宋氏はこのようにその予想によって米国をはじめとする様々な国、人を馬鹿にしてきていた。

     宋氏の予想が覆ると、そのことも覆ることになる。―上に挙げられた国々ではなく、宋氏自身が誤解のとりこになっていたわけである。

     2月9日に宋氏は、米国とロシアと、「誰が嘘吐きかを確認する良い機会」だと言っている。

     たしかに「良い機会」である。

    2月16日侵攻説

     2月16日にロシアが侵攻する、とバイデン米大統領が語った。

     宋氏はそのことを問題としている。

     その予測は外れると思っていたようである。

     2月15日。

     そして2月16日。

     予測は外れた、というわけである。

     しかし実際には、それから間もなくロシアがウクライナに侵攻した後から振り返ると、必ずしも予測が正しくなかったとは言えない。

     ロシアは、予測通り、ウクライナに侵攻する意図を持っていたからである。

     この場合、時期の予測が当たらなかったことは、それほど大きな問題ではない。駆け引きがあるからである。

     ロシアが侵攻する意図をもっていなかった場合には、米国が空騒ぎしただけであったということになる。そうであったならば、宋氏の批判は正しい。しかし今回そうではなかった。

     逆に、宋氏が何故にあれほど自信満々にロシアは侵攻しないと思い込んでいたのか、気になる。

    英米の目標

     宋氏は当初、英米がロシアによるウクライナ侵攻に警鐘を鳴らすのは、英米自身の利益のためときめつけていた。

     まず米国は次のような利益のためにロシアがウクライナに侵攻すると煽ったと語っている。

     次に、「米国がEU経済と独自軍事体制を打撃するため」という。

     「ロシアと欧州との連帯を阻止する」という目標があるという。

     米国の真の狙いはロシアから欧州へのエネルギー供給を排除することだと語っている。

     本質は欧州と米国の戦いと語っている。

     ここまでのことをまとめると、パイプラインによるロシアから欧州へのエネルギー供給を止めることによって、ロシアと欧州との連帯を阻止し、その代わりに米国のガスと武器を押収に売るために米国は動いているというのである。

     英国も米国とともに欧州とロシアとの連帯を阻止しようとしているということであろうか。

     人民網でも同様に、米国が扇動して、欧州と対立していると言われている。

    内政面で実績に劣るバイデン政権は、ウクライナ問題を利用して国民の関心をそらすとともに、ロシアを共通の敵に仕立て上げることで欧州の同盟国を抱き込み、米国が主導・掌握・コントロールする欧州秩序を維持する必要がある。そのため、ウクライナ情勢の緊張が続くことは米国の利益に資するのだ。しかし、ウクライナをめぐる軍事衝突の発生が米国に及ぼす影響は限定的だが、欧州諸国には難民の大量流入、対露制裁による巨額の経済的損失、「ノルドストリーム2」プロジェクトの頓挫といった耐え難い結果をもたらす。だからこそ、欧州はウクライナをめぐる衝突の回避を最重要目標としているのだ。

    人民網日本版 2月17日 ウクライナ情勢の誇張、米欧それぞれに思惑

    http://j.people.com.cn/n3/2022/0217/c94474-9959431.html

     この記事にあるように、バイデン政権が現在低下している支持率の対策として、ロシアによるウクライナ侵攻を言い出したということは、宋氏も言っている。

     次の記事も同様。

     2月21日の記事でこういうことを言っていることからも、ロシアと中国との間で意思疎通がなかったのではないかと思われる。

    米国政府はロシアが近くウクライナに「侵入」するとの宣伝を連日繰り返している。ロシア側がウクライナへの武力行使の意図はないと繰り返し強調し、米国と始めとする西側に対しその安全保障上の懸念を真剣に受け止めるよう望む中でもなお、米政府は「侵略はいつでも起こり得る」と言い張っている。戦争の危機を誇張・宣伝し、意図的に緊張をつくり出す米側のこうした行為は、不信と分断を激化させ、ウクライナ危機及びこれに関係する問題の適切な解決を妨げるだけだ。

    人民網日本語版 2月21日 戦争の危機の誇張・宣伝はウクライナ危機の解決に無益

    http://j.people.com.cn/n3/2022/0221/c94474-9960881.html

     ロシアがウクライナに侵攻した後からみると、米英は警戒すべきことを警戒していたと思われる。

     宋氏や人民網が語ることは、空想のようである。

    イラク戦争

     米国がロシアはウクライナに侵攻すると語ったことを、宋氏は、イラク戦争の時に米国が語っていたことと同じようなこととみなしていた。

     2月18日のツイート。

     2月21日のツイートでも、両者を全く同じようにみなしている。

     イラク戦争の時と同じように、今度も米国は自国の利益のために口実を設けて戦争を始めようとしているというのである。

     英国に対しても同じように批判している。

     こういう論法は2月10日に趙立堅氏がやっていた。

     これをみると、中国政府もそう考えていたように見える。

     実際には、米国が語っていたように、ロシアはウクライナに侵攻した。

     中国政府も、米国の過去の行動から導き出したパターンにとらわれていて、ロシアの実情を知ることができなかったのであろうか?

    米国の情報網

     宋氏は、はじめ米国の情報力を馬鹿にしていた。

     2月19日には、『米国の「情報力」は凄い』と皮肉を言っている。

     「偽情報をばら撒く米国」と言うのである。

     2月20日にも『米国の「情報力」』を馬鹿にしている。

     イラク戦争などのパターンによってみるのが正しいと思い込んでいたようである。

     2月20日にも、米国の「情報力」を馬鹿にしている。

     アフガニスタンの時のことをもちだしている。

     このように宋氏は米国の「情報力」を繰り返し馬鹿にしていた。

     ところが、2月25日には、宋氏は米国の情報力がすぐれていることを認めている。

     米国の情報が正しかったことが明らかになったからである。

     ついでに宋氏がリツイートした中華人民共和国駐大阪総領事のツイートもとりあげておこう。

     2月19日のツイートで、米国に対して「戦争デマをばらまく」と語っている。

     「戦争で血をすってきた凋落覇権アメリカが世界平和が続くと持たない」というのは、宋氏と同様の見方。

     逆にそれこそ「デマ」ではないか?

     それにしても総領事として言葉遣いが「異常」。

    謝罪

     宋氏の以上の見通しは外れた。

     現実にロシアはウクライナに侵攻した。

     米英が自国の利益のために語っていたのではなかった。

     宋氏自らそのことを認めて謝罪している。

     宋氏は、「プーチンはまるで別人のようで…」と語っている。

     宋氏がそれまで見て、予想していたのとは別人のようにプーチン大統領は動いたというのである。

     それまで宋氏はプーチン大統領を擁護していたが、現実のプーチン大統領は擁護できないことをしたと考えているようである。

     しかしまた「そこまで追い込まれたのか」というように同情してもいる。

     宋氏はロシア国内の専門家にとっても想定外であったという記事を引用している。

     宋氏は侵略を支持しないという。

     ただし同時に米国に反対することを忘れない。

    中国の態度

     宋氏はそれぞれの時の中国の態度を伝えている。

     2月13日のツイート。

     後から見ると、事情を知っていたロシア、米国に対して、中国は事情を知らずにいたのではないかとも思われる。

     2月22日。ウクライナ東部の親ロ派地域の独立をプーチン大統領が承認したことを受けて。

     ロシアに対しては賛成できないという。

     しかしまた米国も悪いということは言い続ける。

     2月25日。ロシアによるウクライナへの全面侵攻開始を受けて。

     やはりロシアも悪いが米国も悪いという主張。

     「ロシア」という言葉が出てこない。

    まとめ

     ロシアがウクライナに侵攻するまで、宋文洲氏も人民網も、英米がそのことをいうのは自分の利益のためだと語っていた。

     実際にはロシアはウクライナに侵攻した。

     宋氏等の予想は外れた。

     ロシアと中国とは一致していないようにも見える。

     それとも実は一致しているのであろうか?

     いずれにせよ宋氏等はその後、ロシアと距離をとりながらも、ロシアを攻撃せず、米国等に対する批判を続けている。

     2月25日には、プーチン大統領と習近平国家主席との間で電話会談が行われた。

    ロシアのプーチン大統領は25日、中国の習近平国家主席と電話会談し、ウクライナとハイレベル協議を開催する意向があると述べた。習主席は、ロシアとウクライナの対話を通じた問題解決を支持すると伝えた。中国外務省が協議内容を公表した。

    REUTERS 2022年2月25日 プーチン氏「ウクライナとハイレベル協議の意向」、中国主席に表明

    https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-china-xi-idJPKBN2KU1CO

     距離をとりながらも連携するかたちか。

     ちなみに3月4日から13日まで開催される北京パラリンピックはどうなるのであろうか?

     プーチン大統領は、北京五輪の開会式に出席して、閉会式の後にウクライナへの侵攻を始めたので、北京五輪を立てたようである。

     しかしウクライナ侵攻という大事件によって、北京五輪の印象は薄れているのではないか?

  • 手を洗う救急医Taka(木下喬弘)氏の気になるところ 感染対策と為政者の発言の関係

    手を洗う救急医Taka(木下喬弘)氏の気になるところ 感染対策と為政者の発言の関係

     新型コロナウイルスの感染が拡大して、それに対する政治家の弁舌のよしあしが話題になった。

     そのことについての手を洗う救急医Taka(木下喬弘)氏の発言が気になった。

    2020年4月

     2020年4月ころには、ニューヨーク州のクオモ知事の弁舌が話題になっていた。

     そしてクオモ氏を持ち上げて、トランプ大統領(当時)をおとしめるとか、安倍首相(当時)をおとしめるとかいうことが盛んになされていた。

     そのことに関して木下氏は次のように語っていた。

     ここではNY市長のこととNY州知事のこととが混在しているが、NY州知事のこととして考えよう。

     木下氏が引用したツイートは「ファクトや成果ではなくイメージと格好良さで政治を評価している」ことを問題としている。

     それに対して木下氏が「その通りです」と同意しているのは、「イメージと格好良さ」ではなく、「ファクトや成果」によって評価すべきだということのように聞こえる。

     ところが木下氏はそれに続けて「安倍総理の語り口調は少し弱い感じがします」と言っている。

     「語り口調」が「少し弱い感じ」というのはまさに「イメージと格好良さ」を問題とすることである。

     そしてNY州(市)の感染対策が日本より悪かったとは言えないと言っている。

     「ファクトや成果」は必ずしも明らかではないというのである。

     たとえばNY州(市)に与えられた状況が日本に与えられた状況より厳しかったとすると、NY州(市)の死者数が日本の死者数より多くても、対策が悪かったとは言えない、ということであろうか。

     しかし木下氏はNY州知事などと比べて「安倍総理の語り口調」が「少し弱い感じ」がするということを問題としている。

     「ファクトや成果」は明らかでないにもかかわらず(死者数は日本の方が少ないにもかかわらず)、日本の首相の感染対策は、英米の指導者と比べて問題があると語っているのである。

     そういうことは科学的であろうか?

     クオモ氏の感染対策に関しては、その弁舌の裏で死者数を過小に報告していたということが問題とされた。

    同州の死者数をめぐっては、セクハラ問題で辞任したクオモ氏が知事だった2月、高齢者施設の入所者の新型コロナによる死者数を故意に少なく公表していた疑惑が発覚している。24日に就任したホークル氏は、基準を見直して死者数を幅広く捉えることで、州政府のイメージを刷新したい狙いがあるとみられる。

    「朝日新聞」NY州のコロナ死者1万2千人増 新知事が基準を改める

    https://www.asahi.com/articles/ASP8V2TTMP8VUHBI003.html

     木下氏は2020年10月ころには次のようなツイートをしていた。

     米国は2020年10月になっても「感染対策をしないと感染は収まらない」ということに気づいていないというのである。

     木下氏は2020年4月に「NYCの方が多くの人が死んだからといって、日本より対策が悪かったかというと、なんとも言えません」と語っていた。

     整合性はどうなるのであろうか?

    ドイツ首相と日本の首相の比較

     2020年12月にドイツのメルケル首相(当時)が新型コロナウイルスに関してドイツ国民に訴えたことが話題となった。

     木下氏はそのメルケル氏の発言をとりあげて次のようにツイートしている。

     ドイツのメルケル首相(当時)の発言を日本の菅首相(当時)の発言と比較して、「えらい違い」と言っているのである。

     しかし感染対策として、メルケル氏はそれほどすぐれたことをしたのか? 菅氏はそれほど劣ったことをしたのか?

     2020年12月後半、日本でもドイツでも感染が拡大した。

     12月31日に東京で新規感染者が1300人を超えて過去最多となった。

    https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000202806.html

     ドイツでは1日の死者が1000人を超えた。

     問題は、与えられた状況に対してどのように効果的に対処するかである。

     ところが木下氏はメルケル氏が「数字を直視しなさい」と訴えたことだけをとりあげて持ち上げている。

     そして菅氏が「ガースーです」と言ったことだけをとりあげておとしめている。

     そういうことは科学的と言えるのであろうか?

    まとめ

     感染対策で重要なことは結果である。

     ところが2020年に新型コロナウイルスの感染が拡大してから、NYのクオモ氏やドイツのメルケル氏などの弁舌を結果と切り離して称賛する論調が日本でも欧米でも盛んであった。

     木下喬弘氏もそういう論調に傾いているように見える。

  • イエレン米財務長官、2021年のインフレ予測の誤りを認める

    イエレン米財務長官、2021年のインフレ予測の誤りを認める

     2022年5月31日、米国のイエレン財務長官はCNNのインタビューに対して、2021年にインフレを軽視していたことは誤りだったと認めた。

    CNN
    US treasury secretary: I was wrong about inflation in 2021 2022/06/01

    https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-05-31/yellen-says-i-was-wrong-last-year-on-the-path-of-us-inflation

     イエレン財務長官は、2021年にインフレは一時的なものにすぎず、対応することができると語っていた。

    2月、イエレン氏、インフレを軽視する

     2021年2月に、イエレン氏がインフレを軽く見ているという記事が出ている。

    https://www.foxbusiness.com/economy/yellen-inflation-biden-trillion-stimulus-bill

     イエレン氏は次のように語ったという。

    ・長年インフレについて研究してきて、インフレが起こった場合に対応することのできる手段を持っている。

    ・最大の危険は、現在直面している経済問題にある。景気刺激策が通れば、2022年には米国は完全雇用に戻る。

    “I’ve spent many years studying inflation and worrying about inflation, and I can tell you, we have the tools to deal with that risk if it materializes,” she continued. “But we face a huge economic challenge here and tremendous suffering in the country. We’ve got to address that. That’s the biggest risk.”
    Yellen said she expects the U.S. to return to “full employment” in 2022 if the stimulus package passes.

    Yellen downplays inflation fears amid Biden’s $1.9T stimulus bill

     この時には、イエレン氏はインフレのことを大した問題と考えていなかったようである。それより景気刺激策が重要だと考えていた。

    3月、イエレン氏、インフレのリスクは小さいという

     3月のABCでの発言でも、インフレのリスクは小さいと語っている。

    https://news.bloombergtax.com/daily-tax-report/yellen-says-u-s-inflation-risk-remains-small-manageable

     イエレン氏曰く。

    ・インフレのリスクは小さく、対応できる。

    ・価格の上昇は、新型コロナウイルスによって下がった価格が元に戻ることによることである。一時的な動きにすぎない。

    ・それは重大なリスクではない。

    “Is there a risk of inflation? I think there’s a small risk and I think it’s manageable,” Yellen said on ABC’s “This Week” on Sunday. Some prices that fell last year when the Covid-19 pandemic spread across the U.S. will recover, “but that’s a temporary movement in prices,” she said.
    “I don’t think it’s a significant risk,” said Yellen, a former Federal Reserve chair.

    Bloomberg Tax Yellen Says U.S. Inflation Risk Remains Small, ‘Manageable’ (1)

     この時にもイエレン氏は、インフレのリスクは大したことないと語っていた。

     価格上昇については、新型コロナウイルスのために下がった価格が元に戻ることによって起こることだと説明している。

    5月、イエレン氏、インフレは一時的だと予測

     5月、米国下院歳出委員会でイエレン氏は、インフレは一時的だという予測を語った。

    https://thehill.com/policy/finance/555799-yellen-expects-high-inflation-rates-to-be-temporary

     イエレン氏曰く。

    ・現在のインフレは一時的なものにすぎないであろう。

    ・インフレは数カ月続くであろう。今年末まで続くであろう。

    “My judgment right now is that the recent inflation that we have seen will be temporary. It’s not something that’s endemic,” Yellen said at a hearing held by a House Appropriations subcommittee. “I expect it to last, however, for several more months, and to see high annual rates of inflation through the end of this year.”

    THE HILL Yellen expects high inflation rates to be temporary

     この時にもインフレは一時的なものにすぎないと語っている。

     ただし、2月、3月のころにインフレは大したことないと語っていた時と比べると、それより長く続くと考えるようになったようである。

    6月、イエレン氏、今年インフレは前年比3%に達するという

     6月、インフレは今年中に進むが、新型コロナウイルスによる落ち込みの回復によるものだとイエレン氏は語る。

    https://www.washingtonpost.com/business/2021/06/05/yellen-3-percent-inflation/

     イエレン氏曰く。

    ・今年の間にインフレは進んで前年比3%あたりになるであろう。

    ・ただし一時的なものであると信ずる。

    “We have in recent months seen some inflation, and we — at least on a year-over-year basis — will continue, I believe through the rest of the year, to see higher inflation rates, maybe around 3 percent,” Yellen said following a meeting of Group of Seven finance ministers in London. “But I personally believe that this represents transitory factors.”

    The Washington Post Yellen says inflation could reach 3 percent this year as recovery continues

     FRBのパウエル議長等の考え。

     需要は回復しているが、供給が間に合っていないことに問題はある。その問題が解決されれば状況はよくなる。

    Powell and others have given a few reasons for why inflation is on the upswing and why the Fed isn’t worried about bringing it down too soon. Consumer demand for goods and services — from airline tickets to restaurant reservations — is rebounding as people unleash pent-up savings. Meanwhile, the supply side of the equation is taking longer to pick up. Those bottlenecks are expected to ease as factories ramp back up to full capacity and workers come back on the payrolls. But it won’t happen right away.

    The Washington Post Yellen says inflation could reach 3 percent this year as recovery continues

     イエレン氏はインフレがさらに進むことを認めている。

     しかしなお一時的なものだと考えている。

    10月、イエレン氏、インフレはなお数カ月続くという

     10月、インフレはなお数カ月高止まりするとイエレン氏は語る。

    https://www.cnbc.com/2021/10/05/yellen-sees-inflation-staying-higher-for-the-next-several-months.html

     イエレン氏曰く。

    ・インフレを起こしている供給の障害が進んでいる。

    ・インフレは一時的なものであるが、数カ月で終わるものではない。

    “Supply bottlenecks have developed that have caused inflation,” she said during a live “Squawk Box” interview. “I believe that they’re transitory, but that doesn’t mean they’ll go away over the next several months.”

    CNBC Yellen sees inflation staying higher for the next several months

     イエレン氏等が30年ぶりの、前年比3.6%のインフレを「一時的なもの」とよんでいることに対して、CNBCの記者も疑問を持っているようである。

     それに反対する経済学者の主張をとりあげている。

    Fed officials often use the word “transitory” to describe the current run that has inflation running at a 3.6% year-over-year rate, a 30-year high, according to their preferred gauge. Other measures of inflation, such as the consumer price index, are registering considerably higher, and some economists believe the central bank is understating the durability of inflation.

    CNBC Yellen sees inflation staying higher for the next several months

    11月、イエレン氏、経済対策によってインフレはおさまるという

     11月、イエレン氏は、1.75兆ドルの歳出法案によってインフレはおさまると語っている。

    https://www.cbsnews.com/news/spending-bill-social-climate-change-inflation-yellen/

     イエレン氏曰く。

    ・原因はパンデミックにある。ワクチンキャンペーンなどが成功して生活が正常にもどれば、インフレ率は2%近くに落ち着く。

    ・工場が閉鎖している中で需要が急騰したことによって供給の障害が生じている。

    ・バイデン政権の巨額の財政出動によって価格は下がる。

    “This is really because of the pandemic,” Yellen told Cordes of higher consumer prices when asked if inflation would decline next year, “and as we succeed in the vaccination campaign and other countries do as well and life goes back to normal, I truly believe that this will subside and Americans will see inflation rates much closer to the 2% that we want and they’re accustomed to.”
    The Treasury secretary said there has been a spike in demand for goods amid factory closures, which has led to supply bottlenecks. But Yellen said she believes provisions of a $1.75 trillion framework for Mr. Biden’s domestic policy package unveiled Thursday will also help drive prices down.

    CBSNEWS Yellen says “transformative” $1.75 trillion framework will help return Americans to workforce and drive inflation down

    まとめ

     2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻によってインフレは進んだが、その前からインフレは進んでいた。

     2021年はじめに、イエレン氏はインフレのリスクは大したことないと語っていたが、現実に合わせてインフレの予測を広げてかざるをえなくなった。

     しかしそれでも一時的なものだと語っていた。

     2022年5月31日、ついにイエレン氏は2021年の自身の予測が間違っていたことを認めた。

  • 大統領選から1年、支持率が低下したバイデン政権

    大統領選から1年、支持率が低下したバイデン政権

     2021年11月7日、米国のジョー・バイデン大統領は、1年前の大統領選挙を思い起こすツイートを投稿した。

     1年前、バイデン氏は米国の歴史上最多の得票で大統領に選ばれた。

     それだけの国民の声を受けたことを思い起こして、バイデン氏はこれから一日一日、米国をよりよく立て直す「Build Back Better」というバイデン氏の政策をやっていくというのである。

     ところでそういうバイデン氏にとって好ましくない調査結果が明らかにされた。

    USAトゥデイの調査

     USAトゥデイが発表した調査結果は、バイデン政権にとって厳しいものであった。

    https://www.usatoday.com/story/news/politics/2021/11/07/biden-approval-falls-38-midterms-loom-usa-today-suffolk-poll/6320098001/

    支持率

     バイデン大統領に対して、支持は37.8%、不支持は59.0%。

     バイデン大統領は1年前に米国の歴史上最多の得票で大統領に選ばれたと言ったが、現在の支持率はこれだけ低くなっている。

     ハリス副大統領に対して、支持は27.8%、不支持は51.2%。

     ハリス副大統領も期待されていたが、支持率はこれだけ低くなってしまった。

     全体の46%がバイデン氏は 期待より悪い仕事をしていると回答している。1年前にバイデン氏に投票した人の16%がバイデン氏は期待より悪い仕事をしていると回答している。

    Nearly half of those surveyed, 46%, say Biden has done a worse job as president than they expected, including 16% of those who voted for him. Independents, by 7-1 (44%-6%), say he’s done worse, not better, than they expected.

    USA TODAY Gloomy landscape for Democrats in midterms as Biden’s approval drops to 38% in USA TODAY/Suffolk poll

     米国人の66%は米国が間違った道を進んできたという。20%は正しい道を進んできたという。

    Two-thirds of Americans (66%) say the country has gotten on the wrong track; one in five (20%) say it is headed in the right direction. That’s no better than the public’s uneasy view during the final weeks of the Trump administration.

    USA TODAY Gloomy landscape for Democrats in midterms as Biden’s approval drops to 38% in USA TODAY/Suffolk poll

    立て直し法案 Bild Back Better

     バイデン氏の政策のうち、インフラ法案は共和党員を含む多数によって支持された。

    The infrastructure bill, which passed Friday with some bipartisan support, is backed by 2-1 (61%-32%) among those surveyed. The supporters include a third of Republicans.

    USA TODAY Gloomy landscape for Democrats in midterms as Biden’s approval drops to 38% in USA TODAY/Suffolk poll

     しかし立て直し法案は米国民を分裂させている。

    Americans are closely divided on the “Build Back Better” act pressed by congressional Democrats. In the poll, 47% support the $1.85 trillion bill; 44% oppose it.

    USA TODAY Gloomy landscape for Democrats in midterms as Biden’s approval drops to 38% in USA TODAY/Suffolk poll

     バイデン氏は米国史上最多の投票を得たことを根拠として、立て直し政策を進めていくというが、その法案が米国民の間に対立を生んでいるというのである。

    次の大統領選挙

     2024年にまたバイデン氏が大統領に選ばれることを望むか、という質問に対して、望むと答えたのは29.1%、望まないと答えたのは63.7%であった。

     それに対してトランプ氏が選ばれることを望むと答えたのは35.6%、望まないと答えたのは58・4%であった。

     トランプ氏の方が優勢のようである。

     バイデン氏に投票した人の中で、50%はバイデン氏がまた大統領に選ばれることを望むと答えたが、39%が望まないと答えた。

     それに対して1年前にトランプ氏に投票した人の中では、65%がトランプ氏が大統領に選ばれることを望むと答え、26%が望まないと答えた。

    Among those who voted for Biden last year, almost 4 in 10, 39%, say they hope he doesn’t run for another term; 50% hope he will run. Among those who voted for Trump last year, 1 in 4, 26%, hope he won’t run again; 65% hope he will.

    USA TODAY Gloomy landscape for Democrats in midterms as Biden’s approval drops to 38% in USA TODAY/Suffolk poll

     大統領選挙が今日バイデン氏とトランプ氏の間で行われたとすると、44%がトランプ氏に投票すると言い、40%がバイデン氏に投票すると言ったという。

    If the presidential election were today between Biden and Trump, 44% say they would vote for Trump, 40% for Biden, 11% for an unnamed third-party candidate. In the election last year, Biden beat Trump 54%-47%.

    USA TODAY Gloomy landscape for Democrats in midterms as Biden’s approval drops to 38% in USA TODAY/Suffolk poll

    NBCの調査

     民主党寄りといわれるNBCの調査結果も厳しいものであった。

    https://www.nbcnews.com/politics/meet-the-press/biden-s-job-rating-sinks-42-percent-nbc-news-poll-n1282781

    支持率

     バイデン大統領に対して、支持は42%、不支持率は54%。

    In the poll, 42 percent of adults say they approve of Biden’s overall job as president — a decline of 7 points since August, with much of the attrition coming from key parts of the Democratic base.
    That’s compared to 54 percent who say they disapprove of the president’s job, which is up 6 points since August.

    NBCnews Biden’s job rating sinks to 42 percent in NBC News poll a year from midterms

     USAトゥデイの37.8%よりは高い。

     しかしトランプ氏を除くと歴史上最低の支持率だということは同じ。

    Using Gallup’s historical data, Biden’s approval rating in this poll (42 percent) is lower than any other modern first-year president’s at a similar point in time, with the key exception of Donald Trump (whose approval averaged 37 percent in fall 2017).

    NBCnews Biden’s job rating sinks to 42 percent in NBC News poll a year from midterms

     4月には53%であった支持率は、8月には49%、10月には42%と下がってきている。

     4月には39%であった不支持率は、8月には48%、10月には54%と上がってきている。

     逆転するに至っている。

    間違った方向

     NBCの調査では、国が間違った方向をとってきたと答えた人は71%である。USAトゥデイの66%より多い。

     共和党の93%がそう答えているのみならず、民主党の48%もそう答えている。無党派の70%もそう答えている。

    Also in the NBC News poll, 71 percent of Americans say they believe the country is headed in the wrong direction, up 8 points since August.
    That includes 93 percent of Republicans, 70 of independents and even 48 percent of Democrats.

    NBCnews Biden’s job rating sinks to 42 percent in NBC News poll a year from midterms

     次のようなことが調査に影響しているという。

    ・新型コロナウイルスの感染者、死者の急増

    ・アフガニスタンからの撤退の混乱

    ・インフレーション

    ・不十分な雇用

    ・バイデン大統領の法案をめぐる民主党の内紛

    The NBC News poll comes after a rough summer and early fall for the first-year president, as he’s faced a new surge of coronavirus cases and deaths, fallout from the chaotic U.S. withdrawal from Afghanistan, rising inflation, disappointing jobs numbers and Democratic infighting over Biden’s legislative agenda.

    NBCnews Biden’s job rating sinks to 42 percent in NBC News poll a year from midterms

     その中で、新型コロナウイルスに対する対応に関しては、バイデン政権は51%の支持を得ているようであるが、経済政策に関しては、40%の支持しかないようである。

    The poll finds 40 percent of Americans approving the president’s handling of the economy (down 7 points since August), and 51 percent approving of his handling of the coronavirus (down 2 points).

    NBCnews Biden’s job rating sinks to 42 percent in NBC News poll a year from midterms

     困ったことに、バイデン氏について有能だという人は37%しかおらず、50%が低く評価している。

     国家を統合するということに関して、バイデン氏を高く評価している人は28%しかおらず、51%が低く評価している。

    Maybe even more troubling for Biden, just 37 percent of adults give him high marks — on a 5-point scale — for being competent and effective as president, and only 28 percent give him high marks for uniting the country.
    By contrast, 50 percent give him low scores for being competent, and 51 percent give him low scores for uniting the country.

    NBCnews Biden’s job rating sinks to 42 percent in NBC News poll a year from midterms

    2022年の中間選挙

     2022年の中間選挙で、47%が民主党優勢の議会を望み、45%が共和党優勢を望むという。

    Looking ahead to 2022 midterm elections, which will take place a year from now, 47 percent of registered voters say they prefer a Democratic-controlled Congress, while 45 percent say they want Republicans in charge — essentially unchanged from August.

    NBCnews Biden’s job rating sinks to 42 percent in NBC News poll a year from midterms

     それぞれの党がよりよくこなすと思われていること。

    共和党

    ・国境の安全

    ・インフレーション

    ・犯罪

    ・国家安全保障

    ・経済

    ・実行

    民主党

    ・中絶

    ・新型コロナウイルス

    ・気候変動

    When asked which party better handles particular issues, Republicans hold double-digit advantages on border security (by 27 points), inflation (24 points), crime (22 points), national security (21 points), the economy (18 points) and being effective and getting things done (13 points).
    By contrast, Democrats hold double-digit edges on abortion (by 10 points), the coronavirus (12 points) and climate change (24 points), but all of those advantages are smaller than those the party enjoyed during the 2020 election.

    NBCnews Biden’s job rating sinks to 42 percent in NBC News poll a year from midterms

    むすび

     2021年1月のバイデン氏の大統領就任演説は、多くの人に絶賛されていた。

    https://www.whitehouse.gov/briefing-room/speeches-remarks/2021/01/20/inaugural-address-by-president-joseph-r-biden-jr/

     しかしその時にバイデン氏はまだ何もしていなかった。

     トランプ前大統領は2020年の大統領選挙の時にバイデン氏を、言うだけで行わない人と評していた。(”You’re all talk and no action”)

     バイデン氏がまだ何もしていないのに演説だけで称賛されている光景を見て、私はその言葉を思い出した。

     大統領就任演説から9カ月、バイデン政権の行いを見て、多くの人が期待外れだったと言っている。間違った方向をとってきたと言っている。

     バイデン氏の大統領就任演説で特に称賛されたのは「団結 Unity 」ということであった。

     バイデン氏の思いはアメリカを一つにすることにあるというのである。

    Today, on this January day, my whole soul is in this:
    Bringing America together.
    Uniting our people.
    And uniting our nation.

    Inaugural Address by President Joseph R. Biden, Jr.
    January 20, 2021 • Speeches and Remarks

     ところが上にとりあげたNBCの調査によると、 団結するということに関して、バイデン氏を高く評価している人は28%しかおらず、51%が低く評価している。

     そもそもバイデン氏の「団結 Unity 」とは、大統領選で多くの票を得たトランプ氏を排除するものであったが、このごろは民主党をまとめることもできないと言われている。

     政治家は行いによって評価されるものである。

     ところが言葉を行いと切り離して持ち上げる反知性主義が流行っている。

     ニューヨーク州知事であったクオモ氏がその行いから切り離された言葉によって称賛されていたことはその代表的なものである。

    https://www.asahi.com/articles/ASP8V2TTMP8VUHBI003.html

     バイデン氏はクオモ氏以上にその言葉が行いから切り離されて持ち上げられた人であった。

     人類はそういう反知性主義から知性に向かって進まなくてはならない。

     バイデン氏はこれから行いによって現在の調査結果を覆すことができるであろうか?

     我等は知性に従おう。

  • 町山智浩氏の「バック・トゥ・ザ・フューチャー」論について

    町山智浩氏の「バック・トゥ・ザ・フューチャー」論について

     町山智浩氏の著書「最も危険なアメリカ映画 『國民の創世』から『バック・トゥ・ザ・フューチャー』まで(集英社インターナショナル)」(2016年、集英社)に「バック・トゥ・ザ・フューチャー」論が収められている。

     私はたまたまAMAZONの長いレビューが町山氏の議論を批判しているのをみた。

     そこで町山氏の「バック・トゥ・ザ・フューチャー」論を読んでみた。

     読んでみると、町山氏のイデオロギー批評の問題となるところが出ていた。


    最も危険なアメリカ映画 『國民の創世』から『バック・トゥ・ザ・フューチャー』まで(集英社インターナショナル)

    町山智浩氏の主張

    Photo by mentatdgt from Pexels

     まず町山智浩氏の主張をまとめる。

    歴史のねじ曲げ

     町山智浩氏は、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」は同じロバート・ゼメキス監督の「フォレスト・ガンプ」とともに「ねじ曲がったアメリカの戦後史を形成している」と語る。(最も危険なアメリカ映画 『國民の創世』から『バック・トゥ・ザ・フューチャー』まで(集英社インターナショナル)、210頁)

     この2作品は「歴史の歪曲と捏造と虚偽に満ちている」という。(同、211頁)

    白人の気持ち

     「バック・トゥ・ザ・フューチャー」冒頭の主人公とその家族の「惨めな現実」は、「当時のアメリカ白人の気持ちを代弁している」と町山氏は語る。(最も危険なアメリカ映画 『國民の創世』から『バック・トゥ・ザ・フューチャー』まで(集英社インターナショナル)、212頁)

     当時のアメリカ白人には、他の人種によって脅かされているという気持ちがあって、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」はそういう気持ちを代弁しているというのである。

    歴史との関係

     町山智浩氏は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」と歴史との関係について次のように論じている。

     「アメリカン・ドリームが崩れた60年代に、アメリカン・ドリームをスクリーンで見せてきたハリウッド映画も観客を失った」

     そこで「経営難に陥った映画会社は70年代に入ると若い監督を起用して、セックス、ドラッグ、ロックンロール、バイオレンス、それに反体制的メッセージを盛り込んだ映画で若者を劇場に取り戻そうとした」

     それに対して「70年代末、スティーヴン・スピルバーグとジョージ・ルーカスの『JAWS/ジョーズ』(75年)、『スター・ウォーズ』(77年)、『未知との遭遇』(77年)は、セックスやドラッグを排し、現実ではなくSFXで作られた、明るく楽しい家族向けの娯楽を提供した。」

     80年代にロナルド・レーガンは「50年代の古き良きアメリカ、強いアメリカ、豊かなアメリカ、神を愛し、家族を愛するアメリカの復活を掲げて選挙に圧勝した」

     その時に「バック・トゥ・ザ・フューチャー」は「50年代の古き良きアメリカをスクリーンに蘇らせる」映画としてスピルバーグがプロデュースした作品である。(以上、最も危険なアメリカ映画 『國民の創世』から『バック・トゥ・ザ・フューチャー』まで(集英社インターナショナル)、213~214頁)

     「バック・トゥ・ザ・フューチャー」はレーガン政権と同じような歴史的な意義をもっていると町山智浩氏は語る。

    人種差別

     町山智浩氏によると、60年代以後、アメリカの伝統的な文化に対抗した文化は、人種差別に反対した文化であった。

     「バック・トゥ・ザ・フューチャー」は、そういう文化に反対するものと町山智浩氏は語る。そして人種差別に反対する運動に反対するものと語る。

    検討

    Michaił NowaによるPixabayからの画像

     町山氏の主張を一つ一つ検討してみよう。

    主人公の惨めな現実

     町山氏は、冒頭の主人公とその家族の惨めな現実は、「当時のアメリカ白人の気持ちを代弁している」と語る。(最も危険なアメリカ映画 『國民の創世』から『バック・トゥ・ザ・フューチャー』まで(集英社インターナショナル)、212頁)

     2010年に行われたスティーブン・スピルバーグ(製作総指揮)、ロバート・ゼメキス(監督・脚本)、ボブ・ゲイル(製作・脚本)の3人による鼎談で映画の主人公の設定について、ボブ・ゲイルが次のように語っていることは、そのことと関係がある。

    はじめ彼は何もうまくいかず、人生に打ちひしがれていて、自殺まで考えているようなキャラだったんだ。
    (中略)
    そこで意見が一致した。「主人公が自殺したがっている設定だなんて、絶対に間違ってるぞ」と。

    スティーブン・スピルバーグ論」、フィルムアート社、2013年、104頁

    スティーブン・スピルバーグ論

     「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の主人公は「何もうまくいかず、人生に打ちひしがれていて、自殺まで考えているようなキャラ」と考えられていた。

     ところが作り手はその考えを変えた。

     その結果として、主人公とその家族の「惨めな現実」は深刻に描かれていない。

    主役

     「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の作り手は、マイケル・J・フォックスを主役と考えていたが、他の番組のために断られたので、エリック・シュトルツを主役として撮影を始めた。しかし結局マイケル・J・フォックスを主役とした。

     なぜそこまでしてマイケル・J・フォックスを主役としたかったのか? 町山氏は当時マイケル・J・フォックスが「ファミリー・タイズ」(=家族の絆)というテレビコメディで人気スターになっていたことを指摘する。

     そのテレビコメディでマイケル・J・フォックスは、「60~70年代のカウンター・カルチャーの中で青春を送った元ヒッピー」の両親に対して、「80年代の新保守主義、レーガン大統領を支持した層を代表している」人物を演じていたというのである。( 最も危険なアメリカ映画 『國民の創世』から『バック・トゥ・ザ・フューチャー』まで(集英社インターナショナル) 、222~223頁)

     しかしロバート・ゼメキス監督が「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の主役を「80年代の新保守主義、レーガン大統領を支持した層を代表している」人物にしたかったとしても、そのためにそういう役を演じていたマイケル・J・フォックスをどうしても起用したいということになるであろうか?

     ロバート・ゼメキス監督は、何故にエリック・シュトルツではいけないと考えたかについて、明らかにしている。―「彼のコメディ感覚が、ぼくがこの映画で思い描いていたものと違っていたということだ」というのである。(「スティーブン・スピルバーグ論」、108頁)


    スティーブン・スピルバーグ論

     ブルーレイの特典映像にエリック・シュトルツが主役を演じている映像が収められている。断片的なものであるが、タイムトラベルの衝撃を深刻に受け止める演技のように見える。マイケル・J・フォックスの明るいコミカルな演技と比べて暗いように見える。

     マイケル・J・フォックスの「コメディ感覚」こそロバート・ゼメキス監督が「この映画で思い描いていたもの」だったということではないか?

    レーガン政権との関係

     はじめに挙げたAMAZONのレビューは、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」にレーガン政権の思想があるという町山氏の主張に反対している。

     私は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」には、同時代のレーガン政権と共通するところがあると思う。

     レーガン政権も「バック・トゥ・ザ・フューチャー」も、それ以前の「若者文化」による家族の解体に対して家族の再生を主題としているという町山氏の指摘には正しいところがあると思う。(最も危険なアメリカ映画 『國民の創世』から『バック・トゥ・ザ・フューチャー』まで(集英社インターナショナル)、221~222頁)

     「俺たちに明日はない」とか「イージーライダー」のような社会からはみ出した人が殺されるという暗い話に対して、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」は明るい話である。

     勿論、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」がレーガン政権の思想を体現しているというのではない。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」はレーガン政権から独立した娯楽作品である。

     ましてや「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に町山氏が言うような白人の黒人や日本人に対する差別的な気持ちが描かれているとは思えない。

    理由なき反抗

     私は今度「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を見返して、「理由なき反抗 Rebel Without a Cause」をもとにして作られたところがあるのではないかと思った。

     「理由なき反抗」は、まさに1955年に制作され、公開された映画である。

     ロバート・ゼメキス監督は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で1955年を舞台にすることを考えた時に、「理由なき反抗」のことを考えたのではないか。

     「理由なき反抗」は、主人公の若者が、「親たちに反抗」するところを描いた作品である。まさに「若者文化」を代表する作品である。

     「理由なき反抗」において「父親の権威は失墜」している。主人公が、エプロン姿の父親を見て笑うところは特徴的である。

     「理由なき反抗」では、主人公は、同級生の不良集団と対立する。そのことも「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の主人公が不良集団と対立することと似ている。不良集団がオープンカーに乗っているところ、服装なども似ている。

     主人公が「チキン」と言われると興奮するところも同じである。


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    50年代の位置づけ

     町山智浩氏が「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を「50年代の古き良きアメリカをスクリーンに蘇らせる」作品と語ることには疑問がある。

     「バック・トゥ・ザ・フューチャー」は、60年代から70年代にかけてのアメリカン・ニューシネマなどと言われる暗い映画に対して、50年代以前のアメリカ映画と同じように明るい映画に帰ったものということはできる。

     しかし「バック・トゥ・ザ・フューチャー」には、特に50年代をよしとする思想はない。

    発端

     脚本を担当したボブ・ゲイルは、自分の父の卒業アルバムを見て「自分がもし親父と同級生だったら、友だちにはなれそうにないな」と考えたことがこの映画の発端だったと語っている。(「スティーブン・スピルバーグ論」、103頁)


    スティーブン・スピルバーグ論

     「自分がもし親父と同級生だったら」という発想は、50年代をよしとする思想とは異なるものである。

     映画の中でも50年代が特にいいとされていないようである。

    主人公

     主人公は50年代を変わった世界として見ている。特にいい世界として見ていない。

     町山智浩氏は次のように書いている。

    マーティは、パステルカラーに彩られた美しいダウンタウンに圧倒される。聴こえてくるのはコーデッツの54年のヒット曲「ミスター・サンドマン」。眠りの砂を撒く妖精のことを歌っているが、マーティも夢心地だ。
     マーティは荒れ果てたダウンタウンしか見たことがなかった。

    最も危険なアメリカ映画 『國民の創世』から『バック・トゥ・ザ・フューチャー』まで(集英社インターナショナル)、214頁

    最も危険なアメリカ映画 『國民の創世』から『バック・トゥ・ザ・フューチャー』まで(集英社インターナショナル)

     町山氏は私と違う映像を見ているのであろうか?

     「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の主人公は、1985年の文化に生きている人物である。スケボーで移動し、バンドでヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの楽曲を演奏している。

    hueylewisofficial
    Huey Lewis & The News – The Power Of Love (Official Video)

     もともと1950年代の文化に対して特別な思い入れはない。1950年代に行きたくて行ったのではない。1950年代の文化に対する愛着から1950年代にとどまっていたいということもない。

    若者文化

     ロバート・ゼメキス監督は1955年を舞台とした理由の一つとして若者文化が誕生した年であることを挙げている。

     1955年には「理由なき反抗」とか、ロックンロールとかがあった。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」はそういう文化をとりいれている。

     そこで問題は複雑になっている。

     町山智浩氏は「50年代に生まれた若者文化は60年代の若者革命の起爆剤となり、アメリカン・ドリームを解体していく」と語っている。(最も危険なアメリカ映画 『國民の創世』から『バック・トゥ・ザ・フューチャー』まで(集英社インターナショナル)、217頁)

     「バック・トゥ・ザ・フューチャー」は、1950年代に行くことによって、「若者革命」が出て来る前に帰るのではなく、「若者革命」の出て来るもとの「若者文化」のところに行くのである。

     「バック・トゥ・ザ・フューチャー」は、「若者文化」以後の流れにある作品である。

    歴史

     「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の歴史的意義について考える。

    母親

     町山智浩氏は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」にとりいれられた「若者文化」について、なぜか第一に主人公の母親の男性に対する態度に認めている。(最も危険なアメリカ映画 『國民の創世』から『バック・トゥ・ザ・フューチャー』まで(集英社インターナショナル)、217頁)

     たしかにそういう描き方は、「若者文化」以後のものと思われる。

     たとえば「若草の頃 Meet me in St.Louis 」(1944年)は、「若者文化」以前に古き良きアメリカの家族を描いた作品で売れたものであるが、主人公の少女の男性に対する恋愛感情は上品に描かれている。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の母親のように露骨ではない。


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     そういう意味でも、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」はそれほど過去に回帰している作品ではないということができる。

     しかしまた、ロバート・ゼメキス監督がまわりの露骨な映画に比べて甘いと言われたと語っているように、それらの作品に比べて過去に近くなっていたということもできる。

    父親

     町山智浩氏は60年代からの「カウンター・カルチャー」を「父親殺し」として、それに対して「バック・トゥ・ザ・フューチャー」は「父”生かし”」の物語であるという。(最も危険なアメリカ映画 『國民の創世』から『バック・トゥ・ザ・フューチャー』まで(集英社インターナショナル)、220頁)

     たしかに主人公の父親は、はじめ頼りないが、主人公が過去に行って帰ってきたときには頼れる存在になっている。

     ただし「若者文化」以前の家族に帰ったのではなく、あくまでも若者が主人公の「若者文化」になっているということができる。

    人種差別

     町山氏が「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を人種差別と関係づけていることについて考えよう。

    ロックンロール

     「バック・トゥ・ザ・フューチャー」では、劇中の歴史改変によって、「ジョニー・B・グッド」の作者はチャック・ベリーではなく、この映画の主人公になってしまう。

     ロバート・ゼメキス監督は「ただのジョーク」のつもりであったが、「白人による、黒人の功績の横取りだと叩かれた」という。

     そのことについて町山氏は、「確かにジョークには違いない。しかし、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』における黒人の描き方を見ると、軽いジョークとは言い切れなくなる」と言っている。(最も危険なアメリカ映画 『國民の創世』から『バック・トゥ・ザ・フューチャー』まで(集英社インターナショナル)、225頁)

     しかしロバート・ゼメキス監督の考えは、「ただのジョーク」のつもりであって、「白人による、黒人の功績の横取り」ではなかったと自ら語る通りである。

    黒人の地位

     町山氏は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で、1955年に食堂で掃除をしていた黒人男性が、1985年に市長になっていたという話をとりあげて、黒人の地位の歴史について次のように語っている。

    60~70年代は黒人にとって南北戦争と並ぶ解放と地位向上の時代だったのだが、『バック・トゥ~』では、マクフライ家が没落した時代として否定的に扱われている。マクフライ家が、レーガン大統領とその支持者が「あの頃はよかった」と言う50年代は黒人にとって暗黒の時代だった。けっして帰りたいなどとは願わないだろう。

    最も危険なアメリカ映画 『國民の創世』から『バック・トゥ・ザ・フューチャー』まで(集英社インターナショナル)、226~227頁

    最も危険なアメリカ映画 『國民の創世』から『バック・トゥ・ザ・フューチャー』まで(集英社インターナショナル)

     色々と気になるところがある。

     まず「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で60~70年代は「マクフライ家が没落した時代」であるかもしれないが、そのことは黒人の地位向上と関係ないのではないか?

     黒人が解放され地位向上したゆえにマクフライ家が没落したのではない。

     マクフライ家には、黒人の地位が低かった時代を「あの頃はよかった」という思想はない。

     主人公の母は過去を懐かしんでいるが、そのことは黒人の地位と関係ない。

     主人公は50年代を「よかった」と思っていない。

     1955年に食堂で掃除をしていた黒人男性が、1985年に市長になっていたという話はむしろ黒人の地位が向上した80年代をよしとしているように見える。

    白人の没落

     町山氏は、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」三部作は、「猿の惑星」と同じく「白人の没落を裏テーマにしている」という。(最も危険なアメリカ映画 『國民の創世』から『バック・トゥ・ザ・フューチャー』まで(集英社インターナショナル)、227頁)

     しかし「バック・トゥ・ザ・フューチャー」三部作のどれも、「白人の没落」をテーマとしているように見えない。

     第1作に関しては、すでに言ったように、「マクフライ家の没落」も、それに対する歴史改変も、黒人の地位向上と関係なく、「白人の没落」とも関係ない。


    バック・トゥ・ザ・フューチャー [Blu-ray]

     町山氏は「『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズでアメリカを乗っ取るのは、日本だ。」と書いている。(最も危険なアメリカ映画 『國民の創世』から『バック・トゥ・ザ・フューチャー』まで(集英社インターナショナル)、228頁)

     しかし第1作で主人公は日本製品をよろこんでいる。日本製品は「白人の没落」という意味で扱われていないのである。

     第2作で未来の主人公は、日本人社長にぺこぺこした挙句クビにされてしまうが、そのことは作品の主題というほどのこととは思えない。


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     町山氏は「「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズは一貫して、黒人や日本人を白人文化の破壊者として描いている」と語る。(最も危険なアメリカ映画 『國民の創世』から『バック・トゥ・ザ・フューチャー』まで(集英社インターナショナル)、230頁)

     しかしそういうところは見当たらない。どこのことを言っているのであろうか?

     第3作で主人公が1885年の西部劇の世界に行くことについて、町山氏は、「アメリカの凋落は、もはや50年代の保守主義をもってしても救いようがない、ということなのか」とか、「アジア人がおとなしかった古き良き時代に見えるだろう」とか言っている。( 最も危険なアメリカ映画 『國民の創世』から『バック・トゥ・ザ・フューチャー』まで(集英社インターナショナル) 、230、231頁)


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     アジア人による抑圧に対して白人が満足するためには、1950年代では不十分で、西部劇の世界でなくてはならない、ということだろうか?

     しかしあの西部劇を見て、「アジア人がおとなしかった古き良き時代に見える」などという人は少ないのではないか? そのことは作品の主題から離れたことではないか?

     第3作の最後に主人公が「銃を撃つことなく勝利を収める」ことを、町山氏は、「結局、アメリカは経済と軍事のライバルたちに、一発の銃弾を撃つこともなく勝利した」ことと関係づけている。(同、231頁)

     しかし第三作の主人公の相手が、当時のアメリカの「経済と軍事のライバルたち」、日本とかソ連とかをあらわすものとして描かれているとは思えない。


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  • トランプ米大統領のTikTok排除をめぐる報道

    トランプ米大統領のTikTok排除をめぐる報道

     2020年7月31日、トランプ米大統領は米国内でのTikTokの使用を禁止することを発表した。

     そのことを受けて、そのことをトランプ大統領の個人的な理由によるとし、それに対して米国の若いTikTok利用者が反発するという記事が出てきた。

    TikTokの使用禁止をトランプ大統領の個人的理由によるものとする記事

    Forbes

     まずForbesの8月1日の記事。

    https://www.forbes.com/sites/abrambrown/2020/08/01/is-this-the-real-reason-why-trump-wants-to-ban-tiktok/#32c7fe764aed

     日本語版。

    https://forbesjapan.com/articles/detail/36261

     トランプ大統領は、TikTokを使用禁止にする理由は国家安全保障上の問題にある、ユーザーのデータが中華人民共和国に渡ってしまうことにあると公的に語っていた。

     この記事はそのことを認めながら、それに対して、トランプ大統領にはそのことと別に個人的理由があるという。TikTokの利用者がそういっているという。

     トランプ大統領の個人的な理由とは、トランプ大統領が6月20日にタルサで集会をやった時に、トランプ大統領に反対するTikTok利用者が集会の席を買い占めて、集会の参加者を少なくした、そのことに対する報復として、TikTokは使用禁止とされたということである。

     民主党のオカシオコルテス下院議員は当時、このことをやったTikTok利用者を称賛していた。

     オカシオコルテス下院議員はこのように、うそのチケット予約を称賛している。

     ちなみにオカシオコルテス下院議員は同時にKPOPファンが同じようなことをしていたことをも称賛している。

     FORBESによると、トランプ大統領はそのことに対する報復として、TikTokの使用禁止をきめたと言われているというのである。

     しかしそもそもトランプ大統領の今度のTikTok使用禁止ということは、それまでに米議会の上下院が賛成多数で可決してきた法案を受けてのことである。それをトランプ大統領の個人的な理由によって起こったことのように言うことはおかしい。

     ついでにいうと、うそのチケット予約によって、集会の参加者を少なくすることは正しくないことである。TikTokが正しくないことによって政治を動かしてしまうものだとすると、それを排除することは、国家の安全のために正しいことになるのではないか。

     タルサの集会でも、TikTok利用者は、オカシオコルテス下院議員のような考えで動いただけでなく、トランプ大統領再選を嫌う中華人民共和国の考えで動いていたかもしれない。

    人民網

     次に中華人民共和国の人民網。8月3日。

    http://j.people.com.cn/n3/2020/0803/c94476-9717625.html

     この記事でもトランプ大統領の「個人的な恨み」を原因として、タルサの集会のことをとりあげている。

     この記事ではまた、米国に多いTikTok利用者がトランプ大統領に反対すると言われている。

    時事ドットコム

     次に日本の時事ドットコムの記事。8月12日。

    https://www.jiji.com/jc/article?k=2020081100770&g=int

     トランプ大統領がTikTokを使用禁止とした理由は、11月の大統領選の再選にあるとして、しかしTikTok利用者の若者の反発を買って逆効果になっているという。ここでも6月のタルサの集会のことがとりあげられている。

    同じような記事が出てきた理由

     上に挙げた三つの記事はそれぞれ似ている。

     同じ事実を報道したから似ているのではない。いずれも同じ事実を報道したというには、内容が偏っている。

     いずれも同じ報道をそのまま受け取ったというべきではないか?

     そのもとは何であろう?

     単に偏った記事であるかもしれない。

     米国内のトランプ大統領に反対するジャーナリストが、トランプ大統領に反対するということのために偏った記事を書いたのかもしれない。

     中華人民共和国がトランプ大統領に反対するということのために偏った記事を書いたのかもしれない。

    ウォールストリートジャーナルの記事

      ウォールストリートジャーナルの記事によって論調が変わったと私は思った。TikTok寄りの論調が減ったと思った。

     日本版。

     時事ドットコムもそのことを伝えている。

    https://www.jiji.com/jc/article?k=2020081200847&g=int

    終わりに

     これまで米国の中華人民共和国に対する非難は、トランプ大統領という乱暴な個人の、再選を目的とする個人的な理由によってなされているという報道が多くなされてきた。

     そうだとすると、トランプ大統領という乱暴者がいなくなればいいということになる。

     しかしTikTokに実際に問題があるとわかると、それをせめるトランプ大統領が悪いということはできなくなる。

     またトランプ大統領より、米国議会が中華人民共和国に対して強硬であるという事実を覆い隠すこともできない。

  • カニエ・ウェストの大統領選出馬について

    カニエ・ウェストの大統領選出馬について

     2020年7月5日、アメリカのミュージシャン、カニエ・ウェストKanye Westが大統領選に出馬するとツイートした。

    https://twitter.com/kanyewest/status/1279575273365594112

     カニエ・ウェストはどういうつもりで大統領選に出馬すると言ったのであろうか?

    カニエ・ウェストの考え

     カニエ・ウェストはFORBESのインタビューで自分の考えを明らかにしている。

    https://www.forbes.com/sites/randalllane/2020/07/08/kanye-west-says-hes-done-with-trump-opens-up-about-white-house-bid-damaging-biden-and-everything-in-between/#5edc9d8747aa

     インタビューからカニエ・ウェストの考えをとりあげてみよう。

    黒人と警察

     カニエ・ウェストは黒人のコミュニティの問題に抗議する考えからトランプ大統領(当時)を支持したという。

    One of the main reasons I wore the red hat as a protest to the segregation of votes in the Black community. Also, other than the fact that I like Trump hotels and the saxophones in the lobby.

     2018年10月にカニエ・ウェストがトランプ大統領(当時)と言葉を交わした時の動画がある。

    NBC News
    Full Video: Kanye West’s Meeting With President Donald Trump At The White House | NBC News 2018/10/12

     この動画では、黒人が警察に殺されるより、黒人同志で殺し合うことの方が多いゆえに、責任は黒人がとらなくてはならないとカニエ・ウェストは語っている。(14:30あたり)

    We have to take the responsibility for what we are doing. We killed each other, more than police officers.

     カニエ・ウェストが大統領選出馬を表明した2020年7月には、5月末のジョージ・フロイド氏の事件をめぐって、黒人が警察に殺されることに抗議するというBLM運動が盛んになっていた。

     カニエ・ウェストはその前から、黒人が警察に殺されるより、黒人同志が殺し合うことの方が多いゆえに、責任は黒人がとらなくてはならないという考えを持っていたのである。

    黒人と民主党、共和党

     カニエ・ウェストは、黒人は民主党に投票するということは、人種差別であり、白人至上主義であるという考えを持っていた。

     そしてカニエ・ウェストは黒人の投票を民主党から吸い取って、トランプ大統領をたすけることになってもいいと語っている。

    That he’s okay with siphoning off Black votes from the Democratic nominee, thus helping Trump. “I’m not denying it, I just told you. To say that the Black vote is Democratic is a form of racism and white supremacy.”

     カニエ・ウェストは、トランプに投票すると音楽のキャリアは終わると民主党員に脅迫されたと語っている。民主党員はそのようにして黒人を民主党に入れていると語っている。

    That is a form of racism and white supremacy and white control to say that all Black people need to be Democrat and to assume that me running is me splitting the vote. All of that information is being charged up on social media platforms by Democrats. And Democrats used to tell me, the same Democrats have threatened me. . . . The reason why this is the first day I registered to vote is because I was scared. I was told that if I voted on Trump my music career would be over. I was threatened into being in one party. I was threatened as a celebrity into being in one party. I was threatened as a Black man into the Democratic party. And that’s what the Democrats are doing, emotionally, to my people. Threatening them to the point where this white man can tell a Black man if you don’t vote for me, you’re not Black.

     そしてバイデンこそは、バイデンに投票しない者は黒人ではないと言った人だという。

    A lot of times just like political parties they feel all Blacks have to be Democrat. This man, Joe Biden, said if you don’t vote for me, then you are not Black.

     カニエ・ウェストは、トランプもオバマもクリントンも特別であったが、ジョー・バイデンは特別ではないと語っている

    That said, he won’t say much more against Trump. He’s much less shy about criticizing Biden, which certainly won’t tamp down the idea that the Birthday Party is a ruse to help reelect Trump. “I’m not saying Trump’s in my way, he may be a part of my way. And Joe Biden? Like come on man, please. You know? Obama’s special. Trump’s special. We say Kanye West is special. America needs special people that lead. Bill Clinton? Special. Joe Biden’s not special.”

     その中でもトランプは、神との関係でカニエ・ウェストと最も近い大統領であるという。

    Trump is the closest president we’ve had in years to allowing God to still be part of the conversation.

    追記

     カニエ・ウェストは、大統領選の後にもトランプを支持すると語っている。

    中国との関係

     カニエ・ウェストが大統領選に出馬すると伝えられてから、中華人民和共和国のGlobal Times(環球時報)がそのことを繰り返しとりあげていた。

     これはただ出馬の事実を伝えただけである。

     カニエ・ウェストは、1977年生まれであるが、1987年に、母ドンダDonda Westが南京大学に留学した時に、一年くらい南京で過ごした。

     中華人民共和国の微信では、それゆえに、カニエ・ウェストを「われらが南京ラッパー」と呼んで、盛り上がったようである。

     カニエ・ウェストは南京で過ごしたことのある人である。そういう人が大統領になれば、アメリカ合衆国は中華人民共和国に対して好意的になるのではないかというのである。

     これはアメリカに対して批判的な論説である。

     中華人民共和国のインターネット上の声は次の記事にまとめられている。

    http://www.thatsmags.com/china/post/31387/chinese-netizens-react-to-kanye-announcing-his-run-for-presidency

     カニエ・ウェストは中国に関して、「I love China」と繰り返している。

     新型コロナウイルスについても、中国のせいではないと擁護している。

    It’s not China’s fault that disease. It’s not the Chinese people’s fault. They’re God’s people also.

     カニエ・ウェストにとって中国での経験は、ものの見方を変えるほど大きなものだったようである。

    I love China. It changed my life. It changed my perspective, it gave me such a wide perspective. My mom as an English professor taught English in China when I was in fifth grade.

     自ら母とともに中国で過ごしたことについて語っている。

     たしかにカニエ・ウェストがアメリカ大統領になると、中国にとって好ましいことになりそうである。

     カニエ・ウェストはもともとトランプ大統領(当時)に近い保守的な思想をもっていた。

     宗教に関してもそうであった。そして黒人問題に関してそうであった。

     BLMの運動が盛んになっても、同じように考えていたようである。

     ただし中国に対しては、トランプ大統領(当時)は対立する考えをとっていたのに対して、カニエ・ウェストは幼児の経験から特別な親愛の感情をもっていた。

    日本との関係

     カニエ・ウェストの日本との関係についても書いておこう。

     カニエ・ウェストはミュージシャンとして、何度か日本と関わる仕事をしている。

     印象が強いのは「STRONGER」。

    Kanye West
    Kanye West – Stronger 2009/06/17

     再生回数3億5360万回という、驚くべき数字が出ている。

     背景に日本が出てくる。日本語の字幕が出てくる。

     カニエ・ウェストの「STRONGER」はDaft Punkの「Harder Better Faster」をもとにしているようである。

    Warner Music France
    Daft Punk – Harder Better Faster (Official Video)

     こちらも日本と関係がある。日本のアニメのイメージ、松本零士のイメージが使われている。

     カニエ・ウェストの「Stronger」も、日本のアニメのイメージを使っているようである。バイクのテールランプの描き方などまさに大友克洋の「AKIRA」のようだ。

     もう一つ。

     2007年に、カニエ・ウェストは、日本のTERITYAKI BOYZのシングル「I still love H.E.R. feat.KANYE WEST」にプロデューサーとラップで参加している。

    UNIVERSAL MUSIC JAPAN
    TERIYAKI BOYZ – I still love H.E.R. feat.KANYE WEST 

    個人的

     私が初めて聞いたカニエ・ウェストのアルバムは「808s & Heartbreak」であった。そのせいかこのアルバムに対して特別な思い入れがある。

     これもアニメーションを使っている。

     次は2013年の作品。

    Kanye West
    Kanye West – BLKKK SKKKN HEAD (Explicit) 2013/07/24

     再生回数は5000万回あまり。「STRONGER」の3億5000万回に比べると少ないようである。

  • 2020年のアメリカ独立記念日―建国精神とそれを否定する人々

    2020年のアメリカ独立記念日―建国精神とそれを否定する人々

     2020年の7月4日、アメリカの独立記念日は、緊張したものとなった。

    トランプ大統領と反対者

     トランプ大統領は独立記念日の前日にラシュモア山で式典を行った。

    反対

     それに対して、ワシントンポスト、CNNなどアメリカの主流メディアは反対した。

     第一に、人種差別が問題とされた。

     ラシュモア山には、ジョージ・ワシントン(George Washington 第1代大統領)、トーマス・ジェファソン(Thomas Jefferson 第3代大統領)、エイブラハム・リンカーン(Abraham Lincoln 第16代大統領)、シオドア・ルーズベルト(Theodore Roosevelt 第25代大統領)の胸像が彫られている。
     それぞれの人物が人種差別と関係あるとされ、その彫像の前で独立記念日を祝うことはよくないと言われたのである。

     第二に、アメリカでは新型コロナウイルスの拡大が続いていた。

     アメリカの感染者は283万人、死者は12万人。世界の感染者は1119万人、死者は528万人。(ジョンズホプキンス大学集計)

     そこで人が集まることはよくないと言われたのである。

    トランプ大統領

     トランプ大統領はそのラシュモア山で独立記念日の前日に式典を行った。そしてそこでの演説において、アメリカの歴史の意義を説いて、歴史的建造物を破壊した者を投獄する法律に署名したことについて語った。
     歴史的建造物を引き倒そうとする抗議運動に対して、アメリカの歴史的建造物を守る姿勢を明らかにしたのである。

    Fox News
    Trump holds Independence Day celebration at Mount Rushmore 

     トランプ大統領のツイート。格好よく編集されている。

     7月4日にトランプ大統領はホワイトハウスで、アメリカへの敬礼Salute to Americaを行った。

     ここでもトランプ大統領は、アメリカの歴史を尊重することを説いている。

     トランプ大統領のツイート。こちらも格好よく編集されている。

    文化大革命

     トランプ大統領はそのラシュモア山での演説において、左翼の文化革命に対してアメリカの革命を守る、と語った。

    This left wing cultural revolution is designed to overthrow the American revolution.

    https://twitter.com/ReedMCooper/status/1279251111480827904
    トランプ大統領がリツイートしたツイート。

     cultural revolutionという言葉は、中華人民共和国の文化大革命(1966~1976年)を思い起こさせる。

     美国之音中文网は「文革」という字をつかっている。

     漢字で「文革」と書くと、一層、文化大革命が思い起こされる。

     VOC(Victims of Communism 共産主義の犠牲者)のエグゼクティブディレクターのマリオン・スミスMarion Smithも、文化大革命を思い出している。

     「暴力的なイデオロギー信奉者たちが立像をひきおろしたThese violent ideologues pulled down statues」というところはまさに今アメリカで起こっていることと似ている。

     米国民は、外からの、中国共産党の脅威と、内からの、アナーキストの脅威を相手にしなくてはならないと言うのである。

     中国共産党と、アメリカ国内のアナーキストとは、文化大革命ということで共通しているということができるかもしれない。

     それに対してアメリカの歴史は尊重されるべきだというのである。

     マルコ・ルビオMarco Rubio上院議員も、中華人民共和国の横暴に反対することを主張する人であるが、アメリカを攻撃し、独立記念日を攻撃する人々の中に、外国の政府を称賛する人がいることを指摘している。

     アメリカを攻撃することと、外国を称賛することとが一つになっていることがあるというのである。

     もう一人、中華人民共和国に対して厳しいトム・コットンTom Cotton上院議員が独立記念日に際してアメリカの歴史を尊重することを説いている言葉をとりあげておこう。

     民主党の大統領候補、ジョー・バイデンJoe Biden氏は、アメリカの独立記念日に次のようなツイートを出している。

     すべての人の平等をいうことは、トランプ大統領と同じ。
     バイデンは、トマス・ジェファソンの至らなかったところを指摘し、今度のアメリカの抗議運動を、アメリカの平等の理念に向かう運動として評価している。そこがトランプ大統領と違うところである。

     カリフォルニア州知事ニューサムGavin Newsomは民主党で、独立記念日を祝うことを禁じた。

    https://twitter.com/Nichola62072520/status/1279862305350541312?s=20

     ところがカリフォルニアでは当日、花火が大量にあがった。

     まずニューヨークタイムズNew York Times。

     トランプ大統領の演説を「暗くて不和を起こさせるdark and devisive」と評している。
     このツイートはアメリカの保守的、愛国的な人の反感を買った。

     そのことはトランプ大統領にも伝わったようである。

     ワシントンポストThe Washington Postは、トランプ大統領に対して批判的である。

     ワシントンポストThe Washington Postは、トランプ大統領を人種差別主義者racistとみなし、人種差別主義の政策をとっていると考えているようである。

     トランプ大統領は、独立記念日を、国を一つにするのでなく、党派的なものにしたとワシントンポストは批判している。

     CNNもトランプ大統領に対して批判的である。

     CNNは、6月にトランプ大統領が集会を行ったときにも、新型コロナウイルスに感染する危険があると批判していた。今度も同じことで批判している。

     しかし6月の時に、ケーリー・マケナニーKayleigh McEnany報道官が反論したように、CNNがBLMに対して新型コロナウイルスの危険を問題としないのに、トランプ大統領に対してだけ問題とすることは、筋が通らない。偽善的に見える。
     特に今度のラシュモア山のことは、明らかにBLMに対抗してなされたことである。対立する両者に対して、一方に偏った報道をすることは、正しいことではない。

     トランプ大統領もそう考えているようである。抗議者は、感染に対して安全であるが、アメリカを祝福する者は安全ではないというツイートをリツイートしている。

     また例のジム・アコスタJim Acosta氏が専門家をよんでラシュモア山のことを批判している。

     CNNはやはりBLMを支持しているようである。

     トランプ大統領に反対するメディア、政治家は、しばしばトランプ大統領がアメリカを一つにしないことを問題としている。

     しかしそういう批判は、一方的である。

     BLMの運動を推し進めて、過去の英雄をひき倒して、その上でアメリカを一つにするべきだと考える人からみると、BLMの運動の乱暴を許してはならない、過去の英雄を引き倒してはいけないというトランプ大統領は、アメリカを一つにすることに反対する人に見える。

     しかしトランプ大統領からみると、BLMの運動こそがアメリカを引き裂くものである。過去の英雄をひき倒すことも、アメリカを引き裂くことである。それに対してトランプ大統領こそ、アメリカを一つにしようとしているのである。

     最後に、トランプ大統領がリツイートした次のツイートをとりあげてみよう。

     2016年のCNNにおいて、民主党のサンダース氏がラシュモア山を訪れている動画であるが、サンダースも、CNNのナレーションも、ラシュモア山の胸像を称賛している。

     香港でも、アメリカの独立記念日は祝われた。

     香港でアメリカの独立記念日が祝われているのに、アメリカでアメリカの独立記念日が主流メディアの反対にされているさまは、おかしい。

     台湾の副総統賴清德William Ching-te Laiも、アメリカの独立記念日を祝福している。

     賴副総統は、台湾とアメリカとの関係を強めようとしている。
     賴副総裁がアメリカの独立記念日を祝福するのは、その自由、民主のためである。台湾とアメリカとの関係もその自由、民主にあるということのようである。

     民主進歩党の王定宇氏は、アメリカを、自由で民主的な国の先駆者として、その独立記念日を祝福している。
     この人は、アメリカをそういう国とかんがえ、それに対して中華人民共和国を自由を奪う国と考えるゆえに、米中の対立に際して、断然アメリカをとるというのである。

     インドのモディModi首相はアメリカの独立記念日に際して、トランプ大統領とアメリカの国民を祝っている。

     インドは近日、中華人民共和国との対立を深めている。そしてそれに対して民主主義国として米国との関係を強めている。

     中華人民共和国は、米国がインドをそそのかして中華人民共和国と戦わせていると考えているようである。

     Global Timesはアメリカの独立記念日に関して次のようなツイートをしている。

     アメリカは独立記念日の式典によって感染者が増える、ということは、アメリカの左翼と同じであるが、BLMによっても感染者が増える、というところは、違う。

     アメリカの独立記念日が祝われていた裏で、トランプ大統領の新型コロナウイルスに対する失敗が明らかにされていたというのである。

     現在のアメリカは国内の対立を統合する力がないと分析している。
     論説では、トランプ大統領の演説がアメリカを統合できないものとして批判を受けたことをとりあげている。そしてアメリカが新型コロナウイルスの感染をコントロールできなことをもとりあげて、アメリカは国民の誇りと敬意を失うだろうと言っている。

     アメリカの独立記念日に関して、アメリカの花火の輸出は、中華人民共和国が最も多いというところは興味深い。

  • アメリカの抗議運動 新型コロナウイルスとの関係

    アメリカの抗議運動 新型コロナウイルスとの関係

     2020年5月25日のフロイド氏の死をきっかけとして、アメリカの各地で抗議運動が起こった。抗議運動はアメリカにとどまらず、世界中にひろがった。日本でも起こったという。

     この運動が動画として伝えられるのを見ていて、新型コロナウイルスとの関係がどうなっているのか、気になった。

     2020年6月26日、米国で一日の感染者の増加が最多になったというロイターの報道を聞いて、そのことを思い出した。

     詳しいグラフがある。

     抗議運動は世界中で行われているようである。

    Global News
    George Floyd death: Protesters rally in Berlin, London in solidarity with U.S. 2020/06/01
    VICE News
    George Floyd Protests Around the World Are Calling for Racial Justice 2020/06/11

     ロンドン。

    The Telegraph
    Protesters in London hold anti-racist rally outside US Embassy | George Floyd protests 2020/06/08

     パリ。

    VOA News
    Spurred by George Floyd, Thousands Protest Police Brutality in Paris 2020/06/04

     以上は一部にすぎない。
     それでも大変な数の人が参加していたことがわかる。

     日本の政府は新型コロナウイルスの感染に対する対策として、「3つの密」を避けることを説いた。

    出典:首相官邸HPより

     この「3密」ということを基準として、上に挙げた抗議運動について考えてみよう。

     「密閉空間」かどうか―抗議運動は屋外で行われている。「換気の悪い」「密閉空間」ではない。

     「密集場所」かどうか―抗議運動には多数の人が集まっている。「多数が集まる」「密集場所」ができている。
     Global Newsの動画には、2メートルの距離をとることを示している抗議者が映っている。
     しかし上の動画を見ても、距離は必ずしも保たれていないように見える。

     「密接場面」かどうか―上の動画をみても、多くの人が、大きな声を出し合っている。そのことを特徴としていると言ってもいいようである。
     「間近で会話や発声をする」「密接場所」になっているのではないか?
     マスクを外して大きな声を出している人も少なからず見られる。

     「3密」のうち、二つの条件があてはまるとすると、感染の危険があるのではないか?

     特に「多数が集まる」ということでは、非常に「多数」の人が集まっている。

     上のような活動が感染と関係ないとすると、「3密」ということは感染を防ぐための基準として成り立たないことになるのではないか?

     はじめに触れたように、2020年6月27日現在、アメリカの感染者数は増加している。他の国でも増加する傾向がみられるようである。

     その増加傾向は、抗議運動と関係ないのであろうか?

     関係あるのではないかという人もいる。

    https://twitter.com/goto_nikkei/status/1274144597573275649

     この人もデモが影響している可能性があると言っている。

    https://twitter.com/goto_nikkei/status/1275908064982568962

     このグラフによると、ニューヨーク州などは関係ないようにも見える。

    https://twitter.com/goto_nikkei/status/1276647247053234181

     フランスでは感染が再拡大しているようである。

     これまで、トランプ大統領は、マスクを着用しないことをはじめとして、新型コロナウイルスの危険と向き合っていないと批判されてきた。
     民主党も、CNNなどのメディアも、そういうことでトランプ大統領を批判してきた。
     私も、大丈夫か? と思った。

     しかし5月末から、アメリカ各地で、そして世界各地で行われた抗議運動をみると、感染の危険に関して、トランプ大統領に勝るとも劣らないのではないかと思われる。

     民主党やCNNは、抗議運動をもちあげている。
     しかし感染の危険に関しては、トランプ大統領に対してと同じように、抗議運動に対しても批判しなくてはならないのではないか?

     6月下旬に、トランプ大統領は、数千人の集会を開いた。
     それに対して民主党やCNNはまた感染の危険があると批判した。

    CNN
    Will Trump take responsibility if rallygoers get sick? Hear McEnany’s answer 2020/06/18

     CNNではこのように、トランプ大統領が新型コロナウイルスの危険を軽んじて集会を開くことを批判している。

     ホワイトハウスの動画。

    The White House
    06/17/20: Press Secretary Kayleigh McEnany Holds a Briefing

     McEnany報道官は、NEW YORK POSTをとりあげて、抗議運動はいいと言われるのに、トランプ大統領の集会はよくないと言われることはおかしいと言っている。
     たしかにその通りである。

     しかも抗議運動は、トランプ政権に反対するという面を持っていた。民主党も、CNNも、そういうものとして、抗議運動をもちあげていた。
     トランプ政権に反対する政治運動という面をもった抗議運動は、新型コロナウイルスの危険があるにもかかわらず、問題とされなかったのに、トランプ政権の政治運動は、新型コロナウイルスの危険があるとして問題とされることは、政治的に不公平ではないか。

     それまでの抗議運動がなくて、トランプ大統領が集会を開いたとすると、批判されてもしかたがない。しかしそれまで大規模な抗議運動が各地で行われてきたのに、トランプ大統領の集会だけが批判されることは、筋が通らない。

     ホワイトハウスの動画と、CNNの動画とを比べてみるとよくわかるが、CNNの動画では、McEnany報道官がNEW YORK POSTをとりあげて、抗議運動はいいと言われるのに、トランプ大統領の集会はよくないと言われることはおかしいと言ったところが、切り取られている。
     CNNの動画では、その問題はないことにされている。そしてトランプ大統領の集会だけが批判されている。
     CNNは自分の都合のいいように、事実を歪曲しているのである。

    Fox News
    WATCH: McEnany spars with CNN’s Jim Acosta in heated WH press briefing 2020/06/20

     これは違う日のFOXニュースの動画。
     CNNのJim Acostaは、トランプ大統領とその周囲の者がマスクを着けないことを問題としている。McEnany報道官は、CNNが、抗議者のハグをもちあげながら、トランプ大統領の集会を非難していることはおかしいと言っている。

     この動画でも、CNNが、トランプ大統領の集会に対してと抗議運動に対してとで違う基準を適用していることはおかしいということに対して、CNNのJim Acostaは、答えていない。McEnany報道官の問題提起に対して、何やらものを言い続けているが、何を言いたいのか、わからない。

     日本では、NHKのように国民から受信料を徴収しているテレビ局でも、CNNの論調をそのまま受け取って流しているようであるが、CNNの論調は上で見たように、偏っている。
     アメリカでは、FOXが人気がある。上の動画もすでに200万回以上再生され、5万以上の高評価を得ている。

     上に挙げたような抗議運動に対して、私は、その主張についてどう考えるかということと別に、新型コロナウイルスの感染の危険が気になってしまう。

     感染の危険に配慮した新しい形の運動はできなかったのであろうか?